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プロが教える! 自分にとって最適なタイヤの空気圧はこうやって決める
2026.01.16
なぜ空気圧を調整するのか
「ロードバイクのタイヤの空気圧は調整するもの」ということは、SHIFTAの読者であればご存知のことと思います。
では、改めてお聞きします。なんのためにタイヤの空気圧を調整するんでしょうか?
グリップ、快適性、耐パンク性、走りの軽さなどをバランスさせるため。その通りです。でも、ちょっとした注意点があります。
タイヤの各性能のなかでも、グリップ、快適性、耐パンク性に関しては比較的簡単なんです。ざっくり言うと、「空気圧が高くなるほどグリップと快適性が低下する」、逆に「空気圧が低くなるほどパンクしやすくなる」です。あくまで適正空気圧(後述)の範囲内での話ですが、変化が一方向というかシンプルなんですね。
少々ややこしいのが転がり抵抗です。これまでは、「空気圧を下げると走りが重くなる」と言われてきました。でも、じつはそんなに単純ではないんです。

「転がり抵抗」の正体
自転車の転がり抵抗の原因は2つです。
1つ目が、タイヤ自体の変形によるエネルギーロス。タイヤが転がって地面に接するとき、タイヤは変形します。レールの上を転がる電車の鉄の車輪とは違い、自転車用タイヤは様々な路面に対応しなければならないので、しなやかに変形する必要があります。だからパンクのリスクを承知で自動車も自転車もゴムで空気の袋を作って「ゴム製空気入りタイヤ」にしているわけですね。
しかし、タイヤのゴムが変形して元に戻るときに、「変形させた力」の一部が熱に変わってしまいます。それがエネルギーロスになるんです。これをヒステリシスロスといいます。変形する量が多ければ多いほどそのヒステリシスロスは大きくなり、結果として転がり抵抗が増えてしまいます。当然、空気圧が低ければ変形量は大きくなります。これが、「空気圧が低すぎると走りが重くなる理由」です。
転がり抵抗のもう1つの原因が、運動の方向が変わってしまうことです。
スムーズな路面の上では滑るように走るのに、デコボコの路面になるとスピードが落ちてしまいますよね。それは、路面の凹凸に自転車と体が跳ね上げられて、推進力が上下動に変わってしまう(=エネルギーが無駄になってしまう)からです。空気圧を低くしてタイヤで路面の凹凸を吸収すれば、自転車+体の上下動は小さくなり、エネルギーロスは小さくなります。

路面によっても最適解は変わる
まとめると、
・空気圧が低くなると、タイヤの変形によるエネルギーロスが増える
・空気圧が高くなると、自転車+体の上下動によるエネルギーロスが増える
というわけです。
その2つのエネルギーロスを足したものが転がり抵抗になるため、その値が最も低くなる「ちょうどいい空気圧」を探さなければなりません。
話をややこしくしているのは2つ目の「上下動によるエネルギーロス」のほうです。なぜなら路面の凹凸の大きさによって、エネルギーロスの量が変わってくるからです。競輪やトラック競技では10気圧ほども入れることがありますが、それは競技場の路面にほとんど凹凸がないため。高圧にしてタイヤをカチコチにしても、鏡のような路面だから上下動はほとんどしないんです。
一方、アスファルトには細かい凹凸がたくさんあります。だから空気圧を落とした方がエネルギーロスが小さくなるんです。だから、路面がどんな状態なのか(凹凸の大きさがどれくらいか)によって、空気圧の正解は変わります。よく、「タイヤの空気圧は体重によって調整するべき」と言われますが、正確には「体重と路面の状況によって調整するべき」です。
こういうことがわかってきたため、近年はタイヤの空気圧が以前よりどんどん低くなってきています。近年は、プロ選手でも4気圧台でレースを走ることがあります。ひと昔前では考えられないほどの低圧です。

空気圧に影響するさまざまな要素
タイヤのワイド化、リムのワイド化、チューブレス化、TPUチューブの登場など、タイヤにまつわる状況も空気圧に大きく影響します。
ざっくり説明すると、タイヤが太くなると転がり抵抗が下がり、エアボリュームが増すのでパンクしにくくなり、低圧になるので上下動も減ることになりますが、タイヤの重量は増してしまいます。クリンチャーvsチューブレスに関しては、「変形するものの量」が少ないチューブレスのほうが転がり抵抗では有利です。ただしシステム重量(タイヤ+リムテープ+インナーチューブもしくはシーラント&チューブレスバルブ)はクリンチャーのほうが軽くなる傾向にあります。リムがワイドになると、タイヤのサイドウォールが垂直に近くなるので、たわみにくくなます(サスペンションが硬くなるのと同じ)。
クリンチャーの場合は、インナーチューブの種類によっても乗り味は変わります。近年流行している軽量なTPUチューブは伸びにくい素材のため、乗り味が硬くなる傾向にあります。しなやかなラテックスチューブは快適性が上がります。一般的なブチルチューブはその中間的な性格です。

