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バイクのサイズも変わる?おおやようこ氏が主催する自転車乗り向けのサイクリストヨガ
2023.04.14

サイクリストヨガをご存知だろうか?ヨガといえば、独特のポーズで心身のリラックスやストレッチを行うイメージがあるが、それをサイクリストに向けたのがサイクリストヨガだ。パフォーマンスアップだけではなく、クランク長の長さまで変わることもあるというサイクリストヨガ。その発案者でありインストラクターを務めるのは、タレントやライターとしても輪界で幅広く活躍されている おおやようこ氏。今回は、サイクリストヨガのメリットや、現在の活動などを教えていただいた。

ー自転車とヨガの組み合わせは意外なように感じますが、この2つを結びつけたきっかけを教えてください。
ロードバイクに乗ることに夢中になって、実業団登録して全日本の出場権まで取ってトレーニングをしていたんです。その時にオーバーワークで腰を痛めてしまい、一定以上の出力になると踏めなくなってしまいました。病院で診てもらってもはっきりとした原因もわからずに、整体だったり、柔道整復師さんに診てもらったりと、試行錯誤しながら2年ほどトレーニングから離れてしまった頃にヨガに出会いました。ヨガは自分の身体の中から使い方を意識して整えるんですけど、今までとは違って内側から変えていける感覚がありました。外からやってもらうと思っていたものを、中からやってみたら変わる感じがしたのが衝撃的で。それからはヨガを習いに行くというよりは資格をとって、先生をやりたいなと。先生がやろうとしていること、教えようとしていることが何かを知りたいと思って、RYT 200というヨガインストラクターの養成講座を受けました。
ーヨガを習うだけではなくて、根本的な理論から理解したかったということですか?
私自身が学校の教員をしていたこともあって、生徒は先生の考えを通したものを教えてもらうという意識がありました。なので、もともとの考え方や理論、どういった勉強をしたら体にアプローチができるのかというのに興味を持ってしまって。そこで学んだことを活かして、私と同じように体に不調を感じるサイクリストの助けができればと思い、プログラムを考え、資格を取得した後から「サイクリストヨガ」という名称でレッスンを開始しました。
ーではサイクリストヨガは おおやさんが考えているんですか?
インストラクターの資格を取るのに200時間、勉強するんですよ。私自身が、自分の体を良くしたいという思いで資格を取る中で、私以外にも体の痛みがあるサイクリストや、ゆくゆくはプロチームの選手にも役に立ちたいなと思いました。サイクリストのニーズに合いそうだなとか、自転車に乗っていると硬くなる筋肉の部分にアプローチできるなということを抽出しながら勉強していました。それを1時間のレッスンの形にしてみたのがサイクリストヨガです。
ーサイクリストヨガとはどういったものですか?
心と体を繋げていく作業であることは一般的なヨガと変わりありません。サイクリストがこれからも快適に自転車に乗り続けられるように、自身の体を知って、整えていくレッスンです。具体的には、肩関節や股関節周りの狭まった可動域が広がるようにポーズをとって緩めていきます。

ーヨガというと難しいポーズがあったりとハードルが高そうですが…。
参加者ほほとんどが40代以上の男性ですよ。ポーズを取ることが目的ではないので、取り組みやすいポーズを中心にどんな方でも抵抗なく参加できるような内容にしています。初めての方はライトなヨガをやりますし、定期レッスンをしていた時には、肩や股関節など重点的にやりたい箇所に合わせて行っていました。弱虫ペダルサイクリングチームでレッスンさせていただいた時には、勝つために役に立つ何かが知りたかったり、すごく疲れている時のリカバリーとしてヨガをしたいというニーズもありました。リカバリーや柔軟性、呼吸によってメンタルを高めたりと色々なことができるので、ニーズに合うものをレッスンさせてもらいました。受けてくださる方によって内容は全然変わります。
ーけっこう幅広いんですね。ストレッチ的なもののイメージでした。
ストレッチのイメージで全然いいと思いますよ。ヨガのポーズをストレッチとして、呼吸を通してリラックスしてもらえると、それだけで前傾姿勢が楽になることもあります。股関節の可動域が広がるのでクランク長が多少長くても大丈夫になることもありますよ(笑)足が短いわけでもないのに、クランク長を短くしている人は股関節周りがすごく硬い方も実際にいらっしゃいます。
ーもともと体を動かすことは好きだったんですか?
中学校、高校と陸上をやっていました。社会人になってから、ホビーでもいいから大会に出られるようなスポーツをしたいなと思っていた時に自転車に出会って、かっこいいなと思いました。

