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0.3からはじめるウルトラライト輪行ソロキャンプ Vol.10 番外編:おうちキャンプで練習してみた
2026.04.08
前回のVol.09の締めくくりで、「ソロ用テントの購入を考えているので、ポンチョタープでのキャンプは今回が最後になるかもしれない」と触れた。UL(ウルトラライト)スタイルとして軽量さを最優先にしてきた本連載だが、「ポンチョタープでキャンプする人はほとんどいないのでは」という、家族からのごく真っ当な指摘もあり、より多くの人にとって現実的な選択肢を提示するフェーズに進むことにした。
というわけで、いよいよソロ用テントとしてNEMOのDragonfly™ Bikepack OSMO™ 1Pを導入。
ただし今回は自宅でするテント泊、「おうちキャンプ」スタイルでお届けする。
今回は走らないが、前提としての自転車は常にそこにある。
おうちキャンプのメリット
おうちキャンプとは、庭やベランダ、室内にテントやアウトドア用品を持ち込み、自宅にいながら気軽にキャンプ気分を味わうスタイルのこと。テントやランタンで秘密基地のような非日常をつくり、キャンプ飯を楽しんだり、カードゲームでゆったり過ごしたりするのが醍醐味だ。準備のハードルも低く、子ども連れやキャンプ初心者にも取り入れやすい楽しみである。
実際我が家でも、子供が小さかった頃は、部屋に張れるテントは無かったが、キャンプ用のテーブルーとイスを広げて食事をし、夜はマットとシュラフで眠る。そんなふうに、家の中でアウトドア気分を味わうことが何度かあった(付け加えるなら、家のガレージで車中泊をしたことも)。子どもと遊ぶ目的だったが、大人の自分も意外と楽しんでいたことを覚えている。バルコニーでの食事は、キャンプが趣味ではなくても多くの人が楽しいと思うだろう。その延長線のようなものだ。

おうちキャンプのメリットは結構ある。
#1 冬でも寒くない
もちろん夏でも暑くない。寒い屋外では手がかじかんでうまく作業できないし、暑すぎると集中できない。設営手順にミスが生じたり、怪我の心配もある。
#2 雨・風・暗さの心配がない
設営時に条件が悪いと、特に初心者は心が折れるだろう。過酷な中での設営も振り返ればいい思い出になるし、達成感も味わえるが、その余裕がなければただの苦行になる。
#3 虫や動物がいない
蚊もいなければ、もちろん熊も出ない。虫が苦手な人、子どもやインドア派の人にとっても快適に過ごせるし、何より近年はクマの出没がメディアの報道でも目立つが、自宅ならその心配はゼロだ。
#4 移動・準備の手間ゼロ
思い立ったら10分で開始できるのも、大きなメリットだ。キャンプでいちばん大変なのは、設営ではなく実はキャンプ道具の準備だろう。キャンプ場で忘れ物に気が付いてもどうしようもないが、おうちキャンプなら必要な時に必要なものを出せる。
#5 失敗しても即やり直せる
キャンプ初心者はもちろん、経験者でも初めてのテントを設営する際には説明書を確認することが多い。そんなときはYouTubeの動画も参考になるが、キャンプ場ではバッテリー残量を気にしながらスマートフォンを見ることになりがちだ。
その点、自宅であれば電源の心配は不要。大きなモニターやタブレットで手順を確認しながら、落ち着いて作業できる。照明も十分に確保でき、ペグを打たない分レイアウトの調整も自由。細かなパーツを落としても、すぐに見つかる。じっくり試行錯誤できる環境は、とくに初心者にとって大きなメリットといえる。
#6 写真・動画を落ち着いて撮れる
設営と同じく、撮影においても“落ち着いて作業できる”環境は大きな利点だ。屋外ロケーションにこだわらなければ、暑さや寒さ、暗さに左右されることなく、純粋に撮影に集中できる。実際、ユーチューバーがギア紹介を室内で撮影することが多いのも、天候の影響を受けず、不要な環境音を避け、照明で明るさをコントロールできるからだろう。
こだわりのキャンプ飯をSNSに投稿する人にとっても、おうちキャンプは“映える一枚”を狙いやすい環境といえる。
家でのキャンプは、あくまで代替手段ではない。むしろ、最も効率よく設営を身につけられる練習場や遊びとして捉えるべきだ。
部屋で「キャンプの雰囲気」を作る方法
今回は新しいテントを立てる練習も兼ねているが、もともと「おうちキャンプ」的な楽しみ方は好きなほうだ。せっかくなら、家の中でどこまでテント泊の雰囲気を再現できるかも考えてみたい。

