TOP
買う
読む
BRAND
ログイン

読む

誰も書かなかった自転車ヘルメット努力義務化の闇
「ヘルメット」ってなんだ!?

今を遡ること2年前、2023年4月から自転車乗車時のヘルメット着用努力義務化が始まり、世間では自転車ヘルメットに注目が集まった。じつは欧米ではあまり普及していない、などのネガティブな側面はあったものの、まだ「努力」義務だということだろうか市民からの大きな反発もなく、ヘルメットが極端に品薄になるということもなかったようだ。そんななか、テレビの「タレントの◯◯さんが一日署長を務め、道行く人たちにヘルメット着用を呼びかけました」なんていうニュースを、「まあ、いいことだよねー」と思いながら見ていた元自転車雑誌編集長の岩田淳雄さん。あることが気になって調べてみたら、意外な事実にぶち当たってしまったそう。果たして、自転車用ヘルメットと一言でいっても明確な基準はあるのだろうか。カスクは? アゴひも付き野球帽は? その実態を探るべく警察庁、ヘルメットメーカー、そして製品安全協会に疑問を投げかけてみた。

厳密にいうとどうなんだろう?

「カスクはいいのかな?」

そう思ったのがきっかけだった。
2023年の4月から自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務化された。自転車雑誌編集長時代はヘルメット着用を推奨する立場だったし、誌面に掲載する写真ではヘルメット着用がマストだった(今はベルとライトの装着もマストです)。

いきなり余談で申し訳ないが、俺がサイクルスポーツ編集部からバイシクルクラブ編集部に移ったとき、「バイシクルプラス」という、以前あった「自転車生活」というカジュアル自転車ライフな雑誌の流れをくんだ姉妹誌があった。そこでは「クロスバイクやミニヴェロに女性が乗るときにヘルメットは似合わないよね。バイシクルプラスはヘルメットなしでもいいんじゃない?」みたいな風潮があったので、そこでもヘルメット着用を厳命した。
それほどヘルメット着用推進に対して熱心な俺。当時ヘルメット着用努力義務化を、諸手をあげて歓迎したのは言うまでもない。

しかしそこでムクムクと湧き上がった疑問が、「今回努力義務化された“ヘルメット”の範疇に、カスクは含まれるんだろーか?」というものだった。

カスクとは合成皮革などでできた頭部保護帽。ヘルメットのない時代にはこれを被ってレースに出る選手もいた。カスクの安全性に関するデータを見たことはないが、現在のヘルメットと比べると見た目ははなはだ頼りなく、ちゃんとしたヘルメットに比べると、ないよりはマシという程度のもの。

このカスクは、警察が取り締まりを行う上でヘルメットとして認められるのか? あくまで努力義務だから、実際に取り締まりで注意されることもないんだろうけど、厳密にいうとどうなんだろう。

カスクを装着してレースを走る選手たち。2004年に着用が義務付けられるまで、多くの選手は無帽で、またはサイクルキャップを被ってレースを走っていた。カスクの装着は義務ではなく、チームあるいは選手個人の判断で行っていたようだ。最近はおしゃれなアイテムとして被っているサイクリストも見かける。はたしてこれは「ヘルメット」と言えるのか?

道交法のどこに書いてある?

さっそくネット検索。しかし出てくるのは「安全なヘルメットを被りましょう」とか「SGマークやJCF公認マークなどがついたヘルメットを着用しましょう」みたいな記事ばかり。

おそらく道交法のどこかに「自転車用ヘルメットは以下の基準を満たさなければならない」なんてことが書いてあるはずだと思って調べまくるが、まったく出てこない。

これは……?

どうも調べる限りでは、道路交通法には自転車ヘルメットの基準ってものは載っていないようだ。ということは何をもって警察はヘルメット非着用の自転車(使用者)を「取り締まる」または「指導する」んだろう? 

