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初めてでも楽しめる。ツール・ド・フランスってどんなレース?

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ツール・ド・フランスってなに?

ツール・ド・フランスは世界最高の自転車ロードレース

ツール・ド・フランスは、世界最大規模で行われる最高峰の自転車ロードレースです。レースは21のステージに分けられ、あいだに2日間の休息日があるものの、ほぼ毎日にわたってレースが開催されます。期間中の総走行距離は3,000〜4,000km、高低差2,000m以上にもおよぶ山脈を超えていく世界で最も過酷なレースです。

「ツール・ド・フランス」というのは「フランス一周」を意味するフランス語です。世界には自転車ロードレースの3大大会と呼ばれるレースが存在し、「ツール・ド・フランス」のほかに、イタリアで開催される「ジロ・デ・イタリア」、スペインで開催される「ブエルタ・ア・エスパーニャ」があり、その3大会を合わせて「グランツール」と呼びます。いずれもフランス一周、イタリア一周、スペイン一周を意味しており、各大会で優勝できるのは世界でも選び抜かれた選手のみとなります。

その中でもツール・ド・フランスは歴史も最も古く、アルプス山脈やピレネー山脈といった厳しい山岳ステージを含んだ厳しいコースとなっており、最も格式高いレースに位置付けられています。

ツール・ド・フランスの始まり

ツール・ド・フランスは1903年に始まりました。先述の通り、その歴史はグランツールでも最も古く、開催回数も100回を超えています。1903年といえば日本ではまだ明治時代で数年前に「大日本帝国憲法」が発布されたばかり。江戸時代の幕藩体制からの近代国家への歩みを始めたばかりの頃です。

当時のスポーツ新聞社「ロト」(現在のレキップ紙)が自社の新聞を宣伝するために企画したのが始まりです。第一回大会ですでに、総走行距離2,428kmにもなる過酷なレースでした。さらに当時はその距離を6ステージで走っており、1ステージあたりの平均距離は約400km。選手は眠る暇もないほどの厳しいレースでした。

ツール・ド・フランスといえば、優勝者に与えられる黄色いジャージが印象的です。「マイヨ・ジョーヌ」と呼ばれるそのジャージは、その段階での総合1位の選手のみが着用できる特別なものです。そしてマイヨ・ジョーヌを着用している選手のために各チームは、ヘルメットやシューズ、ロードバイクに至るまで、黄色でアレンジされたものを用意しており、各レースでは全身を黄色に彩った選手がたった一名だけ、勝者の証として走ることを許されているのです。

この黄色の由来についてはご存知でしょうか?それは大会を企画したロト紙が当時、黄色っぽい色の紙で新聞を印刷していたのに由来します。自社の新聞のイメージを宣伝するために、イメージカラーである黄色をレースの象徴として用いたのでした。

今では、全身を黄色に染めて走る選手は、全ての自転車選手の憧れであり、頂点でもある、ツール・ド・フランスのシンボルです。そして、総合優勝の証としてはもちろん、長いレースの中でたった1日だけでもこのジャージを着ることは世界中の選手の憧れとなっています。

ツール・ド・フランスってどんなレース?

それでは、ツールで優勝するためにはなにが必要なのでしょうか?答えは最もシンプルなもので、全てのステージの合計タイムが最も短いことです。

しかし、21ものステージがあり、コースも平坦だけではなくアップダウンがあったり、一人ずつで走るタイムトライアルがあったりと一筋縄で攻略することはできません。そのために各チームはエース選手とサポート選手に分かれて、それぞれの役割を与えられ戦略的に攻略を目指します。エース選手は優勝を目指し、全ての選手とチームメイトの期待を背負って戦いますし、サポート選手はそのエース選手をゴールへ導くために、自身のことは顧みずに全身全霊でエース選手を押し出していきます。優勝者はたったのひとりですが、ロードレースはチームプレイが求められるのです。

ロードレースで障害となる大きなものの一つは「空気抵抗」です。プロ選手の場合、レース中の最高時速70km以上になります。さらに下り坂にもなれば時速100kmを超えることも少なくありません。その際に体が受ける空気抵抗はとても大きなものとなるため、アシスト選手は交代でエース選手の風よけとなり、エース選手の体力が削られるのを防ぎます。そして、長いステージの終わりまでエース選手を「引っ張って」いき、最後の最後でそれまでにキープした体力を爆発させてゴールを切るのがエース選手の役割です。

他にもスプリンターやクライマーといった選手もおり、それぞれの得意分野によってチームを引っ張ったり、特別賞を狙ったりします。

レースに参加しているのは選手だけではありません。レース中はサポートカーが帯同し、監督やメカニック、補給物資などを運んでいます。監督からはレース中も常に指示が飛んでおり、チームとして勝利を目指していきます。

さらにはカメラマンや記者などが世界中に最新情報を届けるためにレースにつきっきりで取材を行っていますし、沿道には応援に駆けつけたファンが並び、スタートからゴールまで途切れることがありません。

