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0.3からはじめるウルトラライト輪行ソロキャンプ Vol.01 主な装備の調達編

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フォールディングバイクで自転車キャンプ

子どもの頃に入団していたボーイスカウトの訓練で体験したビバークが、今でも強烈に記憶に残っている。ビバークとは登山が計画どおりに進まず山中で一夜を明かす緊急手段のことで、その時は雨具として携行していたポンチョをテント代わりにして、各自見えない程度に離れて一人で寝た。山で一人で寝ると、自然のさまざまな音が聞こえてくる。子ども心に怖かった初めてのビバークは刺激的な体験として記憶に刻まれ、(今でも怖がりなのは変わっていないが)究極のキャンプのスタイルとして憧れるまでに膨らむこととなった。

ボイースカウト時代(中1の頃)の写真。所属する班の共有備品の運搬もメンバーで分担していたので、子どもにはかなり重い装備になっていた。

「自転車キャンプ」といった言葉が流行り出してから何年も経ち、バイクパッキングが一般的になった。ハンドメイドでフレームバッグを作ってもらった記事でも荷物を自分で担がずに自転車につけることでストレスなく荷物を運べる、走る楽しさに便利を加えられる点に触れ、その良さは体感している。が、小径車ファンの自分が自転車キャンプをするのであれば、瞬時に輪行スタイルに移行できるフォールディングバイク(折りたたみ小径車)の良さを生かしたい。輪行でバイクに積載している荷物を外して担ぐのではなく、スマートにコトを進めたい。そんなところからフト、キャンプ道具はバックパック一つに収めておけばいいのでは?UL(ウルトラライト)なギアなら可能では?という想いに囚われるようになった。これが始まりだ。

ファミキャンには時々行くが、ソロキャンプは経験ゼロ。ましてやULな装備もゼロ。これから少しずつ経験を積んでいく、リアルな様子をお届けするのがこの連載のテーマだ。ソロキャンプの経験はゼロに対して、遠い昔、子どもの頃にボーイスカウトで得たスキル(=0.1レベル)、家族キャンプで得ている中途半端なスキル(=0.1レベル)、輪行は普通にできる経験(=0.1レベル)から、「0.3からはじめる」というタイトルにした。諸先輩方には生暖かく見守っていただければと思う。

 

「そなえよつねに」とミニマムな装備

UL(ウルトラライト)とは

ULとは登山のスタイルの一つで、装備の軽量化(ウルトラライト)を意味する。荷物を必要最小限にし、軽いギアを背負うことで体力の消耗を抑えて早く、より遠くへ行けるようになったり、限られたギアによる多少の不便を受け入れることで深く自然と向き合うことができる。自分の理想のスタイル(装備をウルトラライトにすることでスマートな輪行を実現しながら、ソロキャンプに行く)を思いついた時は、我ながら名案だと嬉しくなった。

が、実はすぐに不安になった。必要最低限の装備で一人でキャンプなんかできるものだろうか、と。「そなえよつねに」とは、多くの国で100年以上も変わらず掲げられてきたスカウトのモットーだ。もちろんこのモットーは精神的や肉体的な側面が強く、いつ何時どんなことが起こってもいいよう、そして自分だけのためではなく、他の人も助けるようにスキルも含めて自分を磨いておくようにというもので、重装備を意味するものではないが、自然の中では意外と慎重派の自分には入念な準備の意味もあった。

その心配は、ULに特化した専門店を訪れることで、解決した。

 
山道具 谷ノ木舎

その店は、大阪の谷町7丁目にある。専門店と聞くと敷居の高そうなイメージがあるが、振休を利用してふらっと覗いてみたら、とても自分にしっくりする雰囲気だった。ULハイキング・ファストパッキングをコンセプトにした山道具を専門的に扱うが、店長の中川さんはビギナーにも分かりやすく丁寧に教えてくれる。輪行も含めて自分の思う理想のスタイルを相談したところすんなり理解し、色々なアドバイスをいただけた。複数の具体的な選択肢を提示してくれるところも、ありがたい。

中川店長は折りたたみ小径車やBREEZERのグラベルバイク(RADAR EXPERT)にお乗りで、店頭にはバイクラックも用意されている。

そして分かったことは、ULを味方につければ、心配性な自分の勝手解釈な「そなえよつねに」とミニマムな装備は相反しない、ということだった。必要最小限の装備をULなギアで厳選して揃えれば、安心してソロキャンプに臨める。(いや、キャンプに安心なんて言葉は無いことは分かっているが)