最適な空気圧の見つけ方とは?
肝心の「最適な空気圧の見つけ方」ですが、これまでの説明でおわかりのように、正解はありません。体重、路面の状態、好み、スピード域、技術、走る目的、タイヤのタイプとサイズ、リム幅、インナーチューブの種類などによって変わってくるからです。
ではどうやって自分に最適な空気圧を見つけるか。まず大前提として、タイヤメーカーが指定している「適正空気圧」を守ること。タイヤの側面には、<5~8bar>などの表記があります。それがタイヤメーカーの適正空気圧。「この範囲内であれば安全に走れます」ということです。また、ホイールのリムが空気圧を指定している場合もあります。タイヤとリムのどちらの数値からも外れないようにしましょう。
ちなみに、自転車で使われる空気圧の単位には、psi(Pounds Square Inch)、bar(バール)、kPa(キロパスカル)などがありますが、<1bar≒100kPa≒14.3psi>であり、<100psi≒7bar>です。1barは地表での標準大気圧なので、1bar=1気圧であり、自転車業界ではタイヤの空気圧を○気圧と言い表すことが多いですね。
そしていよいよ実走にうつります。まずは適正空気圧の下限・中間・上限で走ってみるといいでしょう。<5~8bar>の場合、5bar、6.5bar、8barです。それぞれの空気圧で、一番好みの数字を決めましょう。

判断する際の注意点
ここで注意なのが、「総合的に判断すること」と「同じコースを同じように走ること」です。
人はタイヤを高圧にすると「走りが軽くなった」と感じて、その印象を「よきもの」として引きずってしまいがちです。振動が伝わりやすくなることで、「速く走っているんだ」という勘違いも生じやすい。でも、走りの軽さだけではなく、快適性、コーナーでの安心感、バイクを左右に振ったときのタイヤの潰れ方など、タイヤの振る舞いを総合的に感じ取ってください。「速く走れる」ことも必要ですが、「コーナーで怖くない」「走っていて安心感がある」ことはもっと大切です。
また、同じコースを走ることも重要です。先に述べたように、適正空気圧は路面の状況によって変わります。同じ路面を同じように走り、同じコーナーを同じように曲がり、同じ段差を同じように超えてみましょう。そうして、どの気圧が「自分にとっていちばん気持ちよく走れて、快適で、かつ怖くない空気圧なのか」を意識して探してみましょう。

調整幅をどんどん小さくしていく
好みの空気圧が決まったら、今度はそこから0.5気圧ずつ変えてみます。6.5気圧が一番好みだったら、6気圧と7気圧で乗ってみて好みのほうを見つけて、最後は0.2気圧刻みまで幅を狭めていく。そうすれば、自分だけの最適な空気圧が見つかります。
最近は、体重、バイクの重量、タイヤのタイプとサイズ、目的と走る路面などを入力すれば自動でおすすめの空気圧を算出してくれる専用アプリもあります。自分の好みとずれることはありますが、目安にはなるでしょう。
https://axs.sram.com/guides/tire/pressure
空気圧で自転車の走りは驚くほど変わります。精度の高い空気圧計をひとつ買って、いろんな空気圧で、いろんなことを感じ取りながら走ってみましょう。それは、「自分だけの空気圧を見つけられること」だけでなく、「自転車への理解を深めること」や「愛車をよりよく感じ取ること」にもつながります。空気圧調整はコストゼロでできる効果的なチューニングであり、奥の深い機材遊びです。
自動車のタイヤの指定空気圧はたいていピンポイントです。でも、ロードバイクは幅があります。自動車の場合は、ドライバーの体重や乗車人数が変わっても、総重量の変化は数%~せいぜい1割程度ですが、ロードバイクは体重差によって総重量が2倍ほど変わることもあります。
そのために適正空気圧の幅が広いのですが、それは「空気圧調整遊びができる余地」があるということです。ロードバイク乗りに許されたこの遊びを試さない手はありません。
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