知る
拡がる自転車の楽しみ。スポーツバイクの種類を知る
2023.07.03

多様化する自転車
「自転車」という言葉を聞いて私たちが真っ先に想像するのは、おそらく俗にママチャリや軽快車と称される自転車でしょう。JIS規格においては「一般用自転車」というカテゴリに分類されるこれらの自転車ですが、昨今はこれら一般用自転車には当てはまらないような少し違った形の自転車を街で見かけることも増えてきたと思いませんか?
実は同じくJIS規格では、他にも「スポーツ専用自転車」や「特殊自転車」をはじめとして様々な分類があり、それらの項目の中でもまたさらに細分化され、様々な種類の自転車が定義されています。
スポーツバイクの定義と主な種類
さて、昨今耳にすることも増えてきた「スポーツバイク」という言葉ですが、ここで言うスポーツ専用自転車とはまた定義付けが異なってきます。「競技用か、否か」という観点でのみの分類では決して的確とは言い難く、ここではその定義を「一般的な交通手段としての目的のみならず、中長距離間の移動や高速移動、特殊な地形における走行など、目的に応じた専用の設計がされた自転車」という表現としておきます。
ご存知の通りここ日本においては、競技の場所だけでなく日常の生活の中でも、多くのスポーツバイクに触れる機会が多くなってきました。
中にはJIS規格でもしっかりと定義されているものもあれば、街でよく見かけるはずなのに厳密に定義されていないものもあります。
そんな中、今回は「脱・ママチャリ!自転車を趣味にしたい!」という方に対して、「そうはいっても目的や楽しみ方によって様々な種類の自転車があるんだ」ということをまずは知っていただきたく、まずはその代表格であるスポーツバイクに関して、代表的なものの紹介をさせていただきます。
専用設計ゆえの機能性。ストイックな存在、競技自転車
自転車を使ったスポーツ競技には様々なものがあり、それらの厳密な競技規則に則って設計された自転車は、後に派生する多様なスポーツバイクをカテゴライズする上で、ベンチマークとして語られることも少なくありません。これらのほとんどのジャンルは、実はJIS規格でも厳密に定義付けされており、今回はそちらを参考にしながら紹介をさせていただきます。
ロードバイク(レーシングバイクまたはロードレーサー)
高速走行用で、フリーホイール及び制動装置を備え、競技条件に合わせて設計された専用自転車。一般にディレーラ、足固定装置付きペダル及びクイックレリーズハブを装備し,タイヤ幅が28 mm以下で、泥除け、キャリヤ及びスタンドは装備しない。重量も7kg〜10kg程度が多く、15kg以上の重量に達する一般車に比べ軽量なのも特徴。


マウンテンバイク
ダウンヒル、スラローム、クロスカントリー、フリースタイルなどの競技、荒野、山岳地帯などでの高速走行、急坂登降、段差越えなどを含む広範囲の使用に対応して、軽量化、耐衝撃性、走行性能、乗車姿勢の自由度などの向上を図った構造の専用自転車。
サスペンション機構,フラット形ハンドル,高い性能をもつブレーキ,ワイドレンジチェンジギヤ及び幅1.5インチ以上のブロックパターンタイヤなどを装備していることが一般的。


トラックバイク
専ら自転車競技場内における競走用として、競技種目に合わせて設計された自転車。 一般的には足を後ろに漕いでも空転しない固定ギア、足固定装置付きペダル、前傾乗車姿勢用ハンドル及びチューブラタイヤを装備する。チェンジギヤ装置の使用が禁止されていることが多く、競技規則によって、仕様上の様々な基準及び制約がある。また、競技場内の走行を目的とした自転車のため、ブレーキが装着できないものが多い。


BMX車
凹凸及びヘアピンカーブがあるコースを競走する自転車、フラットなグランドで高く飛びながら技を競う自転車、ジャンプ台を高く飛びながら技を競う自転車、街中の階段又は手すり、木製のハーフパイプ、傾斜路、段差のある平行路などを使用して技を競う自転車、小川や岩山などの人工地形又は人工の障害物の安定走行を競う自転車などの総称。一般に車輪の径が20インチで,特にフレーム、フォークハンドル、車輪、チェーン、ブレーキ、ギヤクランク、ペダルなどの部品は、悪路でのジャンプ、ウイリー走行などの使用に耐えられるよう、軽量化及び耐衝撃性を重視して設計されている。


トライアスロンバイク/TT(タイムトライアル)バイク
ロードバイクを元に、トライアスロンおよびタイムトライアル競技に使用することを目的に製作された自転車。ブルホーンハンドルやダウンヒルバーを採用し、空気抵抗の小さい姿勢で長時間走行できるのを重視されていることが一般的。両方を兼用ものがある一方で、TTバイクは国際自転車競技連合(UCI)によって細かい車体規則が定められており、一部のトライアスロンバイクは国際自転車競技連合の規則にとらわれない、独創的な設計の車両も存在する。


