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自転車は車道のどこを走る? 「道路の左側端」と車道外側線、矢羽根の意味を調べてみた
2026.05.22
自転車青切符制度で注目される「道路の左側端」。車道外側線、路肩、路側帯、そして矢羽根の意味を、警察庁・国交省への取材をもとに徹底検証。
2026年4月、改正道路交通法の施行で、自転車にも青切符制度が導入された。こりゃあ大変だ!?ってことで、それに関連してSHIFTAの記事でも自動車による自転車の側方通過距離に関する話題をお届けした。
まずお伝えしたいのは、前の記事が掲載されたあと、3月中旬に警察庁から自動車が自転車の側方を通過する際の側方距離とスピードの目安が発表されたことだ(警察庁HPより)。
それまで道交法では、自動車による自転車の側方通過に関して「十分な間隔」がないときは「間隔に応じた安全な速度」で通過する(道路交通法18条3項)、ということだけが定められていた。でも、じゃあ十分な間隔って何メートル? 安全な速度って何キロ?ってことは不明瞭なままだった。
それがこの発表により、側方間隔は「少なくとも1メートル程度」をあけ、それができないときは「時速20キロメートルから30キロメートル」で運転しましょうという「目安」が明らかになった。その基準数値の是非はともかく、あいまいだった表現に「目安」ができたことは一歩前進なんだと思う。

出典:警察庁HPより
でね。
ここで気になっちゃったのが、いや前から気になってはいたんだけどあえて目をつむってしまってたのが、この道路交通法18条3項に続く18条4項にある「前項に規定する場合においては、当該特定小型原動機付自転車等は、できる限り道路の左側端に寄つて通行しなければならない。」ってやつ。つまり自転車は自動車に追い越されるとき、なるべく、いやできる限り左側に寄ってねということなんだけど、これには数値基準も「目安」もないんです。できる限りってどのくらいギリギリまでってこと?
もっと言うとだよ。
道路交通法第18条第1項ではこんなふうに定められている。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び一般原動機付自転車(中略)にあつては道路の左側に寄つて、特定小型原動機付自転車及び軽車両(中略)にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、(中略)道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
つまりですね。自動車は道路の左側を走る、そして自転車を含む軽車両は道路の左側端を通行せよということ。ここでも道路の左側端というだけで、具体的な数値は示されていない。
で、今日のお題ですわ。道路の左側端ってどこなんだ? つまり自転車は道路のどこを走ればいいんだ!?ってことなんです。

目次
そもそも道路ってどこからどこまでなのか
道路の左側端ってどこ?という話の前に、そもそも「道路」ってどこからどこまでを指すのか?ということを確認しておかないといけません。
道路は車道、路側帯または歩道を含む部分を指す。つまり歩道も「道路」なんです。
あれ? じゃあ自転車は歩道を通れってこと? いえいえ。みなさんも御存知の通り、自転車は基本車道を走らなくてはなりません。道路交通法にはこうある。
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(中略)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。
自転車は軽車両、つまり車両なので、やっぱり自転車は基本的に車道です。
次に出てくるのは、じゃあ車道ってどこからどこまでなんだ?というギモン。
よく車道の端に排水口のフタみたいなのやグレーチングがあったりするよね。とっても走りづらい。でもあそこって車道なの?
例によって警察庁に質問してみた。
私「いつもお世話になってます!またまた質問で申し訳ないんですが車道ってどこからどこまでですか?」
警察庁「法第2条第1項第3号において、車道とは、「車両の通行の用に供するため縁石線若しくは柵その他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分」と定義されています。
また、歩道については、法第2条第1項第2号において、「歩行者の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によつて区画された道路の部分」と定義されており、路側帯については、法第2条第1項第3号の4において、「歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたもの」と定義されています。
このため、例えば、車道の両側に歩道が設けられている道路においては、一般的には、車道と歩道を区画する2つの縁石線又は柵その他これに類する工作物の間の部分が車道となります。
また、車道と路側帯が設けられている道路においては、一般的には、2つの路側帯を表示する道路標示の間の部分が車道となります。」
明快だ。つまり、歩道がある道路に関しては、歩道の縁石の内側(車道側)、路側帯がある場合は、一般的には路側帯を表示する白線(車道外側線)から内側が車道ってことだ。路側帯がある場合は、路側帯を区画する白線から内側が車道ってことだ。なお、この記事では便宜上、この白線を一般的な呼び方である「車道外側線」と表記する。「2つの」っていうのは、道路の両側の、って意味です。

