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ハンドメイドだからこその自由なスタイル AGHARTAのバッグ作り

※この記事は2021年10月27日にLINZINEで公開されたものです。

 
簡単にスピードに乗れて長距離も走ることができるスポーツバイク(自転車)は、車体が軽い反面カゴやラックが装着されていないことが多い。スポーツバイクにはロードバイクを筆頭に目的に合わせて様々なタイプがあるが、ここ数年は空前のキャンプブームの高まりや、異なるフィールドでの走行欲求に応える形で、バイクパッキングが注目されている。また、コロナ禍で密を避けるために自転車通勤を始めた社会人や、愛車のスポーツバイクを普段のちょっとした移動にも利用したい方なども夏場の背中の蒸れや肩や腰への負担がかかるバックパックを避けて、後付けの前カゴやフロントバッグ、少量の荷物ならサドルバッグ、多めならサイドバッグ(パニアバッグ)など、多様な運搬方法を採っている。

そんな中、スポーツバイクに装着するバッグの一つとして、フレームバッグというタイプの鞄がある。トップチューブの下に吊るす筒状の細長いものから、ダイヤモンドフレームの大部分を使った大容量のものまで形状は多様だが、自身のグラベルバイク BREEZER / RADARのフレーム内側をジャストフィットに目一杯埋め尽くすフレームバッグを愛用しているのが、今回話を伺ったハンドメイドバッグブランド「AGHARTA(アガルタ)」の泉谷憲治さんだ。今回は、DAHONのミニベロ MAKOに装着するフレームバッグのオーダーをとおして、自転車用バッグのことや、AGHARTAでのオーダー方法について伺った。
 

AGHARTAで手掛けてきたハンドメイドバッグ

——以前に泉谷さんご自身のバイクに装着されたフレームバッグを拝見して、いつかは自分もお願いしたいと考えていました。AGHARTAではフレームバッグに限らず様々なバッグを手掛けられていますが、どのようなタイプのものがありますか。

フレームバッグなどが装着された泉谷さんのBREEZER / RADAR PRO

泉谷さん:身につけるタイプで小さなものでは、お札、カード、小銭がきっちり分けられるミニウォレットやポーチから、大きなものではカスタムのデイパックやバックパックまで色々ですね。変わったものでは、小型犬からフレンチブルドッグみたいな少し重たい子でもバイクに乗りながら抱っこできるドッグスリング(犬用抱っこひも)も別ブランドで作っています(Whole / Go Out Sling)。そのほか、バイクに乗ってスケートパークまで行く際に、重たいインラインスケートをしっかり固定出来るバックパックも作る機会がありました。

——手で持ち運ぶバッグですが、バイクのフロントバスケットにフィットするバッグもInstagramで拝見して面白いなと思いました。バイクに装着するタイプではどのようなものがありましたか。

泉谷さん:ハンドルバーバッグ、フードポーチから、ボトルケージ用のツールケース、トップチューブバッグ、フレームバッグ、サドルバッグ、パニアバッグと、ひと通り作ってきました。トップチューブを保護するフレームパッドなどもあります。

チロリアンテープが巻かれたフードポーチ(ステムバッグ)とハンドルバーバッグ。AGHARTAではBMXライダーとしての視点から日常から旅行まで様々なシーンで使えるものを、ひとつひとつ丹精込めて、ハンドメイドで生み出している。

——ボルト固定で尚かつ着脱がすぐにできるトップチューブバッグや、電動シフトDi2のバッテリーを入れるためにカスタムしたフードポーチなどは、ハンドメイドならではの自由な設計ですね。

泉谷さん:他では、バイクで移動しながら釣りを楽しむためのバッグとして、ロッドを入れるトップチューブバッグと、リールやルアーなどを入れるハンドルバーバッグをセットで作り、目的地に着いたらバッグを合体させて肩に掛けられるようにしました。使い手の数だけ使い方がありますから、面白いですね。

