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【ミニベロ大好き】女性目線が強みの「サイクルガジェットTV」YouTube動画制作の秘訣

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自転車系動画に特化したYouTuber(ユーチューバー)は多いが、ミニベロ(小径自転車)を精力的に取り上げている方は案外少ない。そんな中、ロードバイクの動画をたくさんアップしつつもミニベロネタも多数紹介している女性YouTuberがいる。親子で運営しているロードバイクBlogメディア「サイクルガジェット」のYouTubeチャンネルとして、「サイクルガジェットTV」を一人で運営するアヤ(中山彩歌 / なかやま あやか)さんだ。YouTubeで「ミニベロ」で検索すれば上位にいくつもヒットするので、視聴した方も多いだろう。

今回はその中山彩歌さんに、女性目線でのミニベロの使い勝手や、動画配信の秘訣を伺った。

 

最初はおやつで釣られてサイクリングに

——一般的に、スポーツ志向で自転車に乗られる方はロードバイク、街乗り目的の方はクロスバイクかミニベロにまず乗られることが多いと思いますが、彩歌さんの場合は、共同で「サイクルガジェット」を運営されているお父様(中山順司さん)がすでにロードバイクからミニベロまでお持ちで、お母様のDAHONのBoardwalk D7も含め最初から様々なタイプのスポーツバイクをご存じだったので、特殊なケースだと思います。彩歌さん自身も現在はロードバイクとミニベロにお乗りですが、どういう順で乗り始められましたか。

彩歌さん:乗った順で言うと、ミニベロが先です。それより前、小学生の頃からミニベロが家にあるのが当たり前の生活でしたが、当時は自転車なんて興味のかけらもなかったので、嫌々サイクリングに付き合わされていました。お菓子をあげるから、とおやつで釣られて(笑)。その頃は、身長的にミニベロにも乗れなかったので、キッズバイク(父は DAHON Mu P8 という赤紫のミニベロ)でした。当時の写真を見ると、黒歴史並みのダサい格好で乗っていて、自分でも驚きます。

キッズバイクに乗る彩歌さん。
後ろに写る自転車はお父様のDAHONのMu P8。

——微笑ましいお話ですね。貴重なお写真、ありがとうございます。ミニベロから乗り始めたというのも、その経緯なら自然ですね。一般的にもユーザー数から言ってもスポーツバイクの代表格はロードバイクですし、サイクルガジェットも「ロードバイクが100倍楽しくなるブログ」と謳っているので、彩歌さんもロードバイクから入られたのかなと思っていました。しかし嫌々というのは、容易に想像できて面白いですね。ちなみに、サイクルガジェットTVでのジャンル別動画本数の割合は如何でしょうか。ミニベロに特化したチャンネルでもない限り、人口が多いロードバイクのネタを多く取り上げるのが、自然だと思いますが。

彩歌さん:2021年11月時点で、動画は約260本ですが、そのうちミニベロ関連の動画は25本くらいです。やはりメインはロードバイクですが、その他にもクロスバイク、ファットバイク、電動アシストバイクのネタも取り入れています。テーマは「ロードバイク」ではなく、あくまでも「自転車」なのでママチャリもたまに出てきたり。中には自転車と全く関係のない「ただ私が焼肉を一人で食べる」動画もあります(笑)。

——YouTubeチャンネルの開設は2019年6月ですよね。2年半ほどで260本も配信されているとは驚きです。様々な企画があるので、その中でミニベロ関連は約1割というのは、リアルにしっくりくる割合ですね。

——「ロードバイク」という単語を聞いて原付のバイクを想像するような特に女性には「とてつもなく速い自転車」と言えばわかりやすいでしょうか。…とnoteで仰っていましたが、一般の方には「ミニベロ」も聞きなれない言葉だと思います。彩歌さんならミニベロについて一言でどう説明されますか。

彩歌さん:「タイヤが異様に小さい自転車」と言えば、大半は理解してくれます。ロードバイクを「とてつもなく速い自転車」と言っても首を傾げる女性が多いので、最近では「競輪選手が乗っているような自転車」と表現するようにしています。

