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スポーツバイクを楽しむ前に知っておきたいこと -安全に楽しむvol.1-
2024.03.07
新たに趣味としてスポーツバイクを始められる方や、新生活が始まるにあたって本格的に自転車通勤(通学)を始められる方が多くいらっしゃる中で、みなさんが気になっているのがヘルメットの着用についてではないでしょうか。
令和5年4月1日からの道路交通法の改定により、すべての自転車利用者にヘルメットの着用努力義務が課されました。運転者は自身がヘルメット着用に努めるだけでなく、子乗せで同乗するお子様もしくは子供用自転車に乗るお子様の保護者はヘルメットを着用させることに努めなければならず、さらに自身が所有する自転車を別の人が運転する場合も着用させるよう努めなければならないという内容です。
このような法改正が行われる背景に、交通事故全体に対する自転車関連事故の割合の増加があります。自動車を含めた全ての乗り物が関係する事故の全体件数は年々減少傾向にありますが、自転車関連事故が占める割合が2016年の18.2%から2022年には23.3%まで増加しました。件数だけでもコロナ禍の2020年から年々微増傾向にあります (一般車など全ての自転車を含めた統計)
事故件数だけ見ると不安に感じるかもしれませんが、その件数以上の多くの方々が事故を起こさず(巻き込まれず)安全に自転車を楽しんでいることも事実なので、安心してスポーツバイクを楽しむためにどのような準備が必要なのか、安全面について詳しく見ていきましょう。
●自転車が関わる事故について
2022年度に発生した自転車関連事故の内訳を見ていくと、どのように事故が発生しているのかが見えてきます。統計別に詳しく見ていきます。
■自動車との関連事故が全体の77%
自転車同士や歩行者との事故、単独事故でもなく自動車との事故がダントツで多く、その発生傾向も出会い頭が過半数、続いて自動車の右左折時と続きます。自動車側の不注意で発生する事故の割合が多いとはいえ、身の安全を確保することが最も重要であることから、”自動車から自転車は見えていない”という意識を持って自転車を運転することが大事と言えます。
■自転車による加害事故が全体の23.8%
2022年度の自転車の運転者が加害者(事故に対する過失割合が多い第1当事者)となる事故の件数は16,000件を超え、そのうち運転者の不注意や操作不適による安全運転義務違反が6割以上を占めます。スマホ操作やイヤホンで音楽を聴くなど、いわゆる”ながら運転”もこれに当たりますが、主な原因は以下のとおりです。
・安全不確認・前方不注意
脇見運転や注意散漫な状態での運転が原因で、視覚的・聴覚的に歩行者や障害物に気づかないことなどが該当します。
・操作不適
傘を差すなどの片手運転による不十分な操作状態や誤った操作で他人に危害を与えることなどが該当します。整備不良による不十分な機械動作が起因する場合も操作不適に当たると思われます。
特に自転車同士や歩行者との事故を防ぐためには、加害者になるかもしれないという意識を強く持つことが大事です。交通ルールをしっかり守り、時間に余裕を持って運転することはもちろん、体調が優れない時は無理をしない判断も大事です。万が一に備えて自転車保険への加入することも重要です。
自転車の交通ルールをおさらいしておきたいという方は、警視庁のホームページでご確認いただけます。
●備えあれば憂いなし
道交法上では自転車も自動車やオートバイと同じ”車両”に区分されるので、自動車と共に車道を走るケースも少なくありません。車道での事故は自転車にとって重大事故に繋がる割合も少なくないことから、事故や大怪我を未然に防ぐ工夫はもちろん、万が一に備えておくことが重要です。ここではその一部をご紹介したいと思います。
■自動車に気づいてもらいやすい工夫
“自動車からこちらの存在に気づいているだろう”という過信のもと自転車を運転するのは危険です。自動車にも死角が存在する上に運転者の不注意がいつ起こるかわかりませんので、できる限り存在を知らせる工夫が必要です。
・点灯型ライトの装備
フロントライトは道交法で義務付けられていますが、後方については反射器材が備わっていることが義務付けられています。しかし、点灯式と比較して視認性が不十分である上に、後方からの自動車による追突事故での致死率が高いことから、点灯型テールライトの装備も重要となります。
・視認性の高い服装
特に夕方以降の暗い時間帯で、自動車からの視認性を高めるには明るめの目立つ色の服装である方が望ましいです。色だけでなく反射材など注意を引けるものを身につけることも視認性を高めるのでオススメです。
・ヘルメットの着用
自転車の死亡事故の死因の過半数が頭部の損傷によるものです。着用の努力義務が課せられたからということではなく、万が一の時に自身の命を守る手段として身につけることが重要だと思います。また、ヘルメットならどれでも良いわけではなく、安全基準をクリアしたものや適切なサイズを選ぶことでより安心して自転車に乗ることができます。
・自転車の定期的な整備・点検
ブレーキが十分効かない、ライトが点かない、タイヤの空気が入っていないなど、自転車が正しく機能しないことで発生する事故も少なくありません。特に集合住宅や各施設の駐輪場など人の出入りが多い場所では、知らないところで車体が倒されるなどでダメージが加わることも。トラブルを未然に防ぐためにも乗車前の動作チェックや自転車店での定期点検を受けることをオススメします。
・心にゆとりを持って運転する
自動車も同様ですが、焦りなどによる不注意は事故を誘発します。急いでいる時も”危なそうだな”と思ったら無理をせず進路を譲る心の余裕や、「大丈夫だろう」ではなく「危ないかもしれない」という意識を持って運転するだけでも防げる危険はかなり多いです。
他にも雨や汗でハンドルから手が滑らないようグローブの着用や、視界を保護するアイテム(サングラスなど)も安全に乗車するために取り入れることをオススメします。
●どんなアイテムを選べば安心?