知り合いの詳しそうな人に聞いてみる。

「カスクはダメなんじゃないですかね。SG、JCF、ENとか、何かしらの基準に合格してないと」

どうも確信が持てない様子。

ある人は「国の安全製品としてのヘルメットなので基準は明確。カスクはダメ」とメールで言い切っていたが、それはどこに書いてあるのか? と聞くと返事がなくなった。

じつはこのあたりですでに俺の疑問は確信に変わっていた。

道交法に自転車ヘルメットの規定はない。そしてそれをみんな知らない。

しかもさらに驚くべきことが。自転車はおろか、自動二輪(オートバイ)のヘルメットにも道交法上の明確な基準はないのだ。いや、ちょっと違う。あるにはある。でもあるのはこんなもの。

1. 左右、上下の視野が十分とれること。
2. 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3. 著しく聴力を損ねない構造であること。
4. 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5. 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6. 重量が二キログラム以下であること。
7. 体を傷つけるおそれがある構造でないこと。

「内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準」

 
これがオートバイ用ヘルメットの道交法の基準。びっくりだ。「十分」とか「著しく」とか「おそれがある」とかの文言が並び、明確に数値化された規定は重量が2kg以下であることだけ。それとあごひもが付いていることだけが条件。ってことは大型バイクに自転車用ヘルメットを被って乗ってもオーケーってことだ。マジですか?これって極端な話、布の野球帽みたいなものにあごひもをつけて、「俺はこれをヘルメットとして被っている」と言い張れば、通ってしまうんでは? 視野は十分、聴力も損ねない、衝撃吸収性も何も被らないよりはあるだろうし、耐貫通性だってないとは言えない。

でも、そうじゃないだろ?

取材をしてみると道交法にオートバイのヘルメットにも明確な(納得できる)安全基準はないということがわかった。そんなんでいいのー?

警察庁に聞いてみよう

こうなれば周辺の聞き取り調査では真相に迫れない。これは直接本丸にアタックだ。警視庁か? いや、警視庁は東京の県警みたいなもんだから、それを束ねている上部組織、そうだ警察庁だ。というわけでさっそく警察庁に電話したら、取材の質問は書面でしか受け付けていないという。はいはい。それで疑問を書き出して質問状を送った。

待つこと3週間。警察庁交通局からやっと返事がきた。以下、そのやりとりから。

問①
道路交通法には(法的には)自転車のヘルメットの構造や安全性の基準などに関して定めた法令はあるのでしょうか。

回答
法令上、自転車の乗車用ヘルメットについては、自動二輪車及び原動機付自転車とは異なり、その基準は設けられていません。

やっぱりそうか! これで疑問がスッキリ解消。いやいや、それでいいんですか?

質問② 
上記①で「ない」ということであれば、何をもって「ヘルメット」だとするかが明確ではないということになります。例えば、布製の野球帽をかぶって自転車で走行し、取り締まりの場で「自分はこれをヘルメットとして着用している」と言い張れば、それは(努力)義務違反にはならないのでしょうか。

回答
道路交通法第63条の11第1項において、「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」と規定されており、乗車用ヘルメットの着用が求められています。

回答になってないように思うが、こんな感じにしか言いようがないんだろうな。野球帽は乗車用ヘルメットではないということだが、俺はそのヘルメットの定義が知りたいのだ。

質問③ 
上記②の場合、取り締まりの現場ではどのような対応になるのでしょうか。あくまで注意や指導でしょうか。現在は努力義務なので問題にならないかもしれませんが、これが将来義務化された場合はどうなるでしょうか。

回答
警察では自転車安全利用五則(令和4年11月1日中央交通安全対策会議交通対策本部決定)を活用するなどして、ヘルメット着用の努力義務を含む自転車の自転車の交通ルールを周知・啓発しておりますが、個別事案における対応については、それぞれ態様に応じて取締りや指導を行うこととなります。なお、義務化された場合という仮定のお話についてはお答えすることは困難です。

個別対応です! ということで煙に巻かれております。

質問④ 
自転車のヘルメットには国内規格としてSG、JCF、欧州のCE EN1078、米国のCPSC1203などがあります。これらは製造者・販売者の自主基準であり、道路交通法とは(取り締まりとは)無関係のものと認識しています。この認識は正しいでしょうか。

回答
前記①のとおり、法令上、自転車の乗車用ヘルメットについて基準は設けられていませんが、警察庁では、交通事故時の被害軽減を図るため、SGマークなどの安全性を示すマークの付いたものを使い、あごひもを確実に締めるなどして正しく着用することを推奨しています。