——趣味といえば、泉谷さんは長い間BMXに乗ってこられたそうですね。

泉谷さん:BMXには25年くらい乗り続けています。昔は友人で集まって大会に出たりしていましたね。小学校に入る前、まだ小さかった頃にETを観て、お年玉を貯めて買ったのがBMXでした。その後、雑誌の「モノ・マガジン」の特集でBMXを見て格好良かったので、また18歳くらいから乗り始めて今に至ります。

大会で競技する泉谷さん。Photo:杉山様

——BMXライダーの泉谷さんがハンドメイドバッグを手掛けられるようになったのは、どういった経緯でしょうか。

泉谷さん:友人とミシンで何か作りたいという話になったのが最初のきっかけの様に思います。初めは他のものを作っていたのですが、まだその頃はバイクパッキングのことは知らず、タイヤのチューブを使って鞄を作ったりもしていました。その後SNSでバイクに鞄を付けて走っているのを見て、見よう見まねで改良しだしたところから、徐々に鞄作りの世界に入り、販売すると売れるようになったので仕事として取り組むようになりました。うちの祖父が将棋の駒や能面を作る人だったので、モノづくりの家系なのかもしれません。

泉谷さんの縫製場。背面には様々な材料が保管されている。

——作品を取り扱うショップでAGHARTAのバッグに出会って購入される方も多いと思いますが、ハンドメイドのバッグをフルオーダーされるお客様はどんな方が多いですか。

泉谷さん:ファッション好きな方よりも、自分の使うものにこだわりのある方が多い気がします。皆さんからの依頼は様々なのですが、それぞれの方の欲しいものに合わせられるのが、オーダーの良さですね。

——フレームバッグをオーダーされる方の、バイクの種類ではどうでしょうか。

泉谷さん:グラベルロードとミニベロ(小径車)が半々で、まれにMTBの方もおられます。ミニベロはフレーム形状が特殊なことからオーダーが多く、あるショップさん経由ではタイレル用が特に多かったりします。

——普段からAGHARTAのバッグを店頭に置いているショップは、どちらになりますか。

泉谷さん:Cycle Mark HIMEJI(姫路市)、SPARK Scone&Bicycle(神戸市)、Direction(神戸市)、BICYCLE STUDIO MOVEMENT(大阪市)、ET Hard School Style(和泉市)、10days bicycle store(枚方市)、FLIP&FLOP(東京都足立区)などが中心となります。
 

オーダーから納品まで

——冒頭でもお伝えしましたが、以前に泉谷さんご自身のフレームバッグを拝見して、ハンドメイドだからこそ作れる、自分のバイクのフレームにジャストフィットしたフレームバッグに憧れていました。ですので、動機が不純ですが今回は用途が先にあるわけではなく、フレームバッグを作ることが最大の目的となっています。強いて言えば機能面は、スポーツ的な走りが目的ではなくコンパクトカメラで街の風景を撮りながら散策するなど、ポタリングでちょっとした小物を入れる程度で、あとは強固な鍵も入れられればいいなといったところです。ベース車体のDAHON MAKOにはボトルケージを2箇所に装着できますが、後々必要となればサドル用ボトルケージか、フードポーチをハンドルバーとステムに固定する方法を検討しますので、本来のボトルケージのスペースは残さずフレーム内側に目一杯のものを考えています。

泉谷さん:以前フレームバッグをお作りしたお客様は、キャンプツーリングに行かれた際に、フレームバッグにはクッカー、鉄板などを入れられたそうです。大きなものだと可能性は広がりますが、マチの広さ(厚み)には注意が必要です。フレームバッグによる積載では重心がバイク中央に集まるので、乗車時に違和感がないのがメリットです。

——素人発想だと、形とともに色も重要に思います。既製品だと黒色や灰色が多く、逆に派手な原色のものなどもありますが、個人的にはアースカラーで可愛らしいものや、クラシカルで落ち着いたものが好みです。車体に合うデザインがどういうものかも想像が乏しいので、制作の流れを教えてください。やはり、バッグの用途をお聞きして、使い勝手や収納方法を考えながら設計していくのでしょうか。