 
今回入手した装備

自分的UL輪行ソロキャンプに向けて、その中心となる道具を新たに購入してみた。実際のキャンプにはこれ以外に細々したものも必要となるが、今回は主なものを紹介する。

まずは「住」関係から。中央左から、テント代わりにするポンチョ、ペグ、シュラフ代わりするインナーシーツ、地面に広げたマットの4点。キャップ(左端)や500mlの缶コーヒーをサイズ比較のために並べたので、それぞれのアイテムのコンパクトさが伝わるだろう。もちろん軽い。

○ ポンチョ:INTEGRAL DESIGNS / Sil Poncho
 ポンチョとは、四角形の布の真ん中に頭の通る穴が空いた形状の、バックパックごと入ることのできる雨具のこと。過去の記憶を頼りに斜めに張ったロープに被せ、人一人が寝転がれるスペースを作ってテント代わりにする。現代ではソロ用テントでも非常に軽量な製品はあり、中川店長からはビビィ、タープ、ポンチョと1つで3役をこなすゲートウッドケープも教えていただいたが、今回はあくまでも自身の子どもの頃のビバークでの経験に基づきポンチョを使用する(ただ、記事制作の限られた時間の中で思い通りのものを探せず、今回は中川店長の私物をお借りした)。

○ ペグ:Coleman / Dura Y-Peg 18cm(ジュラルミンYペグ18cm)
 ポンチョの端のハトメを利用して地面に固定する際に使用する。ペグハンマーも軽量なものは出ているが、ULな装備を突き詰めるなら軽量化を目的にハンマーは持参せず、かかとを支点に靴裏でゆっくり押し込めばOK、地面が硬い場合は周辺で石を探すべしとの中川店長からのありがたい指導をいただいた。結果的には、今回の場所はそれで大正解だった。

○ シュラフ:STATIC / ADRIFT LINER
 寝袋は季節、気温に応じて選択する必要がある。極寒の冬山でも、相応に対応したシュラフさえあれば凌げるようだ。今回は夏の低山をイメージしてシーツ系の薄いものをチョイスした。エマージェンシー用のアイテムとして有名なSOLのエスケープビビィという選択肢もある。

○ マット:山と道 / SLEEPING PAD UL Pad15 S+ 100cm- 113g
 過ごしやすい季節でも自然の中では夜間は底冷えがするのと、ちょっとした凹凸でも寝るときは気になるので、運搬時のサイズとの調整になるが一定の厚さのマットは欠かせない。エアマットの類はファミキャンで使っていた時期もあるが、ふわふわした感覚が落ち着かないので個人的に好きではない。またフロアレスシェルターの場合、エアマットだと環境によって敗れる可能性が高いので、中川店長も積極的にはお薦めしていないそうだ。山と道のマットは種類を問わず、R値/重量が世界最高クラスで、頼もしいアイテムだ。この下にグランドシート的な用途で、タイベックのシートや、SOLのエマージェンシーブランケット、厚手のヘビーデューティーのエマージェンシーブランケットを敷く人もいるそうだが、今回は直接地面に敷いて使用する。

次に「食」関係のギアをご紹介。写真左から、テーブル(折りたたまれた状態)、ストーブマット(折りたたまれた状態)、アルコールストーブ、ベビーオイル、風防(丸められた状態)、マッチ、ボトル、カップヌードル、箸。

○ テーブル:Cascade Wild / Ultralight Folding Table
 一体型の波形プラスチック構造を採用した、超軽量折りたたみテーブル。手持ちの金属製折りたたみテーブルを持っていくべきか迷っていたが、谷ノ木舎で初めて見て、想像を超えた軽さに正直驚いた。2つ以上をスナップ連結することで、大きな卓上を作ることもできる。

○ ストーブマット:STATIC / SAG STOVE MAT(シリカエアロゲル ストーブマット)
 アルコールや固形燃料のストーブを使用する際に、自然環境への配慮を目的に敷く断熱材。NASAに採用されるほど体積比での断熱性が非常に優れる次世代素材 シリカエアロゲルを不織布に塗布した生地を使用。

○ アルコールストーブ:EVERNEW / BLUENOTEstove set
 直径12cm程度までの小型カップでの使用を想定したサイドバーナー式アルコールストーブ「BLUENOTEstove」本体と、その点火をサポートする「Pre-Heating plate」のセット。1回の燃料注入(最大15ml)で約300mlのお湯を沸かせる。

購入時に中川店長がプレヒーティングプレートの使い方を実際に見せてくれたので、ありがたかった。

○オイル:DAISO / ベビーオイル(60ml)
 J Rグループおよび大手私鉄各社で可燃性液体の列車内への持ち込みのルールが2016年に変更されたことで、キャンプで使用する燃料用アルコールも可燃性液体という扱いになり車内持ち込みはNGではないかという投稿をネットで見て、同じくネットで見た100均で購入できるベビーオイルによる代用を念のために試みた。(※結果は後述)