ここも暖簾に腕押しな回答だが、警察庁ではSGマークなどのついたヘルメットを「推奨」しているということは明言している。ちなみに「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)にはこういう項目がある。
「第3章第1節1(8)  自転車に乗るときは、乗車用ヘルメットをかぶりましよう。乗車用ヘルメットは、努めてSGマークなどの安全性を示すマークの付いたものを使い、あごひもを確実に締めるなど正しく着用しましよう」(原文ママ)

ヘルメットにJCFのシール(正確には公認証紙)が貼られていないと、JCF(日本自転車競技連盟)の主管するレースのほか、多くのレースに出場できない。2025年は177モデルが公認を受けている

ヘルメットのことはヘルメット屋に聞け

というわけで警察庁によれば「法令上、自転車の乗車用ヘルメットについて基準は設けられていない」ということはわかった。

じゃあ、先に書いたようにテキトーな帽子を被って「ヘルメット」として着用することに問題はないのか? いや、ないわけがない。そんなテキトーなモノを被って「俺はヘルメットを被ってる」なんておかしいだろ。そこんとこ、ギョーカイ的にはどうなってんの?

そうだ! 餅は餅屋、日本でヘルメットといえばオージーケーカブトだ! 

さっそく懇意にしてもらってる同社広報課の柿山昌範さんに電話だ。かくかくしかじか。

「そうなんですよー、残念なことに道交法的には明確な自転車ヘルメットの基準ってないんですよね」

ちなみにオージーケーカブトのスポーツ用ヘルメットは、どんな基準をクリアしてるんですか?

「製品安全協会のSG認証、日本自転車競技連盟のJCF公認・推奨を製品の用途や特性によって取得しています」

JCFの公認は、それがないとレースに出られないんでわかるんですが、推奨ってのはどうして取得してるんですか? SG認証だって、べつになくてもいいものですよね?

「安全性のアピールですね。たとえばSG認証の場合、厳しいテストが義務付けられていて、その基準は欧米のCE EN1078や、CPSC1203と同等です。つまり世界で一般的に必要だとされている水準の安全性を満たしたヘルメットが、SG認証やJCF公認・推奨製品。弊社としては自転車乗車の際はこれらの基準を満たした製品を着用することを推奨してます」

どんなテストをするんですか?

「詳しいテスト内容はウチのHPにも掲載されているんで見てほしいんですが、SGのロット認定の場合は6カ月ごと、JCF公認・推奨品は1年ごとに強度試験をやり直します。そのくらい認証って厳しいんですよ」

えっ? モデルチェンジや改良のタイミングじゃなくて、6カ月ごとに?

「製造ロットが変わると品質が変わる可能性もあるってことで、SGは6カ月おきにやってます」

それは社内でやるんですか?

「SGの検査自体は車両検査協会ってとこに委託して、厳正にテストしてもらっています。それに加えて社内の自主検査として、すべての在庫品目に関して6カ月おきに全製品の抜き取り検査をしています」

うわあ、厳しいですねー。

「命を守ろうとするものですからね。最近問題視してるのが、消費者庁や国民生活センターの発表でもあったとおり、そもそも安全マークが付いていなかったり、欧米の安全マークがあっても、明らかに衝撃吸収ライナー(発泡スチロール部分)が入ってない、シェル(外側のブラスチック部分)だけの商品が、普通に自転車ヘルメットとしてネット通販などでも販売されていることです。一般の方は保護性能まではわからりませんからね。販売したらダメということもないし、道交法的に違反でもないので難しいところです」

オージーケーカブトの社内ラボにある衝撃落下試験機
こちらもオージーケーカブトのあごひも強度試験(左)とロールオフ試験(右)装置

オートバイの世界も無法地帯だ

オージーケーカブトは自転車用だけでなくオートバイ用のヘルメットも作ってますが、オートバイ用にも法的に明確な基準がないそうですね?