側溝のフタの上は道路なのか
ってことはですよ。歩道のある道路では、縁石の内側までが車道ってことだから、構造上は側溝やそれに類した部分もその範囲に含まれ得る。自転車は道路(車道)の左側端を通行するってことだから、その側溝の上を走れってことかい!? 一気に体温が5度くらい上がった俺だったが、その側溝の上が「道路の左側端」かどうかはまた別問題だと気づいて冷静さを取り戻した。
ちなみに俺がさっきから言ってる側溝の部分ってのは、土木用語では街渠(がいきょ)と言い、市街地の道路脇に設置された、雨水や汚水を排水するためのもの(調べました)。おもに舗装道路の縁にL型やU型などの形状で配置され、下水道へ水を流す役割を持っているということです。もちろん走りにくいという意味ではグレーチングや道路の隅にたまった落ち葉なども同様に問題となる。

そこで再び警察庁に質問。
私「自転車(軽車両)は道路の左側端に寄って通行、とありますが、一般的に左側端とは道路のどのあたりを指すのでしょうか? 「道路の左側端」の具体的な数値や目安(たとえば車道外側線の5cm程度内側等)はありますか? 」
答えはこうだ。
警察庁「法第18条第1項に規定する「左側端」とは、路肩部分を除いた道路の部分の左端のことを指します。「車道の左側端」の具体的な数値や目安については、道路状況等により異なることから、一概にお示しすることは困難です。」
道路状況が異なるので一概に示すことは困難。それはまあ予想してたんだけど、ここで気になるのは「路肩部分を除いた」ってとこ。
じゃあ「路肩」ってどこよ?ってことです。
路肩とはどこか
路肩って、よく使う言葉だけど、なんとなく道路の端っこの方、ってイメージ。調べてみると道路交通法に路肩という定義用語はない。路肩は道路構造令で定義されるもの。
道路構造令 第2条第12号によると「車道などに接続して設けられる帯状の道路部分」であり、排水・保護・緊急退避などのための構造部分を指すという。
それって俺が言ってた排水口のフタとか街渠のことじゃん!
ちなみに面白いのは、こういう道路の端っこの話だけでも、いろんな法律や基準が関わっていることだ。ひとつの車道外側線を見ても、その意味や種類は「道路標識令」で定められ、交通ルールは「道路交通法」、道路の構造は「道路構造令」、さらに設置や管理は「道路法」が担っている。道路って、思った以上に巨大で複雑な仕組みの上に成り立ってるんだなあと、ちょっと感心してしまった。
で、さらに言うと、車道外側線の外側にある、街渠ではないアスファルト舗装部分も「路肩」として扱われることがある。その部分はずっと平坦に続いているとは限らず、グレーチングや段差があることも多い。警察庁回答を前提にすれば、少なくとも通常の走行位置として想定されているのは、そのさらに内側、つまり車道通行部分側だと考えるのが自然だろう。

では路側帯と路肩との違いは何か。これは道路表示(車道外側線)の外側にあるスペースで、歩行者が通行することを念頭に設置されているのが路側帯、そうではなく単なる道路の「余地」として設けられているのが路肩、ということらしい。警察庁の担当者はわかりやすいように、あえて一般的な表現である路肩という言葉を使った、ということだろう。


