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RIDE&FISHって知ってる? 自転車と釣りを一緒に楽しめる新しいスタイルのススメ
2022.09.24
※この記事は2022年9月24日にLINZINEで公開されたものです。
アウトドアブームの高まりを受けて自転車界隈ではバイクパッキングが注目されているが、今回のテーマは「自転車と釣り」。自転車に釣具を載せて走り出せばいろんな釣り場へアクセスしやすいだろうし、サイクリングの途中に偶然発見したポイントを攻めることもできそうだな、と素人的発想だが想像できる。ソロキャンプやチェアリングに行く際にちょっとした釣具を追加するだけでも出先での楽しみがだいぶ広がるだろうし、何より釣りを嗜む大人は格好良さそう。SNS映えもするだろうし、逆にSNSに興味のない方が自分とじっくり向き合う時間にもなりそうだ。釣りに求めるものは人によって違うだろうけど、とにかく釣りは魅力的である。
ということで、今回は自転車と釣りに精通した人物をご紹介しよう。自転車で釣りに出掛ける「RIDE&FISH」を広く提案されているSHIMANO SQUARE(シマノスクエア)の副店長、浅野健介さんに、自転車と釣りの楽しみ方を伺ってきた。
RIDE&FISHとは
シマノスクエアは、グランフロント大阪北館にあるサイクリングやフィッシングをテーマにした、株式会社シマノが運営する施設だ。自転車文化・釣り文化に触れられる展示スペースや、じっくり熟成された生ハムや、昔ながらの製法でつくられたパストラミビーフなど、こだわりから生まれた食材をふんだんに味わえるカフェ、自転車や釣り専門のコンシェルジュがいたり、自転車・釣り・食の3つのカルチャーをベースにしたイベントも精力的に開催されている。
——シマノさんは自転車業界において世界的にメジャーな自転車部品の企業であり、フィッシング業界でも同様に世界的な釣具メーカーとして有名で、「世界のシマノ」とも呼ばれています。シマノスクエアでは、自転車と釣りを一緒に楽しむレジャースタイル「RIDE&FISH」をご提案されていますが、まさにシマノさんの活躍されている両分野をいかした取り組みですね。
浅野さん:ご存知の通りシマノは自転車部品と釣具の分野で活躍する企業ですが、同じ「シマノ」でありながら、モノ作り以外の部分では殆ど交わることがありませんでした。私は入社以来、自転車デザイン部門や釣具デザイン部門などで勤務していましたが、各部門在任中には、いろいろな経験をさせて頂き、自転車や釣りの楽しさや難しさを学びました。2021年より自転車文化、釣り文化の発信拠点でもあるシマノスクエアに勤務する事となり、それを機に「RIDE&FISH」を社内で提案したところ理解を得ることができたので、シマノならではの遊び方の提案を開始しました。
——両方の部門で勤務された経験のある浅野さんだからこその、素晴らしいご提案ですね。RIDE&FISHはアキボウでも以前から、自転車を活用できるアクティビティの一つとして捉え、その楽しみ方を広く世間に知っていただきたいと思ってきましたが、なかなか深いところまで取り組むことはできていません。今回、この記事を通して多くの方に興味をもっていただければと思います。
浅野さん:このRIDE&FISHは全ての釣りでできるわけではありませんが、ルアーフィッシングを中心に親和性が高い遊び方だと思っています。クルマならより遠くまで移動できますが、釣り場のそばに駐車場があるとは限らず、路上駐車などをする事となり、様々なトラブルの原因になっていました。しかしRIDE&FISHを取り入れて頂く事で、最寄りの駐車場から釣り場までは自転車で移動するから新たな機動性が生まれるんです。
——なるほど、車で行った先で自転車に乗り換えると、行動範囲はかなり広がりそうですね。
浅野さん:例えばトラウトフィッシングでは、マウンテンバイクやグラベルバイクを使って山道のライドを楽しみながら釣りのポイントまで移動して渓流を釣り歩けば、自転車も釣りもどちらも楽しむことができるんです。ランガン(歩いて釣り歩く事の通称)するよりも圧倒的に広範囲を移動することもできるので、チャンスも広がります。先日シマノスクエアで制作したRIDE&FISHのトラウト編をご覧頂ければイメージしやすいので、ぜひご覧ください。
——これは自分も真似したくなる素敵な動画ですね〜。移動手段としての自転車だけでなく、自転車の楽しみも見出せます。