○ 風防:TOAKS / Titanium Windscreen
 野外で火を使う際、効率よく燃料を燃焼させるために必要となるのが風防。こちらは、アルミ風防に匹敵する軽さ(15g)を持ちながら、アルミにはない素材自体の耐久性と強度があるのがチタン製。急ぎで入手できなかったため、今回は中川店長の私物をお借りした。経年変化でいい風合いになっている。

○ チタンボトル:MAXI / MAXI Titanium Water Bottle(800ml)
 しばらくは手の込んだ料理までは手を出せないので(☜料理は普段からほとんどしていない)、食事はカップヌードルを食べる程度を想定し、今回は湯を沸かす目的でこちらをチョイス。抜群の軽さと金属イオンが溶け出す心配がないチタン製で、直接火にかけられるので水筒と鍋を個別に持っていかなくて良いのも重要なポイント。ただし、料理にトライするようになればクッカーの類は必要になるだろう。

谷ノ木舎 店内。良い店&人に出会えて良かった。色々教えていただき、ありがとうございました。

谷ノ木舎のことは、ULなギアを探している際にメジャーなアウトドアショップで教えてもらった。こういったULなギアを専門に扱う店は、都市部でもごく限られた存在だ。

主だったものを購入した帰り、公園でイメージトレーニングを。ロール状に巻いたマットはよくバックパックの下部に横向きに吊り下げているのを見るが、草木の生い茂る狭い山道を進むときには引っ掛かって危ないそう。自分の場合は、輪行する際に駅で他の乗客に当てないためにも、やはり縦に固定するのが良さそうだ。

○ バックパック:山と道 / MINI
 輪行+自転車走行(や徒歩)でソロキャプの道具を揃える場合、まず初めにバックパックを購入し、それ以上道具が増えないようにすることが大切だが、今回は他のアイテムと一緒に購入した。中川店長からはいくつかの提案をいただいたが、最終的には見た目の好みも考慮して選んだ。最大容量32Lの高い拡張性を持ちながら、重量わずか380gの ULバックパック。

さらにイメージトレーニングを重ねてみた。自宅のバルコニーにマットを敷いて、シュラフに入ってみる。意味なくバックパックも横に置いてみた。(夕食で摂取したアルコールの影響もあるかもしれないが)シュラフの肌触りが気持ち良く、今すぐ眠れそうだ。

 

事前に練習してみたリアルな報告

いきなりキャンプに行くのはハードルが高いように思い、購入したアイテムを使ってシミュレーションしてみた。今回は輪行せず自宅から自走で、デイキャンプや火器の使用ができる河川敷の公園のバーベキュー指定区域へ。実際のキャンプでは必要となる食糧や着替え、照明器具、救急セットなど細々したものは持って出なかったので荷物が若干少なく、マットはバックパックの中に入れた。

先日、会社帰りに荷物が重いと思い計ってみたら4.7kgだった。テレワーク前日でノートPCが入っていたのが原因だが、輪行キャンプではこれより軽くあってほしいと思っていた矢先、今回計ってみたら4.2kg。まずまず許容範囲内。無駄に重い財布をキャンプの時だけ簡易なものにするだけでも、かなりの軽量化に繋がるだろう。

自転車マニアがボルトをチタン製に交換するなどしてグラム単位で車体の軽量化を図る様子を時々見るが、自分で背負うものの重さはなおさら重要。自分にとってのキャンプは訓練ではなく娯楽。輪行やライドが苦行にならないように、軽量化はこの連載で一番のテーマとなる。

自宅を出て10分ほどの場所で、移動中の様子も残しておこうと撮影。ヘルメットも買い換えればかなりの軽量化になりそう、と気付く。

25分くらいかけて、目的地に到着。暑い昼間の河川敷には稀に散歩やサイクリングの人が通り過ぎる程度で、バーベキュー指定区域はそこそこの広さがあるものの誰もいない。時々上空で飛行機の音がするくらいで、昼寝をしたくなるような長閑さだ。ちょっと風が強いとは思ったものの、暑い日の木陰では気持ち良さしか感じられなかった。(後からこの強風がアクシデントの原因に…)

まずはポンチョを張ってみる。本来は樹木や流木を支柱に見立てて利用するだろうし、徒歩キャンプではトレッキングポールを利用する人も多いようだが、あえて車体を使ってみた。寝られないことはないが高さが低く、結露したらシュラフの足元は濡れそうだ。まぁ、初めてにしては及第点だろう。

ポンチョの横にシュラフを並べてみた。風が強いが、木陰に寝るだけで最高。山の中で寝たら更に気持ち良さそうだ。

では次に、食関係の練習を。今回はカップヌードルを持ってきたので、お湯を沸かすだけの簡単さ。必要なものは、テーブル、ストーブマット、アルコールストーブ、オイル、風防、ボトル、水。昼をだいぶ過ぎているので、サクッと作っていただいてしまおう。組み立てた折りたたみテーブルが可愛い。

ん?着かないな。何度やってもオイルストーブに火が着かない。風は確かに強いものの、そのせいでは無さそう。もしかして、キャンプ用液体燃料の代わりに持ってきたベビーオイルが原因なのか?

