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challenge サポートライダー 鈴木来人選手インタビュー

鈴木来人選手はオフロード2種目で国内トップレベルで戦う数少ない選手です。特にシクロクロスにおいては国内トップレベルの成績を残しており、その活動は国内に留まらず、積極的に海外のレースへも参加しています。

今回は、シクロクロスにおいて最も重要な要素の一つであり、レースの勝敗を左右するタイヤ選びのポイントやこだわりを鈴木選手に伺いました。

チャレンジタイヤとの出会い

――タイヤは地面と直に接するパーツなので、レーサーにとってかなり重要な選択になってくると思います。鈴木選手にもこだわりがたくさんあるのだろうと思いますので、いろいろ詳しく聞かせていただければと思います。
シクロクロスの競技を始められてどれぐらいですか?

競技として本格的にやり始めたのは高校2年生が最初のシーズンのはずなので、たぶん丸6年ぐらいになります。15歳の時に遊び感覚でレースに出場して、ちゃんとやってみたいと思ってジュニアカテゴリー1年目から本格的に参戦を始めました。

――現在はチャレンジのチューブラーでレースを走られていますが、今まで使ったタイヤの遍歴を教えてください。

最初はクリンチャータイヤを使っていました。程なくして自分の家の近くの自転車屋さんが、ちゃんと競技としてやるんだったらチューブラーを使ったほうがいいんじゃないかと教えてもらって。競技始めた最初の年の全日本選手権に合わせて、グリフォを1セット買って使い始めたのがチャレンジとの出会いです。

ジュニア時代の鈴木選手

――競技始めた最初の頃からチャレンジのチューブラーを使っていたんですね。

そうなんです。その時はチューブラー1セットだけ用意できて、でも自転車は自分のものと父親のお下がりと2台あって、片方はクリンチャーでもう片方はチューブラーっていうような使い方をしていました。

2019年マキノ高原での全日本選手権の直後に急に世界選手権に行ける話になって、そこで知り合いから自転車を2台借りることになり、グリフォ3セットでレースに臨みました。

――3セット全部グリフォで?

全部グリフォ。グリフォがあればとりあえず走れるからって言われて。

タイヤチョイスにこだわる

――なるほど。ジュニアカテゴリーの始めの頃から類稀な力を発揮していたことで、そのような境遇も経験できたということですね。
コースのコンディションやコースの特性などで、その時々でタイヤのチョイスを変えられていると思いますが、例えばセオリー通りじゃない使い方で、気に入っている使い方ってありますか?

使い始めがそうだったからという訳ではないですがグリフォが好きで、国内だとフロントにグリフォを入れて、リアにシケインを入れるとか。リアのトラクションはそれほど必要なく軽いほうがいいけど、横方向にギュッと流れたときのグリップが欲しいってときに、このセッティングがけっこう多いですね。そもそも、グリフォの出番がかなり多くて、けっこうマッド(泥)コンディションでもかなり低圧にしてグリフォ走ったりというのが多いです。

――なるほど。よほどスピードコースでない限りは、多少泥があるコースでも、あまりノブの高いタイヤを使わずグリフォで粘るみたいなかんじですか。

そうですね。本当のスピードコースはデューンを使って、そうじゃなければグリフォメインで考えて、シケインを入れるか。泥だったらベイビーライムスを。本当にマッドコンディションならライムスを入れるっていうような、グリフォを基準でセッティングを考えます。

――結構、オーソドックスといえばオーソドックスな運用かもしれないですね。

ただ、本当にマッドコンディションのときは、細い30mmのライムスを使うのが好きですね。泥の中は挙動が分かりにくくなることがあるので、わだちに突っ込むときも細いほうが正直突っ込みやすいと個人的には思っています。

――マニアックな流れになってきたついでにノブ(トレッドのブロックパターン)についてお伺いしたいと思います。ノブの向きには順目や逆目がありますが、独自のこだわりはありますか?

グリフォは順目です。逆にしたこともあったんですけど、明らかにトラクションがかからなくなるのでやめました。

――他の種類のタイヤではどうですか?

