フランス発のサイクルブランド、EKOI(エコイ)。ツール・ド・フランスをはじめとする世界最高峰のレースでトッププロに選ばれる一方、フランスではビギナーから幅広いサイクリストに親しまれています。
EKOIのブランドアンバサダーを務める元プロロードレーサー、別府史之氏は、いつ、どのようにEKOIと出会い、その魅力を知ったのか。
前編では、アラフィリップをきっかけに変わったEKOIへの印象から、実際に製品を使って感じたクオリティ、トッププロとの関係、そして世界へ広がるEKOIの現在まで、そのブランドの背景と魅力について話を聞きました。
EKOIを意識したきっかけは、アラフィリップだった
私がEKOIを強く意識するようになったのは、ジュリアン・アラフィリップがEKOIのサングラスを使っているのを見たことがきっかけでした。
当時、EKOIというブランド自体はもちろん知っていました。ただ、それまで私の中では、どちらかというとエントリー層にも手が届きやすいブランドというイメージだったんです。それが、クイックステップの選手たちが使い始めて、「え、EKOIってそんなブランドだったっけ?」と。
特にアラフィリップがEKOIのサングラスを掛けているのを見たときは、かなり印象に残りました。それまで持っていたブランドイメージと、トッププロが使っているという事実との間に、少しギャップを感じたんです。
ツール・ド・フランス2019でマイヨジョーヌを着るジュリアン・アラフィリップ
EKOIがトップレベルのプロ選手に使われるようになった背景には、それ以前からの積み重ねもありました。2009年のツール・ド・フランスでは、フランス人選手のブリス・フェイユがEKOIの製品を使ってステージ優勝。その後は、フランスを代表するトップ選手の一人であるロマン・バルデや、フランスのプロチーム、AG2Rの選手たちもEKOIを使用するようになりました。
AG2R・ラ・モンディアル(当時)所属のロマン・バルデ(写真は2018年)
そして、私の中で大きな転機になったのが、アラフィリップとクイックステップでした。「EKOIって、こういうところまで来ているんだ」と、改めてブランドを意識するようになりました。
フランスでは、サイクリストなら知らない人はいない
フランスでは、EKOIはかなり身近なブランドです。私はフランスに住み始めて26年になりますが、サイクリストの間では、EKOIは昔から広く浸透しているブランドだと感じています。
特に2009年、2010年頃から、EKOIのサングラスやヘルメット、ウェアを身につけている人をよく見かけるようになり、私自身もブランドを強く意識するようになりました。価格が手頃だったこともあって、これから自転車を始める人にも選ばれていましたし、一般のサイクリストにも広く普及していたと思います。
地中海沿岸を望む南仏、コート・ダジュール地方にて(写真は2022年)
一方で、フランスではEKOIが単なるエントリーブランドとして知られているわけではありません。テレビCMなどでブランドを知っている人も多く、自転車に乗らない人でも名前を聞いたことがある。フランスでは自転車が一つの文化として根付いているので、身近な人がEKOIを使っていることも多いんです。
そうしたフランス国内での認知をベースに、EKOIはベルギー、イタリア、スペインなどヨーロッパ各国へ広がり、現在ではイギリスやアメリカ、オーストラリア、日本にも展開しています。
ブランド名の「EKOI」も、最初から世界で展開することを考えて付けられた名前だと聞いています。フランス語の発音だと「ウコイ」に近くなってしまうので、どこの国でも「EKOI」と読んでもらえるようにしたそうです。
フランスではすでに当たり前の存在だったEKOIが、プロ選手への供給や海外展開を通して、さらに世界へ広がっている。そういうブランドなんだと思います。
実際に使って、エントリーブランドのイメージが変わった
私自身がEKOIを実際に使い始めたのは、2020年です。フランスのプロチーム、NIPPO DELKOに所属していたときに、まずサングラスをスポンサーしてもらったのがきっかけでした。
そこで実際に使ってみて、それまで持っていたEKOIのイメージが大きく変わりました。特にサングラスは、ドイツの光学メーカー、ZEISS(ツァイス)とレンズを共同開発していて、プロ仕様の製品としてもしっかり作り込まれている。単に価格が手頃というだけではなく、トッププロが使うことを前提に、細かな部分まで考えて製品を作っているんだと分かりました。
その後、EKOIの本社を訪れる機会があり、CEOのJC・ラテル(ジャン=クリストフ・ラテル)氏とも話をしました。そこで感じたのが、EKOIは価格だけを武器にしているブランドではなく、トッププロの意見を取り入れながら製品を進化させているブランドだということでした。