より安全に自転車に乗るために、どのようなアイテムを選べば良いのかわからない!という方のために、前段でも触れましたライトとヘルメットの選択基準についてご紹介したいと思います。価格や見た目など様々なこだわりがあると思いますが、基本を押さえておけば安全を損なうことなくお気に入りのアイテムが見つかること間違いなしです!
・フロントライト
フロントライトは道交法により前方10メートルの障害物が確認できる光量が求められますので、最低でも50ルーメン以上のものを選びましょう。街灯の少ない暗い道を走る方や、スピードが出るロードバイクに夜間乗る方などは、もっと多くの光量(400ルーメン以上)を必要とします。頻繁に使用するならランニングコストの点で電池式より充電式のものが経済的で、出先でもUSBで簡単に充電できるものが多いです。
・リアライト
明るいLEDで点灯・点滅が選択できるものが好ましいです。ただ、どれだけ明るくても後方から見えにくいと意味がないため、他の器具や荷物などで隠れないように見やすい位置に取り付けられるライトを選びましょう。フロントライト同様に頻繁に使用するなら充電式のものが経済的です。
・ヘルメット
自転車ヘルメットの規格は国によって異なりますが、次にご紹介する各規格については日本で流通しているヘルメットの多くに採用されており、一定の強度水準を満たしているので安全性が担保されていると言えます。
・SG / 日本の製品安全協会が定める規格。商品にSGマークが貼付
・CE / ヨーロッパ各国(EU加盟国)の安全基準を満たす統一規格。
・CPSC / 米国消費者製品安全委員会が定める、アメリカ向け商品に必要な安全基準。
高い耐衝撃性が備わっているヘルメットの一般的な構造は、硬質なシェル(ポリカーボネート素材の外殻部分)と衝撃吸収ライナー(内側の発泡スチロール部分)を重ねて成形し、衝突時の大破を防ぎつつ衝撃を緩和する仕組みとなっています。
国内メーカーおよび欧米メーカーのヘルメットで上記規格が明記されていれば安全性は高く、記載が見当たらない場合は安全性が不明なので、まずは購入前に安全基準を満たす商品かどうかを確認しましょう。通常はウェブサイトやヘルメット内部に貼付されているラベルに明記されています。
安全性が高くても着用方法が間違っていると正しく頭部を保護することができないので、自分の頭のサイズ(頭周の長さ)を確認し、正しい装着方法で身につけることが重要です。また、サイズは適合していても頭の形状によって合わない商品もありますので、横幅が広い形状の場合はアジアンフィット仕様もしくは幅広タイプのヘルメットを選びましょう。
※JCF, JBCF主催のレースではJCF公認ヘルメットの使用が義務付けられています。JCF公認ヘルメットにはこのようなステッカーが貼付されています。公認かどうかの確認は各メーカーウェブサイトに明記されています。
■スポーツバイクを長く楽しむために
サイクリングは身体への負担が他のスポーツよりも少ない上に、カロリー消費や筋力アップの効率が高く、長く続けられるスポーツということから若い世代だけでなく年配層が多いのが特徴です。また、日々の生活に欠かせない乗り物として身近な存在でもありますが、安全に乗り続けるためにも事故や転倒のリスクと隣り合わせという自覚が必要となります。
また、交通安全とは道路を使用する全ての人がルールに遵守することで初めて成り立つものなので、交通ルールを守ることは当然ですが他人を思いやる気持ちが事故発生率を減らすのは間違いないと思います。
自転車のエンジンは身体そのものです。事故や転倒で怪我をすると乗れなくなってしまうことから、長く楽しむために押さえておくべきポイントとして参考にいただけると幸いです!
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