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チャレンジタイヤの新章を紐解く -New Criterium RS-

  • #ロードバイク
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ブランド発足から30年足らずの若いブランドながら伝統的な製法で高品質タイヤを作り続けているチャレンジ。

シクロクロス界では「チームエディションソフト」と呼ばれるチューブラータイヤが現在も世界中のエリート選手の活躍を支えています。イタリアのレーシングタイヤブランドがどのような挑戦をおこなっているのか、大幅アップデートが施された最新ロードモデル”クリテリウムRS”をご紹介する前に、チャレンジをより詳しく知っていただくために少し時間を巻き戻して、チャレンジタイヤの軌跡に触れたいと思います。

・チャレンジタイヤの起源 -CLEMENT [クレメン]-

ツール・ド・フランス5回、ジロ・デ・イタリア5回、世界選手権3回という記録は出場回数ではなく優勝回数という、カンニバル(人喰い)と呼ばれた男エディ・メルクス。

チャレンジの前身となるタイヤブランド「CLEMENT(クレメン)」の創業は今から150年近く前の1878年、フランス人のギュスターヴ・アドルフ・クレマン・バヤールによって設立されました。その後、20世紀に入って拠点をイタリアに移してからは、自転車競技用タイヤの製造に注力しロードレース業界を席巻。ケーシングにシルクを原料とした「クリテリウム・セタ」はエディ・メルクスやフェリス・ジモンディが愛用し、グランツールやクラシックレースにおいてチューブラー時代に一番多く表彰台に登ったタイヤといっても過言ではないぐらい、多くのライダーが使用していました。

しかし、1995年にイタリアの大手タイヤメーカーがクレメンを買収。大量生産される加硫ゴム製タイヤを販売するブランドへと変化しましたが、その時にクレメンのハンドメイドタイヤ製造工場を引き取ったBRAVO社が、2000年にチャレンジというブランド名でクレメンの製法を踏襲した商品の販売を開始するのが歴史の始まりです。

クレメンはチューブラー時代に他を圧倒した高品質タイヤブランドで、その製法をチャレンジが現在のテクノロジーを加えながらアップデートして現在に継承しています。その質の高いライドフィールをもたらしてくれるのがハンドメイドシリーズです。

・ハンドメイドだからこそ味わえる性能

天然ゴムの最大産出国であるタイに構える自社工場で、ベテランの職人たちが手作業で製造するハンドメイドシリーズ

自転車だけでなく自動車やオートバイも含め現在流通しているタイヤのうち、実に99%以上が熱加工で一体成形されるバルカナイズドタイヤ(合成ゴムに充填剤を混ぜる加硫ゴムタイヤ)で、自転車競技の世界でもバルカナイズドタイヤが主流となっています。その一方で、チャレンジが手がけるハンドメイドタイヤは、熱加工をおこなわない伝統的な製法を用いるので高機能素材(天然ゴム、コットン、ポリエステルなど)を使用できるのが特徴です。バルカナイズドとハンドメイドの違いについて、タイヤの各部位の製法や素材を比較しながら見ていきます。

ケーシング

ケーシングの原料となるのがこの織布。チャレンジではコットンがホワイト、ポリエステルはタンがマテリアルカラーとなります

ケーシングとはタイヤの土台となる部材で、強度を保つために繊維素材で作られたシートをゴムでコーティングしたものです。ベースとなる素材はナイロン、ポリエステル、コットン、シルクの順に細く高品質になり、細い繊維ほどTPI(Thread Per Inch : 1平方インチあたりの繊維密度)を高くすることができるので、TPIが高いほどゴムの含有率を減らしても強度を維持することができます。

一般的なバルカナイズドタイヤ(加硫ゴムタイヤ)は全ての部材が加硫ゴムで一体成形されており、TPIが低いタイヤは強度を繊維素材ではなくゴムそのもので補っているケースがほとんどです。加硫ゴムの含有率が高いので外部からのダメージには比較的強くなりますが、柔軟性が低く転がり抵抗が高くなり振動吸収性が下がる傾向にあります。

一方、高TPIのタイヤほど軽さとしなやかさ、コシの強さを高次元で両立することができます。その中でもチャレンジのハンドメイドタイヤは、熱加工に向かない高品質繊維とラテックス(天然ゴム)を用いることができるので、クラストップのしなやかさを持つケーシングを作り上げます。

