90年代の初代登場以来、30年以上にわたって世界中のサイクリストに選ばれてきたSIDIのベストセラーモデル「GENIUS(ジーニアス)」。その最新モデルがGENIUS X(ジーニアス エックス)です。
トップモデル「SHOT」で培われた最新技術を取り入れながら、レースで求められる性能とロングライドでの快適性を高い次元で両立。さらに新ラスト「ミレニアムフィット」の採用によって、日本人にもよりフィットしやすい一足へと進化しました。
本記事ではGENIUS Xの各部を詳しく解説するとともに、高通気仕様のバリエーションモデル「GENIUS X VAPO」もあわせて紹介します。
R3CCアウトソール|適度なしなりが生む、全方位なペダリング性能
GENIUS Xには、新開発の「R3CCアウトソール」を採用しています。トップモデルのような突出した高剛性ではなく、レースで求められる反応性とロングライドでの快適性を両立する絶妙なバランスが、このソール最大の特徴です。
R3CCアウトソールは、前作と同じカーボンと樹脂を組み合わせたカーボンコンポジット構造を採用。軽量性と耐久性を両立しながら、幅広いライダーが扱いやすい性能を目指して設計されています。
剛性指数は「STIFFNESS INDEX 6」。トップモデルSHOT 3の半分の数値ですが、単純に柔らかいという意味ではありません。スプリントやヒルクライムでしっかり踏み込める芯のある剛性を備えながら、適度にしなることでペダリングリズムを作りやすく、長時間のライドでも脚への疲労を軽減してくれます。
※ SIDIのSTIFFNESS INDEXは、数値が高いほど剛性が高く、ペダリングパワーを効率よく推進力へ変換できることを表しています。しかし、ロードシューズは単純に剛性が高ければ優れているというものではありません。使用シーンやライダーの脚力に応じて最適な剛性は異なり、GENIUS Xの「6」はレースで求められる反応性と、長時間でも疲れにくい快適性を高いレベルで両立するために設定されたバランスの良い剛性と言えます。
ホビーレーサーにとって必要十分な剛性を備えているため、クリテリウムなど強度の高いロードレースから、週末のロングライドやファンライドまで、その性能を幅広いシーンで体感できるでしょう。
トップモデル譲りのクリート調整機構とベンチレーション
R3CCアウトソールで大きく進化したポイントのひとつが、クリート位置の調整幅です。
従来モデルでは取り付け位置が固定でしたが、GENIUS XではSHOT 3と同じく前後10mmの調整が可能になりました。前乗り・後ろ乗りなど好みのペダリングスタイルに合わせやすく、ロードレースからロングライドまで理想的なクリートポジションを設定できます。
もうひとつの進化がベンチレーション性能です。
前作ではクリート周辺に水抜き穴が設けられている程度でしたが、新しいR3CCアウトソールでは前足部に大型エアインテークを採用。走行風を積極的にシューズ内へ取り込み、インソール裏を通って排出することでシューズ内の熱や湿気を効率よく逃がします。
さらにヒールパーツは従来同様にボルトオン式を採用。摩耗した際には交換できるため、一足を長く使い続けられる点もSIDIらしい魅力です。
NUUNダイヤル|小型化によって操作性もデザインも進化
GENIUS Xには、SHOT 3と同じ最新の「NUUNダイヤル」を採用しています。
従来のTECNO 3ダイヤルよりもコンパクトになったことで軽量化を実現しただけでなく、シューズ全体がより洗練された印象になりました。また、アルミ製レバーの採用によって耐久性も向上し、小型化による空気抵抗の低減にも貢献しています。
レバーを倒したままでも操作しやすい形状なので、走行中に足元を見ることなく細かな締め込み調整が可能。さらに万が一ダイヤルが破損した場合でも簡単に交換できるため、製品寿命を延ばせるのもSIDIならではの設計思想です。
アッパーデザイン|快適性と空力性能を両立するシームレス構造
GENIUS Xではアッパーデザインも大きく刷新されました。
従来モデルにあったつま先のエアインテークを廃止し、全体にパンチング加工を施したマイクロファイバーアッパーを採用。素材そのものの柔軟性に加え、履き口やヒール周辺もよりしなやかになったことで、ペダリング中の足の動きに自然に追従し、高いフィット感を生み出します。
また、各パネルをシームレスにつなぎ合わせたことで、デザインはよりミニマルで洗練された印象に。段差を減らすことは見た目だけでなく空気抵抗の低減にもつながり、ロードシューズとしての性能向上にも貢献しています。
SIDIの象徴とも言えるInstepストラップも、新しい「Anatomical Instep」へ進化しました。
足の甲は高さに個人差が大きい部位ですが、このストラップは甲の高さに合わせて長さを無段階に調整でき、ダイヤルだけでは難しいフィット感の微調整を実現します。甲全体を面で包み込むようにホールドすることで局所的な圧迫を抑えながら、シューズと足との一体感を向上。長時間のライドでも快適な履き心地を支える、SIDIならではのフィッティングシステムです。
