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0.3からはじめるウルトラライト輪行ソロキャンプ Vol.05 マキノ高原キャンプ場で星空撮影
2024.05.23
軽量コンパクトな自転車で輪行(公共交通機関で移動)して、ミニマムな装備でソロキャンプするこの企画も第5回。前回の「防寒編」から2ヶ月が経ち、すっかり気持ちのいい季節になった。のんびり油断していると梅雨入りしたり暑くなるので、急いでキャンプに行くとしよう。この連載は昨年の夏にスタートして、残暑の厳しい9月中旬に初野営、そして最低気温2℃を記録した3月中旬と、暑いか寒いかしか経験してこなかったので、今回の春キャンプには期待しかない。
今回は連載5回目にして初めてのキャンプ場の利用となる。前回のリベンジとして改めてチャイを飲む(←前回チャイを淹れるつもりが茶漉しを忘れるという大失態!)のと、思いつきの前回よりは星空をきちんと撮影したいというのが自分的隠れテーマ。JRの駅からキャンプ場へ向かう途中には、サイクリストの間でも有名なメタセコイア並木もある。
目次
ここをキャンプ地とする 〜メタセコイア並木をサイクリング〜
「マキノ」は琵琶湖の北西部に位置する高島市の北端にある地名で、かつて滋賀県の北西部に存在した高島郡の町名が高島市との合併により今は「高島市マキノ町○○」として残っている。カタカナの町は、もともと日本に2つしかなく「マキノ」と「ニセコ」だけだったそうで、スキー場を作った当時はカタカナの方が格好良かったからとか、大阪枚方市の牧野駅と区別するためだったなど、カタカナが採用された経緯には諸説ある。
今回キャンプ地を選ぶにあたって重要視したのは、広大な見晴らしだ。前回、前々回と琵琶湖湖畔で野営をして、林間よりも視界の抜けた景色に魅了されていたからか、知らず知らずのうちに広い場所を探していた。赤坂山のふもとに広がるマキノ高原キャンプ場は冬季にはファミリー向けスキー場として利用されるほど広く、他も検討はしたが今回は迷いなくここに決めた。
最寄のJRマキノ駅までは、大阪駅から湖西線経由敦賀行の新快速で1時間半ほど。自転車があるので眠るわけにはいかないが、あっという間に着いた。ここから自転車で、途中メタセコイア並木を経由して5.9km先のマキノ高原キャンプ場に向かう。
10分ほど走り、メタセコイア並木に到着。約2.4kmのほぼ直線に約500本のメタセコイアが並ぶこの姿は「新・日本の街路樹百景」にも選定されている。ビワイチ(琵琶湖一周サイクリング)を楽しむサイクリストの多くも立ち寄る、ちょっとした観光スポットだ。
自撮り棒では並木と車体の両方を1枚に収めるのは無理だった。せっかくの素晴らしいスポットなので、素人の写真よりも観光協会の宣材を載せておく方が良いだろう。
今の季節は緑が綺麗だが、秋の紅葉、冬の雪景色はさらに美しい。すぐ西には野坂山地の山々が選望できる。山と集落と田んぼと小川の景色がとても長閑で、すでにリフレッシュできている実感がある。
平坦な並木道を過ぎて高原に進路を取ると徐々に勾配が増してきたが、変速があるので楽に走れた。メタセコイア並木からは数分でキャンプ場に到着。ファミキャンやグルキャンで何度か利用したことがあるが、あらためて見るとやはり広い。管理事務所でチェックインを済ませ、福井県境嶺南と滋賀県高島市の分水嶺、高島トレイルを仰ぎながら坂を上る。
ここをキャンプ地とする。
このキャンプ場には芝生や林間、川辺などロケーションの異なる6つのキャンプサイトがあり、人数や目的に合わせて選ぶことができるのがウリの一つだ。今回は眺望と、他の利用者の写り込みを避けて、中央に広がる高原サイトから更に一段高いところにある「広場サイト」にした。
ちなみに、ここは「西のふもとっぱら」と言われるほど人気のキャンプ場で、気候の良いシーズンの休日はこんな感じで賑わう。ワイワイと楽しいキャンプも好きだが、ソロキャンプでは静かに過ごしたいこともあり、今回は平日にやってきて正解だった。
ひと息つこうと、マットの上に寝転がって空を見上げる。快晴の空にポツンと、月が見えた。
今回の装備と設営 〜トレッキングポールを支柱として利用〜
今回持ってきた主なものは写真のとおりで、前回とあまり変わらない。5月に入りだいぶ暖かくなったが事前の予報では最低気温は10℃と少々低めで結露も予想されたので、シュラフに加えてシュラフカバーも用意した。逆に蚊取り線香なども用意していたが、こちらは結果的に不要だった。
今回は新たにポンチョタープの支柱として、EVERNEWのトレッキングポールを導入した。600~1,350mmの伸縮式なので、将来的にワンポールテントを購入することがあっても、自由に高さにも合わせられる。カーボン製で145g。手に持つと驚くほどの軽さだ。
