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0.3からはじめるウルトラライト輪行ソロキャンプ Vol.04 ミニマムな装備による防寒とは
2024.03.18
冬キャンプといえば焚き火やストーブを持ち込んで…というイメージが強いが、UL(ウルトラライト)キャンプでは快適さを担保しながらも荷物は必要最小限にする方向。ましてや自分の場合、ギアを充実させた映えるキャンプではなく、ミニマムな装備でハードな環境を克服することに今は惹かれている。
という中で、この連載もようやくVol.04。前回は初めてのソロキャンプということで、設営、食事、睡眠の三要素について最低限のレベルでお届けした。事情により3月に入ってしまったが、今回は寒さ対策をテーマにご紹介したいと思う。
今回の野営地は
前回利用した滋賀県営都市公園 湖岸緑地 木浜1が、キャンプ設備は無いが、琵琶湖越しに比叡山を望む気持ちのいい場所だったので、今回も同じような場所にしてみた。木浜1から直線距離で25kmほど北東に位置する、湖岸緑地 南三ツ谷だ。住所でいうと彦根市、こちらもバーベキューやキャンプが許可されている緑地となる。
*滋賀県営都市公園 湖岸緑地についてはVol.03を参照。
JR 稲枝駅で降りて輪行解除。3月とはいえ最低気温は2℃予報、シュラフ(寝袋)や防寒具でバックパックは大きくなった。
野営地までは距離にして6kmほど。線路をアンダーパスした以外はほぼフラットだった。晴天に恵まれ、田畑の広がる中を走るのが気持ちいい。軽量&コンパクトさと走行性能のバランスがとても良いDAHON K3は、輪行ライド用としては個人的にベストチョイス。
と言ってる間に到着。まだ冬らしい景色で寒々しいが、緑地の先に湖が広がるイメージどおりの場所だ。緑地自体の広さは前回の木浜1よりも少し狭いが、それでもどこにタープを張ろうかと思うくらいの広さがある。
まとまった量の雨が降った翌々日だったが、湖の水は澄んで綺麗だった。
タープを張った姿を想像しながら歩き回って、ようやく場所を決定。設営前にコーヒーでも飲んで休憩しよう。
今回の装備と設営
装備に関する前回からの大きな変更としては、シュラフをメッシュ状のインナーシーツから、冬の低山まで使用可能なものにした点。スペックと重量のバランスをみて、NANGAのUDD BAG 450DXを選んだ。スペック的には快適使用温度 1℃ / 下限温度 -4℃、ダウン量 450g、総重量 約825gとなる。収納時のサイズは、ファミキャンで使っているシュラフとは比べものにならないくらいコンパクトだ。
加えて、更なる防寒と、不意の雨や夜露/朝露でシュラフが濡れるのを防ぐシュラフカバーとしてSOLのEscape Lite Bivvyを用意した。本来は登山での不意のビバークへの備えとして念のために持っていくもので、これ1枚で使うことが多いようだ。このSOLのラインナップには、右サイドにジッパーが付きマチのあるマミー型のEscape Bivvyと、よりシンプルな封筒型でマチもジッパーもないEscape Lite Bivvyがあり、軽さ優先で前者228gに対して146g(いずれも袋除く)とより軽い「Lite」の方を購入した。
どの程度暖かくなるか事前に自宅でテストしてみた。1月下旬、すっかり空気の冷えた22時ごろだったが、このままここで寝てしまおうかと思うほど快適だった。
今回の主だった装備。左から寝袋関係、テント関係、調理関係。コンパクトとはいえ装備の中ではシュラフが大きなウェイトを占める。これ以外にも防寒対策のウェア類はボリュームが大きくなった。
さて、設営。今回ももちろん、テント代わりにポンチョをタープ状に立てるスタイル。支柱は用意しなかった(できなかった)。「山道具 谷ノ木舎」で重さを全く感じさせないカーボン製の支柱に触れてしまい、1万円ほどするので購入を躊躇したまま今日に至るのだ。で結局、木の幹からロープで吊り下げることにした。
今日の寝床。うーん、この開放感が刺激的(笑)。片面フルオープンのまま、きちんと眠って翌朝を迎えることができるのかが、今回の最大のポイントとなる。風はずっと湖面から吹いている。本来、風上側は閉じたいところだが、風景は犠牲にはできない。
湖畔での野営風景
陽がだいぶ傾いてきた。これくらいの時間がキャンプでは一番好きだな。グループでのキャンプなら、料理の得意な誰かが何か美味しいものを作ってくれている頃だろう。焚き火で薪がパチパチ鳴る音や、煙の匂いもいいよね。(今年はソロでも焚き火をしてみよう)
写真を撮って遊んでいたら、すぐに太陽が見えなくなった。なんとも言えない豊かな色合い。
辺りはすっかり暗くなった。チャイでも淹れるとするか。今回は寒さ対策として温かいものを飲んだり食べたりすることを考えていたので、チャイの準備もしてきたのだ。チャイショップでアルバイトをしていた学生の頃から数えると数十年前からチャイを飲み続けて、淹れ続けてきたことになるが、経験的にチャイは結構温まるイメージがある。
必要なものは茶葉、牛乳、少量の水、砂糖。生姜でも入れたらさらに身体が温まるだろうが、今回はスパイス類は割愛した。