ミレニアムフィット|SIDIが目指した、新しいスタンダード
GENIUS X最大の進化と言えるのが、新しいラスト「ミレニアムフィット」の採用です。
従来のレギュラーフィットは、平均的な日本人ライダーに対してやや細身の設計だったため、足長に合わせると幅が窮屈になり、ハーフサイズ上を選ぶケースも少なくありませんでした。
そこでSIDIが新たに開発したのがミレニアムフィットです。母指球からつま先にかけて横方向だけでなく縦方向にもゆとりを持たせることで、つま先を自然に動かせる快適性を実現。一方で、かかと周りのホールド感は従来同様にしっかり確保されているため、ペダリング時の一体感は損なわれていません。
これまで「SIDIは足に合わない」と感じていたライダーでも、足の実寸に近いサイズを選びやすくなったことは大きな進化と言えるでしょう。
一方で、サイズ表記は従来と同じでも実際の適応サイズは変更されています。例えば41サイズでは、レギュラーフィットの25.3cmに対し、ミレニアムフィットでは25.8cmへと約5mm長くなっています。従来のSIDIユーザーが買い替える際は、サイズチャートを確認することをおすすめします。筆者自身も、これまでよりハーフサイズ小さいサイズがベストフィットでした。
また、ミレニアムフィットによって幅広い足型をカバーできるという考えから、従来ラインアップされていたMEGAフィットはGENIUS Xでは設定されていません。
GENIUS X VAPO|真夏のライドを快適にする高通気バージョン
GENIUS Xには、優れた通気性を追求したバリエーションモデル「GENIUS X VAPO(バポ)」もラインアップされています。
GENIUS X(上)とGENIUS X VAPO
前作「GENIUS 10 KNIT」の後継モデルにあたるVAPOは、ロードレースから真夏のロングライドまで、暑い環境でより快適に走るために開発されたモデルです。
最大の特徴は、新採用の「オープン3Dメッシュアッパー」。異なる2種類のメッシュファブリックを組み合わせることで、従来モデル以上の通気性を実現するとともに、アッパー表面を滑らかに仕上げることで空気抵抗の低減にも貢献しています。
前作のGENIUS 10 KNITでは、シューズ前半部の両サイドに強化ナイロンメッシュを配置し、直接風を取り込むことで冷却効果を高めていました。一方、GENIUS X VAPOではアッパー全体の構造を見直すことで、より効率的に熱を逃がしながら、空力性能まで向上させている点が大きな進化と言えるでしょう。
通気性の高いメッシュ素材は、一般的にはホールド力が低下しやすいという課題があります。
そこでVAPOには、SIDI独自のFIRMORテクノロジーを採用。メッシュの内側に補強構造を組み込むことで、ダイヤルを締め込んだ際のアッパーのヨレを抑え、しっかりとしたフィット感とペダリング時の安定性を実現しています。
デザイン面でも通常モデルとの差別化が図られており、モノトーンを基調とするGENIUS Xに対し、VAPOはピンクゴールドのNUUNダイヤルやアウトソールのラバー部分にアクセントカラーを採用。メッシュ素材の軽やかな質感と相まって、スポーティでありながら上質な雰囲気を演出しています。
近年は夏場の猛暑が当たり前となり、ライド中の暑さ対策は快適性だけでなく、安全にサイクリングを楽しむためにも重要な要素となっています。ヘルメットやサイクリングウェアと同じように、シューズの通気性を高めることも、暑い季節を快適に走るための有効な選択肢と言えるでしょう。
GENIUS X|SIDIのスタンダードが、さらに完成度を高めた
30年以上にわたり世界中で愛され続けてきたGENIUSは、単なるロングセラーモデルではありません。トップカテゴリーで培われた技術を取り入れながら、多くのサイクリストにとって最も使いやすく、長く付き合えるロードシューズを目指して進化を続けてきた、SIDIを象徴する存在です。
GENIUS Xでは、新しいR3CCアウトソールやNUUNダイヤル、Anatomical Instep、そしてミレニアムフィットなど、最新世代のテクノロジーを惜しみなく投入。レースで応える反応性と、ロングライドでも疲れにくい快適性を高いレベルで両立しています。
さらに、交換可能なヒールパーツやダイヤルを採用することで、一足を長く使い続けられる設計も継承。性能だけを追求するのではなく、「良いものを修理しながら長く使う」というSIDIのものづくりの思想は、現在も変わることなく受け継がれています。
デザイン、性能、耐久性、そしてMade in Italy。ロードレースで速さを求めるライダーはもちろん、休日のロングライドを快適に楽しみたいサイクリストまで幅広く応えてくれるGENIUS Xは、まさにSIDIのスタンダードにふさわしい一足と言えるでしょう。30年以上にわたりSIDIで最も多くのライダーに選ばれ続けてきた理由は、この一足を履けばきっと実感できるはずです。
■ GENIUS X
White
Black
■ GENIUS X VAPO
White
Black