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グラベルバイクって何が楽しいの? 自転車ジャーナリストと人気ショップ店長が魅力を語る!

グラベルロードという新しいジャンルのスポーツバイクが誕生して10年以上がたつ。当初は「走る場所がない」「日本では流行らない」という声もあったが、従来の車種にはない魅力によって徐々に浸透し、今ではいちジャンルとして確立された。今回は、オフロードバイクにも精通するTHE BASE店長の長野雄大さんと、グラベルロードにはまっている自転車ジャーナリストの安井行生が、グラベルロードのイロハを語る。

ロードバイクで遊ぶ領域をグッと広げてくれるのがグラベルロードバイク

グラベルロードとは?

安井:皆さんご存じのように、グラベルロードとは「ちょっとしたオフロードも走れるロードバイク」です。細いタイヤを履いて舗装路でのスピードを追求したロードバイクに対して、路面を選ばない多目的自転車ですね。見た目はロードバイクとほぼ同じですが、太いタイヤとワイドなギヤが特徴で、2015年頃から主力メーカーがラインナップをしはじめ、今やスポーツバイク界のいちジャンルとして確立されました。たった10年ほどで急成長を遂げたグラベルロードですが、長野さんはどう見られていますか?

長野:一言でいうと、「とにかく自由な乗り物」です。ピュアロードバイクはもちろん魅力的です。効率よくスピードが出せるし、ヒルクライムも軽やかだし、遠くまで行けます。パワーメーターを使って追い込んで練習するのも楽しいですね。一方、グラベルロードは自由です。舗装路で快適なライドを楽しんでもいいし、もちろんオフロードをがんがん攻めてもいい。レースに出てもいいし、荷物を積んで旅もできる。普段着でサイクリングをするのにも合います。

安井:ロードバイクだと舗装路以外の場所はそもそも視野に入りませんが、グラベルロードは相当な悪路まで「遊ぶフィールド」になりますね。だから走れる場所・楽しめる場所が2倍にも3倍にもなる。


長野雄大さん。学生時代、クロスバイクを買って自転車通学を始めたことをきっかけに、株式会社あさひに入社。先輩社員の影響でMTBやロードなどの本格的なスポーツバイクに目覚める。複数の店舗の勤務やスーパーバイザーなどを担当したのち、THE BASE南大沢店の開店に携わり、現在は店長も務める

安井行生。メッセンジャーを経て自転車ジャーナリズムの世界に飛び込む。理工系出身らしい論理的かつわかりやすい表現で、完成車やパーツのインプレッションをはじめ開発者インタビューなどを多くのメディアでこなす。現在は自身で立ち上げた会員制WEBメディア「輪郭」の仕事で飛び回る日々

何を買うべきか?

安井:では、ロードバイクを持ってる人がグラベルロードを買うとしら、どんなものを選べばいいんでしょう?

長野:好みも目的も人それぞれなので難しいところですが、まず注目すべきはタイヤクリアランス(どれほど太いタイヤが入る設計になっているか)です。個人的な意見を言ってしまえば、なるべく太いタイヤが入るものを選んだ方が幸せになれると思います。今は50Cくらいまで入るモデルもありますが、最低でも40Cタイヤが入るクリアランスがあった方が遊びの幅が広がります。フラットダートが延々と続くような国では細めのタイヤでも楽しめるんでしょうが、日本は山に入ると荒れている道が多いですから。

安井:40Cタイヤであればかなりハードなオフロードまで対応できますね。最近はグラベルロードでも、スピードを追求し空力性能を高めたレース系モデルと、より太いタイヤを履いて荷物の積載にも対応したツーリング・アドベンチャー系モデルに分かれつつあります。

長野:今の日本ではロードバイクに乗っている方がグラベルロードに興味を持たれるというケースが多いので、レース系のほうがロードバイクとのギャップが小さく、違和感なく乗り始められるんじゃないかと思います。

コルナゴC68グラベル。ラグジュアリーラインのCシリーズにラインナップされた戦闘力だけでなく芸術性まで備えられた孤高の存在感を放つ一台。お値段も979,000円(フレームセット・税込)とラグジュアリー
太いタイヤを履いてもまだクリアランスに余裕がある

安井:なるほど。もちろん最初から目的が旅やキャンプなのであれば、ツーリング系モデルがいいと思いますが。では価格について。かつてロードバイクでは「カーボンフレームのシマノ・105完成車を買っておけば間違いない」などと言われていましたが、グラベルロードで「最低でもこのクラスは買っておけ」というような価格やグレードの目安はありますか?