ツール・ド・フランスの注目度の高さは、サッカーのワールドカップ、オリンピックに次ぐ放送時間の長さでも分かります。世界中での総放送時間は7,800時間におよび、世界190カ国で放送されています。それだけ注目されるツールの魅力は、レースの面白さだけではありません。最終ステージのゴールは毎年パリのシャンゼリゼで、フィニッシュまでにルーブル美術館やコンコルド広場、凱旋門などパリ市内の観光名所を回るコースとなっています。他にも各ステージではフランス国内の名所や美しい景色の中を通過し、それが中継で見られるのもツールの面白さの一つです。

ツール・ド・フランスの今昔

ツール・ド・フランスで歴史を残す選手たち

100年以上にも及ぶレースの歴史の中には、今もって燦然と輝く栄光を勝ち取った選手が多くいます。歴史を紐解いていくと過去のレースの魅力にもハマってしまいますが、ここではその中でいくつかをご紹介します。

ツール・ド・フランスの歴史を語る上で外せないのがエディ・メルクス選手です。1965年にプロ入りし、ツール・ド・フランスの区間優勝は全選手の中で最多の34回。さらに個人総合優勝を5回も獲得しています。他にも単年ステージ8勝やマイヨジョーヌの保持日数96日など、いまだに破られない最高記録を保持しています。

メルクス選手は史上最強のロードレース選手と言われ、ツール・ド・フランスに限らず、全てのグランツールで優勝を獲得する「グランツール完全制覇」を成し遂げています。

その攻撃的な走りや全てのレースで貪欲に勝利を求める姿勢から「人喰い」の異名で恐れられたと言われています。

グランツール完全制覇を達成した選手は史上5名いますが、比較的最近ではアルベルト・コンタドール選手もその一人です。2003年にプロ入り後、2004年のレース中に気絶して落車。意識を失う脳障害があることが判明しました。落車時の怪我の手術、脳障害の手術と立て続けに大手術を受けましたが、奇跡的に成功し選手としてカムバックを果たします。

そして、2007年のツール・ド・フランス、2008年のジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝し、グランツール完全制覇を達成しました。引退後の2018年には自身のチーム「ポーラテック・コメタ(現:エオーロ・コメタ)」を設立し、現在は同チームのスポーツディレクターを務めて、自転車文化の発展に貢献しています。

そして過去には4名の日本人もツール・ド・フランスに出場しています。初めて日本人が出場したのは1926年のことでした。当時フランス在住の川室 競(かわむろ きそう)氏が日本人として2年連続出場しましたが、どちらも第1ステージで棄権しています。本格的に日本人がレースに参加したのは1996年からで、今中大介選手(チーム・ポルティ)が出場しましたが第14ステージでタイムオーバーとなりリアイアしました。厳しいレースで完走までできる日本人はなかなか現れませんでしたが、2009年になりついに日本人選手のツール・ド・フランス完走が果たされます。別府史之選手(スキル・シマノ)と新城幸也選手(Bbox ブイグテレコム)が出場し二人ともが完走しました。さらに、別府選手は審判団から与えられる敢闘賞も獲得、新城選手はその後もツール・ド・フランスに参加し続けています。

別府氏は現在、スポーツサイクリング用品ブランド「EKOI」のアンバサダーを務める

現在のツール・ド・フランス

現在のツール・ド・フランスも世界中のサイクリストにとって、最も特別なレースであることに変わりありません。世界トップレベルの22チームから、厳選された8名が選手として参加し、合計176名で勝敗を争います。

そして、特別なのは選手にとってだけではありません。期間中はフランスはもちろん、世界中からレースを楽しみに人が集まり、お祭り騒ぎとなります。ツール・ド・フランスのコースは、普段一般道として使用している道路も多いのですが、その沿道は応援する人たちで埋め尽くされます。前日から泊まり込んで応援に備える人もいれば、レース前にはツール・ド・フランスオリジナルの応援グッズが配られたりもします。観客のなかには「悪魔おじさん」と呼ばれる名物おじさんも。毎年趣向を凝らした変わり種自転車とともに悪魔のコスチュームに身を包んで登場します。

賞金については、合計で200万~250万ユーロ(約3億~4億円)程度と言われており、プロスポーツの賞金としては驚くほど安いものです。しかし、それでもサイクリストがツール・ド・フランスでの優勝を夢見るのは、このレースでの勝利が大きな名誉となるからかもしれません。

2023年のレースで注目すべきポイントはここだ!

勝負を分けるコース

フランス一周と銘打っていますが、文字通りフランスの外周を一周する訳ではありません。コースは毎年変わり、開催年ごとに特色のあるコースが用意されます。コースは分かりやすく特徴ごとに大きく区別すると3つに分かれます。高低差の少ないフラットな平坦ステージ、高低差が大きく自転車で山登りを行うような山岳ステージ、そしてその中間にあたる登りや下りが比較的緩やかな丘陵ステージです。

ピレネー山脈やアルプス山脈などの超級山岳と言われる厳しい山岳ステージを含みながら、フランス各地を回るようにコースが引かれ、チームは選手の得意不得意に合わせて戦略的に戦うのです。