シクロクロスバイク
ロードバイクを元に、オフロードで行われる自転車競技用に設計された自転車。後述の「グラベルバイク」と非常に似た性質を持つものの、こちらは特に競技を前提としたジャンルゆえに、タイヤ幅をはじめとして競技規則で設定されるレギュレーションに則っていることも基準の一つとなる。
競うだけが目的ではない。まだまだある様々な自転車
スポーツバイクといえば必ず競技が紐づくかというと、実はその限りではないというのが一般的です。長距離走行やサイクリング、輪行やキャンプなど、競技を必ずしも目的としないスポーツ自転車も世の中にはたくさんあります。ここでは一部を紹介させていただきますが、これらには前述の競技自転車たちとは違って厳格な競技規則が設定されているわけではないので、例えば複数の要素を掛け合わせたものなど、その定義付けや境界線はやや曖昧なものも少なくありません。
クロスバイク
マウンテンバイクとロードバイクとを組み合わせ(クロス)、より一般道路での走行に適するよう設計(例えばマウンテンバイクの場合はタイヤを細くしたり、ロードバイクの場合はハンドルをフラットバーにするなど)された自転車。異なるジャンルの掛け合わせによって発生した自転車ゆえに、マウンテンバイク寄りのクロスバイクや、ロード寄りのクロスバイクなど、プロダクトごとでコンセプトの違いも大きく、選択肢の幅も広い。


グラベルロードバイク
シクロクロスバイク同様、ロードバイクをベースに、オフロード走行を前提として設計された自転車ではあるが、こちらは競技を前提とせず、その目的には荷物を積んでのツーリングや長距離走行、旅行、キャンプなど様々なものがあるため、タイヤ幅やサイズなど目的に合わせて自由に設計されている。また、キャリアや泥除けやアクセサリを装着するためのダボ穴が豊富に装備されているものが一般的。一方で、近年は文化の隆盛により「グラベルレース」とも言える長距離を走るレース競技なども存在するため、「競技車両か非競技車両か」を前提とする差別化はより曖昧になりつつある。


シングルスピードバイク
トラックバイクを元に、より一般道路での走行に適するよう設計(ブレーキの装着やギア比などが考慮)された自転車。スポーツ走行を前提とした設計ながら、その名の通り変速機が装備されないことが特徴で、部品の少なさと機構のシンプルさゆえに比較的軽量であることやメンテナンス性にメリットがある。


ミニベロバイク(小径車)
大人用の自転車で、ホイール径が24インチ以下の小さなタイヤを有するものの総称。定義としては前述のBMXも含むが、一般的にはそれら特殊競技車両とは差別化されて表現されることが多い。


フォールディングバイク(折り畳み自転車)
フレームをはじめとし、折り畳むことができるように工夫された自転車。目的やコンセプト、設計者の発想によってさまざまな折り畳み機構が存在し、中にはスポーツ走行を強く意識したフォールディングバイクも多数存在する。輪行する場合に可搬性に優れることや、自動車への積載や保管などで場所を取らないことが特徴で、一般的にはそのコンパクトなサイズ感にメリットを見出すゆえ、ミニベロバイク(小径車)が基本設計として採用されることも多い。


E-Bike(Eバイク)
上記のようなスポーツバイクを元に、電動アシスト機能を搭載した自転車。ディレーラをはじめとする装備やフレーム設計がスポーツ走行を想定したものになっていることが一般的で、一般車(ママチャリ)を元に同様の機能を搭載した電動アシスト自転車とは差別化されることが多い。電動アシストの力によって、乗り手の体力や能力を選ばずスポーツ走行が楽しめるという点において、ここ数年での普及が目覚ましく、今後も発展が予想されるジャンルのひとつと言える。


もはや定義付けは難しい?無限に拡がる自転車の楽しみ
いかがでしたでしょうか。
今回は自転車の中でもスポーツバイクを重点的に紹介させていただきましたが、そもそも細分化される自転車の種類のほとんどは海外で発祥した自転車競技文化に由来するものが多く、日本の生活事情も踏まえた上でこれらを厳密に定義づけすることは、やや無理がある話なのかもしれません。
もちろん、JIS規格でいうところの「一般用自転車」が我々にとって、今後も長い間「一般」的であることは変わりないでしょう。
しかし、その上であえて「非・一般用自転車」という観点で目を向けてみると、多様化するライフスタイルに合わせてさまざまなジャンルが存在し派生し続けていて、その認知や普及が年々広がっているのもまた事実。
きっとこの先も、目の前には多様な自転車の世界がひろがり、今後はそのジャンルも楽しみも、さらに多様化していくに違いありません。
「自分にとって最高の自転車と出会う」
あなたが理想のライフスタイルを思い浮かべ、実現するために、それはきっと大きな一歩になるでしょう。
写真提供:
COLNAGO
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