長野:グラベルロードに関しては、そこはあんまりないかもしれません。価格とかグレードよりも、「タイヤの空気圧はどれぐらいにするか」、「どんな道を走るか」のほうが重要。コンポの基本性能も昔に比べると上がっていますし、油圧のディスクブレーキを搭載したバイクであれば、どんな場所でも問題なく楽しめると思います。

安井:同感です。グラベルロードは安いスチールフレームでも、エントリーグレードのコンポでも、重いホイールでも、あんまり気にならない。ロードバイクよりお金をかけなくても楽しめるイメージです。

長野:そう。ロードみたいに「本格的なヒルクライムをするなら1300g台のホイールじゃなきゃ」というようなしきたりはありません。もしお金をかけるんだったら、遊びに行くために使った方が幸せですよ。

安井:そうですね。仲間とライドをしていても、機材やパワーのことよりも、「どこが楽しかったか」「どういう場所を走っているのか」という楽しみ方の話題になることが多いですね。そういう意味でもグラベルロードは自由です。

長野:フレーム素材はスチール、アルミ、カーボンとあり、もちろんカーボンが軽くて走りも軽快ですが、オフロードでは転ぶ可能性もあるので、不安なのであればあえて金属フレームという選択肢もありだと思います。ロードバイクと違ってレーシーな走り方をされないユーザーも多いので、スチールフレームの人気は高いですね。

安井:悪路を走ってると石がガンガン当たりますし。僕は安いスチールフレームでも十分楽しめてます。

安井さんの愛車はダボス。スチールフレームで傷など気にせずガンガン乗れるのがいいという
各所にダボが設けられ、キャリヤなどの増設に対応する拡張性が高い。ツーリングにも使える仕様

長野:駆動系は、フロントのチェーンリングがロードバイクのように2枚あるフロントダブルと、MTBのように1枚のフロントシングルの2種類があります。今の割合は半々くらいですかね。

安井:舗装路の走行性能を重視するなら、カバーする速度域が広く、ケイデンスも一定にしやすいダブルの方がいいと思います。オフロードを楽しむなら、少ない変速回数でギヤが飛んでくれるフロントシングルのメリットが大きくなりますね。

長野:フロントの変速操作がなくなるので、操作がシンプルになり、フロント変速時のチェーントラブルが起きないこともメリットです。

最近は半数近くが1×(ワンバイ)と呼ばれるフロントシングルギヤを採用している

バイク以外に揃えるものは?

安井:では、ロードバイクに乗っている人がグラベルロードを買って「グラベルデビュー」をするとして、バイク本体以外に買ったほうがいいものはありますか? 

長野:シューズはロード用ではなく、MTB用のSPDペダルとSPDシューズにしたほうがいいでしょう。

安井:オフロードを走るとなると、脱着性、歩行性、泥詰まり、両面キャッチなどオフロードに特化したペダルシステムのほうがいいですね。

長野:はい。シューズ以外はロードと同じでOKだと思いますよ。ウエアやヘルメットなどもそのままで問題ないでしょう。キャップが付いたボトルを選ぶぐらいですかね(飲み口に砂埃や泥が付く可能性があるため)。

安井:グラベルライドは持ち物が多くなったりするので、そういう人はフロントバッグなどを付けてもいいかもしれません。あとは、日中でも暗い森の中を走る場合は、レンズが明るいアイウエアがあると便利です。

長野さんのグラベルライディングスタイル。シューズ以外はふだんロードに乗るときとほぼ同じ
安井さんのグラベルスタイル。パンツを少しカジュアルなものにし、フロントバッグを装備することで、アウトドアっぽい雰囲気を演出

空気圧とポジション

安井:では、タイヤの空気圧について。 

長野:タイヤ幅や走る場所によって調整するものなので、一概に「○気圧が正解です!」とは言えません。だからロードから移行する方には、「空気圧は状況に応じて調整するもの」ということを知っておいてほしいですね。ロードバイクはタイヤの幅がさほど変わらないので、一度決めたら常に同じ空気圧であることが多いですが、グラベルロードはタイヤが太いので路面や状況に応じて空気圧を調整します。

安井:舗装路を走るときは高めにしておいて、オフロードに入る前に空気を抜く……というように、1回のライドの中でも路面状況に合わせて調整しますね。

長野:そうそう。最近は体重、タイヤのサイズと種類、路面などを入力すると推奨空気圧を提示してくれるアプリもあるので、活用するといいでしょう。 

https://axs.sram.com/guides/tire/pressure

https://int.vittoria.com/pages/tire-pressure

このタイヤは最大4.5BAR(約4.5気圧)の空気圧が指定されている。ロードよりもずっと低圧だ

安井:フォームやポジションはロードバイクと変えたほうがいいんでしょうか?