主な装備をリストにしてみた。このリストをもってベースウェイトとするなら、4.3kgは優等生とされる。食材はベースウェイトには含まれないが、これ以外にカメラ、スマホ用自撮り棒、防寒具、救急セット、虫よけスプレーや、自転車関係としてワイヤー錠、工具、輪行袋、ヘルメットなどもあるため、若干無理はある。そういえば予備としてプラペグも数本持ってきていた。
撮影しながら設営していると、いつの間にか夕方になっていた。「ULではペグハンマーは持たずに足で踏むか現地で石を拾う」と聞いていたが、設営した場所の地面は硬く、都合のいいサイズの石も落ちていなかったので、ペグを刺すのにかなり苦労した。ペグハンマーは「重さ=使いやすさ」であることが多いのでULな装備への導入には慎重にならざるを得ないが、軽量なペグハンマーを持参することも検討すべきかもしれない。
前回は木の幹、前々回は拾った木の枝を支柱にタープを立てたが、管理されたキャンプ場には木の枝は落ちていないので、新たに導入したトレッキングポールは大いに役立った。これでどこででも設営できる。
ポンチョをタープ代わりとし、マット、シュラフ、シュラフカバーで寝るだけの、いつもどおりの超ULスタイル。
眼下に広大な芝生サイトを見下ろしたいために、斜面ギリギリにタープを張った。
設営が終わったので、チャイを淹れるとしよう。Vol.04 をご覧いただいた方はご存知だが、前回もチャイを淹れる用意をしていたものの茶漉しを忘れるという失態をおかし、飲むことができなかった。今回はそのリベンジとなる。必要なものは茶葉、牛乳、少量の水、砂糖、そして今回は生姜も用意した。
クッカーに水を入れて沸かし、そこへ茶葉を投入。紅茶のいい香りがしてきた…………ところで(白状すべきかどうか迷ったが)クッカーをひっくり返してしまった。タープを斜面ギリギリに張った関係で地面に少し傾斜があり、テーブルが傾いていたのだ。分かってはいたのだが、慎重さに欠けていた。幸い、翌朝にも飲もうと2回分の材料を持ってきていたので助かった。
気を取り直してテーブルを水平な場所へ少し移動。改めて沸騰した湯に茶葉を投入する。
そこへさらに生姜を擦りおろして投入。
あとは、牛乳を入れて煮出すだけ。吹きこぼれそうになるのを何度も繰り返し、根気よく煮出す。ここでしっかり煮出さないと、単なるミルクティーになる(かといってやり過ぎると苦くなるので、慣れは必要)。
茶漉しを使ってコップに移せばでき上がり。好みで三温糖を入れて飲む。昔は砂糖を入れないこともあったが、本場インドの飲み方をしてこそ本物のチャイだと考えて、いつしか入れるようになった。実際にインドでも何度か飲んだが、気候や文化の違いなのか、思いっきり甘いところが多かった。
ジンジャーチャイ、最高〜!
ソロキャンプでチャイを淹れる……今回のミッションの1つ目は(アクシデントはあったが、なんとか)成功した。
マキノの夜の過ごし方 〜簡単キャンプ飯と夜空の撮影〜
広いキャンプ場の中を散歩しながら遠目に観察したところ、お洒落なテントやキャンプ道具でスタイリッシュなキャンプをしている人たちがほとんどだった。静かに話し込んでいるところから、賑やかなグループまで、様々だ。オイルランタンや焚き火は特に雰囲気がいい。ULキャンプで重量のある焚き火台は使えないが、拾ってきた枝を超コンパクトな焚き火台で燃やすくらいは楽しいかもしれない。ただ、管理され尽くしたキャンプ場で薪を拾うのは難しそうだ。こうやって色々考えるのが、キャンプの楽しさでもある。
気付くと、すっかり暗くなっていた。この、暗くなってすぐの時間帯が好きだ。(夜明けも好きだが)
今日の夕食はペペロンチーノ。パスタを茹でた湯を捨てずにそのまま水分を飛ばして作る、味の素の「パスタキューブ」を利用する。自分のような料理初心者にも易しい献立だ。材料は、玉ねぎ、しめじ、ブロッコリー、ベーコン、そしてパスタキューブとパスタと水と少量のオリーブオイル。
オリーブオイルで具材を炒めて、そこへ水を入れて沸かす。テーブルが安定していることの、この絶大なる安心感。家のキッチン環境の便利さを痛感する。
沸騰したのでキューブと麺を追加して茹でる。クッカーが小さいので、麺は2つに折って投入。下の写真は、麺が少し柔らかくなってきた頃の状態。本来は「混ぜながらさらに2〜3分加熱して水分を飛ばしたら完成」なのだが、大きなフライパンで事前に家で練習した時のようにはなかなか水分が飛ばずに、少々時間を要した。
そして完成!パスタは硬めが好きなのだが、茹で過ぎた感じもせず美味しく食べることができた(それよりも量が多くてお腹がいっぱいになりすぎた)。食事は複数人で食べる方が楽しいが、これはこれで楽しい。料理に不慣れだからこその、「自分でできた!」的な達成感もある。簡単な作り方に加えて、クッカーひとつで調理ができる点も、UL装備に都合の良い献立だ。
それでは、いただきます!