——かなり大雑把な説明ですが、一般の方には確かにそれくらいがちょうど良い表現なのかもしれません。ちょっとミニベロをかじっている人の場合は、「タイヤが異様に小さい自転車」というとCarryMeなどの極小径車を連想しそうですが(笑)。また「競輪選手」というワードは、ダイエットの話題でスリムなロードバイクの選手の対比として瞬発的なパワーが必要で太ももの太い競輪選手を話に出しますが、ロードレースがまだまだマイナーな日本では競輪選手という説明には納得です。

 

ジブリに出てきそうな田舎を走ってみたい

——ミニベロに1年乗って感じた9つのメリットをロードバイクと比較しながら説明されていました。ロードバイクとミニベロの良さはそれぞれですが、コンテンツの発信とは別に、彩歌さん自身のライフスタイルや好みではミニベロはどういう存在ですか。

彩歌さん:小動物的な存在です。私の持っている DAHON EEZZ D3 は折り畳めるミニベロなので部屋の端に置いていると、ちょこんと座っている小動物のようで可愛いと勝手に思っています。普段使いするというよりは、電車での輪行旅で非日常感を味わう方が私にとっては馴染み深いです。「ミニベロ」というと小回りが効く日常使いにピッタリだとよく耳にしますが、傷つけられるのが心配で結局近場は徒歩で行くことが実は多いです。人に勧めるときは日常使いで便利だとゴリ押ししますが。

——そういうの、あると思います(笑)。ところで、シティサイクル(いわゆるママチャリ)としての小径車は女性も含め多くの方に乗られていますが、スポーツバイクとしてのミニベロはそのルックスに反して高性能で価格も高いからか、趣味的アイテムとして楽しまれる男性の比率が高いように思います。YouTubeで見る限りロードバイクは女性も多そうですが、ミニベロはマニアックで男性的なイメージなどがありますか。

彩歌さん:ミニベロ限らず、スポーツバイク全般は男性的なイメージは持っていましたが、ミニベロがマニアックな自転車だと最近までは思っていませんでした。小さい頃からミニベロが部屋の中に置かれていて見慣れていましたし、ミニベロを販売する “ハクセン鳩ヶ谷” というサイクルショップでずっと目にしてきたからです。むしろ、ロードバイクの方がマニアックな自転車と思っていたくらい。YouTubeをやるようになってミニベロ人口の少なさに驚きました。

——彩歌さんが特殊な家庭環境でお育ちになったということが改めて分かりました。普通の方にこう言えばこう答えるだろう…と、悪意はないのですが誘導してしまっている自分に気付きました(汗;)。では質問を変えて・・・ミニベロユーザーの中にはロードバイクも楽しまれている方もおられますが、女性的視点でロードバイクとミニベロそれぞれの分かりやすい特徴の違いなどはありますか。

彩歌さん:一言で言うと、ロードバイクは「スポーツ」でミニベロは「観光」です。当然ですが、性能面で言えば圧倒的にロードバイクの方が走る道の幅は広がります。一度激坂をミニベロで挑んで即足をついた悔しい思い出があり、ガチで走りたい時はロードバイクを選んでいます。ミニベロは観光メインのゆるぽたで、頑張らないサイクリングをしたいときに。大体30km未満が多いです。それ以上の距離を走ると、疲れよりもお尻の限界が先にきます(汗)。つい最近、同い年の女子仲間とロードバイクで鎌倉まで行きましたが、改めて観光メインのときはミニベロの方が便利だと感じました。人の邪魔にならずにちょっと留めておく、なんてことロードバイクでは簡単にはできませんから。

——ミニベロでビワイチ(琵琶湖一周ライド)を1日で走り切るなどマニアックな方は一部でおられますが、多くの方が同意するイメージですね。自転車が好きな方ほど、用途に合わせて様々なタイプの自転車に乗られていますしね。

——ミニベロ、特にフォールディングバイク(折り畳み自転車)では様々なフレーム形状、メカニカルな機構を採用するものがあり、走る楽しみのほかに、ディープなカスタムを楽しまれているマニアックな方も多くおられます。彩歌さんはどこかカスタムしてみたいことなどありますか。