そして、今年は総走行距離3,450km、総獲得標高56,266m。フランスの山岳をほぼ網羅した山岳ステージが多いとても厳しいコース設定となっています。

23日間におよぶレースなので、全てのレースを見るのは難しい方もいるかと思います。そういった方に向けて、ぜひこのレースは見てほしい!という注目ステージをピックアップしました。

第1ステージ

コースが毎年変わるように、スタート地点も毎年異なります。そしてフランス以外の国からスタートすることも。今年は、スペインのバスク地方 ビルバオがスタート地点になっています。1日で182kmを走るレースですが、これはツールにおいては特別長い距離というわけではありません。しかしアップダウンが非常に多く爆発的なパンチ力を持つ「パンチャー」と呼ばれる選手が得意とするコースです。そして、このコースで優勝した選手は自動的に最初のマイヨジョーヌに選ばれます。最初に黄色いジャージに袖を通すのは誰でしょうか?

第13ステージ

この日はフランス革命を祝うフランスの正式な国際日「革命記念日」にあたります。ツール・ド・フランス期間中はフランスの国中がお祭り騒ぎで、フランス人はフランス人選手の活躍を心待ちにしています。そしてこの特別な日には、さらにフランス人選手の勝利に注目が集まります。国中の期待を一身に背負い区間優勝を果たす選手は現れるのでしょうか?

第16ステージ

レースには参加選手全員で走るものと、個人タイムトライアル(TT)と言って、一人ずつ出走してタイムを計測するものがあります。今大会では個人TTは第16ステージのみ。距離は22.4kmと比較的短いですが、残り約6km地点から高さにして東京タワー程の高低差を登る登坂コースとなっており、選手にも大きな負担がかかります。TTが得意な選手もおり、マイヨジョーヌ獲得選手とのタイム争いとなるでしょう。

また個人TTはTT専用のロードバイク「TTバイク」も見どころの一つです。

第17ステージ

全ステージの中で最も難易度の高いステージを「クイーンステージ」と呼びます。そして今年は第17ステージがクイーンステージにあたります。

アルプス山脈の名だたる峠を4つ繋いだステージで、さらに4つ目に最も難易度の高い超級山岳と呼ばれる「ロズ峠」が含まれています。標高2,304m、最大24%の急勾配の峠を28.1kmに渡り走り抜けます。もちろん自転車を降りて押す選手は一人もいませんので、選手にとっては最もハードなステージです。またレースも終盤に差し掛かっており、マイヨジョーヌを巡る戦いも熾烈となっているでしょう。

勝者は誰だ?今年の注目選手

ツール・ド・フランスは全てのロード選手の憧れですが、実際にレースに参加できるのは本当にわずかです。その選ばれし世界トップ選手の中で、今年の注目選手をご紹介します。

タデイ・ポガチャル選手(UAEチーム・エミレーツ)

2020年、2021年と個人総合優勝2連覇を果たしました。しかし、2022年はその座をヨナス・ヴィンゲゴー選手(ユンボ・ヴィスマ)に明け渡します。今年は3度目の優勝を目指し、チームにも新しいサポート選手を迎え、新型ロードバイク「V4Rs」も投入し万全の体制で挑みます。

ヨナス・ヴィンゲゴー選手(ユンボ・ヴィスマ)

2022年大会で個人総合優勝を獲得した現王者。ツールの前哨戦とも言われるレース「クリテリウム・デュ・ドーフィネ」でも優勝しており、調子は万全です。盤石のサポート体制もあり、大会2連覇を目指します。

ダヴィド・ゴデュ選手(グルパマ・FDJ)

今年限りで引退を発表しているティボー・ピノ選手に代わるエース選手。今年は次期エースとして、ピノ選手と共に戦います。ピュアクライマーの脚質も山岳が多い今回のステージでは追い風に。

エガン・ベルナル選手(イネオス・グレナディアーズ)

2022年1月に生死を彷徨う大事故に見舞われるも、わずか7ヶ月でレースに復帰した超人的選手。過去には、ツール・ド・フランスや、ジロ・デ・イタリアでの優勝経験もあります。大きな怪我で完全復活には至っていないかもしれませんが、間違いなく活躍する選手の一人です。

ワウト・ファンアールト選手(ユンボ・ヴィスマ) 写真:左

エースのヴィンゲゴー選手を支えながら、自身も2022年のツールでは第4ステージから4日間に渡りマイヨジョーヌを着用、最終的にはマイヨヴェールを獲得した超人的選手。その人間離れした能力に、ワウト・ファンアールト選手は実は複数人いるのでは?という噂になる程。今年もレースを盛り上げてくれるに違いありません。

いかがでしょうか?ツール・ド・フランスはレースの勝敗だけでなく、風光明媚な景色を楽しんだり、選手同士の熱い戦いや友情に想いを馳せながら応援したりと、とてもたくさんの魅力が詰まっているレースです。もちろんこれまでの歴史も長く、長年のファンもたくさんいます。しかし、それぞれで面白いなと感じるポイントで見ていただければ、初めてでも楽しんでいただけるイベントでもあります。

年に一度、夏の期間の世界的なお祭りです。ぜひ皆さんで一緒にツール・ド・フランスを見て応援しましょう!

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