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自転車のカスタムは三者三様。C-1コンテスト受賞店舗への取材をとおして見えたその多様さ

自転車のカスタムってご存知ですか?一般の方には馴染みの薄い言葉かもしれませんが、「雑貨屋さんで可愛いベルを見つけたので自転車に付けてみた」とか、通勤で自転車を利用している人が「PCを入れた重いリュックを背負ったままだと疲れるので前カゴが欲しいな」と考えるのも、立派な自転車のカスタムです。

今回は、自転車のカスタムの楽しさや、自転車販売店さん3店舗への取材をとおして様々な角度から自転車カスタムの世界をお届けします。カスタム未経験の方からカスタムマニアの方まで、ぜひご覧ください。

多くの人が楽しめる自転車のカスタム

ドレスアップから走行性能の向上など、フレーム以外のパーツを全て自分好みに交換できるほど自由度が高いのが自転車のカスタム。お気に入りのステッカーを貼ってみるだけでも愛着が湧きますし、マニアのディープな世界(=沼)も存在します。カスタムの方向性は人の数だけあって良いものですし、高度なテクニックを要するものが優れているというわけでもないので、興味のある方はこれを機にトライしてみるのも楽しいのではないでしょうか。

カスタムは自転車趣味人が必ずとおる楽しみの一つ。まず最初に、SHIFTAのこれまでのコラムの中からカスタムをテーマにしたものをご紹介します。

すべては「好き」の延長線上に。自転車カスタムギークの手仕事に迫る

2007年-2008年にかけて急速に浸透したフィクスド(固定ギア)バイクムーブメント。世界的なブームがもたらした新たなスタイルは、ストリートカルチャーやファッションを巻き込んで、日本の自転車シーンにも大きな影響を与えた。そのフィクスドバイク黎明期に文化を牽引した自転車愛好家集団 PEDALMAFIA (ペダルマフィア)の一員 TSUNE氏のインタービュー記事。

ハンドメイドだからこその自由なスタイル AGHARTAのバッグ作り

2007年-2008年にかけて急速に浸透したフィクスド(固定ギア)バイクムーブメント。世界的なブームがもたらした新たなスタイルは、ストリートカルチャーやファッションを巻き込んで、日本の自転車シーンにも大きな影響を与えた。そのフィクスドバイク黎明期に文化を牽引した自転車愛好家集団 PEDALMAFIA (ペダルマフィア)の一員 TSUNE氏のインタービュー記事。

Xに出没する謎のTern三兄弟に直撃取材:VERGE P10ユーザーが語るTernを共通アイテムとした楽しみ

2007年-2008年にかけて急速に浸透したフィクスド(固定ギア)バイクムーブメント。世界的なブームがもたらした新たなスタイルは、ストリートカルチャーやファッションを巻き込んで、日本の自転車シーンにも大きな影響を与えた。そのフィクスドバイク黎明期に文化を牽引した自転車愛好家集団 PEDALMAFIA (ペダルマフィア)の一員 TSUNE氏のインタービュー記事。

また愛車をドレスアップするなどカスタムが目的ではなく、自転車「×何か」をテーマにその中でカスタムバイクが出てくるコラムも、人それぞれに世界があって見ていて楽しいですよ。

RIDE&FISHって知ってる? 自転車と釣りを一緒に楽しめる新しいスタイルのススメ

自転車で釣りに出掛ける「RIDE&FISH」を広く提案されているSHIMANO SQUARE(シマノスクエア)の副店長、浅野健介さんに、自転車と釣りの楽しみ方を伺った記事。シーンに応じて特徴を生かせる自転車の種類や装備、コンパクトな釣具のことなど。

旅の写真家からみたカメラ機材、移動手段としての自転車の装備

「旅の写真家 うえやまあつし」として活動されている上山敦司さんに、プロ目線でみた旅へ持っていくカメラ機材や自転車について伺った記事。輪行で移動する際の運搬性、自走する際の走行/積載性を突き詰めた装備など。

ノーマル状態の車体にカスタムを施すことでその自転車の可能性が広がることから、自転車専門誌や自転車販売店、時には自転車ブランドでも積極的にカスタム情報を発信しています。
*参考Link → FUJIの自転車カスタムのネタばらし