浅野さん:また都市河川などでも活躍してくれます。都市部では特にクルマの駐車場所が問題となり得ますが、RIDE&FISHなら釣り場のそばまで自転車に乗って行けるし、クルマでは見過ごしてしまいそうなポイントへ手軽にアプローチできるので、非常に便利です。
——釣りで自転車を活用すると便利な点をお聞きしましたが、もちろんその逆の、普段自転車であちこちに行くのが好きな方にとっても、時には釣りをしてみるといったアプローチでも楽しめそうですね。
浅野さん:自転車に乗ることを目的にするのも良いのですが、そこに何か別の楽しみをプラスすると、より豊かな時間が過ごせると思っています。シマノスクエアでは散歩をするように自転車に乗っていろいろ楽しむことを「散走(さんそう)」と呼んでいます。自転車に掛け合わせられる楽しみは人それぞれ自由なので、釣り以外にもカフェ巡りや名所巡りなどなど、皆さんもっと自由に楽しんでほしいです。
——これまで経験のない方がいきなり釣りデビューするのはハードルが高いですが、これまでの延長線上に釣り要素をちょっとプラスする程度でいいなら、嬉しいですね。
浅野さん:近年シマノからモバイルコンセプトを採用したコンパクトに収納できるロッド(釣り竿)が入門クラスから本格的なクラスまで幅広くラインナップされているんです。この種のロッドであれば、自転車のトップチューブやハンドルにベルト固定できるので、特別な自転車でなくとも手軽に釣りを始めることができます。海岸線のサイクリングを楽しみながら、浜辺でルアーをキャストして釣りを楽しむのも楽しいですよ。でもその時はSPDシューズだと危なかったりするので、履き替えるサンダルなんかも持っておいた方が良いですよ。
——この記事は自転車好きの方が多く読まれていると思いますので、釣りについてあまりご存じない方にご説明をお願いします。
浅野さん:釣りは海の釣りや川の釣りなど様々楽しむことができます。釣り経験のあるサイクリストが海岸線沿いのサイクリングルートや河川敷などに整備された自転車道を走っていると「ここ釣れそう」というポイントに出会った経験があるかもしれません。少し道具は必要になりますが、ロケーションに合わせて釣具を準備しておけば、釣りも一緒に楽しめますよ。
都心部で楽しむ釣り
——釣りとひとことで言っても、いろんなスタイルがありますよね。個人的には若い頃に湖や池でバス釣りをしていました。
浅野さん:僕も昔は自宅近くの川などでバスや雷魚を釣って遊んでいました。仰る通り釣りにもいろいろなスタイルがあるので釣具も様々です。自転車と同様に深みに嵌ると大変な拘りの世界が待ち受けています。
——自転車が活躍するのはやはり、少し離れたポイントを次々と探っている際の移動かなと思いますが、どういった釣りでしょうか。
浅野さん:まさにランガンするような場所の釣りで試してみてほしいです。RIDE&FISHのネーミングを考えていた時もランガンを引き合いに社内資料作っていました。ランガンにも良さがあるのですが、より広範囲を釣りするには自転車は強力なツールになってくれるので。
——具体的にはどんな場所で楽しめますか。
浅野さん:非常に身近なところでは、今回ご一緒した淀川河川敷のサイクリングロードを利用しながらの釣りなどは年中楽しまれている方を多く見受けます。私が住んでいる堺市でも、「バチ抜け」と呼ばれるイソメやゴカイなどの繁殖期にシーバス(鱸)の捕食が活発になる時期などは、市街地の河川や河口付近などでもRIDE&FISHを楽しむことができますよ。もちろん釣りが禁止されている場所もあるのでルールを守って楽しみたいですね。
——釣りって身近なところでも楽しめるのでいいですね。淀川河川敷といえば、森の中にある野池のような風景がいくつも連なる城北ワンドの雰囲気が好きで、実際に釣り上げることは自分のスキルでは難しかったですけど好きでした。色々なことを忘れて無心になれるところが好きなので、私の場合は釣果よりも雰囲気重視です。浅野さんはどんな釣りをよくされますか。
浅野さん:個人的に行くのは「ソルトルアーフィッシング」と呼ばれる海の釣りです。シーバスを狙う事が多いのですが、僕も雰囲気重視の釣り人かもしれないです。朝夕のマヅメ時の赤らむ空の雰囲気や無心でルアーをキャストしているときは、ちょっとした非日常の時間に浸っている気がします。またシマノスクエアのイベントでは、初心者の方を対象にご案内する事が多いので、海釣り公園、釣り堀などの管理釣り場をご案内しています。まずは魚の引きや水の中から手に伝わってくる生命感を感じてもらう事を大切にしています。
