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【特別対談】折り畳み自転車専門の雑誌編集長と漫画作者からのメッセージ

自転車が注目されている。今世紀に入ってからも何度か自転車ブームが訪れたが、今年はエコでも、ファッションでも、スポーツでもキャンプでもなく、日常生活に近い場所で必要とされている、比較的はっきりとしたニーズを伴うものだ。そしてその中でもとりわけ注目されているのがフォールディングバイク、いわゆる折り畳み自転車だ。折り畳み自転車といっても高速走行を目的としたスポーティーなものから、折り畳み性能に特化したもの、ストリート志向などファッション性の高いものや普段使いに便利なシティサイクル(ママチャリ)に近いものと種類が多く、自分にはどの自転車が合うのか特にビギナーには分かりづらいだろう。

今回は、初心者にも優しい自転車雑誌「自転車日和」「MTB日和」などを発行する傍ら「折りたたみ自転車&スモールバイクカタログ」や「折りたたみ自転車&スモールバイクCUSTOM」といった折り畳み自転車&小径車の専門誌まで手がける辰巳出版「自転車日和」編集部の横木純子編集長と、別冊少年マガジンにて連載中の折り畳み自転車漫画『おりたたぶ』の作者 こんちき 先生をお招きし、ユルく(一部マニアックな内容で)折り畳み自転車について話を伺った。

*こんちき先生は「おりたたぶ」の作品中に登場する滝沢奈緒の父の顔で登場いただいている。

 

Q1:折り畳み自転車の特徴で特に重視している点や魅力を3つ挙げるとすれば?

横木編集長「デザイン、収納性、ポジション&軽さ」、こんちき先生「数を増やせる、変形萌、形が個性的」

横木編集長:いきなりベタですが、自分の気に入った「デザイン」だと愛着が持てるので大切だと思います。性能が非常に高くても見た目が気に入らないと。そして普段の使い方にあったデザイン。私の場合、ユルい使い方が多いので、スポーティーなタイプよりは、普段着に合わせやすい自転車が好みです。

こんちき先生:うん、普段着で気兼ねなく乗るというのはありますね。普段着でロードに乗る方も増えましたが、ウェアに着替えて、(ビンディングシューズとかいろいろ)装備して…。折り畳みだとそのまま出掛けていい感じ。

横木編集長:何となくあるじゃないですか、乗ってる人をみて、似合ってるなっていう。自分の格好だったり持ち物だったりが印象に合うといいなーと。デザインに関しては。次の「収納性」については、自宅では置くスペースが限られているのでコンパクトになるという点と、持ち上げても折り畳みがバラけない持ち運ぶ際のカッチリ感も大切ですね。今、玄関の下駄箱の上に置いてるんですよ。笑

こんちき先生:あー、それありますね!本当だったら花などを飾っておくところですね。笑

横木編集長:そうそう、そうなんです。そこが収めやすかったという…。3番目の「ポジション」と「軽さ」はどちらにするか決めかねました。軽さは軽いに越したことがないのですが、小径車以外にも所有しているので、自分の中で12kg以内に収まれば…という基準はあります。「ポジション」については、自分の背が低いのがまず前提にあります。小径車はサドルの高さを下げると自ずとハンドルが高くなってしまうので、ハンドル位置が低いものや、調整できるものなど、とにかく自分の体格に合う自転車という点は重視しています。

こんちき先生:私はまずは「数を増やせる」。以前はロードやマウンテンバイクも複数台持っていたのですが、広くない部屋が自転車屋さんみたいになっていて、何をするにしても自転車を動かさないと生活できない状態でした。折り畳み自転車は隙間スペースに収まるので、ちょっと空いてるともう1台増やせるかな、増やせるかなってやってるうちにどんどん…笑。台所で本来であればストッカーを入れるようなちょっとした細いスペースにCarryMeが入るよね、とか。ちょっとベッド下に何か入るよね、とか。ワンタッチピクニカがペタンとなるんですけど、このペタンはどうやって収納することを想定して設計されたのかずっと考えていました。ちょうどゴルフバッグサイズで車のトランクに入れるのかなってツイートしていたら、フレームの下に穴が開いていると言われて…フックに引っ掛ける穴が。引っ掛けて縦に置いておけるんですね。ずっと謎って言ってたのですが、そういうことも考えられるのかと。こだわると数が増えてしまうタイプなので、増やせると嬉しいです。