SNSで投稿されている自転車の情報のなかでもカスタムネタは大きなウェイトを占めていて、多くの方がカスタムを楽しんでいることが分かります。例えばMINI LOVEのカスタムバイクコンテストには、100台を超える小径車のカスタムバイクが並びました。フォールディングバイクやミニベロといった小径車はロードバイクなどと比べて様々な形や機構が採用されているので、多種多様なカスタムが楽しめます。

2011年にアキボウが中心となり国立競技場で開会したMini Velo Lovers Festa `11 『 MINI LOVE 』のカスタムバイクコンテスト 出典:2011年6月25日発売 「ミニベロフリーク」 枻出版社

自転車ブランドによってはアクセサリーを豊富に展開していることもあるので、ご自身の自転車のブランドサイトをチェックしてみても良いかもしれません。

DAHON/Ternで開催したカスタムバイクコンテスト

2024年9月から10月にかけて、DAHONTernの日本総代理店であるアキボウが、この2ブランドの車体を対象にしたカスタムバイクコンテストを開催しました。長年DAHONやTernに携わってきた自転車販売店が「今までにないカスタム」というテーマのもと思考を凝らしたカスタマイズを施し、全国の販売店やメディア、一般のお客様からの投票で入賞車体を決めるという初めての企画で、「C-1コンテスト by dealer」と名付けられました。

コンテストでは「リスペクト賞」と「オーディエンス賞」という2種類の賞をご用意しました。リスペクト賞は全国の正規販売代理店からの投票によって決まるもので、アキボウ展示会で実施。プロがプロのリスペクトするに値する作品を選ぶ、緊張感のある投票となりました。

アキボウ展示会で実施されたC-1コンテストの様子。

一方、オーディエンス賞は一般の方からの投票により決まるもので、投票は9月下旬にX(旧Twitter)、9月28日・29日に「アウトドアデイジャパン神戸2024」というイベントで実施しました。

アウトドアジャパン神戸での投票の様子。会場は暑さが和らいだ2日間をとおして多くの来場者で賑わい、たくさん応募いただきました。

多くの方に協力いただいた投票の結果、DAHON、Ternそれぞれのリスペクト賞、オーディエンス賞は以下のとおりとなりました。
 

DAHONリスペクト賞:LORO CYCLE WORKS / Speed Falco

ベース車体:Speed Falco

テーマ/コンセプト:
折りたたみ自転車ではあまり見ることのないシンプルさを追求し、同時にラグジュアリーさと一生涯の相棒になるような頑丈さを演出。

こだわった点:
ただのシングルスピード化は敢えてせず、完全なる固定ギア化にすることで全く新しいジャンルのバイクが誕生。

こんな方に:
活気あふれる若々しい層が、有り余る体力と自信を持ってどんなシーンでも常に一緒にいる相棒のように活用してほしい。

使用パーツ:
ハンドル:Nitto for Shred bar /ブレーキレバー:PAUL Duplex Lever Polish / グリップ:ODI VANS Lock on Grips / ブレーキ:PAUL Motolite V-Brake / クランク:White Industries VBC Crankset 50T / ペダル:MKS All Ways One Side Ezy Superior / ペダルストラップ:FAIRWEATHER pedal strap / ペダルホルダー:ペダルホルダーK / リム:SUPER LITE 20inch 42mm Polish / スポーク:DT Swiss champion 14G / ニップル:SimWorks by Hoshi Raw Brass Nipple 14G / ハブ:White Industries ENO エキセントリック / チェーン:IZUMI Jertblack 1/2×1/8 / コグ:White Industries Fixed Gear Cog 17T / ロックリング:White Industries Fixed Gear Lock Ring / タイヤ:Raleigh RSM用
 

DAHONオーディエンス賞:MOVE bicycles / D-Zero

ベース車体:D-Zero

テーマ/コンセプト:
OLD DAHONへのオマージュ。

こだわった点:
あえてヴィンテージパーツを使わず、現在市販されているパーツ&アクセサリーでスタイリング。また、シルバーカラーで統一し、BROOKSのレザーサドルでヴィンテージ感をさりげなく取り入れた。OLD DAHONへのリスペクトを込め、現代のスタイリッシュさをプラスしてコーディネートしました。

