ロードバイクのレースシーンでは、ヘルメットやサングラスの性能が走りに大きく影響します。
今回は、EKOIがサポートするAstemo宇都宮ブリッツェンの谷順成選手と岡篤志選手に、ロードレースの現場で実際に使用しているヘルメットやサングラスについて伺いました。
エアロ性能、軽量性、通気性、フィット感――プロ選手のインプレッションから、ロードレースにおける機材選びの基準を紐解きます。
プロ選手は、レースの気温やコースでヘルメットを使い分ける
――まずはヘルメットについてお聞きします。レースでは軽さや空力性能など、さまざまな要素が求められると思いますが、どのような基準で選んでいますか?
岡選手:
結構、気象条件によって変わりますね。春先のレースだと、そこまで暑くないので、今シーズンはほとんどエアロタイプのヘルメットで走っています。
ただ、日本の夏本番になってくると、さすがに暑さが厳しいので、通気性の高いモデルを使うことが増えてくると思います。熱中症になってしまうと走れなくなってしまうので、その部分はかなり重要ですね。
――上りの多いレースでも、エアロヘルメットを使うことはありますか?
岡選手:
ありますね。暑くなければ、上りが多いレースでもエアロヘルメットで問題なく走れる感覚があります。
空力性能はかなり良いと感じていますし、他メーカーと比べても優れているんじゃないかなと思います。ただ、その分ベンチレーションの穴が少ないので、本当に暑い日は汗が頭にたまる感じがありますね。
「軽さ」だけではなく、「安全性」とのバランス
――ヘルメットに求める性能として、軽さと通気性、安全性のバランスはどう考えていますか?
岡選手:
もちろん、軽いに越したことはないです。ただ、落車した時の安全性は必要不可欠なので、そのバランスは大事ですね。
あと、フィット感もかなり重要です。日本人向けの形と言っても、人によって頭の形は全然違いますし、モデルによっても「これはSサイズが合うけど、こっちはMの方がいいな」ということもあります。
――実際に合わないヘルメットを被ると、どんな感覚になるのでしょう?
岡選手:
一部分だけ頭に当たるモデルがありますね。長時間被っていると、だんだんこめかみが痛くなってきたりして、かなりストレスになります。
過去に使ったモデルで、見た目はかなり大きくなるんですが、「ここだけ当たるな」というものがあって。そういう細かい違和感が、長時間になるとかなり気になります。
――谷選手はいかがですか?
谷選手:
僕もやっぱり、まずフィット感ですね。
いろいろなヘルメットを被ってきましたが、このモデル(R-AERO/GARA)は頭全体をしっかり包み込んでくれる感覚があります。安心感がありますね。
――具体的に、どんな部分に違いを感じますか?
谷選手:
ダイヤル部分ですね。メーカーによってかなり特徴があると思います。
以前に使っていたものは、小さいダイヤルを回すタイプだったんですが、あまり強く締められなくて、不安がありました。ちょっとした衝撃でズレたり、浮いたりしそうな感覚もあったんです。
でも、このモデルは頭全体を面で支えてくれる感じがあって、しっかり締め込める。そこがすごく良いですね。
――レース中に調整したくなることはありますか?
谷選手:
あまりないですね。理想は、ヘルメットを被っていることを忘れられる状態なので。
フィット感が悪いと、走っている途中でズレたりすることもありますが、しっかり合っていると本当にストレスがないです。
ヘルメットとサングラスは“セット"で考える
――サングラスについてはいかがですか?
谷選手:
ヘルメットと同じメーカーで揃えると、かなり相性が良いと感じています。
例えば、おでこが出ないようにヘルメットを被った時に、サングラスとのラインが自然につながるんです。他社同士の組み合わせだと、隙間ができたりすることもあるので。
その一体感はかなり良いですね。
――空力面でもメリットがあるんですか?
谷選手:
そうですね。このヘルメットとサングラスの組み合わせは、空力的にも良くなるように設計されているので、基本的にはこのセットで使っています。
岡選手:
感覚としては、バイザーみたいですよね。
谷選手:
そうですね。バイザーの小さい版みたいなイメージです。
――サングラスのレンズは使い分けていますか?
谷選手:
結構使い分けていますね。普段は偏光レンズを使うことが多いです。
ただ、雨の日や、暗い林道やトンネルが多いコースでは、調光レンズを使っていました。
日本はトンネルが多いので、クリア系や雨天向けレンズは必要だと思います。
相性の重要性
――ヘルメットとサングラスの相性についてもお話がありましたが、ヘルメット自体の形によって、顔との相性はありますか?
谷選手:
僕はどちらも掛けやすいですね。
特にエアロヘルメットも重くないので、今はR-AEROをメインで使うことが多いです。最近はヘルメットだけじゃなく、ロードバイク自体も軽量性より空力重視になってきていますし、みんなエアロ系を選ぶことが増えていると思います。
――空力性能の違いは体感できますか?
