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折りたたみ自転車の常識を変えた一本のワイヤー。DAHONの独自技術「DELTECH」を物理学の視点から読み解く

2026.07.24 JOURNAL

折りたたみ自転車の常識を変えた一本のワイヤー。DAHONの独自技術「DELTECH」を物理学の視点から読み解く

フレーム下に張られた一本のワイヤー。その正体は、DAHONが特許を取得した独自技術「DELTECH(デルテック)」です。

見た目はとてもシンプル。しかし、その役割は単なる補強ではありません。折りたたみ自転車が抱える構造的な弱点を、物理学と構造工学の考え方で解決するために生まれたテクノロジーです。

この発想の背景には、DAHONの創業者Dr. David T. Honの存在があります。レーザー物理学の研究者としてアメリカの航空宇宙企業で研究開発に携わっていた彼は、自転車を「経験」ではなく「力学」で設計しました。DELTECHは、その思想を象徴する代表的な技術なのです。

折りたたみ自転車の常識を変えた一本のワイヤー。DAHONの独自技術「DELTECH」を物理学の視点から読み解く

DAHONが目指したのは「もっと剛性」ではなく「もっと速く」

DAHONでは、この課題を解決するために独自の研究開発プログラム「DAHON-V Tech」を展開しています。

DAHON-V Techとは、「同じ力でより速く走る(Going faster with the same power)」をコンセプトに、フレーム剛性やパワー伝達効率を科学的に追求する技術体系です。有限要素解析(FEA)やひずみゲージ測定、フレーム剛性試験、実走テストなどを繰り返しながら、DELTECHをはじめとする16件の特許技術を開発。経験や勘だけに頼るのではなく、物理学に基づく解析と検証によって、自転車の走行性能を高めています。

DAHON-V Techでは、40車種以上の自転車を解析・試験した結果、多くの自転車に共通する問題として、ライダーが気付かないうちにペダリングパワーが失われていることを発見しました。つまり、ライダーが100の力でペダルを踏んでも、そのすべてが前へ進む力には変わっていないということです。

その原因の一つが、フレームの「たわみ」でした。

折りたたみ自転車は、なぜたわみやすいのか

一般的な折りたたみ自転車の多くは、一本のメインフレームで前後をつなぐ「シングルビーム構造」を採用しています。この構造は折りたたみには最適ですが、一方で中央にヒンジがあるため、どうしても力が一点へ集中しやすくなります。

ライダーがペダルを踏み込むと、体重とペダリングの力によってシートチューブ周辺はわずかに下方向へたわもうとします。その変形はヒンジ部へ集中し、
 ・フレームがしなる
 ・ペダリングパワーが逃げる
 ・ヒンジへ大きな応力が繰り返しかかる
という現象を生みます。

これは設計の良し悪しではなく、シングルビーム構造そのものが持つ物理的な特性です。

DELTECHが作り出す「見えない三角形」

そこでDAHONが考えた答えがDELTECHです。

トップチューブ付近からBB下まで、高強度ケーブルを一本張る。それだけでフレーム内部にスタビリティ・トライアングル(安定した三角構造)が生まれます。三角形は建築や橋梁でも使われる、もっとも変形しにくい構造。DAHONはこの基本原理を折りたたみ自転車へ応用しました。

一見ただのワイヤーに見えますが、実際にはフレーム全体の力の流れを設計し直しているのです。

折りたたみ自転車の常識を変えた一本のワイヤー。DAHONの独自技術「DELTECH」を物理学の視点から読み解く

DELTECHは「押さえる」のではなく「引っ張る」

DELTECHを理解するうえで重要なのは、このワイヤーはフレームを押さえているわけではないということです。

ライダーがペダルを踏み込むと、シートチューブは下方向へわずかに変形しようとします。その瞬間、DELTECHには張力(引張力)が発生します。その張力がフレーム全体へ荷重を分散し、変形を抑制します。

つまりDELTECHは「ワイヤーで支えている」のではなく、「フレームがたわもうとする力を、張力へ変換してフレーム全体へ逃がしている」という構造なのです。

航空機や橋梁などにも通じる、極めて合理的な力学設計と言えるでしょう。

フレーム剛性は23%向上

DELTECHによって形成される三角構造は、荷重を効率よく分散し、フレーム剛性を約23%向上させます。さらに、ヒンジ部へ集中していた応力も大幅に軽減。フレームの寿命向上にも貢献しています。

数字だけを見ると「23%」ですが、走行フィールではそれ以上の違いとして現れます。

折りたたみ自転車の常識を変えた一本のワイヤー。DAHONの独自技術「DELTECH」を物理学の視点から読み解く

ペダリングパワーが逃げにくい
踏み込んだ力がフレームのしなりに使われにくくなり、推進力へ変換されます。坂道や加速では、その軽さを特に感じられるでしょう。
(※DELTECH非搭載のDAHONのバイクと比べて5~10%、他社製品と比べると最大36%ものスピードアップを実現しました。)

ハイスピードでも安定
フレームのねじれが減ることで直進安定性が向上。ロードバイクをはじめとするスポーツバイクらしいシャープな走りを実現します。

長く乗るほど違いが出る
荷重が分散されることでヒンジの摩耗を抑制。長期間使用時の耐久性向上や、ヒンジ部のきしみ音の予防にもつながります。

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一本のワイヤーではなく、「設計思想」である

DELTECHを初めて見ると、「補強ワイヤーが付いている」と思うかもしれません。しかし、その本質はそこではありません。

DAHONが追求したのは、「フレームを重く頑丈にすること」ではなく、必要な場所にだけ張力を利用し、軽さを維持したまま剛性を高めることでした。

同じ力なら、もっと速く。
同じ速さなら、もっと軽く。

DELTECHは、その思想を最も分かりやすく形にした技術です。

フレーム下に張られた一本のワイヤーは、単なる部品ではありません。物理学者であったDr. David T. Honが導き出した、「力の流れ」をデザインするという発想そのものなのです。

折りたたみ自転車の常識を変えた一本のワイヤー。DAHONの独自技術「DELTECH」を物理学の視点から読み解く

 

DELTECHは、DAHONが長年にわたる研究開発の中で生み出した数ある独自技術のひとつです。折りたたみ自転車の走行性能を高めるため、DAHONは物理学に基づく解析と実証を重ねながら、多くの特許技術を開発してきました。

折りたたみ自転車を科学するDAHONの技術思想に興味をお持ちいただけた方は、ぜひこちらもご覧ください。DELTECHをはじめとするDAHON独自のテクノロジーをご紹介しています。
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