こんな方に:
走る楽しみはもちろんですが、飾ったり、磨いたり、物を大切にし、「愛でる」という楽しみも感じていただける方に。

使用パーツ:
クランク:TA、チェーンリング:FSA/F-Gimondi、サドル:BROOKS/FLYER SPECIAL、ハブ:RIDEA/Performance HUB、ペダル:MKS/SYLVAN TOURING、ブレーキ:SHIMANO/DXR、タイヤ:SCHWALBE/MARATHON、キャリア:NITTO/Rear bag Supporter-R15、バッグ:BROOKS/SCAPE HANDLEBER COMPACT BAG、スタンド:ESGE/Double Leg Kickstand
 

Ternリスペクト賞・オーディエンス賞(W受賞):FLAME bike / SURGE

ベース車体:SURGE

テーマ/コンセプト:
アルミフレームポリッシュ仕上げのゴージャス仕様。

こだわった点:
フレームにあわせて他パーツもポリッシュを選択。Ternロゴをマジョーラにすることで、見る角度によって別の自転車のような世界観。

こんな方に:
ゴージャスな自転車が似合う人。

使用パーツ:
SHIMANO105コンポ | SHIMANO105ハブ | BROOKSバーテープ | BROOKSサドル | Dixnaラ・クランク 55T/43T | Dixnaバンディー2ハンドル | Onebyスージーステム、他

 
また、今回のC-1コンテストでは、自転車専門誌を発行する出版社も参加、スポーツバイク専門誌の代表的メディア「Cycle Sports」などを発行する八重洲出版と、マイペースでゆるーく自転車を楽しむ脱力系メディア「自転車日和」などを発行する辰巳出版が独自にメディア賞を設けました。

八重洲出版は、折りたたみ自転車の最新モデルを厳選して紹介し、俳優の石井正則さんと共に走りの性格や輪行適性をわかりやすく、楽しく紹介するムック「折りたたみ自転車で旅に出る」の刊行に合わせて同名の賞を設定、岡山県のプロショップ・ファームがカスタマイズしたDAHONのHorize Discが選ばれました。
*Link → Cycle Sports 発表記事

ベース車体:Horize Disc

辰巳出版は、ミニベロオーナーのさまざまなライフスタイルや愛車を自分好みに仕上げるためのカスタマイズなどを幅広く紹介するムック「折りたたみ自転車&ミニベロライフ」で自転車日和賞を発表、和田サイクルがカスタムしたTernのVerge P10選ばれました。
*Link → 辰巳出版告知

ベース車体:Verge P10

今回C-1コンテストで受賞された店舗を取材し、各店舗の考える自転車カスタムの楽しさや、コンテストに向けてカスタムしたバイクについて伺いました。いずれの店舗もカスタムに長けたプロショップですが、店舗自体のコンセプトによって方向性の異なる話をお聞きできましたので、ぜひご覧ください。↓

DAHONリスペクト賞受賞店舗:LORO CYCLE WORKS

子どもの時に味わった自転車に乗れた時の楽しさに似た感覚

コンテストの「今までにないカスタム」というテーマに合わせ、商品としてもカスタムとしてもあまり着目されず見たこともなかった「折りたたみで固定ギア」に取り組みました。折りたたみ自転車は他の一般車に比べてヒンジ周りや走行性能を持たせるためにパッと見でガチャガチャしがちなので、高級感を持たせながらどこまでシンプルに仕上げられるかを模索しながら、片方のブレーキレバーで前後のホイールを制御させるなど、パーツをアッセンブルしました。

高級感を持たせながらどこまでもシンプルに仕上げられた Speed Falco。
片方で前後ブレーキを同時に引くことができる、カリフォルニアのコンポーネンツブランド PAUL COMPONENTSのDuplex Leverを採用。

元々はシングルスピード仕様で、リアホイールを裏返す事で固定ギアにできる⾞種はあったりするので、ゆくゆくは固定ギアに乗ってみたいという⽅は、体感で2 割くらいですが増えてきています。シングルスピード(フリーギア)の⼩径⾞はありますが、固定ギア一本化にした車体は⾒たことがなかったのでやってみました。(逆にフリーギアはオプションとして取り付け可能。)

