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辻啓氏監修『自転車をカッコよく撮ろう』スマホで簡単撮影テクニック

  • #写真

魅力的な場所を巡りやすい自転車はカメラとの相性が抜群。種類に関係なく、スピードや距離に関係なく、思わずレンズを向けたくなる光景に出会いやすいのが自転車です。とは言っても一眼レフをはじめとするカメラを持ち歩こうとすると、どうしても身体の動きが制限され、雨や衝撃からの保護も考えないといけない。そこで強い味方になるのが、カメラ機能の進化が著しいスマートフォン(以下スマホ)です。

普段はロードレースの撮影を生業にするフォトグラファーとして活動していますが、仕事で撮影する場合を除いて、プライベートのライドに持っていくのは専らスマホのみ。ここではスマホのカメラ機能を最大限駆使して自転車を美しく撮影する方法を紹介していきます。

スマホカメラの特性

そもそも「いい写真」の定義は人それぞれなのでそこに明確な答えはありませんが、撮影機材の持ち運びやすさは正義です。どれだけ高額なカメラを所有していても、タイミングよく撮影場所に赴くことができなければ意味がありません。

スマホのカメラ機能は日々進化しており、指先ひとつで誰でも簡単に「綺麗と感じる」写真を撮ってくれるのが特徴。フォトグラファー目線で言うと「徹底的にデジタル処理された」写真であり、どれだけ高画素であっても大判プリントには適さない画質になりがちですが、スマホで撮ってスマホで閲覧するには十分すぎるほどの画質です。

自転車のセッティング

どれだけ撮影テクニックが豊富でも、被写体の自転車が格好いい状態じゃなければ勿体無い。自転車を撮影する際、美しく撮るためにも自転車のセッティングを確認しましょう。正解があるものではありませんが、何もしないのと意識してセッティングするのとではやはり出来上がりに違いがあります。雑誌やカタログ撮影でよく行われているセッティングを紹介します。

クランク位置

チェーンステーの延長線上にクランクを配置します。また、シートチューブの延長線上にクランクを配置する場合もあります。どちらにすべきといった定義はないので、実際に両パターン試してみて、好みでいいのではないでしょうか。

チェーン位置

変速はトップギアに合わせましょう。トップギアとは、フロントをアウター(1番大きいチェーンリング)に、リアをトップ(1番小さいギア)に合わせることです。前後ともに最も外側に合わせると覚えておくとわかりやすいかもしれません。

タイヤの向き

意外と忘れてしまいがちなのがタイヤの向きです。これも決まりがあるわけではないのですが、前後ともにバルブが真下に来るように合わせることが多いです。

自転車の立たせ方

スタンドがあればスタンドで自転車を自立させることができますが、スポーツバイクにはスタンドを省略したものが大半。その場合は木の枝を駆使して自転車を自立させることもできます。長さ50cmほどの木の枝を、後輪の車軸もしくはBB部分(ペダルがついたクランクの軸)に引っ掛けて三点支持。風でバランスを崩すこともあるので、倒れても大丈夫な路面を選びましょう。地面に置いたヘルメットにペダルを引っ掛けて自転車を自立させる方もいらっしゃいますが、安全装備であるヘルメットに傷がつくのでおすすめしません。

レンズを拭く

まず、撮影する前に絶対やっておくべきことがあります。それはレンズをしっかりと拭くこと。レンズに付着した汚れが写真に写り込んでしまうと、それはその後の修正でなんとかなるものではありません。すごく単純なことですが、いざという時は忘れがちです。

『撮影の前にはレンズを拭く』

これをしっかりと覚えておいてください。

レンズを使い分ける

最新のスマホには複数のレンズが搭載されているため、レンズ交換することなく簡単に画角を切り替えることが可能に。例えば最新のiPhone 14 Proには3つのレンズが搭載されており、超広角(焦点距離13mm)、メイン(24mm)、2倍望遠(48mm)、3倍望遠(77mm)の4つの画角から選択することができます。

世界中に出回っているスマホ写真を見ると、カメラを立ち上げてそのままのメインレンズ(24mm)で撮影している場合がほとんど。もちろんスマホメーカーは膨大な写真パターンを研究した末に使いやすいメインレンズの焦点距離を決定しているのだと思いますが、せっかくある短いレンズ(超広角レンズ)や長いレンズ(望遠レンズ)を使わない手はありません。