……とここで、茶こしを忘れたことに気付いた。残念だがチャイは作れないので、コーヒーで我慢。気持ちの切り替えは必要だ。
コーヒーはペーパードリップ式でもそれなりに美味しいので、気軽でいい。
ちなみに、シングルバーナーとクッカーの組み合わせでチャイをうまく淹れられるか、事前に自宅でテストしていたので、その時の様子をご紹介。茶葉はアッサムをスプーンで押しつけて細かく砕いたもの。
基本的には牛乳で茶葉を煮出すだけなので、キャンプでチャイを淹れるのは難しくないだろう。沸騰した牛乳が何度も吹きこぼれそうになるのを経て美味しいチャイが出来上がる。
あぁ、美味しかった。
またテントの周りで撮影ごっこ。
それでは夕食にしますか。今日の献立はイタリアの野菜スープ「ミネストローネ(のビギナー向け簡単版)」。身体が温まるもの、料理初心者でも失敗せずに作れるもの、クッカーひとつで作れるもの、という条件から決めた。
材料はこちら。ウインナー、玉ねぎ、人参、じゃがいも、椎茸、ピーマン、キャベツ、トマト缶、ニンニク、コンソメ、塩コショウ(とバケット)。必要量だけ予め自宅で準備し、現地ではクッカーで加熱するだけにしておいた。
クッカーに具材を入れて、焦げないように少しだけ水を追加し加熱。
野菜の水分が飛んで具材のボリュームが減るので、そのタイミングで味付けと、
トマトを投入。シングルバーナーのガスのゴーっていう音、めちゃ好きだな。
しばらく煮詰めるだけで、出来上がり。こんなに食べられるかなーと思ったものの、完食した。家庭の中で料理をするのはハードルが高いが、ソロキャンプなら料理初心者でも気負いせずに1から取り組めるような気がする。
食後、夜景を撮ってみた。三脚は重いため持ってきておらず、波打ち際にカメラを直置きして撮影。流木でレンズに角度をつけて、遠い対岸と夜空が入るようにした。ピントは予めマニュアルで固定しておき、シャッターボタンを押す際のブレ防止にタイマーを利用した。ゆくゆくはバルブ撮影などもしてみたい。
星を撮るのを楽しんでいたら、時間があっという間に過ぎていた。沢木耕太郎の「深夜特急」を読み直そうと1巻の「香港・マカオ」編を持ってきていたのだが、寝入るチャンスがあれば逃したくないと思った。このままシュラフに入るとしよう。
いよいよ本日のクライマックス、就寝の時間だ。陽のあるうちは真冬らしい寒さは無かったが、今回の装備でどこまでの寒さに耐えられるのか不安だ。
寝るときは服装をどうしようかと思ったが、とりあえず全部着込んで寝るとする。どうしても寒ければチタンボルトで湯を沸かしてそのまま湯たんぽ代わりにシュラフの中で足を温めようかとも考えていたが、そこまでではなかった。波の音がうるさいが、思いのほかすぐに眠ることができた。
2時ごろ、寒くて目が覚めた。相変わらず波の音がうるさい。寝ながらにして星が綺麗に見える。顔が冷たい。首元から冷気がシュラフの中に入り全身を冷やしているように思ったので、シュラフを完全に閉じて(シュラフの中に顔も埋めて)外気が一切入らないようにした。その後4時ごろ、6時ごろと2時間ごとに目が覚めたが、後半は暖かく眠れた。スマホの天気予報アプリによると、現時点で2.4℃らしい。
朝は必ずやってくる
清々しい気分で朝を迎えた。無事に一夜を乗り越えた安堵感が大きい。琵琶湖の対岸は霞んで見えない。
テントの周りを見回る。異常無し。寒さの問題を除けば、虫も動物も少ない冬はキャンプに向いているというのも納得できる。
朝日を見に、散歩してみる。畑の向こうでトラックが走っている。町が動き始めた。
テントに戻ると、陽が差していた。
淹れ損ねたチャイの材料、牛乳で身体を温める。3COINS(330円)で買ったマルチツールがなかなか役立つ。
湯気でレンズが曇った。朝一で飲むホットミルクが美味しい。自宅キッチンのガスレンジと同じくらい気軽に火を使えるシングルバーナーの存在は大きい。
ポンチョが濡れて雫になっているのは、実は生地の内側。外側との温度の差により発生する結露だ。自分の好きな湖面に近い場所は湿度が高いし、フライシートのあるようなダブルウォールテントは重くULキャンプには向かないので、どうしても結露とはこの先も付き合っていくことになりそうだ。
ULキャンプにはストイックなイメージがあるかもしれないが、別に何かの訓練をしているわけではないので自分の好きにすればいい。あれこれ考えながら自分の理想のスタイルに向かって挑戦し、克服することで自分の成長を確認する。逆境とも思えるようなことを乗り越えた時、リフレッシュして日常のストレスからも解放される。自分はその快感に取り憑かれ始めているのかもしれない。
ポンチョやシュラフを干して軽く乾燥させ、ゆっくり帰るとしよう。
チェアリングの延長のような気軽さを目標に、自転車とバックパックひとつで輪行しキャンプに行く。ミニマムな装備での野営は少しドキドキすることもあるが、日本には全国くまなく駅があり、輪行すれば「楽に長距離を」「比較的安価に」移動できる。輪行を取り入れた自転車キャンプ、やっぱり自分に合ってるようだ。
次はどこに行こうかな。釣りとか、星の撮影とかもっとしてみたいな。
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