彩歌さん:全く思いません!自転車歴は2年以上ですが、お恥ずかしながらメカの知識が平均以下なくらいで興味を持ったこともありません。正直メンテナンスも億劫に感じるくらい機械いじりが好きではありません。そこは一般の女性と完全に意見が一致すると思います。たまに、鬼カスタムしてあるミニベロを見かけますが、私もやってみたいと思ったことはありませんし、これからもないと思います。それよりも私は「走る」時間を増やしたいです。ただ、折り畳むときや開放するときのガンダムのような組み立ては、何故かカッコイイとくすぐるものがあります。カスタムする、となると話は別ですが。

——カスタムには全く興味がなく、純粋に走ることが好きというのは、確かに多くの方がイメージする女性っぽいイメージですね。ミニベロ(小径車)にはフォールディングバイクとノンフォールディングミニベロがありますが、彩歌さんは輪行前提でフォールディングバイクに乗られているのでしょうか。

彩歌さん:基本的にそうです。初めてミニベロで輪行したときは、あまりの簡単さに興奮しました。ロードバイクだとはこうはいかないです。車内でも倒れないか、傷つけられないか、邪魔になってないか心配で目的地まで立ったまま。輪行するときは大体ミニベロで目的地へ向かいます。

——まぁ、あの気軽さを一度体験すると、もう何処へでも走りに行ける自由さに感動します。また、輪行ではなく家の車に載せるにも、折り畳めると一気にハードルが下がります。フォールディングバイクの便利さは十分知っていますが、私は現在、そのルックスが好きという理由だけでDAHONのMAKOというノンフォールディングミニベロに乗っています。ネットで時々、折り畳めないミニベロは存在価値が無いような意見を見ることがありますが、彩歌さんはどう思われますか。

彩歌さん:鑑賞物として自転車を買う人もいるくらいです。その人の自由なので、その人が好きで乗っているならそれ以上のことはないです。娯楽のためだけに読む本に存在価値がないかと言うとそうではありません。好きでやっている人に他人がとやかく言う筋合いはないと思います。これは私の偏見かもしれませんが、自転車業界は自分の意見を主張したい正義感の強い男性が多い印象を受けます。自転車業界に女性が少ない理由は単に、「高価だから」とか「機械いじりが好きではないから」以外の理由もあると思っています。高価だったし機械いじりが好きではないけど、私は始めたくらいです。ルックスが好きで乗るのも、見て惚れ惚れするために買うのも十分立派な趣味の一つです。

——彩歌さんがお乗りのEEZZ D3はDAHONの中でもユニークなフォールディングギミック(Vertical Hingeテクノロジー)を採用していますが、実際に彩歌さんは折り畳みをスムーズにできますか。

彩歌さん:早いと数十秒でできます。ホイールを脱着せず、手も汚れず、時間もかからない。その上、折り畳む瞬間がガンダムのようでカッコいい。折り畳み方がこんな豊富な自転車はミニベロだけですよね。同じ DAHON のミニベロでも折り畳む順番ややり方が変わっていたり、 BROMPTON は綺麗な四角形になったり。一種の芸術のように感じます。

——EEZZ D3の重量はギリギリ10kgを切る、スポーツ系フォールディングバイクとしては一般的な重さですが、彩歌さんのような小柄な女性にとって、持ち運びはそれなりに大変ではないかと思います。輪行する時は乗換駅で長い距離を歩かないようにプランするなど、何か工夫されていることはありますか。また、同じような女性がバイクを選ぶ際のアドバイスなど教えてください。

彩歌さん:なるべく乗り換えのない経路を選びます。どうしても乗り換えが発生する場合は、途中の駅までミニベロで走って、乗り換えをゼロにすると言う手段を取っています。運ぶときはそのまま持ち上げるのではなく、自転車を自分の体の後ろに寄せています。腕や肩で持ち上げるとすぐに疲れるので腰や背中も使って、かかる重量を分散させるイメージです。そうすると重さも軽減しますし、体の後ろにあるので歩きやすくもなります。輪行前提で選ぶなら、最近はCarryMeがお勧めです。YouTubeでも公開しましたが、ゴルフバッグ並みのコンパクトさで、何より電車内でも足に挟めば席に座れるのです。持ち運びやすさ、コンパクトさ、疲れにくさの全てを解決してくれるミニベロだと確信しています。