泉谷さん:皆さん様々なので、柔軟に対応しています。全部お任せという方から、細かいところまで全部決めてこられる方までおられます。

紙に原寸大で書かれた図や型紙が送られてくる場合もある。

——自分の場合は雨天時の走行は考えていませんが、素材についても教えてください。

泉谷さん:素材は、コーデュラ(CORDURA)ナイロンが基本となります。軽量で高強度、撥水性にも優れた素材です。更に防水性と軽さを求める場合はエックスパック(X-PAC)、他にコットンキャンパス(蝋引きした綿の帆布)を採用する場合もあります。

切り出し場の上部には様々な生地がロールで保管されている。写真左の壁面の布地は、美容師の奥様のもの。この作業場を兼用して、鞄やスカート作りを趣味で楽しまれていているそう。
奥様から布地をいただいて泉谷さんが作られたポーチ。

——料金設定はどのようになりますか。

泉谷さん:ご注文いただく際にお渡ししているオーダーシートに料金表を記載していますが、大小様々な形状のあるフレームバッグの場合、長さと高さの和によりコーデュラナイロンのスモールサイズで22,000円から、レギュラーサイズで28,600円からの2段階を基本に設定しています。そこにオプションとして、メインの反対側にジッパー付き薄めのポケットを設ける場合+1,650円、上下2層構造にする場合+2,750円、X-PACは+2,200円のアップチャージとなります(2021年10月現在、全て税込)。

——それでは実際に進めながら教えてください。

泉谷さん: まずは実車で採寸して、形を考えます。物を出し入れするジッパーの位置や、入れるもののサイズからマチの広さを考えます。フレームの太さやペダリングとの干渉も考慮し、このバイクなら5.5cmくらいまでが適当ですね。マチにはテーパーをかけることもできます。

——バッグ全体としてはフレームの内側にジャストフィットする形ですが、中で仕切って2段構造が便利かなと考えています。

泉谷さん:目一杯に作る場合でも、一番下の部分は尖って使いづらくなるのとチェーンで汚れることもあるので、少しだけ角を落として水平の底辺を設けた方が良いですね。内部の仕切りにはベルクロ(面ファスナー)を用いて、場合によっては大きなものも入れられるようにしましょう。採寸した後、スケッチで確認していただき、素材を決定して実際の縫製に進みます。

——バッグ取り付け用のストラップは、 DAHONロゴ(ブランド名)とMAKOロゴ(車種名)の部分を避けられると嬉しいです。バッグは一色ではなく、差し色の部分を設けたデザインにしたいです。

フレーム形状の採寸時にはロゴやボトルケージ用ボルトの位置も記録される。

泉谷さん: 止水ジッパーは黒色になります。差し色を何でどこに持ってくるかを考えましょう。ジッパーを差し色にするほか、ジッパーの上の細い部分や、ジッパーの端の雨避けカバー部分、その両方の生地などが考えられます。

底辺を検討する様子。

泉谷さん: バッグをフレームに取り付ける部分は、ベルクロを使用します。よくある既製品ではオスメスを合わせるだけのものが多いですが、AGHARTAではベルクロを一旦折り返して合わせることで、バッグが揺れても外れず、また傷がつかない方法を採用しています。

——他の方法を使うこともありますか。

泉谷さん:着脱に手間がかかるようになりますがオーダーによっては、バンジーコードでフレームチューブにカチカチに編み上げる方や、ボトルケージ用のボルトを利用してバッグの内側で固定する方もおられました。面白いものでは、インシュロック(結束バンド)を採用された方もおられます。

泉谷さん:実車に合わせながら。生地の色を検討してみましょう。コーデュラナイロンでは様々な色から選ぶことができます。MAKOのフレーム色に合わせてこの色をベース色にする場合、差し色をブルー系でいくなら中間色のデニムも合いそうです。

実車と合わせると、よりリアルに仕上がりを想像できる。
ベースの生地の上に置いてみた差し色4色の生地。上からロイヤルブルー、デニム、小さい四角はネイビー、明るい色がターコイズ。