写真に写る雰囲気作りとしては、植物、床、照明、小物、キャンプ飯。加えて写真には写らないが音楽も大切な要素だと考えた。
01 / 植物は「点」で置く
最初からつまずきかけたが、鉢植えは大量に置かない方が良さそうだ。室内で森っぽさを出そうとして植物を増やしても、鉢、床材、壁、天井の高さといった部屋の要素がどうしても見えてしまう。結果、「森っぽい何か」+「完全に部屋」というチグハグな絵になりなる。人はこういう「再現しきれていない自然」にすごく敏感で、逆にフェイク感が強く出てしまう。
背の違うものを2〜3鉢、テント後方や出入口の横で床に直置きし、もし鉢が気になるようなら新聞紙や薄布で隠す。今回の主役はあくまでもテント、ギア、UL感。植物は外の気配を差し込むためだけに置き、闇雲に森っぽくしようとしないのがコツだ。
02 / 床は「地面を偽装」
写真の部屋は息子と共有している通称「男部屋」で、選んでいる床が少しアウトドアっぽさを感じられなくもないが、一般的な綺麗な部屋であれば、キャンプマットや無地のラグ、コットンのシーツを敷いてみるのも手だ。シワはあえて残す方が良い。
03 / 光で「影を出す」
天井照明は消し、ヘッドライトや小型のLEDランタンくらいにするのがポイントだ。暗い中で1、2灯だけ点灯させることで影が出て、一気に外っぽさが出る。照明器具の色温度は無難に暖色寄りが良さそうだ。屋内では使えないが、雰囲気作りとして置くだけであれば、ガス(orガソリン)ランタンを飾っておくのも良いかもしれない。
04 / 小物は「使うものだけ」
小物は、実際に使うものだけに絞る。雰囲気を出そうとしてアイテムを増やすと、かえって空間が雑然とし、生活感が残りやすい。パックパックやクッカー、マット、シュラフなど、ソロキャンプで使用するギアに限定することで、自然なまとまりと説得力が生まれる。
05 /キャンプ飯は「再現」より「成立」を優先
キャンプ飯は雰囲気づくりの重要な要素だが、屋外の環境をそのまま再現する必要はない。むしろ室内という条件を活かし、無理のない範囲で「それらしく成立させる」ことがポイントになる。たとえば、バーナーを使わずに仕上げた料理でも、クッカーに盛り付けるだけで印象は大きく変わる。あえてシンプルなメニューにすることで、ギアとの相性もよく、全体の統一感も出しやすい。
重要なのは調理工程よりも、「テントの前で食べている」という状況をつくること。無理に外と同じことをするよりも、室内で無理なく続けられる形に落とし込むほうが、結果的に満足度は高くなる。
06 /音は「足す」ではなく「整える」
写真には写らないが、音にもこだわりたい。屋外のような静けさを再現するのは難しいが、生活音を抑える意味でも、環境音や控えめな音楽を取り入れたい。一般的には焚き火・川の音などの自然音を流しがちではないかと思うが、個人的には音数の少ないアンビエント系の音楽が空間になじみやすく、視覚的な演出を邪魔しないと思う。
音を足しすぎると一気に作為的になるため、「意識しないと気づかない程度」に留めるのがコツ。あくまで主役はテントと過ごし方であり、音はそれを補助する役割にとどめる。