トレッド

高精度のカッティング、接着技術によってハンドメイドながら優れた転がりの軽さをもたらします

タイヤが地面に接地する部分のことをトレッドと呼びます。一般的なバルカナイズドタイヤ(加硫ゴムタイヤ)はケーシングとトレッドが石油由来の合成ゴムで一体化しているものがほとんどですが、伝統的な製法のハンドメイドタイヤはトレッドだけを製造してケーシングと接着します。チャレンジのハンドメイドタイヤに使用されるトレッドは天然ゴムを主原料としており、ウェットコンディションでのグリップ力の高さ、転がり抵抗が少ないことが大きな特徴です。

また、チャレンジのハンドメイドタイヤには、その競技特性や走行環境に合わせてトレッドの素材を細かく調合するので、より高いパフォーマンスを発揮することができます。部材ごとに理想の品質を追求できるのがハンドメイドタイヤの利点であり、スピードはもちろん荒れた路面での振動吸収性の高さや安心感の高いグリップ力など、上質なライドフィールを重視するライダー向けのタイヤです。

・チューブラーの特長をチューブレスタイヤにも

チューブラーとは

インナーチューブをケーシングで完全に包んで管状になったタイヤ規格で、専用のホイールに接着剤を用いて装着します。最近では目にすることも少なくなってきたチューブラーですが、クラシックバイク愛好家だけのこだわりの品ではなく現在も競技の世界で採用されており、シクロクロスやトラックレース、ロードレースで未だ根強い人気を誇ります。理由は、その構造による優れた走行性能にあります。

バルカナイズドクリンチャーやチューブレスレディの中には製造段階から断面が湾曲した形状で作られるものが多く、左の図のように若干U字の断面形状となるので直進時とコーナリング時で接地面積や荷重時の変形に差が生じることがある

リムにセットした状態のクリンチャーやチューブレスのタイヤ断面が電球のような形状をしているのに対して、チューブラーの断面形状はほぼ真円です。加硫ゴムタイヤは断面がU字に成形されているものが多いので、リムに装着した際に断面が真円になりにくいのが特長です。直進時、コーナリング時、荒れた路面、ブレーキング時などいかなる状況でも外部からの影響(荷重や路面の障害物など)に対して一定の変形率と、それに伴う安定した接地面積をもたらす点でチューブラーの真円断面が優位になり、結果的に転がり抵抗を低く抑えて車体の挙動を安定させることが可能になります。

チューブラーに限りなく近いクリンチャー

チャレンジのハンドメイドクリンチャーやチューブレスレディは、かつてオープンチューブラーと呼ばれていたように基本的にチューブラーと同じ工法で製造しています。チューブラーと同じ部材を用いて、チューブラーが最後の工程でケーシングを縫合して管状にする代わりに、クリンチャーはケーシングの両端でビードを巻くという構造です。ビードとはタイヤとリムを嵌合させるための部材で、そのタイヤとリムの間でインナーチューブを膨らませるのがクリンチャーの仕組みです。チューブラーのような真円の断面形状とはならないものの、予め断面がカーブした形状で成形されるバルカナイズドタイヤと比較してより円形状に近いことや、チューブラーと同じ高品質部材を使用していることから、チューブラーの特性に近いクリンチャータイヤとなっています。この製法はチャレンジに限ったものではなく、他にも複数のイタリアンメーカーが現在も手掛けており、同様に高品質タイヤとして支持されています。

新ETRTO規格 -ハンドメイドチューブレスレディ誕生へ-

チューブレスタイヤを運用する上で、タイヤとリムが正しい寸法で製造されているかどうかはとても重要です。数年前まではタイヤの規格を司るETRTO (European Tyre and Rim Technical Organization)とホイールの規格を司るISOと2種類の規格が存在し、更に各メーカーが打ち出す自社規格の乱立でタイヤ幅やビード長が不安定な状況となっていました。更に昨今のワイドリム化によって、急速に普及していたチューブレスに至ってはビードが短くて装着できない、エア漏れが解消できないなどの問題が浮上してきました。

ETRTO付近に表示されている700x27cの”700″という数字はホイールにタイヤを装着した時の直径(mm)をあわらします

そこで、タイヤサイズに合わせた適正リム幅の設定を新ETRTO規格に盛り込むことによって、これらの問題を大幅に解消するに至りました。例えば新規格の25c幅のロードタイヤを15mm幅のリム(旧規格の基準値)に装着すると、タイヤ幅がおよそ23mmになってしまいます。新規格で定められている想定リム幅の19mmで25cとなるようにタイヤが設計されているためです。この規格の改良によってホイールとタイヤの組み合わせに迷うことなく、適正のタイヤサイズを導けるようになりました。

27mm幅のロード用タイヤは内幅19mmのリムに装着した際に適正幅となるよう設計されています。このように異なる幅のリムに装着すると表記サイズから寸法が変わってしまいます

