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コンビニで買える! ロードバイク乗りのための補給食&脱水対策
2026.03.30
なぜ補給が重要なのか
朝起きてカーテンを開けると、窓の外にはすでに青空が広がっている。気持ちのいい季節の休日。走りに行かない手はない。ずっとがけ崩れで通行止めだったあの峠に行ってみよう。
コーヒーで目を覚まし、朝食を撮る。バイクの整備は完璧だ。換えたばかりのチェーンにはいいオイルが乗っている。着心地のいいウエアも選んだ。天気も最高。コンポとパワーメーターにはたっぷり電気を食わせてある。コースデータもガーミンに転送済。二日酔いもないし寝不足もない。
あとは補給だけだ。
私たちがロードバイクで走りに出かける目的は「ライドを楽しむため」もしくは「トレーニング」にほかならないわけだが、そのために最も重要なピースが「補給」だ。いくらバイクが完璧でウエアがお洒落で天気がよくたって、補給に失敗すればライドは辛いものになり、トレーニングは逆効果になる。しかも、車はガソリンスタンドに行けばOKだが、人間の補給は難しい。タイミングや何を食べるかなど、選択肢が多いからだ。
フィッティングやサプリメントなどの自転車関連サービスを展開する ACTIVIKE の阿部直幸さんに話を聞いた。
まずはそもそも論から。なぜロードバイクのライドに補給が必要なのか。
「ロードバイクは数時間にも及ぶ特殊なスポーツで、体は想像以上にエネルギーを消費します。ライド中にエネルギーが空っぽになると、ハンガーノックという低血糖状態になり、急に力が入らなくなったり、頭がボーッとしたりして、最悪の場合は自力で帰れなくなってしまいます。そうならないために、『走りながらどのタイミングで何を食べるか』という補給のテクニックが必須です」

阿部直幸さん
薬剤師。ACTIVIKEにて、医学的知見からサイクリストに特化したサプリメントの開発を行う。YouTube「ACTIVIKEチャンネル」で情報発信中。
補給の基本ルール
では補給の基本ルールについて。ライド中に食べるべきものは?
「ライドの主なエネルギー源は糖質と脂質ですが、ライド中に脂質をとる必要はありません。食物繊維も避けたほうがいいでしょう。なぜなら、脂質や食物繊維は消化するのに時間を要し、その際にエネルギーを使ってしまうからです。消化にエネルギーを奪われると、ペダルを回すための筋肉にエネルギーが行かなくなり、パフォーマンスが落ちてしまいます。だから補給食は『脂質と食物繊維が少なく、糖質が多いもの』が鉄則です。クリームたっぷりの菓子パンや脂質の多いブロックタイプの栄養食、消化に時間がかかるサラダなどはライド中には不向きなので避けたほうがいいでしょう」
脂質の多い/少ないはどのように判断すればいいのだろう。
「食品のパッケージの裏側に成分表示がありますよね。そこに脂質の量が記載されています。個人的には、菓子パンの部類の場合、脂質量が5g以上になると多いかなという印象ですね。アンパンなどはたいてい5g以下です。ただし、ライドの目的がグルメの場合は、脂質の量などは気にせず楽しみましょう」

さて、日本はどこでもコンビニがある国だ。
3大コンビニチェーンであるセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンはそれぞれ21927店、16415店、14697店もあり(いずれも2026年2月末時点、公式サイトより)、もちろん全47都道府県に展開している。都市部では数百メートルおきに存在し、地方でもよほどの僻地に行かない限りGoogleマップで調べればたいてい近くにヒットする。幅広い商品を揃えて24時間「いらっしゃいませ」とサイクリストを迎えてくれるそれは、単なる小売店という枠を超え、もはや日本の社会インフラの一種である。
そんな便利なコンビニをライドの補給地点として活用しない手はない。何万軒ものコンビニがあるおかげで、日本のサイクリストは手ぶらでロングライドに出ることができるのだ。先述の「補給の基本ルール」を踏まえて、コンビニで買える最強の補給食を阿部さんに紹介してもらった。

コンビニのお勧め補給食5選
1:塩おにぎり(海苔なし)
「余計な具材がなく、消化がいい塩おにぎり。ポイントは『海苔が巻かれていないもの』を選ぶことです。海苔は食物繊維なので、ライド中は消化の負担になってしまいます」

2:羊羹(ようかん)
「糖質の塊で脂質がほぼゼロ。安くてカロリーも高く食べやすいため、サイクリストの補給食の定番ですね。コンパクトで携帯しやすく、長持ちすることも利点です」

3:黒糖わらびなどの固形ゼリー
「羊羹が好みではないという人には、黒糖わらびなどの固形ゼリーがお勧めです。疲れて固形物が喉を通らなくなったときでもツルンと飲み込めますし、消化器に負担をそれほどかけずにサッと糖質を補給できます。羊羹ほどのコスパはありませんが、サイクリストの定番補給食になっています」

4:ラムネ
「じつはお菓子のラムネは『ブドウ糖の塊』なんです。脳のエネルギー源にもなるため、峠の手前などで集中力を高めたいときに最適です。細長い容器に入っていることが多いので、ポケットに入れておいてサッと口に入れられる手軽さもいいですね」