固定ギアでしか味わえない乗り心地はいいですよ。子どもの頃、自転車に乗れるようになると楽しかったじゃないですか。その2段階目として、固定ギアも同じ感覚が得られるのではないかと思います。固定ギアに乗れるようになってきたという楽しさや、脚で加減速でき、漕いだ分しか進まない潔さや美しさも感じられる、そういうところが個人的なテーマとしてありました。

ただ、固定ギアにはしてもペダルはフラットのままというカスタムがとても多いのですが、実際に乗ってみるとブレーキをかけた時に足からペダルが離れてしまうことがあり、恐怖感や危険性があります。ですので、実際に乗ることを考えると完全に足をペダルに固定させた方が、ブレーキだけに頼らず脚でも加減速ができるという点で、リアルさを出すためにペダルストラップを採用しました。

ホイールについては、もう一つのテーマとしてシンプルさに加えてラグジュアリー感を出したくて、ポリッシュで且つ、カーボンホイールじゃないかっていうくらい高い、42mmリムハイトのホイールを採用してみました。ノーマルのSpeed Falcoはシルバー色のフレームに黒基調の部品が採用されている車体ですが、あえてポリッシュを入れることでインパクトが出たかなと思います。リムがほぼ鏡面なので、ブラウン調のサイドウォールが入ったタイヤにすることで反射してさらに車輪が大きく見える効果があります。こういうカスタムにすると得てしてヤンチャっぽくなりがちですが、落ち着いた茶系色を入れることで大人っぽさを演出でき、若年層から大人の方まで対応できるようにしました。自分で乗っているバイクはこだわってカスタムするので、今回も完成車ではなく一旦フレームとして捉えて一から組み立ててみようという思いがありました。

頑丈でしっかりした品質になっているアメリカ製のパーツは、何年使っても傷みにくいので、全体的にそういう部品を随所に入れました。せっかくお金をかけてカスタムするのであれば、長く乗るのにあまり⼿のかからないパーツが好ましいと考えています。

カスタム初心者の方がはじめにカスタムされる際は、自分の身体に直接触れるサドル、ハンドルグリップ、ペダルなどがオススメです。タイヤもですが、車体の外側にくるものを変えるとガラッと印象も変わるので、乗るモチベーションが絶対に上がります。ハンドルやグリップなどは走行中も目線に入るので、見た目でも楽しくなると思います。

自転車以外の何かと組み合わせたカスタム

今後のC-1コンテストでは、自転車「プラス何か」の体験をテーマにした企画など良いと思います。よく見るのには自転車とキャンプがありますが、そこを違うアプローチにするなどして。もともと街乗り用の自転車でも、あえて街乗りをテーマにさらに面白くすると良いかもしれません。プラス何か、は無限大だと思います。

自転車だけが趣味の方もいれば、自転車とこれが趣味ですという方もおられて、自転車をこうできたらいいよね、というものがあると思います。「プラス何か」はアウトドアになりがちですが、そこを違うアプローチにすると面白いと思います。街なかでの散歩が趣味なので、こういうパーツをつけたら便利になりましたとか、一緒に写真を撮るときにこういうカスタムをしたら、映える写真になりましたなど。次回の企画も期待しています。

カスタムの得意なローロ サイクルワークス

当店は、LOROグループ各店の中でも店舗面積が広くて取り扱い車種が多いので、ここにお越しいただければ大抵のものが揃っています。各店でお世話になっているお客さまも一度はこちらに足を運んでいただけるよう、品揃えの多様さを意識しています。LORO公式オンラインストアでしかない商品も、こちらではできるだけご覧いただけるようにしています。

車種の豊富さとその台数に圧倒される店内。整然と陳列されている車体の中には売約済みの札が掛かる納車待ちのものが何台も見られ、賑わっている様子が伝わってくる。

私はもともと⾃転⾞が好きで、ダイエット&フィットネスのために固定ギアという特徴的な機構のピストバイクを購入し惚れ込み、自身でメンテナンスやカスタムを楽しんでいました。セカンドバイクとして折りたたみ自転車を買い、自転車を連れて日本各地や離島を旅したりする中で輪行旅の楽しさや小径車の奥深さを知りました。そして一念発起して趣味を仕事にしてみよう!と考え、数年前LOROに⼊社。好きという⾏動原理がありますので、自ずとメカニックも得意になっていきました。失敗しても、どうすればうまくいくか、作業的にスムーズにいくかとか考えるようになります。全ては興味だと思います。仲間内でカスタムした自転車の品評会みたいなことも趣味でしていたりしますので、自転車のカスタムやスタイリングには自信があります。

