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やっぱり自動車は自転車を追い越せない!? 「驚愕の新事実」その後と規制見直しの行方
2026.02.16
2025年12月15日にSHIFTAで公開した記事、「道交法一部改正 もう自動車は自転車を追い越せない!? 驚愕の新事実発覚!」。この記事公開後、警察庁から私あてに電話がかかってきた。「先日お答えした取材依頼書(質問書)に対する回答に間違いがあった」というものだった。ええっ!? どういうこと? この記事は、その顛末と、新たにわいてきた疑問を解決するためのものになる。ぜひ前記事を読んでからこの記事を読んでいただきたい。
黄色のセンターラインをまたいでもいい!?
まずはおさらいだ。
12月15日公開記事では、自動車による自転車の追い越し時の側方間隔をテーマにした。「自動車と自転車との間に十分な間隔がないときは、自動車はその間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない」という内容の法律(道交法18条3)が2026年4月の道路交通法一部改正で追加される。だけどここで言う「十分な間隔」ってどのくらいなんだ? 結果的に黄色実線中央線(はみ出し禁止を示す黄色センターライン)の道路では、自転車との十分な間隔が確保できず、延々と自動車は自転車を追い越せなくなるのでは?
さっそく警察庁に質問書を送った。
「走行中の自転車を追い越すために車両(自動車)が黄色実線の中央線をはみ出すのは道交法違反になってしまうのでしょうか? 低速走行により渋滞を招くなど通行に支障が出る場合や、安全確保を優先するためには 『やむをえない場合』として黄色中央線を越えてもいいのではないでしょうか」
すると返って来た答えは驚きの内容だった。
「お尋ねについては、道路交通法(昭和35年法律第105号)第30条に規定された「道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分」における、前方を走行する自転車の追越し可否に関する質問と思われますが、同条の規定は車両が追い越してはならない他の車両から特定小型原動機付自転車及び自転車を除外しているため、走行中の自転車を追い越すために車両(自動車)が黄色実線の中央線をはみ出すことは禁止されていません。」
なんと、自動車が自転車を追い越す場合は、黄色のセンターラインをはみ出してもいいんですよと。いやビックリしたねー、みんな知ってた? これでこれから安全に自動車に追い越してもらえるかも。ビバ道交法第30条!
……って記事だった。

すいません、やっぱりダメです
で、今回のお話はここから。
警察庁の方は「大変申し訳ありません、こちらで行き違いがあったようで、結果として間違った回答を送ってしまいました。改めて回答をお送りしますので」と言って大変恐縮していた。どうも記事を読んだ読者から警察庁に「コレってホント?」と問い合わせがあったようで、警察庁も記事を確認して「あれっ?」となったようだ。
「行き違い」という説明だったが、まあ警察も組織だし人間なんだからミスもあるよね。それはしょうがないとしよう。なんだけど記事は掲載しちゃったし、でもそれって内容間違ってるし、どうするどうする?とSHIFTAの編集担当者と相談して、記事の冒頭に目立つように「お断り」を掲載した。
「この記事の公開後、記事結論のもととなった「質問書の回答」について警察庁から「回答に間違いがあった」旨の連絡がありました。記事では「自動車が自転車を追い越す場合には道路中央の黄色実線(追い抜き禁止箇所)を跨いでもいい」と結論付けられていますが、結局これは道交法違反になるとのことです。結果的に間違った記事となったことをお詫びするとともに、記事を読んで法令解釈などに誤解が生じませんようご注意をお願いいたします」
で、警察から改めて回答が来た(やっと本編スタート。ふう)。
「法第17条第5項第4号に規定される「道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている」道路においては、他の車両を追い越そうとして黄色実線の中央線をはみ出して通行することはできません。」
結局自転車を追い越す場合でもイエローラインをまたいではダメ、ということです。
まあ、やっぱそうだよねー。結果は事前に電話をもらったときに聞いていたのでショックも少なめ。
ところでここで持ち出された道交法第17条第5項第4号ってどんな法律なの?
調べたらこんな条文だ。
「5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。(略)」
「四 当該道路の左側部分の幅員が六メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき(略)(道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)。」
ちなみに「道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合」の「道路標識等」には、追い越し禁止の標識や黄色のセンターライン(道路標示)が含まれる。
つまりこういうことだ。
車線の幅員が6m未満のときは追い越しのために道路の真ん中より右側にはみ出していいですよ、つまりセンターラインをまたいでもいいですよ。ただし黄色のセンターラインのときはダメですよ……。
(細かく言うと、ここで言ってる「ダメ」は、17条第5項第4号が黄色線を直接禁止しているっていうより、標識などで禁止されている区間では“右側にはみ出せる例外”が使えない、という意味だ)
まあ、なんかあまりに当たり前のことを言われてビックリって状態だ。黄色センターラインをまたいで走っちゃいけませんなんて常識でしょ。
ダメって書かれているからダメです、って答えをもらい、はいそうですかと引き下がるわけにはいかない。
俺は「自動車が延々自転車を追い越せない問題」がどうなるかを知りたいのだ。
で、悩みながらいろいろ調べていたら道交法第30条ってのに出くわした。