——CarryMeは折り畳み時の接地面積がA4サイズというのもウリの一つですしね。CarryMeのユーザーミーティングに参加させてもらったことがあるのですが、走ると楽しいし実際コンパクトになって便利だし、あれはフォールディングバイクの一つの完成形ですよね。

——動画でミニベロを見せるときに、ロードバイクと比べて気にかけていることなどありますか。また、ミニベロだからこその企画なども聞かせてください。

彩歌さん:ミニベロはロードバイク層よりもさらにマニアックなカスタムをしてらっしゃる方が多いので、鬼カスタムしたミニベロを動画で出すことが多いです。万人受けはしませんが、一部の層に刺さるコンテンツであればそれでいいと思っています。県を越える目的地の場合は、ただの旅ではなく、ミニベロ片手に輪行する旅の楽しさも同時に届けられる企画を考えています。通常は徒歩の旅でもミニベロがあれば、少し先にある観光地まで足を伸ばせられます。自転車に興味のない人も自転車って面白いかも、と思ってもらえるように「徒歩以上、車未満」の存在をアピールできるミニベロならではの楽しみ方を提案しています。

——いつか輪行で行って走ってみたい土地はありますか。

彩歌さん:この土地のこの場所、とまでは決めていません。ただ、ジブリに出てきそうな田舎を輪行して走ってみたいです。普通の女性と少しずれていますが、カフェ巡りやインスタ映えするスポットよりも、裏路地や無人駅、コンビニひとつない田んぼの一本道のような懐かしい道を走る方が好きなのです。昔の懐かしい気持ちが蘇ってくるようで心地よいです(とは言え、まだ21歳ですが)。そういう場所を開拓しては輪行で走って、を繰り返したいです。

 

目に見えない情報を伝える

——「サイクルガジェットTV」のチャンネル登録者数が先日4万人に達しました。それだけ多くの方に視聴される動画の配信では、細かいところへの気遣いも多いと思います。走行シーンでのルールやマナーなど、特に気をつけていることはありますか。

彩歌さん:交通ルールを守ることは当然として、ドライバーに対するハンドサインはソロライドでもこまめにしています。これはミニベロに限らずロードバイクに乗るときも、です。車体を停めるときは、通行人の邪魔にならぬようあえて半分折りたたんで、駐車スペースを狭くしています。ヘルメットも被って当然のアイテムなので自転車に乗るときは必ず被っています。なんなら、ママチャリに乗るときも被っていましたが、流石にこれは違和感しかありませんでした(汗)。

——かなり徹底されていますね。自転車関連動画でも、地域振興を目的とした行政発信の動画やイベント告知のプロモーション動画などで、並走しながら会話する様子などが映されているのを見ることが多々あるので、彩歌さんの意識の高さには好感が持てます。交通ルールなどとは別に、多くの方に視聴される動画を制作していることから気にかけていることなどはありますか。

彩歌さん:撮影のマイルールとしては、無言の走行シーンは撮影しないことです。見ている方を飽きさせないために走行中は首からGoProを下げて何かしら独り言を呟きまくっています。

——なるほど、確かに無言だと視聴する側は寂しいというか暇になりますからね。あと、メーカーや代理店から借りた車体を紹介する時などは製品をしっかり、または素敵に見せることもあるのかなと想像しますが、そんな時に工夫していることはありますか。

彩歌さん:見える情報だけではなく、見えない情報を伝えるよう努力しています。例えば、身長〇〇cmの女性が乗ってみてどう感じたか、操作性や乗り心地に問題はないか、乗って不満に思ったことなど。借りた車体に限らず、私の自転車紹介の動画はメカやスペックに関する情報はあえて深掘りしません。公式サイトやカタログを見れば一発で分かることを、動画で話すのは勿体無いからです。それよりも、見えない情報を説明してあげることで、その自転車を買おうか検討している人の背中を押してあげられるような密度の濃い動画を目指しています。あとは、全て正直に話すことです。メーカーや代理店が絡んでくるいわゆる案件動画で、良いことしか話さないと私なら疑ってしまいます。視聴者が見たいのは「本音」なので包み隠さず話した方が、結果良い動画になることが多いです。