ーかっこいいなと思うきっかけはあったんですか?
大学生の時のアルバイトがきっかけですね。スターバックスでアルバイトをしているときに、朝イチでロードバイクで来るお客さんを見ていてかっこいいなって。あとは、アルバイトの同僚が当時、マウンテンバイクの選手で活躍していて、楽しいよって聞いていたのもありますね。
ー学生時代の陸上の経験も影響しているんですね。
前に進む系のスポーツが割と好きなんです。コツコツ頑張ると結果が出るところが相性がいいのかもしれません。自転車を始めた頃にヒルクライムにハマりました。坂を登ったらすっごいキツくて進まないのが逆に面白いみたいな。最初は自転車の空気圧が低いことにも気づかずに坂をのぼっていて、それからヒルクライム大会にも出るようになって、だいぶ夢中になりましたね。
ーよく行くコースはありましたか?
秩父方面はよく走りに行っていましたね。私が好きなのは奥武蔵グリーンラインという、一帯が山岳地帯のコースで、そこの尾根づたいをずっと走っていました。30kmで1000mのアップがあるようなコースをぐるぐる走ります。

ーそれは一人で行っていたんですか?
チームでも行ったりはしていたんですが、9割くらいは一人でしたね。一人で自分と向き合いながら山を登るのがけっこう好きかもしれません。
ーサイクリングで好きなタイミングはありますか?
私は登っている時が好きです。登り終えた時の景色もいいとは思うけど、どっちかっていうとはぁはぁ言いながら周りの景色を見て、森の中を抜けていくときに、景色もいいなって思うし、心も癒されるし、苦しいけど、なんか幸せを感じるみたいな。
ーかなりストイックですね。
そうですね。なので、今はあまり行かないようにしています。そっちに火がつくとまたハマってしまうかもしれないので、今は子育てと仕事を優先しつつ「人生を充実させるために目標をもとう!」と、カペルミュールのいそださんと「おおやといそだのハルヒルチャレンジ2023」という企画に楽しみながら取り組んでいます。


ーMTBやDAHONのK3にも乗られていますよね。
MTBは、子育てで時間の取れない中でも夫婦で交代で楽しめるのがいいですね。新しいことにチャレンジする楽しさもあるので、家族でMTBに染まっています。去年は富士見パノラマに行きました。息子はまだパークを走れないですが、バーレーを持っていって一緒に楽しんでします。自転車はいろいろな遊び方あるので楽しいですよね。形を変えればいくらでも楽しめるというか、歳を重ねたら重ねたで楽しみ方があるよなと思うことが増えました。

ー以前は小学校の先生をされていたと伺いました。サイクリストヨガのインストラクターに転向された、きっかけや原動力を教えてください。
教員時代から平山さん(SHIFTA記事参照)のされていた「ポタガール埼玉」にいたんですよ。そこで自転車に関するイベントに出させてもらう中で魅力的だなと思って、自転車に関わる仕事をしてみたかったんです。自分自身も自転車に乗っているし、自転車が好きでライフワークにしたいという気持ちが強くあって。少しずつ自転車に関係する発信も増えていくなかで、両立も難しいし、やはりお金を頂戴するかたちでないと責任をもって大きな仕事をすることは難しいと感じたので、身軽な20代のうちにチャレンジしようと思いました。後悔をしたくない思いもありましたが、結果、正解だったかなと思います。
ー仕事の面白さはどこにありますか?
好きを仕事にした、というところかもしれません。自転車が好き、ヒルクライムやロングライドイベントが好き。人と出会うことが好き、人に教えることも好き、人前に立つことにも慣れている。記事を書くことも、動画をつくることも好きです。仕事は人の役に立つことが大事だと思います。私は自転車を楽しむ側の方々の役にも立ちたいし、イベント主催者さんやメーカーさん、ショップの方々、自治体の方々の役にも立ちたいんです。自転車を楽しみ、盛り上げる方の役に少しでも立てているなら光栄だなと思いながら仕事をしています。もちろん仕事なので大変なことはあるけれど、それも含めて楽しいですね。

