初代「WIRE CARBON」が登場したのは10年以上前。現在のフラッグシップモデル「SHOT」が誕生する以前、WIREシリーズはSIDIのレーシングラインを象徴するトップモデルのひとつとして、多くのワールドツアー選手の足元を支えてきました。
当時ツール・ド・フランスを連覇したクリス・フルームをはじめ、世界最高峰の舞台で戦う選手たちが選択したことで、WIREは高剛性・高出力対応のレーシングシューズというイメージを確立。その後登場した「WIRE 2 CARBON」では、さらに強化されたソール剛性やアッパーのホールド性能によって、アルノー・デマールやソンニ・コルブレッリといったトップスプリンターからも支持を集めました。
その背景から、WIREシリーズは長らく「SHOTよりもさらに剛性を重視したスプリンター向けモデル」という印象で語られることがありました。しかし、3代目となる「WIRE 3」では、そのキャラクターが大きく変化しています。
新しいWIRE 3は、単純にSHOT 3の下位モデルという位置付けではありません。アウトソールやフィッティングシステムなど、トップモデルと共通する最新テクノロジーを採用しながら、素材使いやデザインに独自の個性を持たせた、もうひとつのハイエンドレーシングシューズとして進化しています。
SHOT 3(上)とWIRE 3
SHOT 3がトップアスリートの要求に応える、正統派レーシングモデルであるのに対し、WIRE 3は同等レベルのパフォーマンスを備えながら、SIDIらしいイタリアンクラフトマンシップやチャレンジ精神を前面に押し出したモデルです。
メッシュという大胆な素材選択、その構造を活かしたデザイン、そしてカラーリングによる表現力。WIRE 3は性能だけでなく、所有する楽しさまで追求したレーシングシューズと言えるでしょう。
アウトソール|SHOT 3に迫る剛性と、効率的なパワー伝達
WIRE 2(上)とWIRE 3のアウトソール
歴代WIREシリーズの特徴だった高剛性ソールは、WIRE 3で新たなステージへ進化しました。
前作WIRE 2 CARBONに採用されていたVENT CARBONソールから、新たに「R2FCソール」へ変更。STIFFNESS INDEXは11を誇り、SHOT 3に採用されるR1FCソールの12に次ぐ、SIDIラインアップでもトップクラスの剛性を持つフルカーボンソールです。
WIRE 3の大きなポイントは、単純な剛性競争ではなく、剛性・快適性・フィット感のバランスを高い次元で成立させている点です。
SHOT 3と同様に採用された「NEXUS BRIDGE構造」により、ペダルまでの距離を短縮することで効率的なパワー伝達を実現。また、アッパーをソール内部へ巻き込む構造を改良することで、足全体を包み込むようなホールド感を高めています。
クリート取り付け位置は前作の固定式から変更され、前後10mmの調整幅を持つ仕様へ進化。ライダーそれぞれのポジションやペダリングスタイルに合わせたセッティングが可能になりました。
さらに、前後に配置されたエアインテークによって、走行中の足裏の熱を効率的に排出。長時間のライドでも快適な環境を維持します。
ヒールパーツは交換可能な設計となっており、長く愛用できる点もSIDIらしい特徴です。
ダイヤル|NUUN 001cが生み出す軽量性と洗練された操作感
WIRE 3では、クロージャーシステムも大きく刷新されました。
前作WIRE 2 CARBONでは、トップモデルであるSHOT 2Sと同じTECNO 3 PUSHダイヤルを2カ所に配置し、そのうちひとつをタン中央部に設置する特徴的なデザインを採用していました。高い固定力を生み出すこのシステムは、WIREシリーズが持つ高剛性・高出力対応というキャラクターを象徴するものでした。
一方、WIRE 3ではSHOT 3と同じ「NUUN 001cダイヤル」へ進化。ダイヤル本体をコンパクト化することで軽量化を実現するとともに、シューズ表面からの突出を抑えることで空気抵抗の低減にも貢献しています。
