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折りたたみ電動アシスト小径車を魔改造! こだわり「バイク&キャンプ」仕様に
2025.10.27
美しいフレームワークをもつスタイリッシュな小径車として独特の存在感を放つTern Vektron S10。電動アシストでありながら折りたたみ可能という万能性も相まって、ほかにはないポジションを築いている。
そんなヴェクトロンを4年前に購入、自身がハマっている自転車キャンプ用に魔改造?してしまったのが横浜にお住まいの野地教弥さん。仕事柄自転車キャンプの専門家ともいえる野地さんがヴェクトロンを選んだ理由、そしてそのこだわりの改造について聞いた。
決め手はアシストなしでの走行性能
──どうしてこのヴェクトロンを購入することに?
僕は地元の福島で、キャンプ場を自分で作っちゃったくらいキャンプが好きなんです。で、自転車も大好きになって、当然自転車にキャンプ道具を積んで、ということになります。それでいわゆるロードバイクでのバイクパッキングもやってみたんですが、あまり多くの荷物を積めない。キャンプ道具一式をちゃんと諦めずに積みたいと思ったときに、電動アシストは当然の選択でした。
──ほかの候補はありましたか?
買った当時、ほかにも小径車で折りたたみで電動アシストってのはほかにもありました。でもいろいろ試乗させてもらって、最終的にヴェクトロンにしたのは、アシストが効いていないときの走行性能なんです。
──というと?
電動アシストのバッテリーは、走っているといつか必ず切れるんです。でもそのときに最悪、ちょい重い自転車としてでも走り続けられるものがいい。でもほかのヤツはアシストが効いてないときの走行性能が完全にママチャリなんですよね。とても長距離走行はできない。そのへんの素性のいい自転車じゃないと、長旅には使えないんです。その点このヴェクトロンはアシストが切れてもスポーティーに、そして楽に走れるんです。フレームジオメトリーもかなりスポーティーになっていると思いますよ。

野地教弥(のち・たかひろ)●1971年福島県生まれ。(一社)自転車キャンプツーリズム協会代表理事。バイク&キャンプほかの自転車系イベントをプロデュースするかたわら、国や地方行政との取り組みとして、サイクリングルートの調査策定や自転車を活用した観光振興のサポートなどに奔走する。キャンプ以外の自転車趣味も多彩で、ロングライドやグラベルのイベントにも出没。自他ともに認める愛妻家。今回の取材は自身がプロデュースする自転車キャンプイベント、BIKE&CAMPの会場で行った。BIKE&CAMP 公式サイト / X / Instagram
荷物を積んでも走るのが楽しい
あと、全体のバランスがすごくいい。
──重量バランスですか?
重量バランスもそうだけど、車体全体のセンターがきちっと出てる気がします。小径車で折りたたみなのに、精度が素晴らしい。そして剛性も高い。
──ねじり剛性が高いってことですね。
コーナリングとかそこから立ち上がりで踏み込んだときのしっかり感が、とても折りたたみとは思えないくらい高かった。だから僕、下りは速いんです。これがねじれたり弱かったりガタガタしたら、とても速くは走れません。だからそれがこのヴェクトロンのよさだと思っています。自転車としての素性がとてもいい。だから走っていてとても楽しいんです。
──野地さんにとってのオンリーワンだったんですね。
折りたたみで電動アシストで長距離乗れるという意味では、たぶんまだほかにはないですね。電動アシストでも軽いロードとかグラベルバイクとか出てきたんで、今ならそれらも候補になるかもしれませんが、それでも僕は小径車を選ぶんじゃないかな。
──荷物が積みやすいですもんね。
そう、キャリヤも付けやすいし。なにより700Cのバイクにこれだけのキャンプ装備を積んだら重心が恐ろしく高くなっちゃう。僕もみなさんがやっているようにロードバイクのフロントフォークやフロント、リヤにもでっかい荷物をくくりつけてという、いわゆるバイクパッキングスタイルでやってたんですけど、フラつくしスピード出すのが楽しくない。その点小径車ならそんなことがない。

野地さんの魔改造ヴェクトロンS10

現行のヴェクトロンS10。標準でドロヨケが付いている
まずはハンドルから
──購入してまず手を付けたのは?
ハンドルです。マルチポジションハンドルにしたいというのが大前提でした。もっと前方でハンドル握って走りたかったんです。加えて僕の場合、仕事でGoProやスマホ、補助ライトみたいな機材をいくつもハンドルに付けなきゃいけないことがあって。だからそのスペースも必要でした。こんなの付けてるの日本で僕だけです。見たことないんで。