ぼーっと空を見上げ、落ち着いてゆっくり考えて……

本来の液体燃料を自宅まで取りに帰ってきた。そして、今度は簡単に着火し、お湯を沸かすことができた。ベビーオイルで代用した投稿が幾つもあったにも関わらず自分では着火できなかったのは、主成分のミネラルオイルの引火点が高いため、自分が下手だっただけのことかもしれない。

後日、アウトドア量販店に某アルコールストーブのメーカーがポップアップをされていたので聞いたところ、列車内への持ち込みが仮にNGだとしても、列車を降りたあとに現地のドラッグストアや100均、スーパーなどで購入すれば良いとのアドバイスをいただき、納得した。またJR東日本に電話で問い合わせたところ、キャンプなどでの使用を前提に販売されている燃料用アルコールは成分(メタノール、エタノールなど)に関わらず持ち込み不可だが、消毒用エタノールは化粧品類・医薬品に分類されるので持ち込み可能との回答をいただいた。なるほど、では自分は消毒用エタノールを使うことにするか。とはいえ、エタノールは引火点(火を近づけた場合に着火する最低温度)が低いので、火器を取り扱う際はしっかり管理することが望まれる。因みに別の話題の時に軽く触れた程度だったが、中川店長はウイスキー(か何かの度数の高いアルコール)を使ったことがあると仰っていたので、いつか実験してみるのも面白そうだ。

強風のためか、またはオイル注ぐ時に垂らしてしまったせいか、ストーブマットを焦がしてしまった。が、ともかく目的は達成できた。

3分が経つのを待つ間、余裕のあるイメージを演出するために、足を入れたカットも撮影。

そしてようやく3分が経過。ようやくありつけた昼食は……

正直、美味しさよりも目的を達成した安堵感の方が大きかった。自宅まで往復した間に空腹のピークを過ぎていたことや、木陰で涼しいとはいえやはり暑かったこともあると思う。時と場合に応じた食事のメニューを選ぶ大切さを学んだ。

時計はすでに16時。ドリップバッグだけどコーヒーでも飲むとするか。これもお湯を沸かすだけ。今度は強風を避けて湯沸かしアイテム一式を岩陰に移動させる。アルコールストーブは気化させたアルコール燃料を燃焼孔から吹き出して燃焼させる仕組みで、こんなに小さいのに凄い火力なのには驚かされる。

そんなことを考えていた矢先に突然……

もうすぐ沸騰しそうだな〜と思っていたところで水を入れたボトルがいきなり転倒し、中の水が溢れてしまった。岩陰の地面が若干傾いていたのと、強風が理由。アルコールストーブはサイドバーナー式なのでゴトクが不要なのは利点だが、今後に向けて改善方法を検討したり、そもそも自分が何度も使って慣れておく必要があるようだ。

↑転倒したボトルの絵面は自分的にショックだったので、写真では遠くに小さくぼかすに留めた。

 
今回のまとめ

色々失敗はあったものの、練習日としては収穫があった。陽が傾きはじめいい時間になったので、今日はこれで終わりにしよう。帰る間際に撮った1枚が、自分的にはいちばんのお気に入りに。

よく知っている家の周りでも、自転車で走ってみると新しい発見に出会うもの。そこに更にチェアリングや珈琲ライド、お昼寝ライドといったように他の要素を加えると、自転車の楽しみが広がる。

今回は、キャンプに向けての準備として「主な装備の調達編」をお届けした。必要なものの取捨選択とULギアで固めたミニマムな装備なら、バックパックひとつで楽に輪行&キャンプができそうだ。鉄道は全国くまなく発達しているので、輪行を活用すれば様々なロケーションや目的に応じたキャンプにアクセスできる。

次回、Vol.02以降の記事では、輪行していった先で実際にキャンプをする様子や、簡単な食事、ポンチョタープの色々な張り方など、毎回テーマを設定してトライする様子をお届けしたいと思う。
*当連載に関するご意見はTwitterまで。記事に先行して小ネタも投稿中!

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