また、単に小型化しただけではなく、操作性にもこだわった設計となっています。ダイヤルは細かなテンション調整が可能で、ライド中でもグローブを着用した状態で確実に操作できます。
さらに、ダイヤル位置も先代のタン中央部から一般的なアウトサイドポジションへ変更。フローティングインステップとの組み合わせによって、甲部分だけでなく足全体を立体的に包み込むフィット感を実現しています。
SHOT 3と同じフィッティングシステムを採用していることからも分かるように、WIRE 3は単なるセカンドグレードではありません。トップモデルと共通する最新技術を取り入れながら、メッシュアッパーやカラーリングなど、WIRE 3ならではのデザイン性を融合させたモデルへと進化しています。
アッパーデザイン|Matrix®メッシュが生み出す機能美
WIRE 3を象徴する最大の特徴が、アッパー前面に採用された「Matrix®テクノロジー」のメッシュ素材です。
前作WIRE 2 CARBONでは、マイクロファイバーを中心とした高強度素材によるヘビーデューティな外観で、頑丈かつホールド力の高さが特徴でした。一方、WIRE 3では通気性に優れたメッシュファブリックを大胆に採用。性能だけでなく、見た目にも大きな変化をもたらしています。
このメッシュ素材は、単なる軽量化や通気性向上を目的としたものではありません。高強度ポリアミド繊維(ナイロン)とアラミド繊維(ケブラー)を組み合わせて編み込むことで、優れた引き裂き強度と耐摩耗性を確保。レーシングシューズに求められる高い耐久性とホールド性能を維持しています。
さらに、アッパー内部には「FIRMOR Xテクノロジー」による補強リブを配置。柔軟性を持つメッシュ素材でありながら、優れた引張強度によりペダリング時に足をしっかりと支え、パワーロスを抑える高いフィット感を実現しています。
また、メッシュ素材とマイクロファイバーのオーバーレイ、補強リブのレイヤリングによって生まれる独特の表情もWIRE 3の魅力です。強度を確保するための構造そのものをデザインの一部として取り入れ、機能美へと昇華しています。
内部が透けて見えるシースルー感や、素材の重なりを活かしたカラーリングは、トップモデルSHOT 3とは異なるWIRE 3ならではの個性です。優れた通気性を発揮する一方、気温の低い時期には冷えを感じやすいため、15℃を下回る環境ではトゥカバーなどを活用することで、季節を問わず快適な使用が可能です。
機能を追求した結果として生まれた大胆なデザイン。それこそが、イタリアブランドらしい遊び心とクラフトマンシップを感じさせるWIRE 3最大の魅力と言えるでしょう。
ヒールアジャスター・インソール|トップモデルと同じ快適性
ヒールアジャスターもSHOT 3と同じく、工具不要で調整可能なダイヤル式へ進化しました。
左右を個別に調整できるため、足の形状に合わせた細かなセッティングが可能。ヒール内部の形状もかかとに沿うよう設計されており、かかとの浮きを抑えながら効率的なペダリングをサポートします。
インソールもトップモデル同様、低反発素材を用いたメモリーソール仕様へ変更。足型に合わせて沈み込むことでシューズ内部での足の動きを抑え、快適性と安定性を向上させています。
性能とデザイン、その両方を追求したWIRE 3
Matrix®テクノロジーによるメッシュ構造は、優れた通気性だけでなく、高い強度とホールド性能を兼ね備えています。
かつてスプリンターたちに愛されたWIREシリーズの力強さは受け継ぎながら、WIRE 3では剛性だけでは語れない新しい価値を追求しています。
SHOT 3が勝利を求めるトップアスリートのための正統派レーシングシューズだとすれば、WIRE 3はそこにSIDIらしいデザイン性と創造性を加えたモデル。
高性能素材を美しく見せる発想、機能をデザインへ昇華するイタリアらしいものづくり。WIRE 3は、性能と個性を両立したSIDIの新たなデザインアイコンです。
→ WIRE 3製品ページ