小さなパーツひとつにおいても、そのメーカーの成り立ちやバックボーンをよく知ったうえで最適なご提案を心がけています。自身の実際の経験に基づいた自転車のご提案やカスタムのご提案をさせていただきます。

今回話を伺った塚本さんと、塚本さんが手掛けたDAHONリスペクト賞受賞バイクのSpeed Falco。
様々なカスタムバイクが生み出される、小径車ファンの聖地的店舗の心臓部。

当店ご利用のお客さまはカスタムされる率は⾼いと思います。当店は、折りたたみ自転車メインで取り扱っているが故に以前は軽量化に振ったカスタムも沢山手掛けていましたが、近年はある程度の耐久性を意識しつつ走りやすくなる、⾒栄えの良くなる等、お客さまのご要望をお伺いしながらひとりひとりの理想にLOROらしさを合わせたカスタムをご提案させていただいています。

Shop Information

LORO CYCLE WORKS

(ローロサイクルワークス)
大阪市中央区東高麗橋4-7 ミュー高麗橋1F

DAHONオーディエンス賞受賞店舗:MOVE bicycles

ファッション+インテリア+自転車 で

22 歳から29 歳まで、アパレルの会社でシャツのデザイナーやMD をしていました。その後イギリスに1年ほど住んで、イギリスの⽂化に触れていました。もともとイギリスの服や⾳楽が好きだったのですが、インテリアにも興味がありました。

⽇本に戻ってインテリア業界で1年ほど勤めたあと古着屋を開きました。店内はDIYで仕上げ、3、4ヶ月に1度ヨーロッパへ買い付けに行く⽣活でしたが、3年ほどで行き詰まってしまいました。さて次はどうしようか、ファッションが好き、インテリアが好き、だけどファッションやインテリアで発信したいことはないなと思っていた時、ふと⾃転⾞を思い出しました。イギリスにいた頃、背の高い英国⼈たちが、⼩径⾞で颯爽と⾛っているのを⽇常的に見ていて、⾃分も⾃転⾞に魅力を感じるようになっていたのです。そこで、ファッションとインテリアと⾃転⾞の3 つの柱で何かできないかと考え、まずは⾃転⾞整備の技術を学ぶために⾃転⾞店で働かせてもらうことにしました。1年ほどスポーツバイクなども取り扱う地域密着型の自転車店、その後6年半くらいを自転車チェーン店でお世話になり、店⻑にもなってマネジメントも学びました。

C-1コンテストでオーディエンス賞を受賞したDAHON D-Zeroが展示されるショップのウィンドウ。

「⾃転⾞はスポーツだけでなく、ファッションやインテリアと融合させることで面白いカテゴリーになっていく」という考えの基に、⾃分が仕事で培ってきたこと、経験してきたこと(ファッションやインテリア)を活かし、店舗の中で商品やお店づくり、マインドも含めて⼀つの形として表現したいと思い、今に至ります。

これまでの⾃転⾞ショップとは違う、イノベーティブなことができればと常に考えています。⾃分しかできないことを表現して、それを喜んでいただける⽅がいらっしゃれば嬉しいですね。

MOVE bicycles ではヨーロッパ、アメリカ、⽇本国内などから選りすぐりのミニベロ、折りたたみ⾃転⾞、関連商品をセレクトし、販売している。

カスタマイズではなくコーディネイト、スタイリング

お店のコンセプトは「Small + Smart + Compact !」で、小さい⾞輪で、コンパクトに折りたためて、デザインが良い=スマートな⾃転⾞を取り扱っています。⽇本の住宅事情を考えるとマンションも多く、⽞関先や部屋の隅で保管できる⼩径折りたたみ⾃転⾞の専門店がもっとあってもいいのでは?と思い、専門店としてスタートしました。