シケインだけどっちにするか考えて装着します。それぐらいですね。

フロントはこっち向き、サイドノブの長細いほうが前。リアはその逆にセッティングします。Y字の二股が前のほうが、トラクションがかかるイメージです。

僕はあまりリアを滑らせる走り方をしないので、リアはできるだけグリップ、サイドグリップがあるようにして、トラクションを稼いでるっていうイメージ。

ベイビーライムスとライムスは、前後輪ともノブの二股を前にしてトラクションを稼ぎます。

シケインの特徴的なサイドノブの応用で、鈴木選手はフロントタイヤは転がりの軽さを重視し、リアタイヤはトラクションを重視したセッティングを採用。

――全ラインナップをホイールに装着しておいて、そのコンディションに応じて取り替える感じですか。

基本的には全て使えるようには毎回用意してレースに持っていきます。どんなコンディションでも全部持っていって、コースを見てタイヤを選んで試走してまた変えたりしながらセッティングを煮詰めていきます。

一番多かったときは、ホイール10セット車に積んで持っていきました。でも、多い選手はもっと多いです。

タイヤを知る -性能を引き出すために-

――ロードと違ってタイヤの選択がかなり重要なのでそうなってきますよね。あと、体格によってベストな空気圧が変わりますが、鈴木選手はどうですか?

コンディションによって本当に大きく変わるんですけど、まずグリフォだと、僕は1.3barを基準に考えます。シケインが1.4bar、ライムス、ベイビーライムスはちょっとグリフォに近いんですけど、ライムスだと本当にグリップさせたいので1.1barを基準に、それぞれコンマ5を上げるか下げるかっていうようなイメージですね。

――1.1は運用できる水準なんですか。

一番下げたときで0.9barまで下げました。

――0.9!?

はい。ジュニアの2年目、スイスでの世界選だったんですけど、泥が深過ぎて一切グリップが効かなくて。空気圧を下げて、とにかくタイヤをつぶして、ちょっとでも接地面積を稼がないと埋まってしまうようなコンディションだったので。段差とかのリム打ちは抜重を駆使してリムを当てないようにして、何とかバーストさせずに走りました。

――タイヤの性能を限界まで引き出す上で、バイクコントロールやライン取りもうまくやってリスクを減らさないとってことですね。

そうですね。低圧でサイドノブまで使い切れるのがチューブラーのメリットなので。そこまで使わないともったいないというか、チューブラーを履いている意味がないと思います。

そこまで使うには、技術も必要なところもあると思います。

海外の選手の走り方を見て自分と何が違うかって言われたら、タイヤの使い方が違うと思います。僕が同じような空気圧で、同じようなセッティングで走ったとしても、ヨーロッパの選手のタイヤのサイドウォールの汚れ方が違うんです。そこがタイヤの旨みで、シクロクロスは如実に速さに出てくるんじゃないかなと思ってます。

――ヨーロッパの選手は完全にタイヤを使い切ってる?

使い切ってると思います。

あとチャレンジのチューブラーは、サイドの柔らかさがより際立つみたいな感じですね。そこが良いところなんですが、アクアシールっていう釣具の補修用ボンドがあるんですけど、自分はそれを塗ってサイドの張りの調整に活用しています。主な用途はタイヤのふんどしに水が入ってそこから剝がれるのを防止するためですが、塗りの厚さをちょっと変えてサイドウォールの硬さを調整して、跳ね返ってくる強さを調整しています。

ただ、塗り過ぎると、硬くなってチームエディションの意味がなくなってしまうので、そこは自分の好みというか、経験でベストの厚さを見極めていきます。

――タイヤに限らずバイク本体もご自身でセッティングされていますか?

そうですね。基本、自分は自転車も自分で組みますし、タイヤも自分で貼り付けます。レース前後の整備は自前の工具で自分でやりますね。

――すごいですね……
少し話が変わりますが、2年ほど前にチャレンジがハンドメイドシリーズでシクロクロスのチューブレスレディをリリースしました。今まで使われたことありますか?

ハンドメイドのチューブレスは今年の2月の世界戦に持って行きました。ホイールを6セットを持っていったんですけど、そのうち1セットをチューブレスにしました。予備にも使えるし、チューブラーに対してタイヤ交換がしやすく、ロードタイヤを持って行って履き替えてロードトレーニングに使用できるのがその理由です。結局レースでは使わなかったですけど、試して使った印象ではチューブラーと比べてやや硬さを感じます。多分、ビードを保持する関係で硬めにできているのかな。エア圧を落としたときも、チューブラーと比較して0.2〜0.3barぐらい硬く感じるイメージですね。

なので、チューブラーと同じ特徴と思わずに違うもの、違うエディションだと思って使っています。チューブレスとしての性能はかなり高いと思いますし、チューブラーに何かあったらチューブレスを投入しても大丈夫だなっていうのは、この間の世界戦で感じたところの一つです。

チューブラーとチューブレス共にエリートクラスに採用される高性能タイヤだが、タイヤの構造だけでなくトレッドやケーシングのマテリアルの違いから、それぞれ異なる特徴を持つ。

レースにまつわるetc…

――6年間競技されてきた中で、いろいろチャレンジのタイヤを使っていただいていますけど、これとこれの間ぐらいのパターンのトレッドだったら理想的だなというような、具体的にイメージを持たれたことはありますか?