——初心者向きのスポットで詳しい人に教えてもらえるイベントがあるのは嬉しいですね。私は、シーバスは大きそう&ハードそうという勝手なイメージがあって、自然の中でゆったり楽しめそうな池やダム湖でバス釣りをすることが多かったです(ハードルアーしか使わない、という変なこだわりもありましたが)。
浅野さん:私が普段使っているのは「フリースタイル」というシマノが提唱するジャンルの垣根を越えたシリーズのひとつでもあるスコーピオンの5ピースロッドを使っています。フリースタイルという名の通り非常に幅広い釣りに対応する事ができるマルチユースなロッドにスピニングリールを使って釣りをすることが多いです。ベイトリールを使うときも同様にスコーピオンシリーズは活躍してくれますよ。
取材当日はシマノスクエアの店舗から飛び出して、淀川の河川敷にいつものRIDE&FISHのスタイルで移動。5キロほどで広大なフィールドが広がる好立地。目的地に着いて、どこが釣れそうかポイントを考えている時が一番ワクワクするという方も多いのでは?
都会での移動には、コンパクトな釣具が便利。浅野さんはロッドやルアーボックスなど全ての道具をパニアバッグに入れてきていた。
河川敷に佇むTernと浅野さん。絵になります。イケてる社会人です。
ここでは魚の反応が無かったので、次のポイントへ移動します。自転車があるとどんどんポイントを移動できますよ。
鉄橋の橋脚に、ちょっと雰囲気のいいところがありました。
浅野さん、木陰や岸際を狙って遠くからキャストし、結構攻めます。
都心部なのに自然の中。仕事を忘れてトリップできます。釣り最高!
なんて思いながら、釣りに没頭しかけましたが、今回の取材は夕間詰めまで釣りを続けるわけにいかなかったので、後ろ髪を引かれつつ早々に撤収となりました。
浅野さん:魚が釣れると格別ですが、意外と釣れなくても楽しめるのが釣りだと思っています。何で釣れなかったんだろうとか、次の釣行に向けて釣具屋さんでルアーを物色したりと、釣りに行く前後も楽しみのひとつなんです。自転車もそうですよね。いろいろと想像を膨らませている時って何でも楽しいじゃないですか。
シーンに応じて特徴を生かせる自転車の種類
——一見難しそうに感じる釣具ですが、詳しい方に伺うとス〜ッと理解できた気がしますね。釣りに行かれる際に乗る自転車としては、どういったタイプがおすすめですか。
浅野さん:現在所有している自転車がロードバイクとグラベルバイクなのですが、RIDE&FISHを楽しむ時にはグラベルバイクを使っています。やはり路面状況を気にせず走れるので、未舗装の河川敷や山道なども気兼ねなくポイントを目指すことができるのでオススメです。
——仰るとおり、路面を気にせず走れるグラベルバイクは目指す釣り場にアクセスできる最強の乗り物でしょうね。
浅野さん:私のグラベルバイクにはキャリアを装着しています。キャンプなども楽しむタイプなので、パニアバッグなども装着して、十分な積載量を確保しようとしていますが、釣りを楽しむ時にも大活躍です。だから折りたたみのできるミニベロもキャリアが標準装備されたTernのVERGE S8iを利用させてもらってRIDE&FISHを楽しんだりもしています。
浅野さん:キャリアがあれば、いろいろと荷物が積載できるようにカスタムすることも可能なので、自転車に乗って何か別の遊びも組み合わせるのなら便利ですよ。パニアバッグなら簡単に装着が可能ですし、工夫次第ではタックルボックスやクーラーボックスも取り付けて出掛けることもできますよ。
——自転車ファンの間では自転車キャンプやバイクパッキングなどが流行っていますが、釣具を自転車に積載するノウハウはあまり情報がないので、今後のシマノスクエアのブログ(SQUARE BLOG)のHow To記事にも期待しておきますね。走破性の高いグラベルバイクに対して、フォールディングバイク(折りたたみ自転車)を利用するメリットはやはり車載でしょうか。
浅野さん:移動手段が自転車だけとなると行動範囲も限られてしまいますが、クルマに載せたり、輪行して電車で移動すれば、行動範囲も広がります。そういった理由からも折りたたみ式のミニベロは手軽でコンパクトに収納も可能なので、クルマや電車などへの載せ下ろしもラクラクです。
落ち着いたカフェを併設するシマノ直営の情報拠点