ワンランク上の⾃転⾞ライフをご提案するためのスペースMOVE bicycles LUXE。

当店では、⾃転⾞のスタイリングで⾔うと、スポーティーなものではなく⼤⼈が普段着で乗れる⾃転⾞づくりをしたいと考えています。ロードバイクは走ることが⽬的の⾃転⾞ですが、⾃分の思う⾃転⾞づくりは、⽬的地まで気持ちよくお洒落に⾏って、そのままレストランに入れるようなスタイルですね。ファッション業界にいたのでカスタマイズという⾔葉はピンとこず、コーディネイトやスタイリングという⾔葉がしっくりきます。

今⽇はどの服を着ていこうかなとコーディネイトを考えるように、⾃転⾞もそんな⾵にコーディネイトして作っていただけたらと思います。お客さまが、もっと気軽に考えていいんだなと思っていただけるようなご提案をしています。

こだわって作られたパーツをコーディネイトする作業

C-1コンテストに出品いただいた⾃転⾞のオーナーさんは、部屋の中でも⾞体を飾られています。スタイリングの際、使⽤しているパーツ一つ一つにこだわられていて、例えばこのESGE のスタンドは、スイスメイドの素晴らしい両⽴スタンドで、デザイン、質、耐久性など、⼯業製品としても大変よくできています。ファッションコーディネイトするときに、帽⼦、眼鏡、時計、シャツ、パンツをどれにしようかと考えますよね。一つ一つのパーツ⾃体のクオリティも重要ですが、様々なブランドのものを合わせても美しくまとまることが⼤切だと思います。

スイスメイドESGEの両立スタンド。

このキャリアはボルトの⽳が無い⾞体にゴムバンドで装着する製品なのですが、ボルト留めにして使⽤しています。あとこのBUSCH & MULLERのテールライトですが、ドイツやオランダに行くと結構付けられており、キャリアをお取り付けのお客様にはさりげなくお勧めしております。

この⾞体と同じもの作りたいというお客さまの要望を叶えるために、デッドストックやビンテージパーツではなく現行パーツを使ったのですが、このFSA のGIMONDI のクランクだけはもう販売されておらずデッドストック品になってしまいました。7、8 年くらい前に⽣産終了となり、20 個くらい買っていたのも無くなりました。FSA はアメリカのブランドですが、フランスTAのチェーンリングを組み合わせたことによって違和感を感じません。それぞれのブランドがこだわって作っているパーツを合わせるとケンカしそうですが、意外にマッチングします。また、オーナーがDAHON のビンテージをリスペクトされているので、D-Zero の気軽さを残すために敢えてディレーラーはオリジナルのまま残しています。

フランスTAのチェーンリングと組み合わせた、FSA /GIMONDI のクランク。

MOVE bicyclesの得意なところは

何のこだわりも無しに乗るのも格好いいとは思いますが、パーツ一つ一つにこだわって乗るのも、⼈⽣が豊かになるようで好きです。例えばこの椅⼦、バウハウスでも採⽤されていたROWACのスツールで100年モノですが、こういうものをさりげなく使いたい、置いておきたいです。これまでに「これROWACじゃないですか!」って気付かれたのは、家具職⼈のお客さまだけですが(笑)。

こういうアンティークでも気にせずレザーのモダンなソファーと組み合わせて、普段使いしたい。ファッションもそうですが、古いものとモダンなものをミックスしても、違和感なくスタイリングできている、そういうところが私の得意分野かなと思います。

お客さまとスタイリングの話をする際の見本にしてもらえたらと作ったMOVE bicycles EDITION のDAHON Boardwalk D7。
Tern CREST (MOVE bicycles EDITION)には、さりげなくイギリスのメール便“Royal Mail”のレターバッグ。誰も気づいてくれないですけど(笑)と店主。

C-1コンテストのテーマが「今までにないカスタム」だったのにスタンダードなものを出してしまいましたが、⼀般の⽅に⽀持されたというのは、⾃分が思っている⾃転⾞づくりは間違ってないのかなと思います。

兵庫県西宮市にあるMOVE bicyclesの店主、泉さん。

Shop Information

MOVE bicycles

(ムーブ バイシクルズ)

兵庫県西宮市久保町6-13 池ビル101

Ternリスペクト賞 & Ternオーディエンス賞 W受賞店舗:FLAME bike

カスタムは、まず見た目

5年ほど自転車販売店で修行し、この場所にミニベロ専門店としてオープンしました。店舗が広くないこともありますが、他店との差別化も考えてミニベロに特化しようと考え、最初はクロモリの多いBRUNO、Bianchi、Raleighのミニベロを中心に取り扱いしていました。その後4、5年してからアキボウさんに連絡を取り、TernのセカンドラインのROJI BIKESも多く取り扱うようになりました。