NIPPO DELKO所属時代の別府氏
トッププロとの信頼関係が、ブランドアンバサダーにつながった
EKOIの本社を訪れたとき、CEOのJC・ラテルから「あなたのキャリアは素晴らしい」と言ってもらったことも印象に残っています。
その後、NIPPO DELKOからEFエデュケーション・イージーポストへ移籍した際には、EKOIとシューズの契約をすることになりました。そこで改めて感じたのが、EKOIがトッププロとの関係をとても大切にしていることです。
本社には、ロマン・バルデやジュリアン・アラフィリップ、フィリップ・ジルベール、クリス・フルームといった、世界のトップレベルで活躍してきた選手たちが訪れていました。サインをしに来る選手もいて、まるでトッププロの集まる場所のような雰囲気だったんです。
EKOI創業者兼CEO JCラテル氏と
そうした選手たちが、実際にEKOIの製品を気に入って使っている。そして、使った感想や要望を直接EKOIに伝えている。そこで初めて、「なるほど、EKOIの製品がプロ選手に支持されているのは、こういう理由があるんだ」と分かりました。
私自身、長年ワールドチームに所属し、当時のトップクラスの製品を使用してきました。そうした経験を生かして、EKOIの製品についても「ここはこうしたほうがいい」といった意見を伝えるようになりました。
製品についてアドバイスできる立場として、より多くの人に快適に使ってもらえる製品を目指し、アジアンフィット(ユニバーサルフィット)のようなフィット感に関することも含め、さまざまなフィードバックをしてきました。
EKOI側も、そうしたプロとしての経験やフィードバックを受け止めてくれる。選手が実際に使い、意見を伝え、それを製品に反映していく。その関係があったからこそ、私もEKOIのブランドアンバサダーとして関わるようになったのだと思います。
ツール・ド・フランスからトライアスロンまで広がる存在感
EKOIは現在、ツール・ド・フランスのような世界最高峰のロードレースでも、多くのトップ選手が使用しています。レースを見ていて、EKOIというブランドを知らなかったとしても、選手が使っているサングラスやヘルメットを目にしたことがある人は多いと思います。
一方で、ここ数年はトライアスロンの分野でも存在感を高めています。EKOIが本格的にトライアスロンへ力を入れ始めたのは、3〜4年ほど前からです。
EKOIの本社があるフランス南部のフレジュスでは、トライアスロンの大会も開催されています。さらに、アイアンマンのグローバルパートナーとして、ヘルメットやサングラス、シューズ、ペダルなどを展開しています。
World Triathlon Long Distance Championship(2024年)
私も昨年、アイアンマン南北海道に行ったのですが、そこで驚いたのが、トップクラスのトライアスリートたちがEKOIを知っていたことです。ロードレースの世界だけで知られているブランドではなく、トライアスロンの世界でも着実に認知が広がっているんだと実感しました。
ロードレースからトライアスロンへ。さらにヨーロッパだけでなく、アメリカ、オーストラリア、日本などへ。EKOIは、特定の競技や地域にとどまらず、世界中のサイクリストやアスリートへ広がっているブランドだと思います。
MTBシーンでのEKOI / 写真は2020年 KMC-Orbeaチーム所属のダビ・コレスキー
レーシングだけではない、幅広いラインナップ
EKOIというと、ロードレースのイメージが強いと思います。でも、実際にはかなり幅広い製品を展開しています。
ロードレースだけでなく、トライアスロンやグラベル、ランニング向けの製品もありますし、女性向けのウェアも充実しています。最近は、レース用と一般のサイクリスト向けの商品を分けて展開するなど、より選びやすいラインナップになってきました。
特にウェアは、レーシングウェアだけではありません。普段のライドにも使いやすいデザインや、少しカジュアルなアイテムも増えています。女性向けのウェアでは、元プロロードレーサーで現在はスポーツジャーナリストとして活動するマリオン・ルースが、一部のデザインに関わっています。
ヘルメットも、空力性能を重視したレース向けモデルから、普段使いしやすい形状まで種類があります。サングラスやシューズ、ウェアなども含めて、用途に合わせて選べるのがEKOIの面白いところだと思います。
プロのレースで使われているからといって、すべてがプロ向けというわけではない。ビギナーから経験豊富なサイクリストまで、それぞれのスタイルに合わせて選べる幅広さがEKOIにはあります。