ー最近、力を入れていることはなんですか?
YouTubeですね。映像でまとめられるので、役に立つ情報を出しやすいと感じています。今は以前にも少し出していた「超初心者向けの動画」を多く出しています。自転車ってすごいなって思いました。楽しみ方を変えれば、いくらでも楽しめますよね。
ー最近行ったおすすめの場所はありますか?
この間は茨城県水戸市に行ってきました。偕楽園っていう梅が有名な公園なんですけど、徳川斉昭さんが造ったらしいんです。武士だけじゃなくて、民も含めてみんなで楽しむためにと「偕楽園」という梅園を作ったそうです。面白いなって思いました。自分のためだけにやってちゃ駄目なんだっていうのを端々に感じるんですよ。みんなで良くしなきゃいけないんだなっていう雰囲気があって。走ってみないと分からなかったことですね。
イベントに参加するのもすごく好きなんですけど、改めてサイクリングすると知らなかった魅力を発見します。それをどうにか知ってほしいし、行ってみようかなと思ってくれる人にちゃんと届くような発信ができたらいいなと思いながらやっています。

ー最近はラジオもされていますよね?
standFMを始めました。以前、「おおやさんはラジオやってないの?」と聞かれたことがきっかけです。動画よりも少し肩の力を抜いた「自転車に関するおしゃべり」ができたらいいなと思って始めました。トークの中で、いやでも自分はこう思うなとか、音声だけだからこそ想像できる楽しさがあるような、緩やかなラジオができたら面白いかなと思っています。
ー反響はどうですか?
意外といいですね。ディープなファンが広がっているようです。イベントでもラジオ聴いてますって、こそっと言われます。YouTubeは結構、YouTube見てます!って言ってくれるんですけど、ラジオはすっごいこっそりですね。面白いです(笑)。
ーそれでは最後に、おおやさんの今後の目標について伺います。今、新しく計画しているチャレンジはありますか?
直近はいそださんとやっているハルヒルチャレンジですね。自分が頑張っていた時の記録ほどではないけれど、目標がないとだらけてしまうからって目標を立てようと話しています。春先に、よし、ちょっと走れるようになったぞとか、ちょっと体絞れたぞっていうのを喜びにするぐらいな感じの緩やかな目標立てて、すごい緩やかなチャレンジをしてます。でも、なんかいいですよ。ちょっと食べすぎたときとかに、止めとこうかな、ハルヒルあるしなみたいな。生活が前向きになる感じがします。
あとはいそださんと旅に出たいです。親子旅にもチャレンジしたいですね。

ー行ってみたい場所はありますか?
ここに行きたいというよりは、仕事で声がかかって行ってみたらめっちゃ良かったっていうことが結構あるので、どこか新しいところに行ってみたいです。中国地方は行くことが多くて、通い続けてすごく好きになりました。分水嶺とか見つけて喜んでいます。
ー分水嶺ってなんですか?
山陽と山陰のどちら側に水が流れるかの境目で広島側に分水嶺があるんです。そこを越えるもうちょっとで島根だ、とかその境目を楽しんでます。日本中にあるらしいですよ。道に書いてあるので、分水嶺探しやってみてください(笑)。

ー今後、達成したいと思っているような目標を教えてください。
目標というほどではないのですが、初心者に寄り添える投稿は続けていきたいです。初心者の方は、最初は本当に何もわからないし、それが当然だと思います。かつてそうだった方から「初心者の頃、おおやさんの動画で勉強しました」と言ってもらえることが多いですが、そういった声をもらえると嬉しいです。
あとは、乗り方を変えながらでも、生涯自転車を楽しんでいたいです。そのためにも育児中の今は無理しすぎず、できることをコツコツと続けていきたいですね。
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