苦労を重ねてたどりついたハンドルまわりの最終形。バーテープは自分で巻いた

サイクリングルートの調査時にはカメラなどを装備する
──このハンドルはどこのものですか?
ノーブランドの中国製です。ネットで探しまくって、やっと見つけました。小径車用ってわけじゃなくて、おそらくサーリーとかサルサとか、あのへんの自転車に付けるためのものだと思います。
──ほかにないんですか?
サーリーとかからもマルチポジションハンドルって出てるんですけど、このライトが付けられないんですよ。これは最初から付いてるものなんですけど、これがすごく明るくていいので、これ使いたいと。でもこれ、本体をハンドルが貫通している独特のデザインで。だからこのライトが付く前方部分のハンドルパイプ径が元のクランプ径と同じじゃなきゃいけないとか、いろんなサイズの問題が噴出して。ステムの規格も含めて、合う組み合わせが世の中にはまったくなかったんです。でも探しに探してようやくハンドルを見つけました。
次はステム。ヴェクトロンのオリジナルのステムはすごく優れてて、クイックで簡単にポジションを換えられるシステムになってるんです。それをそのまま使いたかったけど、このハンドルが付かない。それでステム探しも苦労しました。やれやれと思ったら、今度はオリジナルのメーターが付かない。ライトの横だと配線が届かない。
──配線を伸ばせないんですか?
伸ばせない。それでエクステンションバーを付けて対応しました。

マルチポジションハンドルにさらにエクステンションバーを追加。これもネットで探したもの

──結果どうなりました?
人柱のつもりでいろいろやりましたけど、ポジションはバッチリ。ロードに近いライディングポジションがとれるようになって、長距離が楽になりました。メーターも見やすい位置に来たし、ベルなどを取り付けるスペースにも余裕ができた。すごく苦労しましたけど、結果控えめに言ってサイコーです(笑)。
フロントバッグを自分で加工
──ほかの改造は?
あとはスタンドをセンタースタンドに換えました。これは荷物を積むときにバランスが崩れないように。あとペダルやサドルも交換していますが、それは使いやすいものに、ってことです。ペダルはそろそろSPDにしようかと思っているんですけどね。タイヤは先日グラベルのイベントに出場したのでブロックパターンのものにしてますけど、舗装路メインで走るときは普通のタイヤにしています。

サイドスタンドをセンタースタンドに交換。これでキャンプの荷物を積んでも安定して立つ
──標準で装備されているドロヨケが付いてないですね。外したんですか?
僕が買ったときはオプションだったんですよ。すごく欲しいんですけど、ずっと欠品してたみたいで。今は在庫もあるらしいので、早く付けたいです(笑)。
──フロントバッグはワンタッチで取り外しできるタイプですね。
バイク側のアタッチメントはターンの純正です。それにクラシックな感じのフロントバッグを付けてます。着脱のシステムはリクセン&カウルのクリックフィックスってやつ。だからリクセン&カウルのバッグを付ければいいんだけど、気に入ったデザインのものがなくて。ある日Amazonでアダプター部分を単体で売ってるのを見つけて。それを気に入ったバッグに自分で加工して付けています。ハンドルバーに付けるバッグはハンドルの手前部分が握れなくなっちゃうんで嫌なんですよね。

ネットで見つけて狂喜して手に入れたクリックフィックスのアダプターを、気に入ったフロントバッグに取り付けた
──フロントバッグは必要なんですか?
僕の場合だけだと思いますけど、GoProやスマホの電池を入れるので、このサイズのフロントバッグがどうしても必要なんです。
キャリヤに合わせてテーブルを自作
──で、気になるのがこの台なんですが……。
これは自作の荷台兼キャンプテーブル兼移動用台車です。
──1台3役!
そうそう。まず板の下側をレールみたいにして、そこがキャリヤにぴったりハマるようにしてあります。滑り止めも付けた。これで幅広のコンテナボックスも安定して積めます。この板には折りたたみの脚を取り付けてあって、キャンプのときにはテーブルになる。そして移動するときにはコンテナボックスと輪行袋を載せてゴロゴロと運べるんです。

天板の下側にはキャスターとテーブルの脚。キャスターホイールは段差などでつまずくことがあるので、もっと大径のものに変更したいそうだ

キャリアにピッタリ収まるサイズで製作

キャンプのときはテーブルに

キャリヤの幅が広くなることで安定して荷物が積める

折りたたみ時にはハンドルがじゃまになる。これを6角レンチでたたむのがちょっと面倒

重量のある電動アシスト自転車だが、コンパクトに折りたためるのがヴェクトロンのよさ

この状態で押して移動する
こんな変態は僕しかいない
──階段は大変そうですね。
階段は使いません(きっぱり)。エスカレーターもダメです。
──こういうDIYとか好きなんですか?
いえ全然。市販されていればそれを買いますけど、売ってないので。
──パテントとって商品化すればいいんじゃないですか?
ダメですね。こんなの使う変態は、世界中に僕しかいないんで(笑)。

仕事以外で年間10回は自転車キャンプを楽しむ野地さん
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