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0.3からはじめるウルトラライト輪行ソロキャンプ Vol.02 輪行&ポンチョタープ実践編
2023.08.08
前回、連載の第1回では、ULキャンプに必要となる主だったものを調達し、自宅最寄りの河川敷へ自走して試しに使ってみるところまでをお届けした。今回は、実際にキャンプに行く際に発生する二大イベント(と言っても特に難しいことではないと思うが)、輪行の仕方とポンチョタープの張り方ついて、紹介したいと思う。
キャンプ道具を担いだ輪行
以前にX(旧Twitter)でフォールディングバイクのユーザーに輪行の経験をアンケートしたところ、73%もの方が一度は輪行の経験があるという回答を寄せてくれたが、実際に輪行している人を見かける機会は少なく、世間ではあまり認知されていないように思う。輪行は、一度その手軽さを体感すると何度も利用したくなる、自転車を楽しむうえで非常に便利な手段なので、この記事をご覧の方にはぜひ実行していただきたい。
○ 輪行とは
公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といい、鉄道を利用した輪行以外に、船舶、飛行機、バスなどを利用する場合も輪行という。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに遠くへ移動できる、加えて時間も短縮できる便利な手段だが、利用する交通機関で定められたルールを守るだけでなく、他の方への気配りも必要となる。
輪行の方法は基本的には「折りたたんで(または分解して)輪行袋に入れる」「担いで列車に持ち込む」「目的の駅に到着したら車体を展開する」だけだ。ルールやマナーにさえ気をつければ意外と簡単に実行できるので、未経験の方もぜひトライしてみてほしい。
○ 輪行には専用の袋が必要
多くの大手鉄道会社では、JRグループの定める「旅客営業規則 – 無料手回り品」に倣って自転車輪行時のルールを運用している。例えば東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)では、以下のとおりアナウンスしている。
・荷物のサイズは縦・横・高さの合計が250cm以内(長さは2mまで)
・重さは30kg以内のものを2個まで
・自転車は解体(分解)し専用の袋に収納するか、折りたたみ自転車は折りたたんで専用の袋に収納する
・車体は一部でも袋から露出しないようにする
今回輪行した阪急電鉄では、分かりやすい絵を用いてアナウンスしている。
専用の袋というのは一般的に「輪行袋」と呼ばれるもので、多くの大手鉄道会社ではこの輪行袋が必要となる。車体形状が車種により様々なフォールディングバイクについては、メーカーが各々の車体にフィットする輪行袋を販売していることが多い。DAHONでは車輪のインチ数や折りたたみ方法の違いにより、現在は4種類の輪行袋をラインナップしている。
○ 実際の輪行の様子
今回使用する車体は前回に続き、軽量&コンパクトさが話題のDAHON K3。K3にジャストフィットする輪行袋は、14インチモデル用のSlip Bag mini。車体はショルダーベルトで吊るすため輪行袋自体に負担がかからず、袋の生地を薄くすることができるので軽量&コンパクトなものになっている。
車体は駅舎に入る前に折りたたみ、輪行袋に入れるのがマナー。作業はあっという間だが、他の方の通行の邪魔にならない場所で作業、点字ブロックの近くも避ける。大きな駅で乗降する場合は、構内で長い距離を歩かなくても済むように、ホームから駅舎の外までの距離が短いルートを予め調べておくと便利だ。
輪行袋には、車体を担ぐ目的のほか、タイヤやチェーンが他の方に触れて汚すのを防ぐ目的もある。輪行袋に入れているとはいえ自転車はパーツが出っ張っているので、移動する際は他の方に当たらないように注意して歩く。改札口を通る際も、車体を改札機に当てないように気をつける。鉄道輪行では、混雑する時間帯や混雑する駅の利用を避けるのがマナー。混雑時は1本見送る余裕も持ちたい。
分かりづらいが、バックパックを背負って輪行袋を肩掛けした状態での自撮り。両手がフリーで使えるのは、何かと便利。
列車内でのルールやマナー、ヒントは次のとおり。
・他のお客様の「邪魔にならない場所」に、「安全な状態」で置くのが大原則。
・複数人で乗車する場合は、一箇所に固まらずに車両やドアを分散して乗り込む。
・急ブレーキに備え、進行方向の壁際で手や体で押さえて、自転車が動いたり倒れたりしないようにするのが基本。
・ベルトで手すりなどにくくり付ける場合もあるが、自転車から離れるのはほとんど乗客のいない路線に限定する。
・車内に大型手荷物置場がある場合は利用できることもあるが、何れにしても非常時に自転車が凶器とならないように注意する。
・新幹線や特急などクロスシートの列車では、最後列座席の後ろの空間が比較的置きやすい。
・ドア近くの小さなスペースを利用する場合は、乗り降りされるお客様が自転車に当たらないように細心の注意を払う。
・運転席後ろの壁を利用する場合は、乗務員の出入りするドアを塞がないようにする。
・譲り合って利用することを終始心掛ける。
細かく書き出してみたが常識的なことばかりなので、一度確認すれば理解できるだろう。