こんちき先生:で「変形萌」ですね。シャコーンって。カチャカチャ組み立ててる時がまず楽しい。A-bikeは変形している時が楽しい。あとピクニカとか、後ろをグッと押さえるだけでペシャンとなる、そのワンアクションでできるところが凄い。トランジットコンパクトも同様ですね。DAHONだとEEZZが自分の中でも変形萌になる。小さな塊が変形して自転車になっていくと楽しい。家の中で自転車の形にしてまた戻すだけ、みたいなことをよくやってます。特に乗るわけでもないのですが、イライラしている時とか気晴らしに。

横木編集長:笑…そうなんですか。

こんちき先生:あとは「形が個性的」ですね。小径車自体がそうなのですが、上物がすっぽり空いているので自由にデザインを詰め込める。加えて折り畳み自転車には折り畳むギミックが考えられてデザインされているので、その見た目と機能がせめぎ合って形になっているのがたまらないですね。なんでここが曲がっているのだろうと思ったら、折り畳んだ時に当たらないようにしているからとか。機能を盛り込んだ結果個性的になったのか、作った人が先にデザインを考えたのか分からない部分もありますが。STRiDAは理に適っていて個性的でシンプル。機能からデザインが生まれてくるところが好きですね。

 

Q2:折り畳み自転車での好きな楽しみ方は?

横木編集長「散歩」、こんちき先生「季節を感じるご近所ポタ」

こんちき先生:本当は気持ち的には旅行って書きたいんですけどね、なかなか遠くに行けないとこうなりますよね。笑

横木編集長:楽しみ方と言うより、今の使い方がメインになってしまいますが、散歩気分で通勤しています。ただ通勤と言っても住宅街を走るのが好きで、幹線道路を走れば通勤としては速いですが、時間に余裕がある時は寄り道をしたり。豪邸の多いところは、この辺りは凄いエリアだな〜とか観察してみたり。笑

横木編集長:職場まで十数キロで、以前は時々しか自転車通勤をしていませんでしたが、いわゆる新型コロナで密を避けるために今年の春先からはずっと自転車で通勤しています。雨の日などは自転車は使いませんが、毎日20km超えなので半年以上続けると結構な距離になっています。あとは、仕事柄自転車で移動しながら撮影する機会も多いので、折り畳み自転車で輪行して出先でスタッフと合流するとか。好きな使い方と言うよりは仕事の話になってしまうのですが、基本はユルい使い方ですね。

こんちき先生:私の回答も「散歩」と同じなのですが、花を添えて「季節を感じるご近所ポタ」としてみました。近所が、マンガで描いているとおりの所で、季節を感じられるので。

横木編集長:馴染みのあるところがたくさん出てきました。

こんちき先生:ちょっと出掛ければ季節の移り変わりが、例えば春なら桜もあるしメジロがたくさん飛んでいて、ヒヨドリと喧嘩していたりとか。梅雨時なら紫陽花とか。紫陽花は多摩湖自転車道にもたくさんあります。夏は暑いけど、木陰が多いので多摩湖自転車道や多摩湖は走りやすいですね。

横木編集長:比較的生活道というかユルい感じですね。

こんちき先生:そうですね。いい自転車もたくさん走ってるので、観察したり。秋は紅葉があって、多摩湖なんか落ち葉で道が見えなくてザクザク走ったり、冬は冬で雪が積もった道を走ったり。昔スパイクタイヤで調子に乗って走っていて、転んで指の骨を折ったこともありました。笑

横木編集長:えー!

こんちき先生:雪が降ると轍ができて、それが固まって溝になっていて、車を避ける時に転びました。スパイクタイヤは凍結した坂でも平気でした。まぁ、多摩湖まで行けなくても季節は感じられますけどね。

横木編集長:そういえば通勤途中で、暗渠道とか…

こんちき先生:あーいいですね!暗渠道!