谷選手:
そこまで劇的に変わるわけではないですけど、違いは感じますね。
特に高速域になればなるほど効いてきますし、本当にタイヤ差レベルの勝負になってくると、この差がかなり重要になってくると思います。
――機材そのものに慣れる、という要素はあるのでしょうか? 長く使っている方が使いやすいのか、それとも性能面の影響の方が大きいのか。
岡選手:
ヘルメットやサングラスに関しては、「変わったから慣れない」という感覚はあまりないですね。
例えば、ハンドル形状やサドル、シューズなんかは、機材が変わると慣れるまで時間がかかることがあります。でも、「ヘルメットを変えたから調子が出ない」という話は、あまり聞かないです。
自分としては、いろいろ試した上で、より良いものを選ぶという感覚ですね。
――フィット感以外で、エアロヘルメット特有の難しさはありますか?
岡選手:
慣れないというより、“被り方"やフォームの作り方にはコツがあると感じています。
頭の角度や、どのくらい深く被るかによっても変わりますね。
以前に使っていたヘルメットは、比較的細身の形状だったので、自分自身もできるだけ細くなる意識で乗っていました。
でも、このモデル(PURE AERO)は逆に、肩に当たる風をヘルメット側で先に流してくれるんです。
だから、肩をすぼめすぎると、逆にテール部分が当たって浮いてしまう。むしろ、少しリラックスした状態で、しっかり頭を下げた方が、全体としてきれいに収まる感覚があります。
谷選手:
自分も肩幅が広いので、以前使っていたヘルメットでは空力的にかなり不利だったんです。
でも、この間初めてこのTTヘルメットを使ったら、去年の全日本の時より平均速度が上がりました。変わったのはヘルメットだけだったので、「これは肩に当たる風をうまく流してくれたんだろうな」と感じました。
――フォームを無理に縮めなくても、自然にスピードを出せた感覚なんですね。
谷選手:
そうですね。自分は肩幅が広いので、無理に縮こまると窮屈だったんです。でも、このヘルメットは自然なフォームのまま空気を流してくれる感じがありました。
岡選手:
うちのチームには、セルジオ選手という台湾出身のTTスペシャリストがいるんですが、彼は本国で何度も風洞実験をしているくらいの“TTオタク"なんです。
いろいろ教えてくれるんですが、「このヘルメットは数値がすごく良かった」と言っていました。
しかも、あえて一番大きいサイズを選んでいたんです。
普通なら小さい方が空力的に良さそうに感じるんですが、SサイズよりLサイズの方が数値が良かったらしくて。肩に当たる風の流れまで含めて考えた結果みたいですね。
その話を聞いて、自分も大きめのサイズを選ぶようになりました。
細部まで考えられた空力特性
――これまでいろいろなメーカーの機材を使われてきたと思いますが、EKOIというブランド自体には、使う以前にはどんなイメージを持っていましたか?
谷選手:
自分の場合は、やっぱりジャパンカップですね。
EKOIを使っている海外チームも来ていましたし、アフターパーティーなどでもよく見かけていました。あと、アイアンマンの世界でも結構見かける印象がありましたね。なので、「かなり大きいメーカーなんだな」というイメージはありました。
――実際に使ってみて、印象は変わりましたか?
谷選手:
やっぱり、かなりこだわりを持って作られているなと感じました。
特に、ヘルメットとサングラスを組み合わせて設計しているところですね。細かい部分までしっかり考えられているなと思いました。
――特にどのあたりに、ブランドとしてのこだわりを感じましたか?
谷選手:
ヘルメットとサングラスを組み合わせることで、空力性能がさらに良くなるという部分ですね。しかも、エアロヘルメットでありながら軽量化されていて、さらにフィット感もしっかり出せている。そこはすごいなと思います。
あと、珍しいなと思ったのが、このバックルですね。
――一般的なヘルメットだと、バックルは“カチャッ"とはめ込むタイプが多いですよね。
谷選手:
そうなんです。でも、これはマグネット式なので、「すごく珍しいな」と思いました。
――実際、使い勝手はどうでしたか?
谷選手:
最初は少し慣れが必要でしたね。どこにあるかわからなくて(笑)。
岡選手:
でも、寒くて手がかじかんでいる時なんかは、かなり外しやすいですよ。
冬場って、普通のバックルだと硬くて外せない時があるんですけど、これはマグネット式なので。
谷選手:
確かに使いやすいですね。他社とは違う特徴だなとずっと思っています。
――使う前に、何かネガティブなイメージはありましたか?
谷選手:
特になかったですね。
岡選手:
僕もあまりなかったです。
2020年に「デルコ・マルセイユ」というフランスのチームに所属していた時に、サングラスのサポートをEKOIから受けていて、ジャージもEKOI製でした。フランスでは本当にいろいろなチームをサポートしているメーカーだったので、「こんなに大きい会社なんだ」と思いましたね。
当時、日本ではまだそこまで知られていなかったので、「向こうではかなり有名なメーカーなんだ」と、その時に初めて認識しました。
――長く使うことで、印象が変わった部分はありますか?