目的地の最寄り駅に着いたら、袋から車体を出してサクッと輪行解除。目的地までサイクリングして向かう。初めての土地を自分の自転車でサイクリングする楽しさ。公共交通機関が通った場所なら、どんなに遠くても実現できる。
ポンチョタープを張るバリエーション
テント代わりにポンチョを流用する点については前回の記事で触れたが、本来の用途である雨具として、バックパックを背負ったまま被るとこのようなスタイルになる。自分は雨の日にキャンプに行くことは無いが、両手が使えるので山歩きや設営もできる、アウトドアでは重宝する雨具だ。自宅でバックパックを背負ってポンチョを被ってみた(モデルが自分だと映えない……)。
チョイスしたポンチョは軽量コンパクトなSEA TO SUMMIT の Ultra-Sil Nano Tarp Poncho。タープ機能のないUltra-Sil Nano Ponchoという似た製品もあるので、購入する際は要注意。145g のNano Ponchoに対してNano Tarp Ponchoの重量は230gだが、これでもかなり軽量だ。撥水性の高い15DウルトラSILナイロンを採用し、サイズは145×265cm。大きなバックパックを背負ったり、タープ使いして下に寝るのにも必要十分な広さだろう。
写真の左から2番目の黄色いものが、今回使用するタープポンチョ。左端のシーツ系シュラフ(STATIC / ADRIFT LINER)と比べても、かなり小さいことが分かる。
四角形の布の真ん中に頭の通る穴が空いた形状をしている点は普通のシンプルなポンチョと同じだが、タープやシェルターとしての使用も想定したタープポンチョには、端にハトメが設けられ、ペグで地面に固定したり、ガイロープ(テント用ロープ)を使って支柱や樹木で高さを確保することもできるようになっている。
今回はポンチョタープの試し張りを目的に、人のいない大きめの公園にやってきた。チェアリングの延長のような気軽さで、何パターンか張ってみたいと思う。ポンチョは全開にして広げることで大きな一枚の生地になるので、頂点をどう設定するか、というバリエーションになる。
○ 樹木を1本使う方法
樹木を用いて入口を作り、ポンチョの長い辺の中央をガイロープで支える方法。幹の表面を痛めないために、養生には手ぬぐいを使用する(今回は幹が太くて手ぬぐい1枚では無理があった。子どもの頃は折った新聞紙を使っていた記憶がある)。多少の圧迫感はあるものの、屋根しか作れない中では最も守られた感がある。側面に隙間ができるが、開口部をもう少し高くすることで圧迫感は軽減可能だ。
ポンチョを対角線方向に使ってみるなど、試行錯誤。ポンチョ1枚でも、角を直接地面にペグダウンする部分とガイロープを使う部分を使い分けることで、様々な形に調整できるのが面白い。
片面は完全に開口したままになるが、1つ目のパターンからポンチョを90度回転させて横方向に使う方法。寝るだけのスペースではなく、座って食事をするといった作業ができる。山奥で寝るには心許ないが、屋根があることでとっさの雨や強い日差しから常時身を守ることができる。個人的な好みで言うと、見た目は一番格好いいように思う。
○ 樹木を2本使う方法
物干しのようにポンチョを完全に吊り下げることで、1つ目のパターンの足元も高くする方法。ロープの高さを調整することで、足元を少し低くし、1つ目のパターンとの中間くらいにすることもできる。
思い切ってポンチョを完全に広げてみると、こんなスタイルも可能になる。(ポンチョを2枚使ってもう一面作れば完全にタープになるが、ミニマムなスタイルを追求するうえでは邪道と言わざるを得ないだろう。)
前回の記事では折りたたんだ車体を支柱代わりに使ってみたが、高さが十分に確保できなかったので折りたたまずに使ってみるという方法も今後検討してみたい。キックスタンドを装着した車体であればそのまま停められるが、ない場合は車体を裏返して立てることもできる(荒れた地面ではシートが傷つきそうだが)。その場に落ちていた枝を支柱として使う方法もYouTubeなどでよく見かける。都合のいい枝が落ちている保証はないが、なかなか格好良かったりする。
ポンチョタープで実現する気軽な輪行
子どもの頃に訓練で体験したビバークからの、ポンチョをテント代わりするというアイデアだったが、従来の登山よりも軽い装備にするファストパッキングではトレンドであるし、実際の輪行でも狙い通りの気軽さを体感できた。寒くなる季節はテントが必要となってくるだろうが、郊外のちょっとした所なら春から秋口までこのスタイルが最強だろう。
寝転んだ状態で空を見上げると、自然の気持ちよさとポンチョに守られている感がうまくバランスしていて心地いい。ファミキャンには行ってるもののソロキャンプ未経験の今の自分にとっては、ひとりでゆっくり寝転ぶだけのこの行為が実はかなり充実感を感じる。
キャンプといえば、荷物が多くて準備が大変そう、車を持っていないと運搬も大変そう、というイメージを持つ方が多いと思うが、チェアリングの延長のような気軽さで行くソロキャンプであれば、このスタイルは大いにアリだ。今回は試し張りをしただけなので、次回はいよいよ実際のキャンプにトライしてみたいと思う。
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