横木編集長:そうなんです、あと編集部のある新宿付近だとかなり細い路地もあって、探検しながら帰ったりするのも楽しいです。

こんちき先生:今日はもう1本向こうの路地を通ってみようとか。暗渠道は少し寂しい感じや、うねってる感じもいいですね。

横木編集長:あと走ると蓋がボコボコしたり、タイルみたいになっていたり。走りやすいかと言われると走りやすくはないけど何となくいいですね。

こんちき先生:話が脱線しますが、都内で暗渠とか湧水とか、それらの由来とか調べてる人がいて、ああいうライフワークのある人っていいなーって思いますね。折り畳み自転車どうですか、って薦めてみたくなったり。笑

 

Q3:折り畳み自転車はとかくマニアックに捉えられがちですが、辰巳出版の雑誌もおりたたぶもゆるいイメージです。何か意識していることはありますか?

横木編集長「ことばえらび」、こんちき先生「特別じゃなくても楽しい!!」

横木編集長:実際には…かなりマニアックだと思うんですよね。折り畳み自転車の本や折り畳み自転車の特集などすると、読者さんからの投稿や読者スナップなども含め、かなりマニアックな方は多いですよね。ただ、全然知らない人が読んでも分かるように、専門用語が多くならないようにとか、補足をするとかは意識しますね。あとは写真のイメージもハードルが高くならないよう、誰にでも乗れるよという演出をしますね。以前お店の方に、自分の親に説明するようにお客さまに接しているという話を聞き、自分も親や友だちに伝わりやすい表現を意識するようになりました。

こんちき先生:名所に行ったりは自分もしたいと思いますが、自転車って日常で使うものなので、自分の身の回り、近所を流すだけでも楽しいよっていうことに気付いてもらえたらなと、考えています。季節を感じられるとか、暗渠があるとか、、、近所の発見ですね。いつもとは違う道を通ってみようとか。マンガとしては特別な所に行った方が盛り上がるので名所でのポタリングも描くのですが。

こんちき先生:Amazonのレビューで、折り畳みじゃなくても普通のママチャリでもできると思った、という感想をいただいたのが嬉しかったですね。折り畳みは便利なのですが、折り畳みじゃなくてもいいのでまずは自転車でペダルを漕いで欲しいなーと思います。近所でいい所を見つけたらハッシュタグで教えてもらえたらいいなぁと。それでちょっと輪が広がって、いい所を見つけた写真を見たら同じ地域の方が見に行くかもしれない。それで #おりたたぶ のそういう輪が広がればいいなぁと思って、マンガを描き始めましたね。先日 #おりたたぶ のハッシュタグと住所付きでコスモス畑の写真をアップした人がいて、夕方他の方がそこに行って写真を上げてくれてたりして、こういうのいいなって。近所でいいんですよね、こんな近くでイイ所があったじゃんっていう輪が繋がると嬉しい。漕ぐだけでなく、目的があると楽しいと思いますし。大きな目的じゃなくていい。

こんちき先生:ネタとしては変態な人も描きたいんですけどね。CarryMeでキャノンボール(*東京大阪間 約550kmを24時間以内で走破する種目)してる人とか。今はまだ間口を広げる段階なので、そこまでは描いていませんが。あと、折り畳み自転車でもみんな折り畳まないんでしょ、と言われるのが嫌で。一生に一度でも折り畳めば価値があると思います。引っ越しの時に折り畳むとか。笑

 

Q4:折り畳み自転車でこれまでに見聞きしたことのある、印象的な(または衝撃的な)カスタムは?

横木編集長「手づくり系」、こんちき先生「切り刻んで別の自転車に」

横木編集長:本作りをしている関係で様々なカスタムは見てきていますが、パーツ交換するだけでなく、自分でパーツを作るようなプロ的な人たちが結構いて…

横木編集長:そこまでいっちゃうと普通の人には真似できないのでそれはそれで凄いのですが、自分でバッグを作って自転車につけたり、ステッカーを自作したり、ラジカセをぶら下げたりとか。手芸系、工作系というのはやればできそうで、その人の個性が出るというか、好きなものが表現されていていいなぁと。