実車で採寸していただき、候補カラーの生地を拝見したところで、一度じっくり考えようとその日は終了。その後メールを数回交わし、後日送られてきたデザイン案のスケッチが下。言葉だけで伝えたイメージを泉谷さんがリデザインし、提案してくれた。

その後、程なくしてメールで仕上がりの連絡があったので、 早々に日程を合わせて受け取りに。

仕上がりの連絡とともに送られてきたバッグの写真。想像よりも希望通りのルックスで感激。周囲の波状のところは、バッグをフレームに取り付けるベルクロを通す部分。自由な位置に何本でも通せるよう、バッグの上下と前後、全体に設けられている。

泉谷さんが小学生の頃にBMXで遊んでいたという公園で、説明を受けながらMAKOに装着していただいた。2段構造の仕切りにはベルクロを用いることで大きなものにも対応している。

周りにはクッション性のあるパッドが入れられているため、内容物が保護されるとともにバッグ自体も型崩れしない。
バッグをフレームに取り付けるベルクロは、自由な位置につけることができる。重量のある物を入れる時に本数を増やして対応できるように、予備も多めにつけてくれた。

バッグをMAKOに装着していただき、改めてじっくり眺めてみる。なかなか個性的で、自分らしい雰囲気になった(街で目撃されたら個人が特定されるだろう…笑)。当初シルバーっぽい色の生地を検討していたが、濃いめの色にしたことでフレーム色とメリハリがついて良くなった、と泉谷さんからもコメントをいただいた。

普段はそれほど重い物を入れる予定はないので、バッグをフレームに取り付けるベルクロはトップチューブで4箇所、その他のチューブで2箇所ずつの計10箇所で運用することに。ダウンチューブのDAHONロゴと(光で飛んでいるが)左上のMAKOロゴもうまく避けて装着できた。

自宅のバイクタワーに吊るしてみた。バッグはフレームにジャストフィットするように作られたので、バイクを引っ掛けるフックがフレームとバッグの間にうまく入るか少し不安があったが、意外と簡単に吊るすことができた。

バッグは周りにクッション性のパッドが入っているが、バイクタワーのフックを通すのが困難になるほど硬いわけではなく、鞄本来の絶妙な暖かみさえも感じる。

愛車をカスタムする方法は無数にあるが、オーダーメイドしたバッグを装着することで一気に愛着が増した。もちろん見た目だけでなく機能面でも、自分の使用シーンに合わせて使い勝手が著しく向上している。今回のベース車体はダイヤモンド形フレームのミニベロだが、オーダーメイドにはフレーム形状を選ばない自由さがある。自分のバイクに似合う、自分だけのオリジナルデザインを考えてみるのも楽しいだろう。
 

オーダーメイドの相談は

——ウェブサイトやInstagramに様々なバッグが掲載されていますが、店頭にはない自分だけのオリジナルバッグの製作はどのように注文すれば良いですか。

泉谷さん:店頭やウェブサイトに無い商品は、ブランドサイトのContact FormからのメールやInstagramのDM経由でご連絡いただきましたら、一ヶ月程でお作りいたします。掲載しているバッグをベースにカスタムもできますし、全くのオリジナルバッグの製作も相談いただけます。

——最後に、今の泉谷さんにとってのバイクの存在や、AGHARTAについて一言お聞かせください。

泉谷さん:とにかく自転車に乗った時の開放感が好きですね。特にBMXは、町なかで乗るには最高です。その開放感をそのままに、バッグを自転車につけることでストレスなく荷物を運べる、走る楽しさに便利を加えられる、それがAGHARTAの目指すバッグです。自転車に乗ることの楽しさを追求することが基本にあって、荷物があってもAGHARTAのバッグがあれば楽しく乗れる、そう思っていただければ嬉しいですね。

 

*協力 AGHARTA ブランドサイト インスタグラム
*車体 DAHON / MAKO
*この記事で紹介している情報は、2021年10月時点の取材に基づいています。

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