——動画では彩歌さんが素であたふたしたり「走りにくい」など感じたままをリアルに伝えている部分もあって、見ていて感情移入しやすく「本音」というのはイメージどおりでしたが、見えない情報を伝えるというのはとても良い考えですね。勉強になります。最近ではシマノ、カンパニョーロ、スラムの比較や、リムブレーキとディスクブレーキの比較をしている擬人化VSシリーズが、面白い見せ方で説明も分かりやすいのでいいなと思いました。彩歌さんの配信する動画はとても楽しいので次も次もと幾つも観てしまいますが、視聴回数を伸ばす秘訣はありますか。

彩歌さん:よく聞かれますが、シンプルに「継続力」と「向上心」だと思います。言うのは簡単ですが、言い訳せず継続して、視聴者が求める動画とは何か、を常に学ぼうとする姿勢、向上する心を持てば自ずと視聴回数も増えます。加えて、前提条件として「好き」かどうかも重要です。動画編集は地道な作業なので性格によっては、合う合わないが極端に分かれます。私はコツコツ続けることを苦に感じないタイプなので運が良かったです。

——以前の動画で「全サイクリストの妹」という表現をしていましたが、彩歌さんは確かにそういうイメージで見られていることも多いのではないかと思います。下世話な質問ですが、視聴回数を伸ばすためにそういう男性目線を意識することはありますか。また検索でヒットしたり、他のメディアから誘導する時の工夫は何に気をつけていますか。

彩歌さん:おっしゃる通り、視聴者の9割以上は男性です。なので、自分の顔はなるべく写すようにしています。以前、被写体が父オンリーのときがあり、「アヤちゃんが出てないから動画を開いて一瞬で閉じた」とコメントをいただきました。このとき初めて、男性が視覚的に求めているものがぼんやり見えてきました。男性社会の業界に女性が入るとどうしても「アイドル化」してしまうんですよね。ちやほやされる環境なので仕方ないのですが、個人的にこの「アイドル」という言葉は好きではありません。「私を見て!」というアピール動画は、自己満で終わって成長が止まるような感覚があるからです。それよりも私は企画で勝負したいので常に「アイドル的存在」にならぬよう自分に言い聞かせています。アイドルだと「画面の向こう側の人(芸能人や有名人)」で遠くの存在になってしまうんです。それよりも「身近にこんな子いそう…」と馴染みのある存在として見てほしかったので、そういった意味も込めて最初は「全サイクリストの妹」と表現していました。男性目線は多少気にしていますが、やはり企画ありきの動画作りの体制はこれからも変わらなさそうです。

「継続力」と「向上心」を忘れず、企画で勝負したいという彩歌さん。

彩歌さん:それに関連しますが、検索でのヒットは二の次です。有益で面白い動画は再生数も回り、Googleからの評価にも繋がるので結果検索にヒットすれば良かったね、レベルです。検索を意識するなら、季節や流行ネタをやれば良いですが、そういえば私の動画には季節系のネタが少ないので、興味がないだけかもしれませんね。他メディアからの誘導は、「被リンク」をもらうようにしています。相手の公式サイトに私の動画を埋め込んでくださると、そのサイトを訪問しに来た方にも見てもらえます。サイト訪問者も動画があることによって購入後のイメージを持ちやすいので、Win-Winなやり方だと思っています。いずれにしても、良い動画を作ることには変わりないのでそれだけです。

——YouTubeチャンネルの説明欄に『いつまでも初心を忘れずに、「人様の役に立つ情報とは何か」、「どう伝えれば心に響くのか」、「どんなコンテンツが求められているのか」を考え続け、YouTubeとブログを通じて発信し続けます』とあります。視聴者が求めるコンテンツを発信するのは視聴回数を伸ばすための基本だと思いますが、求められるものと発信したい内容のギャップなどは如何でしょうか。

彩歌さん:多少のギャップはあります。例えば、私はメカに一切の興味もないので当初はメンテナンス系、メカ系の動画を作るのはあまり乗り気ではありませんでした。趣味だけで終わらせるなら、発信したい内容だけアップしていれば良いと思いますが、私たちは趣味を超えた人様に見てもらうコンテンツ、世の中に評価されることを前提としているので、「このままじゃダメだよね」と気づき、苦手な分野にも挑戦するように変えました。