こんちき先生:可愛いですね。それで一つの記事にできそう。使い方が形に出ますよね。

横木編集長:危なくないものであれば何でもいいと思うのですが、とても面白いと思います。

こんちき先生:使い方が速く走るだとどうしても一つの方向性になるけど、そういうのいいですよね。

横木編集長:そうですね、速く走る目的だとある程度決まってくるけどそういう方向ではなく、結果的に重くなっちゃったりしてもより自分の好みになって、衝撃的というわけではないけど印象に残りますね。

こんちき先生:今はCADが使えれば形を決めて3Dプリンターで成形し、これ商品だろっていうものができますね。自分の場合は鉄板を切って穴を開けるくらいしかできないので、CarryMeにリクセンカウルのアダプターが付くように金具を自作するとか。

——「切り刻んで別の自転車に」というのは?

こんちき先生:折り畳み自転車を切り刻んでリカンベントを作っている動画があって、凄い衝撃的でした。フレームは鉄板を買ってきて曲げて足りない部分は付け足しているのですが、車体のリアの三角部分を(リカンベントなので)前に持ってきてきていて、そこがそこに来るのか!という。溶接は使わず曲げ加工とボルト留めだけで作られていました。

横木編集長:素人が真似しちゃだめなやつですね。笑

こんちき先生:シートが無いので紐で編んだものをハンモックみたいにしていて、全く別のものになったのにちゃんと畳めるんですよね。前輪と後輪がちゃんと重なって、これプロの仕事だろ!って。笑

 

Q5:輪行時の思い出深いエピソードやトラブルなどは?

横木編集長「置き場所問題」、こんちき先生「怒られた」

横木編集長:私は置き場所ですねー。初めて新幹線で輪行した時に、電車だと車両の先頭か最後部という印象しか無かったので、新幹線で一番前の席を取ってしまったんですね。で、足元に車体を置いてみたら足を置くスペースがなくて……、前はダメだったんだと気づきました。あとは、一番後ろの席を予約したものの自分の席の裏にはすでに自転車が置いてあって、他の席の後ろに置かせてもらったり。今は予約できるようになりましたが、そういうことはありましたね。

こんちき先生:誰でも一度は経験しそうなことですよね。自分のエピソードは、マウンテンバイクを輪行していた時のことですが、フロントフォークが輪行袋に収まらなくてフォークの先端が露出していて、向かいのホームの方から「コラー!」って怒られました。輪行袋が破れそうなくらい引っ張って無理やり入れることができたのですが、これくらいいいかと思っていたところ怒られたという話です。だいぶ前の話で、その時は恥ずかしかったけど、そうやって怒ってでも教えてくれる人がいることは嬉しいことだと思いました。

——そうですね、その場で注意してもらえるのはいいことですよね。

こんちき先生:マンガを描き始めてからは、さらにいろいろなことに気をつけるようになりましたね。マンガの中でヘルメットを被れって言ってるので、短い距離でも自分も被るように心がけるようになったり。

横木編集長:コロナ以前のことですが、輪行で取材場所に行こうとした時に、この路線なら比較的空いてるだろうと思ったら想像以上のラッシュで、ホームに入ったら人であふれていて、諦めてタクシーに乗ったとかありました。

こんちき先生:乗り始めの駅では始発で空いてても、途中の乗り継ぎの駅ではラッシュ時になってたとか。案外早い時間からラッシュになる駅もありますね。

横木編集長:先頭か最後尾に乗り込まないとと思ってホームの端まで歩いて乗って、降りる駅でもまたホームの端から歩くとか…大変なこともありますね。

こんちき先生:CarryMeなど、前に担いだリュックの下に収まる自転車なら混雑気味でも便利ですね、座れた時も足に挟めますし。

 

Q6:様々な自転車ブランドがある中で、DAHONブランドのイメージをひとことで言うと?