自転車は車道外側線の内側を走る
警察庁回答を前提にすれば、自転車の通常の走行位置は、少なくとも車道外側線の外ではなく、車道の通行部分側だとするのが自然だ。つまり車道外側線の内側付近が基準ラインと考えるのが妥当だろう。
自転車は堂々と車道外側線の内側(車道側)を走ってヨシ、ってのが結論だ。
あとわかんなかったのは車道外側線の内側って、どこから始まるの?ってこと。車道外側線の幅は約15cm。この内側(車道側)が基準なのか、外側(歩道側)が基準なのか、はたまたセンターなのかという点。
これも道路交通法には記載がない。
おそらくそのへんが自動車を基準に作られているため、「線の内側か外側かなんて細かいこと言うなよ」ということなんだろう。でもロードバイクにとって15cmは大きな差なんだけどなー。

車道外側線のどのくらい内側を走ればいいか
そして気になるのは、その車道外側線のどのくらい内側を走ればいいのかってこと。警察庁には、具体的な数値や目安はお答えできない、って言われちゃってる。
そこではたと思いついた。
矢羽根だ。
道路に青い色の塗料で施工された矢羽根型の路面表示。よく見るよね? これは一般的に「自転車の通行空間を示すもの」と理解されている。だとすればこの矢羽根の位置がどのくらい車道寄りかを見れば、自転車が車道のどの位置を走ればいいかわかるんじゃないか? つまり「車道の左側端」がどこかを知ることができるのでは?

さっそく写真を集めた。
あれー。位置はバラバラだ。車道外側線の内側にかなり入ってるのもあれば、外側線に重なってるもの、さらには外側線の内側に完全に入ってしまった変わり種も。

矢羽根の上を走ればいいのか
そこでさっそく質問だ。おっと、この矢羽根型路面表示(以下矢羽根)は、警察庁じゃなくて国土交通省が設置しているもの。だから国交省に問い合わせてみた。
矢羽根の設置位置には何か基準があるんですか?
「『安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン』(国土交通省・警察庁)において、矢羽根型路面表示の標準仕様として、形状や配置を定めています。なお、設置に当たっては、道路や交通の状況等を踏まえ、道路管理者や警察等による協議のもとで配置等の詳細を検討します。」
この「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」ってのは、国土交通省と警察庁が合同でまとめている、自転車通行空間整備のための国の指針。もともとは2012年に作られ、その後の改定を経て、現在は2024年版が公開されている。自転車ネットワーク計画、矢羽根などの路面標示、自転車通行空間の設計、その運用・整備の考え方などが示されている。
ガイドラインにはこうある。
「矢羽根型路面表示は、歩道のある道路にあっては、矢羽根型路面表示の右端が縁石端から 1.0m 以上(路肩の一部または全部が通行の用に適さない状態である場合は、その部分を除く)の位置となるように、歩道のない道路にあっては、原則として、矢羽根型路面表示の右端が車道外側線から車線内 1.0m 離した位置となるように設置するものとする。」

矢羽根のサイズはこのガイドラインにもあるように、幅75cm、長さ150cmとされている。全国でよく見られる矢羽根のサイズはだいたいこれだ。
歩道がある場合は歩道の縁石から矢羽根の右端が100cm以上離れた位置に設置する。歩道がない場合、この矢羽根の右端が車道外側線から100cmの位置に設置する。つまり標準仕様どおりなら外側線と矢羽根の左端との間は25cm。
注意しなければならないのは、「路肩の一部または全部が通行の用に適さない状態である場合は、その部分を除く」という部分だ。つまり、グレーチングや街渠など走行困難な部分を除外して矢羽根の位置を検討する、という考え方なんだと思う。
また実際の矢羽根の設置位置に一貫性がないように見えるのも、「道路管理者や警察等による協議のもとで配置等の詳細を検討」した結果だろうか。