5:団子などの和菓子(あんこ、みたらし団子等)
「和菓子は基本的に脂質が少なく、お米が原料なのでエネルギー効率がとてもいい食品です。とくに串団子はしっかりカロリーがとれるのでコスパも抜群です。コンビニストップするんだったらマストといってもいいですね」

距離別の補給テクニック
次に、距離別(50km・100km・200km)の補給術について。
もちろん走る距離(時間)によって、必要な補給の量は変わる。ライド前の朝食を含めて、距離ごとの補給計画を紹介してもらった。
50km(約2時間)のライド
「この距離なら、相当激しく乗らない限りハンガーノックになる心配はありません。ライド前にごはん茶碗1杯かバナナ3本分(約250kcal)を食べておけば十分です。ライド中に固形物の補給食は基本的に必要ありませんが、ボトルには糖質入りのスポーツドリンク(ポカリスエットやグランフォンドウォーターなど)を入れて、こまめに飲みながら走りましょう」
100km(約4~5時間)のライド
「計画的な補給が必要になる距離です。ライド前には、最低でもごはん茶碗2杯分(約500kcal)ほどを食べておきましょう。ライド中は、1時間ごとに補給食とスポーツドリンクを合わせて200~300kcal(おにぎり1~2個分)の糖質をとればエネルギー切れの心配はありません。前半は固形物でいいですが、後半は胃腸が疲れてくるので、吸収のいいジェルや糖質入りのドリンクに切り替えると最後まで楽に走れるでしょう」
コンビニや自動販売機で買えるスポーツドリンクは、カロリー量が多くミネラルもしっかりと含まれているポカリスエットがお勧めだという。
「ゼロカロリーを謳っているスポーツドリンクは人工甘味料が入っており胃腸の調子を悪くすることがありますし、<味覚としては甘さを感じているのに、実際はカロリーが入ってきていないのに血糖値を下げるためのインスリンが分泌されてしまうという、サイクリストにとってのマイナスな面もあります」
200km以上(長時間)のロングライド
「丸一日かかるようなライドでは、前日の食事から入念な準備をしたほうがいいでしょう。前日の夜から炭水化物を多めに摂り(カーボローディング)、ライド当日の朝も牛乳や卵などを足して800kcal程度の量をしっかり食べましょう。ライド中も1時間に200~300kcalを絶え間なく摂取し続けます。胃腸への負担を最小限にするため、おにぎりなどの固形物は休憩時に少しずつ食べ、ジェルや糖質入りのドリンクを走りながらとり、確実にエネルギーを補い続けることが無事に完走するための秘訣です」

塩分不足に注意!真夏の脱水対策
最後に、補給の一環である「夏の脱水対策」について説明してもらった。
「夏場のライドでは1時間に約1Lもの汗をかきます。1Lの汗には2~6gの塩が含まれているので、水だけをガブガブ飲むと体内の塩分濃度が下がり、塩分が不足することで起きる低張性脱水(水を飲んでも胃腸で吸収されず、筋肉や血液に行き渡らない状態)が進んでしまいます。夏場は塩分などのミネラルを含んだスポーツドリンクを1時間に500ml~1Lほど飲みましょう」
特に、暑くなりはじめの季節にかく汗は塩分濃度が高く、真夏にかく汗の2倍もの塩分を含んでいるという。よって気温が上がってくる4~5月は塩分不足になりやすく、脚が攣りやすくなる。
「炎天下で2時間を超えるような過酷なライドでは、スポーツドリンクだけでは塩分補給が追いつきません。経口補水液(OS-1など)も選択肢に加えましょう。また、大量の発汗を伴うロングライド中に限っては、ざるそば等の麺類の汁も飲むことで手軽に塩分補給ができます。『麺のつけ汁を全部飲む』と聞くと体に悪いイメージがありますが、夏場は2~3時間のライドでそれ以上の塩分が出てしまいます。むしろ飲んだ方がいいんです。ただし高血圧の治療をされている方は塩分の過剰摂取になるためご注意ください」

スポーツドリングが苦手という人は、塩タブレットなどで塩分補給をするという手もある。
「ただし1粒に0.1~0.2gほどの塩分しか入っていないため、『1Lの汗には2~6gの塩が含まれている』ことを考慮すると、それなりの量を食べる必要がありますね。梅干しおにぎり(一個につき塩分量が0.5~1gほど)で補うのもいいでしょう」
「また、氷菓も夏ライドの強力な味方になります。コンビニで買えるガリガリ君やアイスボックスなどの氷菓はアイススラリー(微細な氷の粒子が液体に分散したシャーベット状の飲料)代わりになり、深部体温を下げる効果が期待できます。しかも糖質と水分の補給もできる優秀なアイテムです」
もちろん食は楽しみの一つでもある。仲間とのグルメライドでクロワッサンがおいしいカフェに行ったのに「脂質が気になるので……」と遠慮する必要はない。「速く走ること」「成績を出すこと」が仕事ではないアマチュアサイクリストは好きなものを食べればいいと思う。しかし、ライドそのもののクオリティを上げたいのなら、補給には気を遣うべきだ。それは、自転車の楽しさを大きく左右する重要な要素だ。
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