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ライドに何持ってく!? 自転車ジャーナリストのこだわり携行品初公開

スポーツバイクは「走るための機能」以外を持たないシンプルな乗り物だから、メカトラブルが走行不能に直結する。それに対応して無事に帰るためには、工具、空気入れ、スペアチューブなどの携行品が必要だ。自転車歴40年以上になる吉本 司と、歴25年ほどの安井行生。この2人の自転車ジャーナリストが、自身の持ち物を紹介しながら携行品に対するこだわりを語る。

安井行生の携行品

吉本:長いこと2人で一緒に仕事をしてきましたが、携行品を紹介するのは初めてですね。まずは安井さんから。ロードバイクで走るときの携行品とその持ち方は?

安井:携行品はツールボトルとポーチに分けて、ポーチは背中に入れて走ってます。田舎や山奥に走りに行くときや真夏のロングライドではボトルを2本にして、ハンドルバッグまたはサドルバッグにしますが。

ロングタイプのツールボトルを愛用

吉本:ツールボトルの中身は?

ツールボトルの中身

安井:では写真の左から。古いタイヤを切ったものは、タイヤがバーストしたときのため。これを裂けたところに裏から当てがえばなんとか帰ってこれるかなと。まだ使ったことはありませんが、そんなにかさばるものではないのでお守り代わりに入れてます。スペアチューブはあえて頑丈なブチルです。軽くてコンパクトなTPUチューブをスペアとして持つ人も多くなりましたが、スペアチューブは下手すれば何年も使われず、ツールボトルの中でずっと振動にさらされているので、いざというときに使えなくなっているのが怖い。念のため耐久性の高いブチルチューブにしてます。ブチルならパッチで修理もできますし。

吉本:わかります。

安井:新しいものを拒否しているわけではないんですが、ポンプもアナログな手動です。電動ポンプは便利で楽ですが、頻繁に使うものではないので故障や水没、バッテリー切れが怖い。山の中で使えなかったら終わりですから。疲れはするけど確実な手動のほうが安心です。ただしポンプもあまりに古いものだとパッキンがダメになっていたりするので、ときどきちゃんと空気が入るかチェックしたほうがいいとは思います。最近はMTBにも乗るので、仏式と米式の両方に対応したものを選んでます。

やすい・ゆきお●1981年東京生まれ。浪人していた18歳のとき、「どうせ捨てるから」と友人がくれた激安MTBをきっかけにして自転車の道へ。自動車エンジニアを目指して理系の大学に進学するが、ろくに勉強せずツーリングに明け暮れる。在学中にメッセンジャーのバイトを始め、留年しつつ卒業後も都内を配送で走り回る生活を4年続けた。26歳のとき、ひょんなことから自転車メディアの世界に足を踏み入れ、現在は自転車ジャーナリストとして様々な自転車メディアで執筆を行う。長らくロードバイク一筋だったが、数年前にオフロードに目覚め、今ではグラベルロード、MTBと幅広く嗜む

バイクに合わせて調整する

吉本:タイヤレバーは2種類?

安井:メインは使い慣れたパナレーサーですが、1本はマヴィックのタイヤレバーにしてます。というのは、マヴィックのホイールのハブにガタが出たときに、これがあれば調整できるので(マヴィックのタイヤレバーはハブ調整用工具でもある)。あとは簡易的な鍵ですね。

吉本:この小さい袋は?(写真右上)

安井:これには細かいものをまとめて入れてます。

小袋の中には厳選した応急用パーツが

安井:これが小袋の中身です。左側にあるのが、バルブコアとバルブコア回し。シール部分がダメになってエア漏れすることがありますし、出先で間違えて緩めてしまって飛んで行ってしまったことがあるので。ディープリム用の延長バルブも持ってます。右下にあるのはチェーンのリンク&コネクトピン。僕は様々なコンポを使うので、10~12速用をいくつか持ってます。たくさん入れておくとチェーントラブルで困っている人を助けることもできますし。

吉本:これ(写真上)はチェーンカッターですか。

安井:そうです。かさばらないようにトピークの携帯工具から外したものを入れてます。複数回パンクしたときのために、チューブ修理用のパッチも持ってます。

携帯工具は使わない

安井:背中に入れるポーチには、比較的使用頻度の高いものを入れてます。

すぐに取り出せるよう小さなポーチを使用

吉本:携帯工具じゃなくてバラで工具を持ってるんですね。

左上は折りたたんだサドルバッグ

安井:携帯工具は使いにくくて嫌いなので、短いアーレンキーのセット、プラスとマイナスのドライバー、トルクスレンチをバラで持ってます。使用頻度がそんなに高くない人はオールインワンの携帯工具でいいと思いますが、僕はポジション調整などで比較的工具をよく使うので、使いやすさ重視です。コンビレンチはWRのシートポストのやぐら調整用。サドルの角度を変えたくなったときにこれが必要なんです。WRのシートポストじゃないときは要らないんですが。乗るバイクに8mmや10mmのボルトが使われているときは、対応したビットを入れてます(6mmのアーレンキーに付けて使う)。もちろん大きなトルクはかけられませんが、最低限走れるようにはなります。

吉本:ディスクブレーキ用のパッドも持ってるんですか?