横木編集長「フレンドリー」、こんちき先生「ど真ん中」

——「おりたたぶ」に登場するヒロイン 鳴嶋ゆうみ は30年も前のオールドダホンと呼ばれる車体に惚れ込んで乗っていますので、DAHONについてお聞きしました。お二人とも「なるほどな」というコメントですね。

横木編集長:様々な折り畳み自転車のブランドがある中で、ラインナップする車種が圧倒的に多いブランドですよね。コストパフォーマンスも高いですし。そういう面を一言にまとめて、フレンドリーと表現しました。漠然と「折り畳み自転車が欲しい」という人にも薦めやすいものが多い。スポーツ車に馴染みのない人にいきなり20万円とか言うとみんな引いちゃいますし。ユルいものからスポーティーなものまでバリエーションが豊富なので、幅広い層の人に薦めやすいですね。

こんちき先生:「ど真ん中」としました。DAHONより安かったり軽いものになるとちょっと(強度とか品質で)不安になるパーツがついたりするのですが、DAHONはきちんとした安全性を確保した上でエントリークラスからいい感じの価格帯で出してくれていて人に薦めやすい、「DAHONなら間違いないよ」と言えるブランドですね。長年やっている安心感もあるし、ショップにお願いすれば修理用パーツも手に入るし。DAHONより上を見ると、ギミックが凝っていたり個性的なデザインのものもあるけど高かったり。DAHONにもハイクラスの製品もあるけど、比較的低価格帯のBoardwalkなど20インチで可愛いモデルもありますし、そういう意味で折り畳み自転車の中でど真ん中なんだろうなと思います。

 

Q7:DAHONのバイクで好きなホイールサイズとその理由は?

横木編集長「14」、こんちき先生「14インチ」

——お二人とも14インチになりました。

こんちき先生:14インチを出しているブランドって今は減りましたよね。軽量モデルが流行った頃は14インチも多かったんですけどね。トレンクルとかトランジットスーパーライトとか、YS-11も14インチでしたね。

横木編集長:折り畳み自転車だったらやはりタイヤが小さいほうがコンパクトになるし、かと言って小さすぎると走りの面で快適性に欠ける部分もあり、20インチだと持ち運ぶにはちょっと大きいかなって気がするので。14インチだとスピード感が程よいというか、小回りもきくし、小径車に乗り慣れている人なら段差もあまり問題にならずに普通に乗れるし…とにかくコンパクトになる点が魅力ですね。せっかく選ぶなら、折り畳み自転車らしい小さなものが好みですね。

こんちき先生:やはりK3とかですか?

横木編集長:K3は走りの評価が高いんですけど、自分の身長的にはハンドルが遠いのでDoveですね。

こんちき先生:K3はハンドルポストが前方に角度がついているので、ハンドルが遠くならないように角度がついていないものに交換している人もいますね。自分の取材車はDove Plusで、3速にしようかなと思ったのですが、雑に使える方がいいかなと思ってシングルのままで、ギヤ比は更に落としています。取材車として小回りがきますし、特にDove Plusはとても軽くて(取り回しが)いいですね。取材中はストップ&ゴーがとても多くて、軽いと気軽に停まったり走ったりできる。

横木編集長:結構周りでも、例えばウチのスタッフも乗っていますが、すごく便利だって言ってますね。躊躇せずに輪行できるって。

こんちき先生:走りをメインに考えないのであればいいですね、駅周辺のポタリングとか。軽いと2階に住んでても、ちょっと食事に乗って行くかって担いで出る気になれる。重たいと気軽になれないし、大きいとぶつけないか神経を使うし。折り畳みのいいところは、階段の踊り場でぶつけないところ。ロードだとぶつけちゃうんですよね。

横木編集長:私も今朝はマウンテンバイクで来ましたが、何度か壁にぶつけちゃいました。笑

 

Q8:DAHONの折り畳み方で好きなタイプは?

横木編集長「LOCK JAW」、こんちき先生「横折り」

——DAHONのこれまでの折り畳み方には、一般的な横折りタイプのDFS Technology、DASHシリーズなどで採用しているLOCK JAW Folding Technology、EEZZで採用したJiffold Vertical Technology、Curlで採用の3-Point Folding Technology、あと分割式のP.A.Q.がありました。

横木編集長:LOCK JAWは昔から好きです。見た目が折り畳み自転車っぽく見えない。六角レンチで軽く180度回すだけで、カクンと折り畳める。折り畳んだ状態は決してコンパクトではないんですけど、こんなに簡単に折り畳めるんだってインパクトを最初に受けました。システムとして面白い。実際に自分で持つ自転車だったら横折りになりますが。笑

こんちき先生:ハンドルポストは中折り、外折りがありますが、どちらがいいですか?