岡選手:
すごくかっこいいですよね。ヘルメットもサングラスもスタイリッシュですし、最新のトレンドをしっかり取り入れている印象があります。特に、大きめのサングラスでも、全体がすごくスマートに見えるんです。ヘルメットも“キノコ頭"っぽくならない。
そういう見え方って、実はかなり大事だと思っています。
さらに、TT系の空力もかなり研究されていて、本当に良くできているなと感じますね。
機材の選定基準
――先ほど、気候によってヘルメットを使い分けているというお話がありましたが、チーム内で「エアロ派」「軽量派」のように分かれることはあるんですか?
岡選手:
基本的には、ある程度みんな同じような基準で選んでいますね。
ただ、「どっちにしようかな」と悩むくらい微妙な気候の時は、意見が分かれることもあります。
この前のヒルクライムでも、宮崎選手はエアロヘルメットを選んでいましたし、自分と谷選手は軽量モデルを使いました。
――迷う時の判断基準は、どのあたりにあるのでしょう?
谷選手:
ヒルクライムなら、やっぱり軽量性ですね。
それに加えて、「頭の中に熱をこもらせたくない」という感覚があります。なので、より熱を逃がしてくれそうな方を選びたいですね。
岡選手:
自分も感覚はかなり近いですね。あとは、レース距離が短い場合は、多少暑くてもエアロヘルメットで耐えられる感覚があります。クリテリウムみたいな短時間のレースなら、かなり暑い日でもエアロを選ぶことはありますね。
ただ、150kmクラスの長いステージで、しかもかなり暑いとなると、平坦ステージでも通気性重視にすることがあります。
――やはり長距離になると、暑さの影響が大きいんですね。
岡選手:
そうですね。長時間になると、深部体温がどんどん上がってくるので。
数値だけで言えば、おそらくエアロヘルメットの方が速いんだと思います。でも、それ以上に身体のパフォーマンスが落ちてしまうケースもあるので、そのバランスですね。
――サングラスについてですが、大きめのレンズは使い勝手に違いはありますか?
谷選手:
まず風の巻き込みが減りましたね。それがかなり快適で、「やっぱり大きいレンズっていいな」と感じました。
――レンズの明るさについては、どんな印象がありますか?
谷選手:
晴れている時は、全然気にならないですね。レース中も視界がストレスになることはないです。
岡選手:
以前に使っていた明るめのレンズに慣れていたので、最初に支給していただいた頃は、特に冬場や天気が悪い時に「少し暗いかな」という印象はありました。
栃木って山道や林道が多いので、そういう場所では暗く感じたんですが、最近は逆にちょうど良いなと思うようになりましたね。
――レンズの暗さは、集中力にも影響しますか?
谷選手:
そうですね。クリアレンズと比べると、路面状況をより意識して見ないといけないので。
――逆に、晴天時に明るめのレンズを使うことは?
谷選手:
日差しが強い時でもサングラスは必要ですね。サングラスを着けない選手もいますけど、自分は「サングラスなしは厳しいかな」と思っています。
――ヘルメットについては「もう少しこうだったらいいな」という部分はありますか?
谷選手:
僕は、この2モデルがあれば十分かなと思っています。特に不満があるわけではないので、本当に良いものを使わせてもらっているなと感じています。
谷選手・岡選手が語る、EKOIらしさ
――最後に、これまでいろいろなお話を伺ってきましたが、過去に使われていた機材なども踏まえて、“EKOIらしさ"はどんなところにあると感じていますか?
谷選手:
一番感じるのは、ヘルメットやサングラスに対する“競技者目線"ですね。
どのメーカーも、サイクリング向けから本格的な競技志向まで、幅広いラインナップを持っていると思います。でも、EKOIは特に「競技で勝つため」のものづくりをしている印象があります。
本当にスピードを競う人たち向けというか、空力性能や細かいベンチレーション設計など、トップスピードを争う選手たちのために真剣に開発しているんだな、というのを感じました。本当に、競技者向けのものを真剣に作っているブランド、というイメージです。
岡選手:
自分も、谷選手が言っていたことに近いですね。
もちろん、下位モデルにはもう少しライトな層向けの製品もあると思うんですが、僕たちが求めるような最先端の製品が、しっかりラインナップされているんです。
だからこそ、これまで長くワールドチームへのサポートも続けられているんだと思います。
――実際に使ってみて、その理由が見えてきた感覚ですか?
岡選手:
そうですね。レーシーでスタイリッシュですし、しっかり性能も高い。そういう製品を作っているブランドだと感じています。
谷選手:
本当に、良いものを作っていただいてありがたいですね。
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