安井:これはいつも持ってるわけではないんですが、パッドの残量をチェックして「もうそろそろ交換だな」ってときには持つようにしてます。グラベルでハードな下りをこなすとあっという間に減りますから。コラムスペーサーはヘッドが緩んだときの応急処置用。小さく切ったクリアファイルにはタイヤブートと名刺を入れてます。右上にあるのはシマノのクランク外し。フレームとチェーンリングの間にチェーンが落ちて取れなくなったときにクランクを緩めるためです。一度、山の中でどうにもならなくなって困り果てたことがあって、それから携行するようにしました。あとは現金を少し。キャッシュレスの時代ですが、現金であればどんな田舎でも使えますから。田舎では自動販売機が新紙幣や新硬貨に対応していないこともあるので、できるだけ新紙幣・新硬貨は避けるようにしています。

吉本司の携行品

安井:では吉本さん。並べ方が几帳面(笑)。

左上は折りたたんだサドルバッグ

吉本:これが僕の携行品のすべてです。ポンプは安井さんと同じ理由で手動。電動ポンプも買いましたが、結局不安だから手動のポンプも持っていくことになり、「電動ポンプを持って走る意味がないな」と。自分は手動ポンプとCO2ボンベの組み合わせに落ち着きました。こっちのほうが効率的です。

安井:このポンプは年季が入ってますね。

吉本:ボントレガーのポンプです。もう絶版だと思いますが、使いやすいので気に入ってるんです。

安井:こだわりがあるんですか?

吉本:携帯ポンプは不自然な体勢で、かつ疲れているときに使うことが多いので、本体に直接ヘッドが付いているものだとバルブに無理な力をかけてしまいがちです。このポンプはホースが付いているので、バルブを傷める心配がありません。スペアチューブは安井さんと同じ理由でブチルチューブです。他のものと擦れるのがいやでビニール袋に包んでます。

安井:僕もスペアチューブはジップロックに入れてます。ツールボトルやサドルバッグは常に振動を受けるので、振動対策が必須ですね。

よしもと・つかさ●1971年神奈川生まれ。14歳のときに入門用サイクリング車を手に入れ、その修理をきっかけに自転車の世界へ。自転車仲間の縁により23歳でサイクルスポーツ誌の編集部員となり、5年在籍の後、フリーランスの編集者・ライターとなる。2018年にはサイクルスポーツ誌の編集長に就任。媒体ロゴ(22年ぶり)と版型(13年ぶり)を変更する大仕事をして、2020年春に退任。現在は再びフリーランスの自転車ジャーナリストとして活動。2025年9月、安井行生と一緒に会員制自転車メディア「輪郭」を立ち上げた

老眼鏡とカーシェアのカード

吉本:振動といえば、携行品がツールボトルやバッグの中で暴れるのがいやなので、隙間をウエスなどで埋めてカタカタ言わないようにしてます。

安井:僕もそれはやってます。携行品が傷む原因にもなりますし。工具系は?

吉本:昔は安井さんのようにアーレンキーなどの工具をバラで持ってたんですが、今は携帯工具にしました。携帯工具にタイヤレバーも付いてますが、使いにくいので普通のタイヤレバーも持ってます。あとはパンク修理キット、チェーンのリンク。チェーントラブルのとき手が汚れるので、ニトリル手袋も入れてます。あと、最近は老眼鏡が必須になりました(笑)。

安井:カーシェアのカードも持って走ってるんですか。

吉本:もし自走不能になったり仲間になにかあったりしたときに、車を借りられればなんとか帰ってこれますから。

安井:確かに。次から僕も持っていこうかな。

吉本:これらが僕の一番のベーシックな持ち物です。夏のライドでボトルが2本必要なときはサドルバッグに入れ、冬でワンボトルのときはツールボトルに入れてます。


吉本はシリカのサドルバッグを愛用する

安井:このツールボトルは、普通のボトルを切ったもの?

吉本:そうです。携行品はこれに全部入るくらいの量ですね。ボトルのくびれのところでカットすると飛び出しにくくなります。


いわゆるツールボトルではなく、ドリンク用ボトルをカットしたものをツールボトルとして使うのが吉本流

目的が変われば携行品も変わる

吉本:これらはあくまで「ロードバイクで走るときの基本セット」で、200kmを超えるようなビッグライドをするならスペアチューブを2本にするなど、携行品は走り方によって変えます。携行品って1パターンのみではありません。機材や目的や走り方が変われば携行品も変わります。例えばツーリングをするなら、旅に必要なものが加わりますよね。

安井:携行品はいつも一緒ではなく、機材や状況によって変わりますよね。気温の変化が想定されるならウインドブレーカーが必要になるし、グラベルだったら持っていくチューブのサイズが変わるし、尖がった石が多いオフロードを走るならスペアチューブを2本にしたほうがいい。ちなみに僕がスペアチューブを2本にする場合は、1本はTPUチューブにします。オフロード用タイヤのチューブは重いですから。必要な安全性・堅牢性を確保しつつ、スポーツバイクらしく走るには軽さを重視する必要もあります。「これも必要、あれもいるな」となんでもかんでも持っていけば、バイクの軽さが台無しになってしまう。ロードバイクという研ぎ澄まされた乗り物を楽しむなら、遭遇率の低いトラブルに対する工具は持たないなど、ある程度の割り切りと諦めも必要です。

吉本:そうですね。「携行品でどうしたいのか」にもよります。僕はロードバイクで走るなら必要最低限のコンパクトな携行品にしたいんですが、「とにかく安心を求める人」「どんなトラブルにも対応したい人」はもっと多くなるでしょう。それによっても携行品は変わりますね。

安井:トラブルがあっても「なんとか帰れるくらいまで復帰できればいい」なのか、「100%の状態まで復帰して残りのライドも堪能したい」なのかによっても変わります。

吉本:そう。みんな正解を求めるんだけど、携行品は「目的は何か」「どんなライドをしたいか」によって変わってくるものです。

安井:いろんな走り方をしていろんなトラブルを経験しながら、だんだん自分だけの正解が決まってきますね。

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