——ところでYouTubeで配信している動画は、ロード、ミニベロ問わず、走ったり説明したりと様々な種類の企画に分かれますが、ジャンルはローテーションさせるとか、走るのは季節を限定するなど、企画するうえで意識していることはありますか。

彩歌さん:今いる自転車YouTuberがやったことのない企画、ありそうでない企画は常に考えています。チャンネル名にもある「TV」はその名の通り「テレビ」を意味していますが、「ボタンを変えれば様々なジャンルの動画を見られる本物のテレビ番組」のようにバラエティ豊かなチャンネルにしたくて付けました。最近サイクリング系の動画が少ないな、と感じたら翌日走りに行くなんてこともあります。

——動画1本1本の企画だけでなく、チャンネル全体を見渡して調整されているのですね。それでは動画の制作自体について伺いますが、どういう機材やソフトを使用されていますか。

彩歌さん:カメラは、私物のスマートフォンとGoPro Hero 9 で、マイクは使っていません(以前は使っていました)。映像の質はこれだけでも十分です。自転車のメカ同様、機材に関しても疎いので一眼レフのようなカメラからは逃げている状態です(笑)。編集ソフトはFinal Cut Proです。映像業界ではAdobeが主流のようですが、初心者が気軽に始めるならFinal Cut Proで十分です。学割を使ってもAdobeは毎月料金が発生するので今は手が出せませんが、ゆくゆくはAdobeも自在にこなせる編集スキルも身につけたいです。

Final Cut Proでの実際の編集画面。

——小学生でも、好きなYouTuberの動画を見様見真似でそれっぽく作る子がいますが、動画を作り続けてきた経験上、特に彩歌さんが気をつけていることは何ですか。

彩歌さん:「常に新しいコンテンツを作ること」に人一倍のこだわりを持っています。真似なら誰だって簡単にできます。重要なのは企画の質です。むしろ真似されてやっと一人前ぐらいに考えています。意外と驚かれるのですが、同じ業界よりも全く別ジャンルのYouTuberさんから勉強させてもらうことの方が実は多いです。むしろ自転車YouTuberはサラッとしか見ておらず、自転車とは関係のない動画からの方が学びは多く、学んだことを生かすことも楽しくてたまらないです。これが先程お話しした「向上心」にも関わってくるのかもしれません。

——自転車業界の発信するものはプロモーション全体にわたって斬新なものは少ないので、他業界を参考にするのは納得がいきます。しかし「真似されてやっと一人前」という点は見習いたい姿勢ですね。チャンネル登録者数の目標は10万人という記述を見ました。そこへ向けて練っている秘策はありますか。公開できる範囲で結構です!

彩歌さん:これといった特別な秘策はありません。これはYouTuberあるあるですが、意外な動画が跳ねることが稀にあります。「見られないだろうな…」と思ったら結構見られたり、逆も然りです。予想通りに進まないことの方が多いのでびっくりするような秘策は本当に持っていません。サイクリストの規模的に50万人、100万人登録を目指すのは難しいですが、YouTubeには夢があるので地道にコツコツ続けるだけです。

——ためになる話をたくさんお聞きできました。またこれからの展開が楽しみです。微力ながら応援していますので、頑張ってください!

 

自分の「好き」をもっと発信していきたい

——今日は色々ありがとうございました。ところで本当のところ、自転車って乗っていてどうですか?ブログや動画配信のことは抜きにして、純粋に何のために自転車に乗っていますか。

彩歌さん:純粋に「楽しいから」ですね。自転車に乗っていると本当に色々な「出会い」があります。人に限らず、新しい道、景色、お店など。何気ない景色でもふと足を止めて写真を撮ってみたり、人生で絶対に入らないようなお店にあえて入ってみたり、日常が豊かになる感覚があります。自由で何にも縛られずに自転車と体が一体化したように感じることもあります。

彩歌さん:自転車を始めたおかげで旅がさらに楽しくなりました。自分の「好き」をもっと見つけられました。この気持ちを動画で発信していきたいです!今回はありがとうございました!

 

*参考LINK
 YouTubeチャンネル「サイクルガジェットTV」
 Blogメディア「サイクルガジェット」

*この記事で紹介している情報は、2021年12月時点の取材に基づいています。

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