「そうなんですよ。道交法には自転車のヘルメットどころか、オートバイ乗車用ヘルメットについても具体的な安全性の基準のようなものはほとんど示されてないんです。でも消費生活用製品安全法ってのがあって、そこで乗車用ヘルメットの基準を定めたPSCマーク認証というのを取得しています。ただ“オートバイ乗車時には消費生活用製品安全法に定める乗車用ヘルメットを着用すること”といった具体的記述があるわけではないんです。なのでPSCマーク表示のないヘルメットはオートバイ乗車用ヘルメットとしては販売できない、という消費生活用製品安全法による規制はあるんですが、あくまで販売できないだけで、使用に関して道交法上は取り締まる直接の基準とはなっていないととれますよね。よく原付用に売られている半キャップ型のヘルメットは大型バイクには使えないって聞きませんか? これは販売側が安全面で“大型バイクには適していません”と言っているわけですが、それをどう使うかという点に関しての規制のようなものはとくにないんです」

ああ、よくハーレーなんかで半キャップ型のヘルメット被ってる人いますよね。

「自転車用ヘルメットにいたっては、PSCマーク制度のようなものもないんで、ユーザーが安全性の低いヘルメットを被ることに対する実質的規制は難しいんですよね」

柿山さんが言うように、自転車ヘルメットの安全性に関しては、野放し状態のようだ。じゃあユーザーが危険にさらされることがないよう、何か方策はないんだろうか。柿山さんがヒントをくれた。

「SGマークには、賠償制度があって、それがこのマークのユーザー側のメリットでもあるんですよ」

調べてみたら、それは「SGマーク賠償制度」というもの。SGマークのついた製品を使用していて、その製品の欠陥による事故で治療費などが発生した場合、最高1億円まで補償されるらしい。これは「安全性の低いヘルメットじゃなく、ちゃんとSGマークの付いたヘルメットを被ろう」っていうひとつの後押しになるのでは?

いわゆる半キャップ型のヘルメットは、その強度や保護性能から排気量の小さいオートバイ用に販売されていることが多い。ただ買ったものをどう使うかはユーザーの判断に任せられ、法的な罰則規定はない

製品安全協会に聞いてみた

SG認証を行っている一般財団法人 製品安全協会では、ベビーカー、圧力鍋、金属脚立、登山用ロープ、ライター、保温ボトルなど生活に密着した110の製品ジャンルで安全性に関する基準を設け、その認証を行っている。そのなかにもちろん自転車用ヘルメットも含まれている。さっそく聞いてみよう。どうなんでしょう?

「はい、当協会が認証する自転車ヘルメットのSGマークは国家公安委員会の告示でも推奨されています。また賠償制度もHPに書かれている通りでして、SGマークが貼付された製品がかかわる事故で、それが製品の欠陥によるものと判断された場合に治療費等を賠償します。また一事故あたりの賠償金額上限は1億円です」

なるほど、これはすごいメリットですね。

「注意していただきたいのは、この賠償制度が適用されるのはSGマークの有効期限内の事故に限るということです」

SGマークには有効期限があるんですか!?

「はい、自転車ヘルメットの場合、購入から3年です」

ほほー。そういえばオージーケーカブトがヘルメットの耐用年数は3年ですみたいなことをアピールしてたな。これってヘルメットをどんどん買い替えましょうっていうメーカーのセールストークじゃないかと勘ぐってたけど、ここに根拠があったんだな。ごめんよオージーケーカブト。疑って悪かった。

で、その賠償制度は、審査がけっこう厳しいんでしょうか? 事故がありましたと申請があったうち、どのくらいの割合で実際に賠償されているんですか?

「いえ、じつは申請があるのが、すべての製品で年間10件くらいなんです」

えっ!? 全部でたった10件ですか?

「はい。しかも自転車ヘルメットに関しては、……私の記憶の限りでは過去に申請がありません」

ええっ!? 申請がない? これはこの制度がまったく認知されていないってことなのか、事故が少ないってことなのか。でも製品の不具合が原因となる事故(による人的被害)が少ないってことは、つまりSGマークの優秀性というか信頼性が証明されているってことでもある。すばらしい。

「あとウチもちゃんと調査したわけではないんですが、全国の市区町村で自転車ヘルメットを買うときに助成金が出るところがありまして。そこではSGマークが付いているヘルメットが条件になる場合が多いようです」