長野:バイクのジオメトリ自体がロードとは違いますし、ロードのポジションも人それぞれなのでなんとも言えませんが、サドル高はロードと同じでいいと思います。ハンドルは、オフロードでのコントロール性を重視すると多少アップライトにしてもいいでしょう。

安井:実際にオフロードを走ってみて、ハンドリングや安定感などを考えながら試行錯誤するのがいいでしょう。僕は最初はロードとほぼ同じポジションにして、走りながら調整し、結果的に「ロードと比べてステムはやや短め、ハンドルはやや高め」になりました。グラベルロードで流行しているフレアハンドルも、人によって合う合わないがありますし。

長野:そうですね。ロードから移行する人は、一旦ロードと近いポジションにすると違和感なく乗れるのでいいと思います。あとは実際に走りながら調整していくと。

安井:その点、ステム一体型ハンドルは微調整がしにくいので、ポジションが決まった人向けですね。

C68グラベルのハンドルはステム一体型。ポジションがしっかり決まった人向きだ

仲間が遊び方を広げてくれる

安井:最後に、走る場所や遊び方について。「グラベルって名前がついてるくらいだからオフロードを走らなきゃいけないんでしょ?」「でも近所にオフロードなんかないし」という方は多いと思うんです。グラベルロードだからといってオフロードを走らなきゃいけないわけではなく、「舗装路で太いタイヤの快適性を楽しむ」「ツーリングバイクとして使う」「ちょっとしたサイクリングに使う」など、グラベルロードでできることは本当に幅広いんですが、その幅広さが困惑にもつながりますね。さきほど「グラベルは自由だ」と言われましたが、ロードをずっとやってきた者からすると、「なんでもできる」って言われちゃうと、何していいかわかんなくなる。「今日晩ごはん何がいい?」「なんでもいい」が一番困るのと同じで。

長野:一番の近道は仲間を作ることですね。グラベルはもちろん一人でも楽しめますが、仲間がいると遊び方、フィールド、機材などの情報がどんどん入ってくるので、楽しみ方が一気に広がります。どこで仲間を見つけるのか?ですが、まず最有力候補はショップですね。ショップスタッフは経験豊富であることが多く、地域のこともよく知っているでしょう。

安井:グラベルライドを企画しているショップもたくさんありますね。

長野:そうです。今ならSNSでつながっているコミュニティもありますし、グラベルイベントに顔を出して仲間を作るのもいいでしょう。

安井:グラベルって遊び方が多様なだけに、人の遊び方が参考になりますね。

グラベルを楽しむには仲間を作るのが手っ取り早い

童心に返れる自転車

安井:グラベルロードは「なんでもできる自転車」ですが、僕にとっての一番の魅力は「ロードバイクというプラットフォームのままに、気軽にオフロードを楽しめる」ところです。

長野:同感です。オフロード系の自転車の面白さは、「自然と近い」こと。土とか泥まみれになって自然の中で遊んでいた子供の頃のことを思い出すというか。

安井:僕はずっとロード一筋だったんですが、ある取材で河川敷のグラベルを走ったんです。ロードバイクだけ乗っていたときは砂利道なんて視野にすら入ってなかった。最初は「こんなとこ走っていいの?」って感じだったし、恐怖心もありましたが、藪をかき分けたり砂利の上でタイヤを滑らせたりしていたら、すぐにオフロードに魅了されました。気付いたら奇声を上げながら走ってた(笑)。

長野:ほとんどの方が最初は「ちょっと怖い」と感じられるんですが、いざやってみると「こんなに面白いのか!」となりますね。人間にはそういう本能が備わってるんでしょうね。

安井:子供が意味もなく水たまりに飛び込むみたいな。

長野:そうそう。まさにその感覚です。

安井:そういうことを大人になってもできるのがグラベルロード。もちろんMTBのほうが山奥まで行けるわけですが、グラベルロードは舗装路もそこそこ走れるのがいいですね。舗装路と未舗装路の絶妙なバランス。家を出て、舗装路を走って里山とか砂利道まで行って、オフロードを楽しんだらまた舗装路で帰る。そういう楽しみ方ができるのは今のところグラベルロードだけです。


長野店長によるC68グラベルミニインプレ

個人的にC68のロードを所有しており、C68オールロードにも試乗したことがありますが、それらCシリーズ全車に「コルナゴらしさ」「Cシリーズらしさ」があります。よく走るのはもちろんですが、まっすぐ走らせたときの心地よいライドフィールが共通しているんです。ジオメトリは全然違うのに、コルナゴはこのCシリーズ全車にちゃんと「独自の味付け」をしているんだなと感心しました。このC68グラベルも、Cシリーズの乗り味がしっかりと継承されています。許容範囲は広いと感じますが、ある程度整ったダートでスピードを出して走ると気持ちいいでしょうね。

コルナゴならではのライドフィールに惹かれている長野さん

 


 

<取材協力店舗>
THE BASE南大沢店
 〒192-0362 東京都八王子市松木 63-7
 TEL:042-670-1780 

東京西部のオシャレなエリアにあるTHE BASEは、コミュニティを大切にするスポーツバイシクル専門店。店内にはコルナゴをはじめとするハイエンドバイクから入門向けまで豊富な品ぞろえ。各種講習会やライドイベントなども多く開催されていて好評だ

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