音で空間を整える ― アンビエントという選択
上の章の最後でアンビエント系の音楽に触れたが、せっかくなので少し紹介しよう。若い頃から特によく聞いているのは、Harold Budd(ハロルドバッド)とBrian Eno(ブライアンイーノ)の合作によるアンビエント系作品だ。
アンビエントは、一般的な音楽のように意識して聴くことを前提としない。むしろ、注意を向けなくても空間に作用し、場の質感をわずかに変化させる。メロディやリズムが前に出すぎないため、テントやギアといった視覚的な要素を邪魔せず、全体の一体感を保つことができる。
実際にいくつか再生してみるとわかるが、音量を控えめに設定することで、「音楽を流している」という意識が薄れ、代わりに空間そのものが変わったように感じられるはずだ。この“気づかれない変化”こそが、おうちキャンプにおける音の役割といえる。
以下に、公式チャンネルで公開されている代表的なアルバムを2枚ほど紹介する。いずれも作業や設営の邪魔をせず、空間に自然と溶け込むものばかりだ。テントの中やランタンの灯りの下で流してみると、その効果がより実感できるだろう。
ちなみに上ではアンビエントについて「意識して聴くことを前提としない」と説明したが、個人的には少し大きめのボリュームで、なんなら(深い瞑想から)トリップしたような感覚になるくらいにガッツリ聴くのが好きだ。大自然の中でソロキャンプをして癒される感覚と近いような気がしているのだが、思い込みだろうか。
食で仕上げる、おうちキャンプの体験
おうちキャンプにおいて重要なのは、屋外の調理環境をそのまま再現することではない。“外で食べている感覚”を、無理なく成立させることにある。
たとえば、本格的に火を起こしたりバーナーを使ったりしなくても、調理した料理をクッカーに盛り付けるだけで印象は大きく変わる。あえてシンプルなメニューを選ぶことで、空間やギアとの一体感も生まれやすい。
また、自宅という環境を活かせるのも大きな利点だ。下ごしらえはキッチンで済ませ、食べる瞬間だけを“キャンプの動作”として切り出すことで、手間を抑えながら雰囲気を損なわない。無理をせず、続けられる形に落とし込むことが、おうちキャンプを楽しむコツといえる。

おすすめメニュー例をパターン別に考えてみた。
■ ワンポット系(失敗しない)
・インスタントラーメン+具材追加
・スープパスタ
・フリーズドライ+追い具材
☞ クッカーとの相性がよく、「それっぽさ」が出やすい。
■ 仕上げだけキャンプ
・家で仕込んだカレーを温める
・下味済みの肉を軽く焼く(ホットプレートでもOK)
・おにぎり+簡単な汁物
☞ “外でやってる感”だけ抽出する。
■ 何もしない系(実は強い)
・コンビニ飯をクッカーに移す
・パンとコーヒーだけ
・ナッツやドライフルーツ
☞ UL的にはむしろこっちがリアルだろう。
おうちキャンプでは、屋外と同じことを無理に再現するのではなく、室内という環境に合わせて工夫することが重要になる。たとえば火を使わない前提でメニューを考えれば、安全性を確保しつつ準備や後片付けの負担も軽くなる。結果として、より気軽に楽しめる形に落とし込むことができる。
また、洗い物を増やさない構成にしておくこともポイントだ。使う道具を最小限に抑えることで、体験の余韻を損なわずに終えることができる。こうした小さな工夫が、次もやってみようと思えるハードルの低さにつながるし、リアルなキャンプっぽくなり満足感が増す。
さらに、見た目の印象は料理そのものではなく、ギアや盛り付けで整えるという考え方も有効だ。クッカーやシュラカップを使うだけでも雰囲気は大きく変わるため、無理に凝った調理をする必要はない。あくまで“その場で食べている感覚”をどうつくるかに意識を向けることで、おうちキャンプらしいバランスが見えてくる。
やってみてわかったこと
実際に部屋でテントを立ててみると、想像していた以上に得るものは多かった。設営の手順やポールの扱いはもちろん、どこで迷うのか、どの動作に無駄があるのかといった細かな部分まで、落ち着いた環境だからこそ確認できると考えていたが、設営はとても簡単で(一応YouTubeでさらっと予習はしていたが)直感的に短時間で立てることができた。
また、無理かなと思っていたが、ランディングゾーンに折りたたんだ車体が収まることも分かった。これまでのキャンプで車体を夜露に晒していてどう対応しようか悩んでいたので、これは嬉しい誤算だ。

バルコニーも併用してみると、空間の抜けや外光の入り方によって印象が大きく変わることにも気づく。室内だけでは得られない“外とのつながり”が加わることで、テント泊の雰囲気は一段と現実に近づく。
フライシートを被せない夏用スタイルのテントで寝転んでみると、外気、音、太陽光で、部屋の時の感覚とは大きく変わった。

こうした一連の試行を通じて感じたのは、家での設営は単なる代替ではなく、本番に向けた準備として非常に合理的だということだ。手順を一度体に通しておくだけで、次に屋外で立てるときの心理的なハードルは大きく下がる。
もちろん、風や地面の状態といった屋外特有の条件までは再現できない。それでも、事前にできることを済ませておくことで、現地ではよりシンプルに、余裕を持って行動できるはずだ。

次回は、いよいよフィールドへ。ポンチョタープから一歩先へ進み、より快適で、より自由な設営を試してみたい。
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