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輪界の人脈の輪をたどるインタビュー vol.5 「観葉植物も買えるコーヒースタンド店長」

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隅田川のすぐ近く、下町の気安さとおしゃれさを併せ持つエリア。東京都・錦糸町駅から歩いて15分ほどに位置する「PERK SHOP」は、観葉植物とコーヒーを扱う店だ。店舗の奥は建築事務所になっていて、コーヒーを楽しみながら住まいの相談をすることもできる。2021年8月のオープンから、建築家である夫と共にこの店を切り盛りする八田春菜さんに、自転車との出合いや現在の楽しみ方を聞く。

「カルチャー」としての自転車にハマった

開放感のある店頭に、さまざまな植物とカラフルなじょうろやポットが並ぶコーヒースタンド「PERK SHOP」。日々このカウンターに立つ八田春菜さんは、もともとはアパレル関係の仕事をしていた。

「古着も好きだったし、同僚やお客さんとのコミュニケーションの中で、ピ/ストやBMXなどのストリートカルチャーに触れる機会も多くありました。いろんなワザに挑戦している友達にも影響されて、ちょっとした遊びもできる自転車を選んだんです」

当初は仲間と一緒にトリックの練習するなど、アクティブな楽しみ方にもハマっていた八田さん。だが生活の中で、自転車に求めるものも少しずつ変化していったそうだ。

初代の愛車も取り回しやすさから小径車を選んだ。「気に入っていた分、しっかり年季が入っています」と笑う

「以前の愛車も、固定ギアからフリー化して、街乗りもこなせるようにしていました。でも出先で泥よけやスタンド、ギアなどがついている自転車を見かけると、やっぱり便利そうで『いいなー』と目がいって。それにこれから長く乗ることを考えると、あまりスポーティーなモデルは腰が痛くなるんじゃないかという心配も(笑)。買い換えるなら、普段使いで気軽に乗れる自転車にしようと思うようになりました」

DAHONのCalmは、まさにそうした気軽さが気に入って選んだものだ。

「よく走るのは東東京エリアです。小回りが利くので日本橋などにも都心方面も走りやすい。趣味と実益を兼ねて、コーヒー屋さんを探して自転車散歩に出かけることも多いですね」

下町の走りやすいロケーションもあってか、店のスタッフやお客さんにも自転車好きが多く、話のタネとしても活躍しているという。

ダホン・カームと八田さん。丸みを感じる全体の雰囲気や、カゴがつけられる台座がついているのも気に入っている

「お客さんには必ずこちらから声をかける」

商店街育ちである八田さんには、いつか店を持ちたいという夢があった。建築家である夫にも「事務所を路面店にしたい」という思いがあり、二人の好きなものを扱う店を出そうと決めた。

「私も下町育ちなので、気取らず気さくで明るいお店にしたくて。夫婦で相談して、店名は『元気になる』『活気づける』という意味もある『PERK』にしました」

開店したのはコロナ禍の最中だったが、「いろんな業態があることで乗り切れた」と語る。もちろん、そのためにさまざまな準備を重ねてきた。

まずはコーヒーショップで働きながら知識を得て、コーヒーマイスターの資格を取得した。その経験を通じて学んだことは、「焙煎はプロに任せるべき」だということだ。

「私はコーヒーの勉強を始めてからまだ5年程度。この間に、豆の特性も見極めて微調整する焙煎はあまりに奥が深くて、簡単に手を出していいものではないということがわかりました。そこはプロにお任せして、私はおいしいコーヒーを見つけることと、ここでベストなコーヒーを淹れることに専念しています」

現在店で出しているコーヒーは、修行時代などの縁を活かし、八田さんたちが厳選したものばかり。期間限定のものを用意したり、遠方からバリスタを招くイベントを開催したりもしている。

「PERK BLEND」は、すぐ近くにある「大横川親水公園での散歩」をイメージしたオリジナルブレンド
頭文字の「P」が入ったカップもオリジナルで、知り合いの陶芸作家が手がけたもの

また、独学でWebデザインの勉強も始めた。今回紹介してくれた村山さんと出会ったのはこれがきっかけで、「Webを学ぶ人のオフ会的な集まりに参加したとき、近くの席に座っていたのが村山さん。自転車など共通の話題が多くて、すぐに仲良くなりました」と振り返る。勉強したことはしっかり活かしていて、店や事務所のHP制作は八田さんが手がけている。