横木編集長:私はメインフレームは横折りの、ハンドルは外折りがいい。外折りはハンドルの収納に気使わなくていいですね。

こんちき先生:自分は横折りが好きですね。興味があるのはEEZZ(のJiffold Vertical Technology)だったりするんですけど、DAHONといえば横折り、それこそオールドダホンから横折りですからね。横折りの折り畳み自転車としてはもっと古いものもありますが、折り畳み自転車のスタンダード的な存在ですよね。それ以外だとギミックが凝っちゃったりとか…。

横木編集長:誰でも簡単にっていうとDAHONの横折りですよね。

こんちき先生:DAHONといえば、っていう印象ですよね。DAHONっていうのもあるし、折り畳み自転車といえば、とも言えますね。

 

Q9:DAHONのバイクに乗るとしたらズバリどのモデルが個人的に好み?

横木編集長「Presto SL または Dove Plus」、こんちき先生「オールドDAHON 中期型」

横木編集長:私はPresto SLかDove Plusですね。

こんちき先生:理由が分かりやすいですよね。笑

横木編集長:シンプルで扱いやすくて、軽い。構造的にもですし、デザイン的にもシュッとしていて好きですね。

こんちき先生:自分も実際にPresto SLを買おうとしたことが何度かあったんですけど、買えませんでした。乗るとしたら、シングルのままですか?

横木編集長:シングルのままですね。結構皆さん多段化されていますけど…

こんちき先生:軽さ重視はありますよね。自分は現行モデルでなくて恐縮ですが、OLD DAHONの、今も乗っていますが中期型ですね。初期型の方が細かい作りが凝ってるんですけどハンドルを支える支柱の抜き差しがちょっと面倒で、その点中期型は上から被せてパチンと固定されるので使いやすいですね。後期型になるとここの支柱が無くなって1本のハンドルポストになるんですけど、この支柱が好きなんです。CarryMeなんかも支柱の存在が好きですね。

こんちき先生:今のモデルだとBoardwalkなども好きですね。見た目がクラシカルで、格好いいし可愛いし。写真映えするんですよね。ツイッターで #おりたたぶ のハッシュタグで投稿してくれている人のを見ても。

横木編集長:価格もリーズナブルで嬉しいですしね。

 

Q10:2021年モデルで新たに登場したオールドダホン風のD-Zero(実車)を見た感想は?

——「おりたたぶ」の影響でオールドダホンが話題になっているこのタイミングで、DAHONからオールドダホン風のD-Zeroが発表されました。

横木編集長「こう来たかー」、こんちき先生「嬉しい 欲しい(フレームも折れたら…ポソリ)」

横木編集長:こういうのも出してくるんだなーと思ったのと、ぱっと見オールドダホンにとても近くて、復刻モデルではないですがこういう場合、洗練されて今どき風になり過ぎて格好良くなってしまうことが多いんですけど、ちゃんとユルさを残してオールドダホンの雰囲気を残してる。

こんちき先生:ついてるパーツは全部今のものなんですけどね。

横木編集長:意外とフェンダーは樹脂じゃないとか、ユルそうでユルくないというか。

こんちき先生:クラシックになるようなオプションとか欲しいですね。逆にプラスチック製のフェンダーとか。オールドダホン化というかD-Zeroのためだけに出すわけにもいかないでしょうけど、更に昔風にカスタムできるオプションセット、みたいな。笑

対談の場に用意されたD-Zeroはサンプルでハンドルポストが左折りになっているが、量産される実際のD-Zeroは上の写真のとおり車体右側にハンドルポストを折りたたむ

こんちき先生:どういう収納を目的にセミフォールドなのかとか考えてしまうんですが、ハンドルポストを折り畳めるだけでも幅も小さくなるしいいですよね。走りも剛性感があっていいだろうし。リムのホール数がいくつかとか見ちゃいますね、オールドダホンに組み込めるかなとか。ちょうどこんな復刻っぽい製品が出てくれて嬉しいですね。オールドダホンが欲しいけど古いよね、って思ってる人に薦めることもできますしね。オールドダホンの雰囲気を引き継ぎつつ今のパーツでガッチリ固まってるんで、安心してお薦めできます。そして自分も欲しいという。

 

Q11:今後DAHONに望むことは?