広いキャンプ場を再度散策して、一杯になり過ぎたお腹を落ち着かせる。残りのミッションは、夜空の撮影。天気予報を見て直前に日程を調整したことあり、予定どおり満天の星が広がっている。カメラのF値を低くして、マニュアルフォーカスで星にピントを合わせて、バルブ撮影モードで適当な秒数で撮ってみる。
ファインダーを覗いて撮影した画像を確認すると、案外上手く撮れているように感じた(が、後日PCに取り込んでディスプレイに表示させると思ったほどではなかったので、さらに細かい工夫は必要そうだ)。
F値を低くすると被写界深度が浅くなるので、星にピントを合わせるとタープは自ずとボケる。これ以上は別の撮り方や、グラフィックソフトでの加工に頼ることになるのかもしれない。星空撮影の初心者レベルとしては、自分的には今日はOKとしておこう。今後は軽量コンパクトな三脚を上手く活かすことも検討したい。
静かで広い野外で四苦八苦しながら撮影していると、何やら充実感のようなものを感じた。冒頭で「広い場所を探していた」と書いたが、正確には「近くに他のキャンパーがいない場所」が好きなのかもしれない。
だいぶ冷えてきたと思ったら、気温は11.2℃。このあと風が止んで少し高くなるようだ。
高原の夜明け 〜夜を克服 / 朝日を浴びながらのお手軽朝食〜
今回はなかなか寝付けなかった。斜面ギリギリに設営したため寝床が微妙に傾いていて(←設営時に分かっていたがそこまで気にしていなかった)、寝る姿勢が定まらなかった。着替えを枕代わりにしていたが、ゴツゴツして落ち着かなかった。風でタープが揺らされるたびに、結露した雫が顔に落ちてきた。
ふと横向きに寝てみると、傾きが気にならなくなり、背中も暖かくなって落ち着いた。シュラフカバーを頭まで被ると落ちてくる雫も気にならなくなり、朝まで起きることなく熟睡できた。克服した。
就寝時間とは裏腹に、寝起きは早かった。日の出まえの景色が綺麗だったので、シュラフに入ったままスマホで撮影してみた。あとで撮影時間を見ると、04:20だった。
二度寝を試みたが楽しさが勝ってしまい、そのまま起きることにした。稜線から朝日が昇ってきた。1日が始まる。
タープには内側の結露だけでなく、外側も夜露で濡れていた。
上手く撮れていないが、草に付いた夜露の雫がキラキラ光って、綺麗だった。
家族と朝食の時間をあわせてビデオ通話をしようと思っていたが、お腹が空いて待てそうにないので早々に朝ごはんとする。シングルバーナーの火力は強く、コップ1杯のお湯を沸かす程度なら30秒とかからない。
食パンにハムとスライスチーズを挟むだけのお手軽献立だが、このうえない美味しさだ。キャンプというと写真映えする夕食に意識がいきがちだが、朝日を浴びながら食べる朝食もすこぶる良いものだと、ここで強く主張しておきたい。
まだ時間は早いが、帰るとしよう。シュラフとシュラフカバーを素早く収納、ペグを抜くのにまた苦労をしたが、ポンチョもグイグイ袋に押し込み、はい完了。ミニマムな装備だと、設営も撤収もスピーディーだ。ゴミを持ち帰らなくても良い点は、キャンプ場だからこその嬉しいところ。
駅を素通りして、琵琶湖沿いに次の駅まで走ってみる。この気軽さも、自転車キャンプの魅力の一つだと思う。滋賀県が3回続いたので、次回は他府県に行ってみたい。輪行すれば、どこへでも行けるだろう。
*当連載に関するご意見はXのこちらのアカウントまで。記事に先行して小ネタも投稿中!
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