植物の育て方についても、やはり観葉植物を扱う大型店で働いて経験を積んだ。そこで学んだことも、八田さんにこの店の方向性を決めさせたようだ。

「植物も生き物なので、きちんと世話をしてあげないと元気がなくなったり枯れたりしてしまう。また近年は、お花などの植物が消費者に届く前に廃棄されることも問題になっています。私はなるべくそういうことを少なくして、植物を大事にするお店にしたいと思ったんです」

店を持つにあたって、八田さんは観葉植物の仕入れ先となる農家にも直接連絡し、実際の環境を見せてもらって取り引きをまとめた。「生産者の方がどんな気持ちで植物を育てているかを知って、大切にしなければという思いも強くなりました」と話す八田さんが注力していることは二つある。一つはもちろん、自分の手元にある間、植物をいい状態に保つこと。そしてもう一つは、店を訪れる人への声かけだ。

「植物の手入れの仕方がわからなくても、なんだかお店では質問しづらかったりしませんか。私はお店の人に話しかけることができず、正しい知識がないまま購入して、2万円ぐらいする観葉植物を枯らしてしまったことがありました。お客さんにも植物にもそんな思いをしてほしくないので、必ずこちらから話しかけるようにしています」

家の日当たりはどうか、窓はあるか。一人で育てるのか、それとも一緒に見てくれる人がいるのか。水やりの頻度など欠かせない情報だけでなく、その植物がその人の生活スタイルに合うかどうか、八田さんはお客さんと一緒に考える。

取材中にも若い女性が店に入ってきて、いくつかの植物をためつすがめつし出した。八田さんがすっと話しかけると、その女性客は待っていたように質問を始めた。結局、15分ほどの会話を経て、彼女は2000円ほどの観葉植物を選んで会計した。八田さんは店のSNSに掲載するための記念撮影をしたあと、「わからないことがあったらいつでも聞いてくださいね」とその女性客を見送った。

店内にはさまざまな植物のほか、植え替えや寄せ植えが楽しくなる鉢も用意

人を選ばず「入り口の役割を果たしたい」

店頭で取り扱う植物自体は決して珍しいものではなく、ホームセンターでも手に入るような親しみやすいものだそうだ。鉢やグッズ選びも楽しんでほしいが、八田さんは「マニアックな店にはしたくない」と続ける。

「詳しくなることもいいことだと思います。ここがきっかけで観葉植物に興味を持ってくれて、今では私よりずっと詳しくなったお客さんもいます(笑)。この店を物足りないと思う人もいるかもしれませんが、私が入り口の役割を果たせたならそれでいい。あまり突き詰めてこだわると、人を選ぶようになってしまうと思うんです」

この言葉が、八田さんのすべてのものへのスタンスを表しているのだろう。自転車も大好きだが、「すごいカスタムをするのは、私にはちょっと合わないかな」と感じている。コーヒーも極めたいと思っているが「ハードルを上げてカウンター席を作ると、初めて来る人が入りづらい雰囲気になってしまうかも。だからスツールやベンチも自由に座れる配置にしています」と説明する。

「いろんな業態があるとお話ししましたが、コーヒーや植物や自転車、あるいは建築にまつわることが、来てくれる人とのコミュニケーションのきっかけになったらいいなと思っています。言葉を交わしていく中で、その人の『好き』を見つけてもらえたらいいですよね。要するに、私自身は人との会話が大好きなんです」

今後は観葉植物以外のグッズも置いていきたいし、若手アーティストやほかのショップとのコラボレーションも増やしていきたいと話す八田さん。目指すのは「生活がちょっと楽しくなるローカルコミュニケーションの場」だ。その目標はかなりの割合で達成されているようで、取材中にも店の前をご近所さんが何度も通り、八田さんはそのたびに笑顔で手を振っていた。冒頭の写真も、実はその瞬間をとらえたものだ。


次回は八田さんのお友達を紹介します。お楽しみに!

 

*Link → これまでの「輪界の人脈の輪をたどるインタビュー一覧

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