横木編集長「ハンドルポストが低いモデルを!!」、こんちき先生「これからも ど真ん中で」

横木編集長:高さ調整のできるハンドルポストはありますが、低くしてスポーティーなポジションにという意味ではなく、背の低い人がサドルを下げるとハンドル位置が高くなってしまうので短いハンドルポストがあれば…。小径車はフレームがワンサイズなので低身長の人から高身長の人まで乗れますよって言われますが、身長の低い人が乗ると結局ママチャリポジションみたいになってしまうのが残念。

こんちき先生:ハンドルの種類もちょっと欲しいかなという気はしますね。フラットバーハンドルは、ママチャリに乗ってきた人には最初は違和感があるかも。気軽な普段使いを想定しているモデルはママチャリっぽいハンドルでもいいかな〜と。実際に自分でハンドルを換えてみて、使い勝手がよくなったりしました。望むことといえば、ユルく乗れるモデルを増やすことは無理でも、オプションでチョイスできればと思います。

*注:対談時は発行前で情報がなかったが、DAHONでは2021年モデルカタログからオプションパーツとしてQR Handlepostで300mm、330mm、T-Bar Handlepostで280mm、300mm、330mm、内折れ用QR Handlepostで425mmなどのハンドルポストをラインナップした

 

Q12:今後折り畳み自転車メーカーに望むことは?

横木編集長「おもしろい(新しい?)モデルをどんどん出してほしい!!」、こんちき先生「日常で使える折り畳みを(もっと)」

横木編集長:仕事柄そう思ってしまうっていうのもありますが、新しいものが出てきた方が折り畳み自転車自体が盛り上がるというのはありますね。新しいものが出てくると気になる人も多いでしょうし、新しいものが取り上げられることで折り畳み自転車全体がより多くの人の目に触れ、他のものも見てみようと思うかなと。新しいモデルはどんなふうに折り畳むのか、どんな乗り心地なのか、普通に興味が出てワクワクします。

こんちき先生:折り畳み自転車は見た目が個性的なので、マイナーチェンジが隠れがちなところはありますね。最近ではirukaとかがインパクトがありましたね。一方で(OXエンジニアリングの)PECOの終売は残念でした。OXエンジニアリングといえば、OXエンジニアリングのロゴが入ったCarryMeをネットで見て欲しいなーと思いました。

横木編集長:CarryMe好きの人はOXやルイガノなど、別ブランドのものや年式違いのものまで揃えたい…みたいな。

こんちき先生:CarryMeはカラバリも多いですしね。パシフィックサイクルのギャラリーにはタンデムのCarryMeがあるみたいですよ。

こんちき先生:自分からは「日常で使える折り畳みをもっと」としました。マニアックな方向に興味がない人で折り畳み自転車に乗ってる人も多いと思いますが、折り畳みを専門的にやっているメーカーでママチャリの代わりになる折り畳み自転車って少ないんじゃないかという気がしていて。昔の話ですが、トランジットコンパクトとかピクニカって(当時の物価と照らし合わせても)結構安いんですよね。で今でも、折り畳みを趣味としてなさそうな普通の街の人がトランジットコンパクトとか凄い古いピクニカに乗っているのを見かけて、安くて普段使いができる折り畳み自転車を、専門にしているしっかりとしたメーカーがもっと出してくれればと。最近はギミックを凝ったものになると高いものになったり、レジャー(スポーツ)志向になったり。鍵をかけておけばそれほど心配せずに離れられる、低価格帯で安心して日常使いのできる折り畳み自転車が増えて欲しいですね。難しいんだとは思うんですけどね。DAHONも比較的リーズナブルなモデルはあるので、その辺りが限界なんですかね。

こんちき先生:少し具体的な話になりますが、DAHONのCiaoのリアにカゴを載せるようにしたんですが、リアに重い荷物を載せた状態だと片持ちスタンドでは倒れるのでダブルレッグスタンドに替えたんですよね。そういう日常での使いやすさも大切にして欲しいですね。

 

Q13:折り畳み自転車を検討している方へのメッセージをお願いします!