グリフォの、もうちょっとサイドノブが高いやつが欲しいなと思ってます。例えばグリフォのセンタートレッドに、ベイビーライムスのサイドノブを合わせるようなイメージ。

自分がグリフォが好きでグリフォばっかり使うので、そういうタイヤがあればもうちょっとマッドセクションやキャンバーセクションが多いコースにも対応できるのになっていうイメージですかね。

そうすると、それを軸に考えてライムスにいくかグリフォか、またはシケインにいくかっていうような考え方になると思います。よりオールラウンドに使えるようなイメージです。

――MTBのタイヤもいろんなパターンがあってチョイスの妙もあると思うんですけど、ロードはほぼ選択肢ないですよね。

そうですよね。オフロードは、特にタイヤで順位が決まるって言っても過言ではないぐらい。実際、レース会場行ってコールアップされるときに、横の選手と何を話してるかっていうと、ほぼ100%タイヤの空気圧とトレッドの話。

――今から走るっていうタイミングで(笑)

レース会場行って、録音器置いておくとみんなの会話が聞けると思いますよ。

「何気圧入れた?」「きょうタイヤ何でいくの?」っていうのが挨拶。でも、レース会場行って「何使うの?」って聞いたときに、嘘をつかれたりするときもありますね。「今日、これで行く」て聞いてたのとスタートの時のタイヤが違ってたりとか。

――レース前から勝負が始まってるってことですね(笑)
最後に、今シーズンについてお伺いします。昨シーズンまでアンダーでしたが、今年からエリートカテゴリーでの参戦です。まだシーズン入るまで時間ありますが、意気込みというか目標にしていることがあればお願いします。

今年はとにかくエリート1年目なので、と言ってもアンダー23もエリートもほとんど同じレースを走りますが、基本的には全日本選手権を軸に考えて、そこで勝ちたいなと。最低でもポディウムに上がれるように調整をしていきたいと考えています。

――昨シーズンは、どっちかっていうと世界選に軸を置いて、UCIポイントを取るような活動が軸になっていたのが、今シーズンは全日本にピークを持ってくる計画ですね。全日本選手権も12月開催に戻りますね。

当然、世界選手権っていう目標もあるんですけど、アンダーの世界選手権とエリートの世界選手権とはレベルが数段違うので。エリートに上がるといきなりマチューやワウトがトップにいるかなりハイレベルな世界になるので、まずはその遠い夢のような目標ではなく見えるところからっていうのが自分の中での目標かなと思っています。

――世界を見据えてまずは日本一を目指すということですね。今年も活躍を期待しています!

鈴木選手は、SHIFTAで取り扱い中のサイクリングシューズ「SIDI」でもサポートをしています。海外でも活躍する鈴木選手ならではの目線で伺った国内と海外のレースシーンの違いや、トップクラスのレースで活躍するプロの目から見たSIDIサイクリンシューズの使用感を伺った記事はこちらで公開中です。ぜひご覧ください。

「SIDI サポートライダー 鈴木来人選手インタビュー」
 

鈴木来人選手の主な実績

  • 2020全日本選手権シクロクロス大会 U23 優勝
  • 2021全日本選手権シクロクロス大会 U23 3位
  • 2021-22 Coupe du France Espoir 50位
  • 2021-22 UCI CX World Cup Flamannville U23 29位
  • 2022全日本選手権シクロクロス大会 U23 2位
  • 2023-2024シクロクロス全日本選手権U23 3位
  • 2023-2024シクロクロスミーティング南信州 / 清里 優勝
  • 2023-24シクロクロスミーティングシリーズチャンピオン
  • 2023-24 UCI C2 Kings CX Cup(US) 9位
  • 2023-24JCXランキングエリート5位

<取材協力>

the SOUP green&cafe

観葉植物販売とカフェ、就労継続支援B型を組み合わせた施設です。大型の倉庫を改装した店舗は明るく開放的な空間で、カフェを楽しんだり、素敵な観葉植物を購入できます。就労支援事業も行っており、観葉植物の栽培やカフェの運営を通して、障がいをお持ちの方などのパートナーさんが自立するお手伝いもしています。

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