国土交通省はどうだ
では、肝心のところを聞いてみよう。
私「国土交通省としては、この矢羽根の位置(矢羽根の中心線上)を自転車が通行することを想定あるいは推奨していますか?」
回答はこうだ。
国土交通省「矢羽根型路面表示は、車道における自転車の通行位置の目安であり、自転車が通行することを想定しています。」
ん?と思いながらさらに確認。
私「 「自転車が通行することを想定」とありますが、これは「矢羽根型路面標示の“上を"通行することを想定している」と解釈してよろしいでしょうか?」
国土交通省「そのとおりです。」
おおー。国土交通省的には、自転車は矢羽根の上を通る、と考えているということだ。矢羽根の位置がまちまちじゃないか、という点は置いておいて、これはこれでスッキリする。自転車は矢羽根の上を通りましょうby国交省。
じゃあですよ。国土交通省といっしょになって、この「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を発行している警察庁は、どう考えているんだろう? 「道路の左側端」なんて言わずに「矢羽根があるところは矢羽根の上を通る」って言ってくれればいいのに。

警察庁はそれでいいのか
そこでまたまた警察庁に質問だ。
私「国土交通省はこう言ってますけど、警察庁としてはどのような見解でしょうか?」
警察庁「お尋ねの「矢羽根型路面表示」については、車道における自転車通行位置を自転車利用者とドライバー双方に示す必要がある場合に目安として用いるものであり、一般的に道路交通法(昭和35年法律第105号)第18条第1項に規定される、通常自転車が走行すべき場所である「道路の左側端」を示したものとなります。(後略)」
おお! 警察庁的にも、矢羽根の位置は「道路の左側端」を示したもので、「自転車が走行すべき位置」だということだ。これで納得!

自転車は道路のどこを走るか
そろそろ本日の結論だ。
・自転車は道路の「左側端」を走る。
・「左側端」は車道外側線の内側。どの程度の位置かは状況による。
・「矢羽根」がある道路では、その表示の上を目安として走行すべき。
でもなあ。
「ここを走るの、なかなか大変じゃない?」っていう位置に矢羽根が設置されていることも多い。これ、どう考えればいいんだろう。
たしかに今回の取材では、警察庁も国土交通省も、矢羽根の位置を「道路の左側端」や「自転車の通行位置の目安」として考えていることがわかった。だけど現実の道路は、幅も交通量も路面状況もさまざまだ。だから、いつでもどこでも「矢羽根の真上だけを走ればいい」と単純には言えないんだと思う。
今回、「できる限り道路の左側端に寄って通行」の「できる限り」が具体的にどの程度なのか、というところまでは迫れなかった。けれど少なくとも、一律の正解があるというより、その場その場で安全に通行できる位置を考える、ということなんだろう。
自転車は車道外側線の内側を走っていい。矢羽根があれば、その位置も走行の目安になる。だからといって、自動車の流れをまったく意識せずに走り続けていい、って話でもないだろう。
一方で、グレーチングや落下物だらけの場所に無理に寄って、ふらついたり転倒したりしては本末転倒だ。状況によっては、自動車に追い越してもらいやすいよう、一時的に車道外側線の外側へ退避気味に走る場面もあるだろうし、危険を感じたら歩道へ避難することだってあると思う。
結局のところ、自転車が安定して直進でき、自動車も安全に追い抜きしやすい位置。そのへんを、お互い譲り合いながら探っていくしかないんじゃないのかなー。

いちばん大事なこと
じつは最後にあげた警察庁の回答には続きがあった。
「なお、同条第4項における『できる限り道路の左側端に寄って通行』とは、自動車等と自転車等が相互に配慮した通行を求めるものであり、自転車等の運転者の方はできるだけ左側端を走行していただく一方、自動車等の運転者の方は、十分な間隔をとれない場合には、速度を調整して追い抜きをすることにより、自転車等の安全を確保するよう努めていただきたいと考えています。」
なんかさあ、これが結論のような気がするんですよ。
これ、なんというか、警察庁担当者の「想い」が込められた文章だって気がする。
なんかジンとくる。
自転車と自動車それぞれが自分の権利や相手の義務を主張していがみ合うんじゃなくて、お互いが安全に気持ちよく道路を通行するために、どうすればいいかを考えていく。
法律や白線の意味を突き詰めていくと、結局いちばん大事なのは「どうすればお互いに安全に走れるか」ってことなんだろう。
「左側端」が何センチかより、お互いが無事に家へ帰れることのほうが、たぶんずっと大事だ。
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