2つの条文、どっちが正しいの?
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路(略)においては、他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
あれ?
これって最初に警察庁が「自動車は黄色センターラインでも自転車を追い越していい」って言ってたときに根拠にしてた条文じゃん?
簡単に言うと、自動車は黄色センターラインの道路では追い越しのために前の車両(特定小型原動機付自転車などは除く)の横を通過してはならないってこと。で、この特定小型原動機付自転車等ってのに自転車は含まれる。
30条は「追越し行為」についての話で、黄色線の「はみ出し禁止」そのものを解除する条文ではないんだけど、あえてカンタンに言うと「黄色センターラインの道路でも自転車の横は通過してもいい」とも読めてしまう。
だから最初の回答も、そういう読み方に立っていたんじゃないか。
一方で今回警察庁が持ち出してきた第17条第5項第4号には、追い越しのために黄色センターラインをまたいではいけませんとある。
つまり警察庁は30条より第17条第5項第4号のほうではみ出しはダメと判断したってこと?
この2つの条文はもちろんどちらも現在施行されているもの。つまり両方正しい。
でも30条では黄色センターラインの場合でも「自転車の横を通過していい」と言いながら、17条第5項第4号では「黄色センターラインをはみ出してはいけない」と言っている。
つまり、追い越してもいいけど追い越せない、追い越しの方法がない、ということなんじゃない? たとえば外出してもいいけど、玄関のドアは開けちゃダメ、と言われたみたいな。
これはどういうことなんだ?

道交法18条3が追加された理由
また警察庁に確認だ。
すると。
「法第17条第5項第4号は、幅員が6メートル未満の道路について、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合、道路の中央から右側部分(以下「右側部分」という。)にはみ出してはならないことが定められているのに対し、法第30条は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分や同条に定める部分において、他の車両を追い越すために進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならないと定めたものであり、両者は必ずしも矛盾するものではないと考えます。」
要するに両者は違うことを規定しているんだから矛盾はないと言っています。きっぱりと。
うーん、そうなのかなー。答えになってない気もするし、うまく逃げられている気もする。
結局、それぞれの条文は別のことを規定しているとしても、両方を同時に守ろうとすると実際には追越しが極めて困難になる。問題はそこですよね?
黄色センターラインをまたがなくても追い越せるほど車幅が広い道路なら別だけど、そのほかは自動車が安全に自転車を追い越すことは困難。だから俺は「じゃあどうすればいいの?」ってとこが知りたいんだけどなー。
いやあ、この原稿これで終わっちゃうのかなあ。もうなんか頭が疲れて、どうでもよくなってきたころ、はたと気がついた。
つまり、これまでの法律では「黄色線をはみ出さなくても追い越せるんだったら自動車は自転車を追い越してもいい」ということだった。だけどそれじゃ「自転車ギリギリでも接触しなければ追い越してもセーフ」とばかり、自転車のすぐ横を通り抜ける自動車が横行してしまうことになる。
ただそれに新設される第18条3が意味する「自動車と自転車との間に十分な間隔 がないときは、自動車はその間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない」ってのを加えると、「ギリギリなときは安全な速度まで減速しなければならない」ことになる。
そっかー、そのために道交法18条3が新しく追加されるわけだ。ちょっと納得。
でもなー。じゃあ安全な速度ってどの程度?って話に戻るんだけど、これに関しては最初に警察庁に聞いたときに「自動車と自転車との間隔や安全な速度につきましては、自動車と自転車の具体的な走行状況に加えまして、道路状況や交通状況などにより異なることから、具体的な数値は規定していません」って言われてしまってる。