手に取れば分かる、価格以上のクオリティ
EKOIの魅力の一つは、やっぱり価格と品質のバランスだと思います。
実際に使ってみると、素材の質感や作りもしっかりしています。EKOIは価格が手頃な製品が多いですが、だからといって品質を妥協しているわけではありません。プロ仕様ではない製品にもきちんとした素材やパーツが使われています。
特におすすめしたいのがビブショーツです。パッドにはイタリア製のものを採用していて、長時間乗ってもお尻が痛くなりにくい。実際に使った人からも、「パッドが良かった」「擦れなかった」という声を聞きます。
もちろん、EKOIの中にも価格の高い製品はあります。でも、実際に使ってみれば、その価格に見合った品質であることは分かってもらえると思います。
私自身、プロ選手として長くさまざまなブランドの製品を使ってきました。その経験から見ても、EKOIは価格だけで判断してほしくないブランドです。まず一度、実際に手に取って使ってみてほしいですね。
プロ選手のフィードバックが製品を進化させる
EKOIの製品開発で特徴的なのは、トッププロの意見がかなり直接的に反映されていることです。
例えばヘルメットなら、空力性能はレースで大きな意味を持ちます。少しでも空気抵抗を減らすために、プロ選手から「ここをもう少しこうしたい」という細かな要望が出て、それが製品の形状や仕様に反映されていく。
使いやすさについても同じです。BOAダイヤルの操作性や、重量を抑えるためのバックルの形状など、実際にレースで使う選手だからこそ気づく部分があります。そうした細かなフィードバックの積み重ねが、最終的な製品につながっています。
そして、ワールドツアーのチームに供給されている製品も、基本的には一般販売されているものと同じです。チーム専用としてデザインやデカールが変わることはありますが、中身まで別物というわけではありません。
プロ選手が実際に使い、意見を伝え、それをEKOIが製品に反映する。そのサイクルがあるからこそ、一般のサイクリストもプロが使っているのと同じクオリティの製品を手にできる。そこはEKOIの大きな魅力だと思います。
頭からつま先まで揃えられる、EKOIというブランド
EKOIは、ビギナーからトッププロまで、幅広いサイクリストに使ってもらえるブランドです。
ヘルメット、サングラス、ウェア、シューズ、ペダルまで、サイクリングに必要なものを頭からつま先まで揃えられる。ここまでトータルで展開しているブランドは、実はそれほど多くありません。
私自身が特におすすめしたいのは、サングラスやヘルメット、そしてウェアです。例えばサングラスなら、Aero Lightは軽くて使いやすく、レースでも普段のライドでも合わせやすい。ヘルメットも、レース向けのエアロモデルから普段使いしやすいモデルまで揃っています。
また、アンダーウェアやアームウォーマー、シューズカバー、グローブといったアクセサリー類も、実際に使ってみると品質の高さを感じてもらえると思います。
フランスのEKOI本社にあるショールームでは、商品を実際に試して、そのまま全身EKOIで揃えていくお客さんもいます。プロ選手や自転車業界の人が訪れることもありますが、それだけではなく、普通のサイクリストが自分のスタイルに合わせて選べるブランドなんです。
日本ではまだ「EKOIってどんなブランド?」という人も多いと思います。でも、知らないというだけで選択肢から外してしまうのは、少しもったいない。まずは一つでも実際に手に取って、EKOIのクオリティを知ってもらえたらと思います。
まずは手に取って、EKOIを知ってほしい
日本ではまだ、EKOIを知らないサイクリストも多いと思います。でも、ヨーロッパではビギナーからトッププロまで、本当に幅広い人がEKOIを使っています。
私としては、日本でももっと多くの人にEKOIを知って、実際に使ってもらいたいですね。ツール・ド・フランスのような世界最高峰のレースで使われている製品でありながら、一般のサイクリストが手に取りやすい製品もたくさんあります。
FUMY BEPPU Collection
最初からすべてEKOIで揃える必要はありません。サングラスでも、ヘルメットでも、ウェアでもいい。まず一つ使ってみれば、価格だけでは分からないEKOIの良さを感じてもらえると思います。
自転車を始めたばかりの人から、長年乗っている人まで、EKOIにはそれぞれに合った製品があります。プロのためだけのブランドではなく、すべてのサイクリストに向けたブランドです。
EKOIはフランスから世界へ広がってきました。日本でも、まずは「こういうブランドがあるんだ」と知ってもらうところから始まればいいと思っています。実際に手に取って、使って、そのクオリティを感じてもらえたらうれしいですね。