そんな時代の変化に順応する形で、チャレンジが2019年に満を持してリリースしたのがハンドメイドチューブレスレディタイヤです。従来のハンドメイドクリンチャーの製法を踏襲し、新規格に準拠した商品をロード、グラベル、シクロクロス用と順にリリースしました。

そして2023年、ロード用のトップモデルであるクリテリウムは最新のテクノロジーを詰め込んでハンドメイドチューブレディへと進化しました。チューブレス時代に打ち出すフラッグシップについて詳しく見ていきましょう。

・ロードバイクタイヤの新フラッグシップ “CRITERIUM RS

創業当初からのチャレンジの理念は「プロ、アマ、自転車愛好家全てのライダーにプレミアム体験を提供できるタイヤを開発すること」。そして現在、このクリテリウムRSでロードバイクのプレミアム体験を再構築します。スピード、グリップ、耐久性を高次元で融合させると同時に、ハンドメイドならではの洗練されたコントロール性と振動吸収性を両立させることを目指します。そのために、これまでチャレンジが培った技術や機能をアップデートして、CRITERIUM RSに搭載しました。

350tpiコアスパンコットンケーシング

これまでシクロクロスのエリートライダー限定で供給されていたケーシング素材”350tpiコアスパンコットン”を始めて量産モデルに採用。クラス最高品質の高密度コットン素材に必要最低限のラテックスラバーコーティングを施すことで、従来品以上に軽くてしなやかなタイヤへと進化しました。

スマートプライムコンパウンド

トレッドは従来品からパターンが変わっただけでなく、コンパウンド素材自体も新素材が採用されています。グラベルのハンドメイドチューブレスシリーズで数年前から導入している”スマートプラスコンパウンド”では、耐久性・耐候性を高めながら天然ゴム素材の強みである転がり抵抗の低さ、グリップ力、振動吸収性の高さを持ち味にしていました。

今回新たに開発した”スマートプライムコンパウンド”は、転がりの軽さや柔軟性、振動吸収性を損なうことなく市場に流通している他社の競合モデルより約50%ほど耐パンク性を高め、そしてドライとウェット両方のコンディションでグリップ性能を高めることに成功しました。

PPSGANZO(ピーピーエスガンゾ)

チャレンジが誇る耐パンクプロテクション機能をCRITERIUM RSにも搭載しています。ケーシングのしなやかさを損なわず、薄くて軽いプロテクションベルトをトレッドとケーシングの間に挟み込むことで、トレッドを貫通するような異物を踏んだ時もケーシングを保護する働きをします。

チェイファービードプロテクション

リム側のカーボンビードフックとの摩擦からタイヤを護るための保護膜でビード周辺をコーティングしています。この黒い帯状の保護膜はビードがリム側のフックにしっかりかかっているかどうかを確認するための視覚的な目安にもなります。

ZYLONビード

従来のアラミド素材に比べて2倍以上の強度・弾性率をもつ有機繊維”ザイロン”をビードに採用しています。伸びやキレに強くパンクの発生は元よりパンク発生時もリムからタイヤが外れにくいのが特長です。

チューブラーも新たにラインナップに追加!

チューブレスレディに加えて新たにチューブラーもラインナップに加わりました。専用ホイールのリリースも減少傾向にあり、ロードレースでの使用率が下降の一途をたどるチューブラーですが、ここに来てチャレンジがトップモデルでリリースする理由は明確です。それはチューブラーがプレミアムな体験を得るための最良の選択であると信じているからです。フックレスリムの登場により、チューブレスがチューブラーに匹敵する軽さと真円に近い断面形状を手に入れたとしても、チューブラーの転がり抵抗の低さや運用レンジの広さに及ばないとして、ワールドクラスのレースに向けてチャレンジがチューブラーをリリースし続ける理由がここにあります。

チャレンジのラインナップで最速、そしてプレミアムなライドフィールが得られる、ロードカテゴリーの新しいフラッグシップモデルをブランドの歴史やアイデンティティと共に紹介しました。
ファミリービジネスで経営するチャレンジはロードレースの大舞台では露出がほとんどありませんが、走りの質にこだわるロードレーサーや世界トップクラスのシクロクロッサーが使い続ける確かな品質がそこにあります。

昨今、自動車業界でも脱炭素に関連して脱石油や低燃費化の観点から天然ゴムを原料としたタイヤが発売される動きもあり、チャレンジのハンドメイドタイヤはエコという観点でもプレミアムな体験をもたらすと言えるでしょう。

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