——浅野さんもいらっしゃるシマノスクエアについて、ご存知なかった方に簡単に教えてください。
浅野さん:シマノスクエアは株式会社シマノの直営店舗で自転車や釣具のショールームとカフェを併設しています。グランフロント大阪 北館4階のナレッジキャピタルエリアにあります。自転車文化、釣り文化の発信拠点としての役割を担っています。サンドイッチなどのお食事や各種ドリンクも販売しておりますので、カフェスペースでのんびりと過ごして頂くこともできます。
——グランフロント大阪という立地も含めて、洗練された空間でとても居心地が良いですよね。特にカフェは落ち着いた空間でブックライブラリーも併設され、フレッシュで体にやさしいフードを味わうことができるので、釣りも自転車も知らない友人にも普通に勧められる素敵なスポットです。
浅野さん:歴代デュラエースや歴代ステラといった自転車と釣具のフラッグシップモデルの展示のほか、創業当時に生産していたフリーホイールギヤなど、シマノの歴史の一端をご紹介しております。製品の販売はしていないのですが、シマノスクエア オリジナルの注染手ぬぐいなどをお買い求めいただくことができます。サイクリングでかいた汗を拭いたり、釣りをしていて濡れた手を拭いたりと、とても便利な上に速乾性にも優れているので、とても機能的なので、ぜひお使い頂きたいアイテムです。
浅野さん:また、週末を中心に店内外で自転車や釣りの初心者向けイベントを開催しています。店内では、パンク修理、タイヤ交換などの実演講座からシマノレーシングによるロードレース観戦講座、新製品の解説講座など様々。シマノフィッシングインストラクターによる入門講座も大変人気です。屋外では、シマノスクエアなどが提唱する「散走(さんそう)」というサイクリングイベントを開催しており、堺の伝統的な産業に触れるツアーは大変人気で、「ミニベロ堺散走」というミニベロを使った散走イベントは開催告知をすると、あっという間に定員に達するお申込みを頂くほどです。ぜひ機会があればこれらのイベントにもご参加頂けたらと思っています。
安全でスマートに楽しんでほしい
浅野さん:RIDE&FISHをシマノスクエアから発信し始めたのは、ここ最近の話ではありますが、既に実践されている方は非常に多く、決して新しいコンセプトではありません。皆さん様々な工夫をして自転車で釣りに出掛けておられます。そんなRIDE&FISHを安全でスマートにスタイル提案していくことで、もっと多くの方に実践して頂けたらと思っています。
——皆さんが我流で工夫されて楽しまれるのは文化として好ましいことですが、詳しい方が初心者に教えてくれる環境があるのは心強いです。安全面やスマートさとはどういったことを指しますか。
浅野さん:具体的にお伝えすると、釣竿を伸ばしたまま手に持って移動してしまうのは道路交通法違反となってしまいます。そういった安全面にも配慮しつつ、釣りに必要な装備を自転車にできるだけスマートに搭載して、自転車も釣りも楽しめるスタイルを僕自身も未だ追い求め続けている状況です。
——RIDE&FISHはもっと広まりそうですか。
浅野さん:最近はシマノの釣具もモバイルコンセプトのロッド(釣り竿)が多数ラインナップされているので、釣具の持ち運びも容易になっています。バックパックに入れたり、フレームのトップチューブやハンドルに固定できたりと非常にコンパクトです。ルアーフィッシングであれば、リール、ロッド、ルアーなど必要な道具もバックパックに収まってしまうほどなので、意外に手軽にはじめられます。道具にこだわり始めると自転車と同様にかなり沼は深いですが…(笑)
——突き詰めればディープでマニアックな世界が広がりますが、自転車も釣りも本当は身近な遊びですから、まだご存知ない多くの方にも楽しさを知っていただきたいですね。
浅野さん:RIDE&FISHに関する店頭相談などもコンシェルジュ対応しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
*協力:SHIMANO SQUARE
大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル4階
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)
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