自転車はホイールという新円の物体が存在する被写体です。ざっくり言うと、焦点距離が長ければ長いほど歪みが少なくなります。撮影例を見ていただくと分かるように、超広角(13mm)で撮影した自転車はサドルやハンドルが斜めに引っ張られ、ホイールも歪んでしまっています。一方、3倍望遠(77mm)で撮影した自転車は真円が保たれ、サドルやハンドルも素直な位置に落ち着いています。参考までに、雑誌やカタログでよく見る自転車の写真は、ほとんどの場合焦点距離200mmのような長い望遠レンズで撮影されています。良い悪いではなく、自転車のシルエットを正確に撮影するには望遠レンズが有利だと言えます。

  • 撮影例:13mmレンズ(超広角)
  • 撮影例:24mmレンズ(メイン)
  • 撮影例:48mmレンズ(2倍望遠)
  • 撮影例:77mmレンズ(3倍望遠)

目線を変える

多くのスマホ写真がメインレンズ(24mm)で撮影されていると説明しましたが、さらにその中で最も多いのが人間の目線で撮影された写真です。つまり、起立した状態で、目の前にスマホを構え、目線の高さで撮影された写真。見慣れた光景を写し出す違和感のない写真に仕上がりますが、面白くないと言えば面白くない。そこでおすすめしたいのが、柔軟にスマホの高さやアングルを変えて撮影することです。

例えば高く掲げてレンズを下に振ればちょっとしたドローン撮影のような俯瞰の写真が撮れますし、被写体と同じ高さに構えれば主役を主張しやすくなったり、地面に這いつくばって上に煽れば空を意識した写真を撮ることもできます。目線の高さを変えるだけで写真の印象がグッと変わるので、スマホの機動力を活かしたアングルを探し出すと撮影のバリエーションが大幅に広がります。

前ぼけを利用する

撮影しようと思った場所から一歩下がることも重要です。一般的に、お気に入りの自転車を大きく撮りたいと思うあまり、どんどん撮影者が被写体に寄りがち。もちろんそれも良いことですが、一歩下がることで手前にその土地ならではの要素を盛り込むことができるかもしれません。

スマホカメラのレンズの構造上、どうしても被写体深度が深く、光学的な「ぼけ」を生み出すのは苦手です。現在はデジタル処理(被写体だと判断した物体以外をぼかす画像処理)でぼけを生み出すポートレートモードもありますが、自転車の場合はスポーク(ホイールの車軸と輪を繋ぐ棒)を被写体と捉えるのが苦手でどうしても不自然になってしまう。被写体をキリッと写して、その奥の背景をぼかすといった撮影はまだまだ一眼レフに分があります。

そこでおすすめしたいのが、前ぼけという手法です。手前に色鮮やかな物体を置いて、奥の自転車に焦点を合わせることで、スマホでも簡単にぼけを生み出すことが可能に。これも周囲をよく見て一歩下がるからこそできる撮影であると言えます。撮影例は、地面に這いつくばってシロツメグサを前ぼけに使っています。

走行中の写真を撮る

写真を撮る際、サイクリスト自身も写真に含めたい時もあると思います。複数人でライドしているときであれば、頼むことができますが、一人の場合はタイマーを駆使して撮影してみましょう。スマホスタンドがあればいいですが、ない場合も自転車を立たせるのと同様に、木の枝でスマホを自立させることができます。

  • ↓10秒タイマーで撮った様子。限られた時間で撮影するので、かえって躍動感が出て面白い写真になるかも。

最後に、走っているサイクリストを撮影する場合の話として、ペダリングという回転運動を伴う自転車では、躍動感ある脚の角度が存在します。前から撮るときも横から撮るときも、左右のペダル位置が(時計に例えて)12時と6時の場合がおすすめ。左右のペダル位置が3時と9時の場合は力強さを感じない場合が多いです。

  • ↓左は力強さが感じないが、右はペダルを踏み込む躍動感が感じられる。
  • ↓前ボケを利用した走行中の写真。誰でも持っているスマホでも少しの工夫でこんな写真も。

カメラの主流がフィルムからデジタルに移行し、さらにカメラからスマホに移行する勢いの昨今。データ容量さえ気にしなければ、多くの写真を撮影し、その中から最高の一枚を選び出せる時代です。トライ&エラーがその場でできるデジタルの強みを活かし、「数打ちゃ当たる」をポジティブに捉えて、様々なシチュエーションで様々な撮影を試してほしいと願っています。

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