警察庁が伝えたいこと
ただ今回、警察庁からは直接こんな回答ももらっている。
「なお、『良好な自転車交通秩序の実現に向けた自転車通行空間の整備に係る留意事項等について(令和4年1月28日付け警察庁丁規発第4号)』のとおり、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制は、見通しのきかないカーブ等の道路構造上危険な区間のほか、交通量が多く、追越しのための右側部分はみ出し通行による交通事故が多発し、又は多発することが予想される区間等で実施しているところ、自転車の車道通行が多い区間において当該規制を実施することで、右側部分へのはみ出しを避けるため自転車との接触事故が発生するおそれ等が懸念される場合には、道路交通状況等の実態に即した見直しを検討することとしています。」
この「良好な自転車交通秩序の実現に向けた自転車通行空間の整備に係る留意事項等について」ってのは前の記事でも紹介した、警察庁交通局交通規制課長から各道府県警察本部長、警視庁交通部長にあてて送られたガイドライン。今後はこういうふうに対応していきなさいよという通達だ。
ここでは、自動車が黄色センターラインの区間でその規制(黄色センターラインをまたいではいけない)を守るあまり、自転車が危険に陥る恐れがある場合はその規制を見直しなさい、つまり黄色センターラインを白にすることを検討しなさいと指示しているわけです。
警察も、今のままじゃよくないよね、ということはわかっていて、それをなんとかしようとしている、ということだ。警察内部で静かに事は動き始めている。そしてそれを公にしても構わない形で伝えてきた。俺は質問書にはいつも「回答はコメント形式で記事に反映させていただきます」って書いてるからね。
現行の法律のままでは、道交法を守って黄色センターラインをまたがずに自動車が自転車を追い越すことは難しい場所が多い。ある程度道幅があればギリギリ自転車に接触せずに通り抜けられるかもしれないけど、それはやっぱり危ない。だから自動車はちゃんと安全な間隔をあけて十分に減速して追い越しなさい、って条文を加えた。それでも自動車は黄色センターラインを守ろうとするからギリギリの間隔で自転車を追い越そうとしがち。だったらその黄色センターラインがほんとうに必要かどうか、ちゃんと見直していこう。
警察庁のやっていることはたぶん理路整然としている。そしてその動きを俺に、読者に伝えようとしている。
そろそろわかったことをまとめていこう。
自動車が自転車を追い越すときは、十分な間隔を保たなければならない。
その「十分な間隔」はケースバイケース。
ただ、もしその十分な間隔がない場合は、その間隔に応じた安全な速度で追い抜くこと。
その安全な速度に関してもケースバイケース。センターラインが黄色の区間では、自動車と自転車の間に十分な間隔を保つことは現実的に不可能な場合が多い。だから黄色センターラインの道路でも自動車は自転車を追い越してもいいけど合法的に行えるシーンはとっても限定的。
結論として黄色センターライン区間では、安全に、かつ合法的に追い越せる場面が大幅に限られる。つまり残念だが「やっぱりもう自動車は自転車を追い越せない」ということなのだ。

安全最優先なら規制も変わる
今回のやり取りで見えてきたのは、単なる条文の優先関係じゃない。追越しを禁止する条文と、はみ出しを禁止する規制、それが重なったときに両方とも守ろうとすると、どうしても窮屈になる部分が出てくる。大切なのは、じゃあそこをどうするかってこと。それを警察庁もようやく正面から考え始めている、ということだ。
18条3の新設は、自動車に対して距離と速度の両面から安全配慮を求めるもの。そして通達は、黄色センターラインそのものを状況に応じて見直すことを明言している。これは驚きだ。少なくとも規制は固定ではなく、見直し得ると明言している。
つまり、「自転車が我慢する社会」から、「道路構造と規制そのものを見直す社会」へ、ほんの少しだけど確実に歯車が動き始めているってこと。
すぐに劇的に変わるわけではないと思う。けれど、今回のやり取りでわかったのは、警察庁は条文どおりに運用したときに生じる問題を把握し、それを制度の中で調整しようとして動いている、という事実。
黄色センターラインは絶対ではない。交通の安全が最優先ということなら、規制もまた変わっていくべき。そして今回の回答は、「変えるべき条件」を警察庁自身が言語化したものだと言える。
あとは、それが机上の文章で終わるか、実際にセンターラインが引き直されるかだ。サイクリストにできることは、そこで何が起きているかを記録し、伝え、議論を途切れさせないことだろう。
問題は「追い越せるかどうか」じゃなくて、「安全に追い越せる道路をどう作るか」だ。
静かに動き始めた歯車を、止めちゃいけない。
(キマった!)
以下 ↓ 自己PR(笑)。

SHIFTAの安全啓蒙記事担当みたいになってる筆者(ペダルプッシャー岩田)ですが、ヘルメットやデイライトはもちろん、最近は胸や背中のプロテクター(購入済み)にも興味をもっておりまして。
そしてウエアはド派手な蛍光イエローがイチバン!という、ある意味安全対策オタクです。
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