ミニベロはこの渋谷、原宿の街に合うというのもありますが、ROJI BIKESは見て格好いいというがありますね。当店だけの限定モデルもそうですが、独占したいという思いもあって、ミニベロの販売台数ではうちが日本一になる目標を早々に立てていました。

渋谷・原宿間に店舗を構えるFLAME bikeの店内。感度の高い若者や、芸能人などからも一目置かれる自転車店だ。

私の年代的に原付バイクが流行って、原付のカスタムは誰もが通る道だったので、改造しないという選択肢はありませんでした。自転車のカスタムもその延長線上で、速くしたい、格好よくしたい、派手にしたい、目立ちたいという思いがあり、自転車だろうが、バイクだろうが、車だろうがそれが当たり前、目立ちたい人はやった方がいいですね。

格好よくしたいから、まずは見た目ですね。クロモリの自転車なら革のサドルやバーテープにするだけでもクラシカルな雰囲気になりますし、このアルミのSURGEなど太いフレームの自転車についてはパーツの色を変えてみるとか、簡単にできると思います。そのうえで最終的には速く走るとか、楽に長距離を走るなどももちろんあると思いますが、まずは見た目じゃないでしょうか。

第6弾となるTernとのコラボレーションのFLAME bike限定SURGE(turquoise/BLACK)は、フロントにカーボンホイールを履き、サポートブレーキも標準装備のスペシャルな仕様。

当店のオリジナルで独占したいという思いもあり、BRUNOやMASIでは昔からブランドとのコラボレーションで限定モデルを手掛けていましたが、Ternの限定モデルも第6弾までやってきました。毎年の流行りそうなカラーや、テンションが上がりそうな格好いい自転車を作っています。

コンテストだからこその目立つカスタム

今回はコンテストということと、時間もなかったので、色からごっそりと変えてしまおうと考えました。パーツを良くして、キャリアやカゴを付けて、ライトを付けて、というのもカスタムだとは思いますが、今回はカスタムのコンテストだというので、だったら目立たなきゃ意味がないし、自分たちのテンションが上がるものを作って、それを見たお客さまが自分もやってみたいと思ってくれるのだったらそれが一番嬉しい、さらにそれを元にもっと上を目指してもらえたら嬉しいと考えました。

コンテストに相応しい、目立つカスタムが施されたTern SURGE。街なかを走ると視線を集めそうな、文字通り「今までにないカスタム」。
アルミフレームポリッシュ仕上げのゴージャス仕様。フレームにあわせて他パーツもポリッシュが選択された。

目立つことを目的に全てをポリッシュにしてピカピカにし、そこからどのパーツを付けようかと考えました。SURGEは黒パーツが多いので、それを全部無くすところからまずはスタート、TERNロゴの部分については車業界のラッピングで人気のある会社(HACさん)に協力してもらい、見る角度によって色が変わるマジョーラカラーを採用しました。こちらのカーラッピング屋さんならどんなデザインのロゴも製作可能です。是非お問い合わせしてみてください。今回のカスタムのこだわりはズバリ、このポリッシュフレームに映えるマジョーラカラーのTERNロゴですね。

Ternロゴをマジョーラにしたことで、見る角度によって様々な表情を見せる1台に。

普段お店でやっていないカスタムが面白い

単にパーツを変えて、はい完成というのは面白くないし、普段お店でやっていることですよね。とって付けたようなカスタムではなくもっと派手になるような、せめて純正ではないカラーにするなど、大事なのではないかなと思います。企画を盛り上げるのだったら自転車店だけじゃなくて、昔MINI LOVEでも実施していたように一般の方からのカスタムバイクで実施するのも面白いと思います。

話を伺った店長のかずりんさん(右)と、一緒にお店を支えるしょうへいさん。
業界関係者、一般消費者の両者から支持されたことでダブル受賞を果たしたFLAME bikeによるカスタム。

Shop Information

FLAME bike

(フレイムバイク)
渋谷区神南1-9-11インタービルII 1F

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