横木編集長「1台あると便利ですよ〜(まずは「折りたたみ自転車&スモールバイクカタログ」を…)」、こんちき先生「小さくなると 遊びが “大きく” 広がる(かも)」

横木編集長:折り畳み自転車を買っても折り畳まない人もいると思うんですけど、畳んで収納すれば邪魔にならないという意味では失敗が無い自転車って言えるかなと思います。折り畳み方を理解すれば気軽に輪行できるし、普通にも走れるし。他の自転車だと、走って疲れたとか、雨が降り出したとかっていう時に、慣れていないと輪行はかなりハードルが高いと思うんですよね。前後輪を外したり、手が汚れたり。折り畳み自転車なら車に積むのも簡単ですし。家族分、複数台あっても積みやすい。最近、「家族みんなで共有できるから買う理由にしやすい」という話も聞きました。1台買って家族に乗ってもらって試せるというのもありますね。便利さを味わいやすい自転車、使い方を限定されずに、とりあえずあると便利な自転車。遠くに持っていくのも気軽にできるし、別に折り畳まずに近くを走るだけでも楽しいし。

こんちき先生:ロードとかだと、近所を一周して終わりにするかっていう走りは向いてませんからね。

横木編集長:便利さを味わって欲しいなぁ〜と思います。

こんちき先生:言ってることは同じですが、遊びの幅や、日常生活でもちょっと幅が広がりますよっていう自転車ですよね。

横木編集長:可能性が広がりやすい、縛られにくいというか。たとえばロードバイクだと速く走らなきゃ、遠くまで走らなきゃとか、マウンテンバイクだったら山を走らなきゃ、ってとらわれやすいけど、折り畳み自転車にはそれがない。近くでゆっくり遊んでもいいし、あえてスピードや距離を追求してもいいし、カスタムを楽しんでもいいし。

こんちき先生:自由ですよね。

横木編集長:便利ですよーと書きましたが、確かにそれぞれ自由な楽しみ方ができますね。

こんちき先生:肩の力を抜いて楽しめる自転車っていいですね!

 

こんちき先生のiPad上で作画データを拝見できた。(画像は実際の作業で使っているPCの物)
車体の3Dモデルデータを一旦作り、作品中で様々な角度の自転車を描くのに活用されている。オールドダホンはメインで登場するので特に緻密に作ってあるとのことで、目の前で車体を上下左右にぐるぐる回転させる様子には驚いた。

またこんちき先生は実際に自身で乗ってみないとその自転車を語れないので、様々な車体を実際に所有したり、機会があれば試乗も積極的にされている。写真は、こんちき先生が所有するDAHONの一部。

井之頭池に取材に行った際のオールドダホン
ママチャリ風に生活で使いやすく改造されたCiao

横木編集長からは専門誌を作る仕事上でのコメントに加え、実際にご自身が使う上でのリアルな話をお聞きできた。また、オールドダホンだけでも複数台所有されているというこんちき先生からは、近所を走ってみるだけでも季節の移り変わりに触れられる素朴な感動を教えていただいた。「おりたたぶ」のゆうみちゃんのイメージと被る、自然の美しさに対してキラキラした少年のような目が印象的だった。

 

辰巳出版からは「自転車日和」vol.57が10月30日に発売されたばかり。

特集は「究極の折りたたみ自転車」。日本をはじめアジアの諸外国でもブームを巻き起こしている折りたたみ自転車。定番人気モデル、注目モデル、話題の電動アシストモデルが多くのサイクリストたちに求められる理由は? 初心者目線、マニア目線、プロ目線で検証しています。

講談社からは「おりたたぶ」第3巻が12月9日に発売予定だ。

12月9日(水)に「おりたたぶ」第3巻が発売予定。第3巻では極小径の折り畳み自転車、Carry MEが新登場!新キャラ・樹里が ”おりたたぶ” メンバーに加わり、更に可愛くて楽しくて賑やかな日常に!

 

*協力
 自転車日和(辰巳出版)
 おりたたぶ(講談社)
 DAHON(アキボウ)

*この記事で紹介している情報は、2020年11月時点の取材に基づいています。

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