なーるほどですね。そういうのも、安全なヘルメットを被るひとつの動機づけにはなるかも。

製品安全協会のHPには、SGマーク制度に関してさまざまな情報が掲載されている

最後の砦は自転車保険か

そういう動機づけってことでいうと、もうひとつ気になることがある。自転車保険だ。

ヘルメットを被らずに事故にあった場合、自転車保険に入っていても補償されない場合がある、なんて話を聞いたことはないだろうか。これがほんとうなら「やっぱりヘルメットを被らなきゃ」ってことになる。で、もしそうなら、その場合のヘルメットの条件はなんだろう? SGマークやJCF公認・推奨が必要なのか。それともオージーケーカブトが嘆いていた帽体しかないような製品でも、はたまた野球帽にあごひもを付けたものでもオーケーなのか。

まずはHPで、自転車が対象となる保険を扱う数社の約款を読み、それぞれ電話してみた。結果、驚くべき事実が。

自転車保険とヘルメットは関係ない。約款には保険金・給付金受け取りに関して、SGマークやJCF公認・推奨が必要だとかいうヘルメットの基準は書かれていない。装着状態に関しても記述はない。いや、もっと言うとヘルメット着用が条件だとも書かれていない。念のため電話して聞いても同様だった。一部、個別判断だと言う保険会社もあったが。つまり自転車保険の保険金・給付金支払い条件が、安全ではないヘルメット蔓延の抑止力になるんではないかという期待は、あっさり裏切られた。

つまり。日本には自転車ヘルメットを被りましょう、という法律はある。ただしどんなヘルメットを被ればいいのかという指針はあっても規定はない。そして、だからちゃんとしたヘルメットを被らなきゃね、と思わせる呼び水もない。

現在は努力義務だから、こんなことになっているのか。先ほど話を聞いた製品安全協会の方は雑談の中でこんなことを言っていた。

「ご存知の通り現在SGマークが付いたヘルメットがどこでも入手できるわけではありません。一部では品薄の状況もまだ続いています。いきなり義務にしてしまうと、だって買えないじゃないかといった声も上がる。だからまずは努力義務にして、段階的に移行していくようなことも国は考えているんじゃないでしょうか」

努力義務から義務に変われば、また状況も変わっていくのではと言う。でもオートバイの例を見る限り、それもなさそうだ。オートバイではヘルメット着用が義務化されているが、やはり使用に関するきちんとした法令はない。ということは、この曖昧な状況は今後も続く可能性が高い。

ではなぜきちんと法律でヘルメットの安全基準を明記しないのか。ここは推測だが、法律で「こうでなければならない」と決めるのは難しいんだろうと思う。なぜなら消費者の選択の自由を奪ってしまうことになるから。それは国民の権利を奪うことにもなる。さらには「ちゃんと国が定めた安全なヘルメットを被っていたのに事故で頭部に人的被害を受けた。どうしてくれるんだ」といった声があがらないとも限らない。

死にたくない、死なせたくない

そろそろ結論だ。

道交法的に、自転車ヘルメットの規定はない。これはハッキリした。だからSGマークがなくても、JCF公認でなくても、取り締まられたり注意されることはない。そもそも「努力」義務なんだから、被らなくてもおとがめはないわけだ。

でも、だからといって被らなくていいとか、テキトーなものでいいということではない。これを読んでいるみなさんなら命の大切さなんてことは当然わかってるだろうから、ここで長々とは書かない。義務でなくても、暑くても重くても、ヘアスタイルが乱れても、俺たちサイクリストはちゃんとした安全なヘルメットを被る。そして周りの人にも被らせる。それがいっぱしの自転車乗りってもんだろう。ヘルメットの大切さをいちばん知っているのは俺たちサイクリストなんだから。その俺たちが手本にならないでどーするんだよ。

最初の話を回収する。「カスクはいいのかな?」

いい。でも俺はちゃんとしたヘルメットを被る。以上だ。

この記事を書いた人

岩田 淳雄(ペダルプッシャー)

  • Facebook
  • HomePage

>書いた記事の一覧

#ロードバイクの最新記事

  • TOP
  • コラム一覧
  • 誰も書かなかった自転車ヘルメット努力義務化の闇
    「ヘルメット」ってなんだ!?

ページトップ